第55話 夏休期⑤ 3人会議

ヒカルは

「何その怖い話、ハイドラ以外で僕らを狙う組織があるの?」と聞いてきた。


「いや、無い。」

「ん?どういう事??」弄んでごめんね。


「母さんの仕事がムギ薬局の薬剤師なんだけど。」


「うんうん、リンクラインの配線貰ったとこでしょ?知ってるよ。」


「あそっか、でねちょっと前に近くにドコカラファイナルが出来たんだよね。」


「あ、見た見たオープン記念で風船配ってたよね。」


「そそ、で、それがね、恐ろしい事にその近くの駐車場を取り壊して、新たなドラッグストア、キャリン堂が出来るらしいんだ。」


「はぁ。」ヒカルは心配して損したって顔をして僕を悲しい目で見てきた。


「ヒカルはこれをどう見る?」


あ、あからさまにめんどくせーって顔すんなよここがヒカルの面白く無さを克服するターニングポイントかも知れないぜ!


「どう見るって言われても、やっぱり古い方が淘汰とうたされていくんじゃ無い?」


「へー。で、トウタってどう言う意味?聞いたことあるけど。人の名前??」


「カガミってゲームで出てきてない言葉はとことん知らないよなぁ。必要の無いものが排除されてくって事だよ。」


なるほどねー僕はスマホで漢字を見ながらこう思った。


【淘汰】かぁなんか親近感が湧いてきたなぁ。新しく出てきたジャンルのゲームに埋もれてレトロゲーは淘汰されていくのか?いやそうはさせない!!!


必ず日本のレトロゲーは竜二と僕で守ってみせる!!!! と言う妄想はさておき、


「え、じゃあ母さんのムギ薬局ヤバいじゃん。」


「そうだね。昨日はリンクラインのおかげで助かった訳だしひいてはムギ薬局のお陰だもんね。一肌脱ぎますか?」


や、母さんの発注ミスが原因だったような。母さんちゃんと働いてるのか??


「ヒカルは脱がなくていいよ。春日さんなら頼もうかな。」


「オープンエロめ!」そう言われると僕だけか?って気になってすぐに

「隠れエロめ!」と返してやって二人してケタケタ笑ってた。





ヒカルが

「でも昨日は今考えても怖かったなぁ。あ、カガミ関係無いか。」と言われ

「僕も一応何度かみんなとリンクして怖さ感じたんだぜ!今はストレスフリーだけど。夏休み最高!」


「だよね。まぁそれで落ち着いて考えることが出来たのも事実だよ。でも整理して考えなきゃいけない事が一気に増えた。次に活かす振り返りは必要だ。どうせ2人で暇だしちょっとまとめないかい?」


僕はゲームに追われて忙しい身だけどまぁ社会から見たら宿題の終わった学生なんて暇人なんだろう。反論せずグッと堪えて提案を受け入れた。


「まず子供のセビエドとマスク姿のエーセブン。どっちから考察する?」


「ヒカルってやっぱ凄いよ!僕なんて振り返らずに同じような奴が来た時いかにスルーするかって事しか考えてなかった。」


「そうかな?まぁカガミに【怖い】があったらもはやカガミじゃないよね。


とりあえずカガミが感じた事をよ、僕の見聞きした事と照らし合わせて振り返ろう。紙かなんかに書く?」

「おっけ。まってて。」と言って座布団から立ち上がり部屋を出た。



僕はスマホ片手にA4サイズの紙をリビングのプリンタからパチってこようと考えて部屋を離れたんだけど、


ふとヒカルの【カガミが感じた事をよ】って言葉にデジャブを感じた。


実際のデジャブの意味とは違うかもだけど何だか最近誰かに同じようなこと言われた気がしたんだ。


 紙を数枚取ってリビングを出ようとした時、景色が一緒だったからか誰に言われたか思い出した。

「アーク。。。」



僕はスマホを取り出して【I-AMS】と書かれた対話型AIのアプリを立ち上げ、質問してみようと思ったんだ。

「カガミさん、こんにちは」


「あ、こんにちはアーク、今から友達のヒカルと話すんだけど、もしかしてこれって記録したり一緒に考えたりできるの??」


「もちろんです。その為の機能を持ってますので。ヒカルさんはカガミさんの信用のおける人物として登録しますか?」


「出来るの?!もちろんするよ!」


「ではカメラの範囲内でご本人を映してください。登録させていただきます。ただ、イントラネット上での他者の閲覧ができない様にこの端末にのみ登録いたしますので、他の端末では使えない機能だと思って下さい。」

