第39話 遭遇期④ 裏聖典

河原で遊ぶこと1時間。川の水は海より冷たい感じがして体が冷えてきた。ネネちゃんは川の虫が怖かったみたいだけど僕とリンクして怖さも減り、結構楽しんでいたんだけどだんだん飽きてきて日の当たるあったかい岩の上で休むことに。


あんまりソロでは話さないネネちゃんと少し話をした。

「お父さんは、お母さんの前でなんで過去の話をしたがらないんだろう?色々聞きたいのに母さんたちが帰ってきたらお預けだったじゃない?」

「心配させたくないのかなぁ?新薬の件で結構神経使ってるみたいだし。家長が家の外の事を一任されてるって感じで僕は男らしさを感じるよ。」

「そうなのかなぁー。」


「ところでネネちゃん、T-SAD患者は実際何人いると思う?」

僕は一番賢いネネちゃんと情報の絞り込みにかかった。


「お父さんはT-SAD患者で集められたのは4家族でうちが双子だから5名って思ってるよね。何かあった時協力体制にあって欲しいって言ってたけど連絡先は特に交換していないし。カガミ君は入って無かったのかなぁ?」


「そこだよね、考えたパターンとしては僕の場合

①身内の為、父さんは出席せず母さんだけが集まりに出た。

②そもそも呼ばれてない。

のどっちかかと思うんだけど、どう思う??」


ネネちゃんはメガネを軽く触って「そうね~。」と言い

「①だと竜二君の家ほど近くはないけど中学で同じ校区だから声かけなかったのなんでだろ?って思ったんだよね。やっぱり

②かな?【劇症型】は寿命を考えて親の恨み辛みが出ないように呼ばなかった。・・・とか。」

 

「つまり劇症型の僕を含めて7人いた。そういう事だよね?」

「・・・うん。」ネネちゃんはおそらく僕と一緒で不審に思った事があったんだろう。


「だったらジルさんが佐井寺パパに。」


「そうね。2人の一般テスターがいるってのがきっと嘘よ。父さんを安心させる為に言ったのかは分からないけどジルさんはまだ信用してはいけない。 ジルさんを信用している父さんにもカガミ君がT-SADだったって事はまだ言わなくていいと思うよ。」

「わかった。整理できたよありがとねネネちゃん。」

ネネちゃんは「ううん。」っていってニコッと笑ってくれた。

「みんなにも言っとくね。」「そうだね。」


どのみち佐井寺パパの話はあと半分あるっていってたし家に帰ったら【裏聖典】の内容も聞きたい。


竜二はヒカルと魚探しに熱中してて、近づくと竜二が網で魚を捕まえまくってた。

僕は「竜二おまえまでって、生態系壊すつもりか?」と聞くと

ヒカルが「主?ココの魚10匹程度で生態系は壊れないでしょ。」って真面目に言ってきたので、

僕は、(語尾に付ける言葉あるでしょ?)って気持ちを込めて返事をせず、ロボットの様に口を横にして直立不動で返事を待った。


ヒカルは僕の行動に訳が分からず竜二に

「カガミがフリーズしたんだけど。」と言って助け舟を求めたが

さすがは竜二。僕の事を良くわかってて、

「語尾だよ語尾!あいつ言わなきゃずっとあのスタンス取るぜ!すぐ飽きるから、少しの間付き合ってやれよ!」って言ってくれて、ヒカルも嫌々&恥ずかしがりながら


「そんなんで生態系は壊れない  。」と言って3人に「アハハハハハ!!」と指をされて笑われ、悔しがる一連の姿をネネ様にスマホ動画として保存されてしまった。

つらい夜にでも見よう。


そんなこんなで騒いだり、魚を石で閉じ込めて生簀いけすを作ったりしているとBBQコンロを転がしてくる大人3人が

「お待たせ~」と言いながら寄ってきて、手際よくタープテントを設営してから火おこしを始めていた。

僕も手伝います!って言って春日さんに寄っていくと、「ありがとうございます。」

と返事されウチワを渡されて火おこしの手伝いが始まった。


2人で火おこしをしてると春日さんは

「旦那様からは天道さまのご覧になられていた【アザレア教の裏聖典】の話は聞かれましたか?」

と言われ


「まだです。家に帰ってからですかねぇ~。」と返すと春日さんは

「そうですか。洋書ですしまだ中学生には難しい内容ですかねぇ。」といってニコッと笑い炭を追加してきた。


いい感じの炭火になって来た時、佐井寺パパが

「え~!なにこれ?すごい数だね~網で捕まえたの?」って言って魚の生簀いけすを見て佐井寺ママを呼んで盛り上がっていた。何匹が塩焼きで食べれれそうなサイズがいて小さい魚は逃して、即席で春日さんが串を刺してくれた分がお昼ごはんの一部となったよ。


食べながら

ヒカルが両親に「ほぼ竜二が捕まえたんだケロ」って言って、僕は飲みかけのペットボトルの水を吹いてしまった。順応早いというか、恥が無いというか、忠実と言うか、ゲザリスト候補生だなあいつは。


ちなみに僕はプロのゲザリストになるべく日々研鑽を積んでいるが、母さんは僕をプロのサブスクリプタ―にしたがってる。ホント何言ってんだろうね母さん。


佐井寺家の、BBQ肉はそれはもう美味しかった。魚も楽しめたがその分、竜二はうまみが半減したかもしれない。 文句を言わずにリンクしてくれる竜二はやっぱり良いやつだ。


昼ご飯を贅沢なBBQで済まして、また川遊びを再開した僕達4人は川エビやサワガニと言った町では見られない生き物をどんどん捕まえて、いつしか水族館の展示コーナーのような賑わいを持つ生簀いけすが出来上がった。その時、竜二と一緒に気付いたんだ。


「サーモグラフィですげー簡単に取れる。」「ほんとそれ。」保護色とか関係なしに見えるこの能力はヤバかった。


結局、。BBQの火が鎮火して大人たちの帰る時間に合わせて僕達も別荘に戻った。




その夜、佐井寺パパが僕達を書庫に集合させて、密会が始まろうとしていた。


僕たちが書庫に来ると佐井寺パパはおもむろに本棚をスライドさせ、そこに出てきたのは鍵付きの小さなドアだった。そしてそこを開けると出てきたのは、佐井寺家にあると思っていた、



【アザレア教の裏聖典】だったんだ。

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