第41話 遭遇期⑥ いつか見た景色

「どうだい?彼が、天道京介が独自に調べて日本語訳した、アザレア教の裏聖典だよ。」と言った。


佐井寺パパの話終わって頭の整理がついてない4人だったが、ヒカルがはじめに口を開いた。


「家にあると思ってたけど、ここにあったんだね。」


「そうだよ。家はフェイクだ。」


「アザレア教やハイドラが狙ってきたことは今までにあるんですか??」と、竜二が聞くと、


「今までには無いなぁ、他の本は家に置いてるんだけど。たしかに貴重な本もある。一度だけ物取りが入ったけどただのコレクターだったよ。」

あ、春日さんにやられた奴ね。



「京介は爆発事件の前に、


「そろそろこの本の研究も終わりだよ。長い間ありがとう、と言ってもだいぶ前から読解は済んでいたんだけど、ついつい気分転換に佐井寺さんちにお邪魔しちゃってたな。」って屈託のない笑顔で言ってくれて、話し相手になってた僕は、もう来ないのか?と聞くと、」


「ああ・・・。来れない。。。。国の仕事だ。言えないし探さないでくれよ!」


「私はもうお別れか、と思って、いつでも遠慮なく来てくれよ。って言ったら、なんて言ったと思う?」


「って言われて笑われたんだ。」


「あ、そうそうママに聞いたけど2人の誕生日にやってきた背広のスタッフって京介の部下の垂水たるみさんだったみたいだよ。京介と一緒にたまに来てた若い部下だった。」


佐井寺パパは思い出を思い返しながら【本】の分厚い裏表紙をパタっと閉じた。


「えっ?」っとネネちゃんが突然声を出して、

「どうしたんだいネネ?」とパパが聞くと

「ううん。何でもない。」と言って


ネネちゃんの見つめた裏表紙。そこにはツツジに似たマークの白い花の模様が刺繍されてて部屋の明かりを浴びてキレイに光って見えた。


「本に書いてあるハイドラの持っている薬は当時、流行した感染症の原因菌、もしくはウィルスの可能性が高い。現代では特効薬が無いかも知れないから、なおの事T-SADを血眼で探して狙ってくるとジルは予想してる。」


「本が流れ着いた先だった佐井寺家にアティウス一族は返還を申し出て来ないの?」とヒカルが聞くと

佐井寺パパは


「アティウスでそれを知っているのはジルだけだよ。むしろ世に出さないように、その時まで【本】をかくまってあげて欲しいと京介とジルから言われた。」と言葉を返した。



「表紙の言葉に


賢人の 嘆き涙はその一雫で万の民を毒し

    喜び涙はその一雫で万の民を癒す


ってあったよね?

具体的に何かはわからないけど京介の解釈では極端な【感情】の起伏によって良い時には薬が

悪い時には毒が生まれるんじゃ無いかと言う推測らしい。」


「君たちは予想以上に賢くて」 あ、佐井寺パパはそのに僕を入れてくれてたのかな?


「大人が口出ししなくても上手くやっていけるかも知れないけど何かあったら、いつでも相談しなさい。体育の先生の時みたいにお節介焼くかもしれないけどね。」


っと言って本をしまい鍵をかけて、

「じゃあおやすみー♪」っと出て行ってから、みんなで

「えーーーー!!!!」ってなった。


「竜二の怒られた時、【毒を出させない】為に、ストレスを与えない様に体育教師まで消したんだ。」って気づいてみんなゾクッってなってて

「なぁヒカル。お前の父さんって何やってる人なの?」って竜二が聞いたら

「ただの財閥のCEOだよ。」っ言われた。 


「竜二、ただの財閥っているのか?」

「いんや、いねーよ。」と言って憂さ晴らしにヒカルを二人してこちょばして

「ゴメンナサイでケロ!」と言わせてやったよ。


そんなこんなで僕らは書庫を後にして自分たちの部屋で就寝準備をしてから、またトランプをする約束をしたんだけど、ネネちゃんは書庫を出るまでずっと隠し場所を見つめてた。


またヒカルの部屋で、集まって

「アザレア教ってさ、もともと悪の組織かと思ってたよ。」って竜二が呟いた。

「先入観って怖いね。」ネネちゃんも追従して

ヒカルは

「何だか色々分かったけど、どうすればいいんだ?って感じだよね。いつか狙われるかも知れないって恐怖も、実際今まで何もないから実感と言うかそういうのそこまで沸かないし。」


