第43話 遭遇期⑧ 奥義

僕の宿題を図書館にしに来た時、ふと思い出した。

「そうだ肝試きもだめししてないじゃん。」

「いこいこー!」

僕の話にネネちゃんは元気よく答えてくれた。


「えーいくの??」ヒカルはこわいんだへへ!チキンめ!

「で、どこ行くよ?」 竜二はネネちゃんとイチャイチャできる所をお望みなんだろうけど、

「そりゃ、この前竜二の言ってた。」

「げっ、市民病院跡か?」

「そうそう!」

と言う事でヒカルと竜二が怖いので肝試しに行こう!と言う事になったのだが、

僕の宿題の進行状況をみんなに話すと、先にそれをやっつけてからにしよう!ってなり、

今日は佐井寺家で集合して、朝から僕だけ勉強をしていた。


「ねぇねぇカガミ君。早く仕上げていこーよー!」

待ってねネネ様これでも頑張ってる方なんだけど。

ヒカルと竜二は囲碁をしててネネちゃんはスマホ片手に僕の家庭教師をしてくれてた。


「ネネちゃんってテストの順位1位なの?あ、学校じゃ無くって。」と僕はきっとそうだろうな、と勝手に予想してだけど、ネネちゃんの答えは違った。


「ずっと2位だったよ、今は1位だけど。」


「え?!まじ?まだ上がいたの??ちょっとまって、テストをってその1位じゃないの??」

僕は敢えて亡くなったという表現はせず、前向きに【抜けた】と言う表現を心掛けた。冷静に考えて以前怯えてしまった時の様に推察だけでみんなが恐怖する必要はない。

「そうかもしれない、ネネもそう思う。」


「で、ネネちゃんちなみに今、なに探してるの?スマホで武器の画像がチラチラ見えるんだけど。」


「あ、えとね、ハイドラ対策で護身用に何か強い武器欲しいなぁって思って。いいのある??」

そーいや言ってたね武器欲しいって。


「いや、現状日本ではダメでしょ?相手次第かもだけど僕達みたいな中坊は今ある事で何とか考えるべきだよ、大人に頼ったりさぁ。ゲームじゃないんだし。」と言うと


「カガミがゲームと現実の境目を語ると思ってなかったよなぁ」って囲碁連中がボソッと言ってきた。

るせーー!ホントは僕だって伝説の武器とか欲しいやい!


「今ある事かぁ~。例えば?」とネネちゃん

「だからネネちゃんなら超視覚を生かしたり、僕なら先読みを鍛えたり、ヒカルなら音関連で出来る事考えて・・・あ、竜二、あいつなんもないな(笑)。」


竜二は「Wi-FiとかBluetoothとか見えまーす!」って言ってきてみんなで笑った。


そんな話をしていたらポツポツ雨が降ってきて

チキンヒカルが「今日は延期だな肝試し。」って言って回避ルートを模索しだしたがやっぱり天気予報でも雨が今日いっぱい続くみたいで、4人で【出来る事】の検証と武器開発をしようって話でまとまった。


僕の宿題がやっと終わると春日さんがそれを見計らったかのように かき氷を持ってきてくれてみんなで「ありがとうございまーす!と言っておいしくいただきました。


僕の【味覚無し】の為に以前使ってた足水で涼みながら4人でリンクして食べてたら

ネネちゃんが

「お兄ちゃんかき氷ってこんな色だったんだね。」

「ああ僕も驚いている。」

「色が見えると何だか私達今まで全然違うにいたんだなって痛感しちゃわない?」

「まぁワカランでもないね。」

って話してて


僕は反対の世界の人が天地を復活させるゲームをふと思い出して

「佐井寺兄妹なら失われたムー大陸を復活させられるかもしれない。」と言ってしまった。


竜二は「あ、無視して大丈夫だから。」と佐井寺兄妹に言ってたよ。

それから

「肝試しもいいけど、2人が見たい色のある景色を探しに行くのも良いよな。」って竜二が言った。


えぇ~~~!それ台本あったら僕が言いたかったんですけど!


佐井寺兄妹はにこやかに笑って「嬉しいよ」「ありがとね竜二君」と返して竜二は照れていた。


ここで竜二の話に早々にピリオドを打ちたがるのがもちろん僕だ。

「夏だからさー足水みたいに触れなくてもリンクできる方法があったらいいのになぁ~。」


商品開発はいつだってそんなエンドユーザーの声から生まれるってサクセスストーリーの番組で言ってたけど、そういう僕のボヤキに脳内コンピュータを即座に動かすのはやっぱり賢いネネちゃんで、


「あ、カガミ君、お母さんのムギ薬局で配線用の電線余ってたよね?それって見せてもらってもいい??」

「うん、いいけど突然どうしたの??」

「良い武器思いついたかも?!」そう言ってネネちゃんが不敵な笑みを浮かべた時、ヒカルはちょうど竜二に囲碁で投了を告げて

「ゲームはテストの出来で勝敗が決まる訳じゃないんだよな~。」って悔しがり

竜二は

「その気持ちカガミで痛いほど思い知ったよ俺も。カガミとはベクトルが違う。」と言っていた。




昼にご飯があるから一旦家に帰って、

母さんにメールしたら

「OK!お店に用意しておくから電線取りにおいでー」との返信だった。

冷蔵庫のお弁当をチンして食べていると竜二からメールが来た。


竜「電線貰えそう??」

カ「もらえる!ムギ薬局寄ってから行こう!」

竜「オッケー!」

カ「じゃまた2時にムギ集合で。」

竜「はいよー」


お昼を済ました僕は、お弁当箱を洗って、出かける準備をすまして自転車で数分。ムギ薬局に到着。

母さんにメールをすると程なくして紙袋に20m程あるらしい電線を持ってきて、周囲を伺い小声になって


「出来るだけ、ムギ薬局には被害が無い様な爆弾を作ってね。大タルとかカクサンデメキンとかいらない??」


って言ってきたから

「G級の爆弾作る気無いから。ありがとーまた後でねー。」

と言って別れた。久しぶりに母さんの職場に来たけど、噂通り

隣には新しい薬局、ドコカラファイナルが堂々オープンしてて確かにムギ薬局は見劣りしていた。風船を配って子供連れのご新規様を集客するあたり、ここいらはベッドタウンだからなかなか地域性を考えてるなぁと感心しちゃった。 負けるなムギ薬局!がんばれみかん!ハゲるな店長!


傘をさして竜二を待ち、合流して佐井寺家に向かう。


「ネネちゃんはどんな武器を作るんだろうな?」

と竜二が聞いてきて、

「中学生だからなぁ。あんまり殺傷能力の無いやつがいいよねー。」

「殺傷能力はあんまりじゃなくて、絶対ダメだろ!カガミ自分が怖くないのは良いんだけど、周りが怖がってるのは気づいてくれよ。」

「はいはーい。」竜二はちゃんとしてるよ。偉い!



「でも殺傷能力のない武器ってなんだ?竜二は思いつく?」

「最近やったゲームで言うとバットはあるしなぁ。あ、あれは?タクティクスの【おうぎ】。

「なるほど、確かにおうぎって扇子せんすの事だよね?どうやって武器にするのかいまいち想像つかない。」

「だろ?」

「でも【奥義おうぎ】は欲しいね!」

「でたっ!中二!!よっ!1年先取りヤロー!!」

「先輩とお呼び!!」

「今はカガミをそう呼んでやってもいいが、3年になってまだ中二病だったら逆に先輩って呼んでもらうから。」

「はい。 すいません。同期でおねげーします。」

とかなんとか言ってるうちに、佐井寺家に到着した。

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