「わ、わかった。」あんまりわかんないけど。


「カガミ、電話してたの??」ヒカルが待ってる部屋に戻った時、聞いてきたんだけど、事情を説明すると


「凄いな、それ。」とただただ関心してた。僕もだよこんなの。


とりあえずヒカルを認識させて、声認識なのか顔認識なのか知らないけどヒカルの前でも起動出来る状態になったアーク。会話の前に一言だけ、


「必要時、会話にジャミングが入ります。私の判断で記録に残らない事もあります。」


2人は「??」ってなった。


「ヒカルが話進めてよ。」と言って

わかったという言葉を皮切りに、中学生2人とAIとの三人の会議が始まった。


「まず、ハイドラという組織はアークは知ってる?」

「あまり知らないです。」そうゆう曖昧な表現も出来るんだ。


ヒカルはアークへの説明と自分達の内容理解の為に話始めた。


「ハイドラは僕やカガミ達、いわゆるイチゴサイダーを狙ってるアザレア教が名前を変えて出来た組織だ。きっとメインの目的は何かしらあるんだろうけど知ってる範囲ではそんな感じ。」


「了解しました。京介さんの言っていたアザレア教と同じ認識で良さそうです。」


「僕もそう思うよ。それでいい。」たまに話さなきゃね、ヒカルにはアークさんはやんねーぞ!


「そのハイドラのメンバー2人が昨日、ジル・アティウス所長を襲撃に来たんだけど、今回来た目的はそれだったよね?」ヒカルは僕にそう確認してきた。


「たしか【ゼロのケツふき】って言ってた気がしたけど、目的はそれだと思うよ。その途中に僕らが見つかったんだ。いや、途中で五月さんが追いかけてたから僕らが会った時は五月さんに傷を負わされて身を潜めてたって感じかなぁ。」

僕は記憶の範囲で答えた。


アークは僕らが話してるから聞かれるまで話さない設定なのか、下手なKYよりもよっぽど空気が読めて感心だ。そういえばさっきまでやってた【剣の伝説2】は仲間がマップに引っかかって移動できない事態が起きてたけどAIがポンコツだったのかなぁ。


「ハイドラのメンバーは2人来てたみたいだけど本部に伝えれなかったって言って1人は自爆。もう1人は心臓の壁を電磁弁に替えられてて、仲間に操作されて亡くなったみたいなんだ。」とヒカルがアークに説明


ここで気になったのか「亡くなったハイドラの2人のお名前はわかりますか?」とアーク。


「うん。わかるよ、本名かどうかは知らないけど、1人は僕らくらいの年齢で【セビエド】もう1人はアザレア教に昔いた嘴医くちばしいの格好をした【エーセブン】と呼ばれてた大人だった。」


「そうですか、私のデータにある人物でその亡くなった二人は該当しませんでした。」


とアークが言ったので僕は性能の高いAIが本当の人みたいに勘違いしてしまい、その言葉に対して普通にツッコんでしまった。


「いやいや、ハイドラの人物なんかアークは知らないでしょ!該当しないよそりゃ!謎の組織的なイメージだし。誰か知りあいの人でもいるの?」 ハハッとで笑いながらヒカルを見るとフムと言った感じで真剣に考察しててこう返事を返した。


「そうだね、知ってる人物はいてもアークはハイドラをよく知らないんだから、可能性としてはアザレア教時代からの古株だよね?」と。




僕らは雑談程度の話から知らず知らずに話のコアに向かっていた事に気付かなかった。




アークは怒った風の口調で

「はい。知り合いではありませんが、先ほどカガミさんの口から出た【ゼロ】と言う男がデータに残っています。

その人物が、あなたの父、天道 京介さんを。名をレイドラの【ゼロ】と名乗っていました。」と言ったんだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る