僕は

「いっその事、敵が来る前に情報の網羅と体力の向上を図るべきだよ!格闘技とか習ってみたいし!RPGはボスを難なく倒せるまでレベ上げするタイプだもん。」と言って、竜二になぁ?って聞くと


「う~ん俺もそっち派だわ。ゲームじゃないけど、機会があればそういうのもアリかもしれないな、ネネちゃんとヒカルはこれから何に時間をきたい?」 ネネちゃんは完全にゲームの話で考えちゃって


「ネネは強い武器や便が欲しい!」

「アハハ!僕の中二病、感染うつったね!」と言ったら

「げっ!」って顔だけでもわかる返事と嫌そうな言い方で返事をされた。


「僕も剣道とかしたいんだけど。」とヒカルが言った時僕はとっさに

「負けるな!!」と言ってしまった。


魔剣道マケンドーの絵ってカガミの好みだろ?」と竜二に突っ込まれ

嘘を付いてもバレるのでここは正直に

「絵と言うか、きれいな足が好きです。」と言って佐井寺兄妹に

「あとで見せて」ってなりました。今日が僕のフェチ公開記念日だね。




まだ時間もあったから、ネネちゃんがまたババ抜きをしようかって言ってきたんだけど僕は

「ナポレオンがしたいな」って言ったんだ。もちろん僕と竜二はルールを知ってて5人プレイだって気付いた竜二が

「あと一人誰にする?」と聞いてきた。

ネネちゃんが

「5人でやるの??」 「そうそう!」

ヒカルが

「母さんか春日さんはどう?」と言ってきた。

ヒカルの女好きめ!大賛成だよ!!


「じゃあどっちか呼んでくる~。」っと言ってどたどた階段を下りて、すぐ確保してきたのは

「私お邪魔していいのかしら??」と言ってネネちゃんに嬉しそうに付いてきた佐井寺ママだった。


ヒカルが「いまからトランプでナポレオン?するんだって!」って言うと

「あら~久しぶり過ぎて覚えてるかしら??」って首を傾げたけど、僕と竜二はやった!と思った。

なんせルールが慣れるまで難しい、ちょっとでも経験者がいた方がスムーズなんだよね。



佐井寺兄弟には簡単にルール説明をして練習戦が始まった。適当に竜二と僕でチュートリアルを入れ練習戦が終わった時にはみんなルールを把握できているようだった。やっぱ元T-SAD患者。賢いね。

ヒカルは「どこで覚えたんだよ。こんな面白い遊びトランプであるなんて知らなかったよ!」と言ってくれて僕は

「遊び大全さ。」と答えると「本か!?本でこのルールってわかるのか??カガミ凄いな!」と言われ、

竜二は

「俺もだけど、ゲームだよ。」って言って僕の天才説をぶち壊してきたので次の試合でボコりました(トランプ内で)。


その後、何戦もやって白熱してきた時に佐井寺ママがあくびをしたんで僕は

「美容と健康の為、今日はここまでとします!」と言うと


「楽しかったわ!天道君誘ってくれてありがとう!」

「俺もねみ~。」

「そうだね。」

「ネネはまだまだやれるよぉー!!」と口々に言って、ネネちゃんの言葉に反応した

僕と竜二は「「マダマダッ!マダ あたしたち たたかえる!!」」って言ったけど。

結局最後にヒカルが「寝よーぜ。おやすみ~」と挨拶してきてそれを皮切りにみんなおやすみを復唱してお開きとなった。


その夜。

僕はなかなか寝つけなかった。生きていた父さんがどんな思いであのメモを書いたんだろう?

どんな顔で泣いてくれる友達と別れた日、僕に接してきたんだろう?

どんな大きな悩みを抱えてたんだろう?

どんな仮説をT-SADの存在に立てたのだろう?

どんな事をこの先予測してたんだろう?

どんな目で僕を見てたんだろう?


全く怖くない。怖くないけど、これならいっそ怖い感情が、震える事の出来る感情があったら父さんの気持ちも少しはわかったのかもなぁって思ってしまった。

考えても分からないし、今やビデオレターしか直接本人の話は聞けないから、無性に会いたくなって。


いつの間にか寝てたんだけど、アカとミドリの色に挟まれてもがき苦しむ夢を見てたみたいだ。

朝は最悪な気分だった。

唯一僕を救ったのは、窓から見えた、いつか見た様な気がする海の真っ青まっさおと雲の真っ白まっしろな景色だったんだ。

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