第32話 接触期⑧ 道での戦い

「父さんはアルビノ研究者って聞いてたけどそんなに凄かったんですね。」

僕はあらかた予想していた話だったので普通に返事したが、みんなは

「カガミの父さんが天才??」って言ってる。僕も信じられないけどさぁ。とりあえず、とーちゃんに謝れ!!


「京介は佐井寺家の本が自分の研究対象だと理解し翻訳と解釈に没頭した。まぁ、国の仕事だからか、5時までには帰ってたけどね。」  いや、それ僕と遊ぶ為です!!子煩悩だったんだよね。


「時を同じくして、この街にアティウスメディカルセンターが出来る計画が上がった。

少子化対策で数年前から日本に派遣依頼されていた小児医療に精通したカナダ人医師 ジル・アティウス、今の病院のセンター長だよ。知ってる? ちなみに本部のカナダにはアティウス一族が何人もいて小児医療の全ての科を網羅している最強集団らしい。」


「このジル・アティウスが出資してこの市に病院を建てようと言い出した。おそらく京介の希望もあったんじゃないかな?」


「え?ホントにそれだけの理由で?うちって病院設立に貢献してるじゃん!」とヒカル

ネネちゃんは「ほえ~」とビックリしてる。

2人の父さんはホントホント!って言って話を続けた


「ちょうど市民病院が移転予定だったんでその周辺住民が医療過疎を気にして、小さくてもいいから総合病院を欲しがってた時期だと思うよ、国の負担も若干あってアティウスメディカルセンターは急ピッチで市民病院の建物の横に作られて、渡り廊下を付けて竣工となった。」


「前から思ってたんですけどあの長い廊下っているんですか?」と竜二


「そうだね。普通は耐久性が落ちて移転になったんだったら取り壊しだと思うよね。壊すなら廊下で繋げる必要性も当然ない。」


「でも、耐久性は問題なかったんだ。耐震強度は国の新基準を余裕でクリアしていた。バブル期に作った建物は良い資材を使っていたのか、意外に作りはしっかりしてることが多いよ。」


「移転した市民病院はどうなったかって言うと、同じ市にある国立病院が移転すると同時に市民病院も移転して2病院を併設してスタッフやサプライの確保をクリア出来た。あと建設費が半分ずつだとお互いお財布も痛くないから予算の折半で【市】と【国】が合意したんだろうね。」たぶんって顔をしてを目を上に向ける。


「まだ使える部分の旧市民病院は遺伝子研究所として京介とその部下の垂水たるみ君が中心になって使われていく。爆発事件があるまではね。」


僕はこの流れで聞けたら、と思い。

「父さんがどうして死んだか知ってるんですか?」僕はド直球を意識を持ってフルにぶつけた。まぁ本気で知りたきゃ母さんからでも聞けるけど、あんまり悲しませたくないんだよね。



と思っていたら、佐井寺さんが【涙目になるビジョンが見えた】


「・・・京介が・・・京介がどんな理由で亡くなったかは。最近、春日さんに ほんとに亡くなったと言う事を聞いてやっと実感したくらいだよ。聞いた時に線香の一つでも持っていくべきだった。受け入れられなくってね。。。遅くなったけどお悔やみ申し上げるよ。」と言って悔しそうな顔をして頭を下げてきたので僕は


「やめてください。大丈夫ですよ!そうやって死んだかどうか曖昧にしてるのも父さんのイタズラの一環なんですから!」と泣かすわけにはいかないなと考えて、笑って冗談で返したが、それも浅はかだった。


ヒカルの父さんは一滴の涙を落として顔をあげ目を拭いた。


しまった。


この人にとって父さんは。僕はギョッとして大人が泣いてるシーンを茶化した事を反省したけど、ヒカルの父さんはすぐその後笑って


「京介。良いお子さんを持ったな。」って言って左手で鼻をすすりながら言ったんだ。

シンプルな言葉だった。それだけにまっすぐ僕に響いた。


その瞬間、心臓から目に向かって津波が来たように僕も急に涙目になった。嬉しかったんだ。

褒められたのは父さんなのに、

不思議なこの感覚はきっと母さんが言ってた通り、

んだ。





竜二達が見守る中、一旦話が中断したけど、程なくしてまた佐井寺パパから話が再開しだした。


「僕の知ってる京介は、物事を体系的に表すことを得意としていた。彼の発想が、その考え出される理論が、証明されるよりも早く、彼の中で納得されると、また新たな難題に挑む。

まるで理論証明なんて後に続く誰かがやればいいじゃん。って感じだったよ。」


「そこはカガミのゲーム脳に近い気がするな。」と竜二。ソウダヨ。パパモゲーマーダッタンダモン。


きっと佐井寺兄妹のステータスとか勝手に考えて数字で表したのも父さんじゃないか?説。


佐井寺パパが続ける「京介はある時を境に、僕に情報をめっきりくれなくなった。まぁ、元々うちの双子以外の情報はほとんどくれなかったけど。君たちが3歳くらいの頃かなぁ。

でも理由は聞けたから納得したよ。 T-SAD患者の情報とヒカルやネネのような特殊なことが出来る実験データを、と。言っていた。だから情報リークの出所を考え出したんだ。」



「もちろん実名は伏せているし日本って事も隠してアティウス医療財団の本部があるカナダに送っているからは子供たちが狙われることはない。」


「って京介が私に言った時、何の事かと思ったけど、最近、米軍にヒカル由来の薬剤が売られる様になって、これはもしかすると危険かもしれないと感じたんだ。」


「その後 ジル・アティウスセンター長に電話でその事を相談すると、ネネの危険性を聞くことが出来た。アティウスとアザレア教との因縁がハイドラとなって現代も続いている。とも言われたからネネに注意を促したんだが、、、

まさかそれがハイドラに逆手に取られるとは思いもよらなかったよ。

危険な目に晒してすまなかった。」佐井寺パパは丁寧に子供たちに頭を下げた。



「ネネからもホルモン由来の薬剤が得られるかもしれないが、あえて今ここで新薬が発表されると世界に散らばるアティウスメディカルセンターのうちT-SAD患者がいるのがここ日本ですよって暴露しているようなものだから、ネネからの新薬抽出研究は中止する。ヒカルの薬も時間をかけてゆっくりと市販に進めていく様に心がけてもらっている。」


予想以上にハイドラがT-SAD患者を探してるんだな。竜二も僕もやな緊張感が支配してなっていた。


?ん?怖い? 竜二はどさくさに紛れて僕の左足の一部を軽く踏んでリンクしていたんだ!


僕がこのまま許すと思ったか!?僕は反対の右足のかかとで竜二の足を踏んで鉄槌を喰らわせようとしたが、さっと避けた竜二の足があった場所を勢いよく踏んで自分で自分の足を踏みつけ、一人で「ぎゃー!!」と言い、のたうち回ってしまった。


「何してんのカガミ」とヒカルが言って

「自分にかかと落としの練習だよ。ボーナスステージで素手素足で車を壊す意味って何だったんだろうね?僕はあれを見てストリートで2度とファイトってはいけないって言う道徳を学んだんだ。」って言ったら竜二が

「ゲームが反面教師かよ!カガミにはもっとまともな教師な!」って笑ってきやがった。格ゲー下手なくせに!覚えてろよ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る