第49話 遭遇期⑭ 反撃の雷撃

僕は右手で自分のペットボトル。左手でネネちゃんのペットボトルを持ち、長くつながったリンクラインをおしりのポケットに詰め込んでタイミングを見計らった。



もう何回防いだだろう?何回喰らっただろう??

蹴られてはかわし、かわしては切られ、致命傷となる傷だけは避けて相手の動きを見る事に専念して必死で先を読む。


「もう万策尽きたか?爆弾はどうした?来いよ!!!かかってこい!!」セビエドの挑発に耐える。

 

何十回も僕の喉が刺されたり、竜二が感電するビジョンを見て目を反らしたくなった。その一つ一つを丁寧に反芻はんすうして得られるものもあったが、一生この繰り返しか?とも思えた。


セビエドの行動パターンは僕を拉致らちりたい様だった。竜二の時はもう出力5、たぶんMAXにして殺しにかかっていたんだ。


時間の感覚が無くなった。何回目か分からないくらいビジョンでめった刺しされた後、


突然ネネちゃんが

「カガミ君!!反対の手!!」と叫んできた!


ネネちゃんの話を聞いて、今まで引っかけようとしていた方の手とのメスに引っかけようと思った時、ついに避雷針が効いて竜二がタックルで突き飛ばすビジョンを見たんだ! 今だ!ココしかない!!


「竜二ぃ!!今だぁ!!!!!!」僕の合図によく我慢してくれてた!信じて待ってくれてありがとう竜二!


「うぉーーーーー!!」と竜二が鬼の形相で走り出した時、セビエドは予想通り両足でジャンプしながら右尻を連続で蹴って出力MAXにして竜二を消そうとしてきた!


僕は竜二が来るより前に左手のをセビエドに当てつけて「バーン!!!!」と嘘の爆発音を口で叫び、セビエドがビビって目を瞑ってしまった!


閉じられた目で、こっちへ来るなと言わんばかりに、右のメスを竜二に、左のメスを僕に突き出した時、チャンスが舞い込んだんだ!


この時だけ息が出来ず周りがスローモーションに感じた。僕はおしりのポケットから取り出して、慎重に慎重を重ねて軌道を読んだメス先にザクっとのようなリンクラインを刺す事が出来た!!

リングの真ん中を通ったかは分からないが電極の接点になった、間違いない!


そこへ突き出した右手のメスによって頬をピッと切られた竜二の止まる事ないタックルがセビエドの胸に刺さる!


後ろに飛ぶ二人を追いかけて走り出す。

セビエドは空中に浮き

「!クソがぁ!!!!!」と言い放電できる間合いに入った竜二に向かって最大出力の電撃を喰らわした!




つもりだったのだが、









ダサイドンが竜二を守った。

「!!」

放たれた電撃は渡り廊下の劣化して剥き出しになった鉄骨に吸い込まれて無効化された!


僕は地面に叩きつけられたセビエドのパーカーのフードを掴み、竜二がセビエドの足を力いっぱい引っ張った。ブチブチっと何かしらの抵抗はあったが、パーカーとセビエドを離断する事に成功した!!!


まさか着衣型の武器が取られるとは思っていなかったのか、着地時に息が出来なかったセビエドは咳き込みながら唯一持っていたメスを構えてたちあがり

「おまえら!!よくも!!返せよ!!!全員殺してやる!!!!」とブチ切れていた。



「勝ちが見えましたねぇ~竜二さん~。」

「煽るなバカガミ!!」

「着ちゃいなよ!YOU!!!」

「おい!ふざけるなって。魔本もってねーし! いや?・・・いいなそれ!」


「ハハハハハ!!極東のバカに言っておいてやるよ!俺は電気が見える。お前らがいくら頑張っても俺たちにしかそのは使えねーよ。一瞬で感電死だ!!」


そんな武器だったのか。うちの竜二さんにゃ関係ないけどね。むしろ閃き適正値10だ。


僕は念のため確認作業に入った。

「おまえ!Wi-Fi見えんのかよ!?」

「ふざけんな見える訳ねーだよ殺すぞ!まぁいいぜ勝手にくたばってくれるんだ、好きに死ね!」

はいはい下位互換ね。


竜二はチョット小さいけど一度電源をOFFにしたパーカーを着こなした。いいね!似合ってるじゃん!


そして両袖についたむき出しの電極を

袖から出して、鍋掴みの要領で服を利用して間接的に持ち、通電しない様に両手を広げてキープしたまま右足のかかとで右尻を蹴ると



「お!近づけたら電気流れそう!!こえー!ON/OFF スイッチが無いぞ!出力によって自爆するぜ!」とビックリしていた。

ネネちゃんが

「うそ!完全に距離だけで放電コントロールしてるの?!」と驚いていた。


「なんでだ?なんで!!なんでお前が普通に使えるんだよ!!イチゴサイダーの癖に!!」とセビエドは予想に反したことに対して動揺と焦りが最大限になっていた。


「竜二!こいつは僕で凌げる!!五月さんの援護できるか!?」


「おぅ!!!」と言って右尻を蹴り、【ライトニング】と言う大きなスタンガンを出力1の状態で起動し五月さんの方へ走って行くとエーセブンを挟み込むように陣形を作って身動きを取りづらくしていた。


ヒカルが「警察には連絡した!!警備員を呼んでくる!!」と言って病院に走り出した。


竜二は「ネネちゃんは逃げるんだ!!」と言ったが

ネネちゃんは「私は逃げない!!!」と返された。僕たちの勝ちを信じてくれてる。

僕と竜二は不敵な笑みでお互い見合うとやる事は決まったな!と言った顔をしてまた戦いに戻った。

「勝つんだ!!」 「OK!」

Tシャツ姿のセビエドは単純に速度が増していたが、メスはすべて防ぎきれるようになっていた。持久力も運もある。あとはジャストガードでも消耗していくペットボトル。ゲームと一緒だ、防具の耐久値が持つかどうかだった。


集中して回避に専念しているとヒカルが戻って来た!


「カガミ!警備員たちをたくさん呼んできた!もうすぐ来る!!」ヒカルがそう言った!


「あと少し持ちこたえたら、助かる!!」ネネちゃんが僕らを応援してくれてる!


「エーセブン!おい!!エーセブン!助けろ!!!」セビエドが僕に切りかかりながら横を向くと

竜二に牽制され、五月さんに返り討ちにされたエーセブンの姿があって。


少し離れた戦場ではとうとう決着がついた。エーセブンの剣はプラスチックに戻っていてボロボロになった五月さんの曲がった警棒が、膝を付いたクチバシ面の先端に突き付けられている。


それを見たネネちゃんは「金属の硬化時間が切れたんだよ!」と言った。


セビエドが

「エーセブン!!お前のせいで捕まるぞ!だからエーシックスが良かったんだ!お前は自爆しとけ!」と言った。僕らはどこまでも冷酷なハイドラに胸糞悪くなったが警戒の為、五月さんも含め距離を取った。


「逃げるか。行くぞ!」とセビエドが言うと、エーセブンは呟いた


「お前はライトニングを奪われた。ハイエンドドライバー失格だ。一緒に死ぬぞ。」と言いくちばしの先端を右に何回かと左に何回かずつ、ダイアルロックみたいに回したように見えた。


「はぁ??待て待て!おぃ!!待てって!まってくれよ!!たのむよ!知らなかったんだ!ホントに植えられてたなんて!!まってくださうぁあぁああああああああああああ!!!!!!!!!」。


セビエドは急におかしくなって顔を青くしていった。呼吸が荒い。たぶんこのまま。。。


僕は今ののせいでセビエドがおかしくなったと思い

「やめろ!!やめてやれよ!!!!!!止めるんだ!!」とエーセブンに怒鳴ったが、聞いちゃいなかった。


エーセブンは「ゼロにジルが隠してる事を伝えられなかったのが残念だ。なぜここが震源地になっていないのか詳しく調べるべきだった。悔しいが、お前たちの」

またダイアルを回し始めた。

「勝ちだ。」

バーーン!!と嫌な爆発音が鳴り響き、僕たちは目を背けた。すぐ気になって見ると、既に頭が無い遺体が横たわっていた。


「なんなんだ?」僕は膝を付いた。腕が急にだるくなる。呼吸が大きく早くなって。怒りが、イラつきが恨みが込み上げてくる。

手に持ってた空のペットボトルですら鉄アレイの様に重く感じる倦怠感、ポロンと落とした時、こんなに軽かったんだ、と思えるようなカラカラと言う音を立てていた。


「なんで!あんなに簡単に死ねるんだよ!」大声でどなってしまう。


助かった安心感なんてものはもうなかった。ただ命を無駄にした怒りだけが僕の中で黒くうずまいて大きくなってきた。


でも急に怖くなってきた。違うな、竜二が「悪い。リンクさせてくれ」と言ってきた。みんなのリンクだ。


気付けば4人で固まって僕を取り囲んだ形で小さくなっていた。ネネちゃんが怒りを貰ってくれて、初めて見る怒った顔の唇から一筋の血が流れて息が荒くなっていた。


僕の怒りで傷つけてしまったんだ。


色んな感情が渦巻く中、その場を動きたくても足が震えて動けない僕らは、アティウスの警備員みたいな人達に囲まれて保護されたあと、病院で警察と合流した。



病院方向に帰る前にセビエドの方を見てしまった。警備員達は心臓マッサージみたいな事と、脈を測る事を繰り返していた。しかし最後にもう片方に残念な顔で首を横に振って、持ってきたAEDは動くことなくしまわれた。


僕はそれを見て思った。確かに嫌な奴だったし友達を傷つけた。けど、さっきまで元気に動いて僕と話してたんだ。もしかしたら僕の行動次第で死なない方法もあったかもしれない。

あんな死に方は無い。僕なら絶対納得できない!

 せめて、せめてセビエドが次に生まれ変わった時こそ、幸せになれるようにと思いながら、誰にも聞こえない様な声で「セビエド。ゴメン。」と涙を零して呟いたんだ。

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