第31話 接触期⑦ T-SAD

荷物置いたら下で集合しよう!」ヒカルがそう言うとみんなは春日さんの指定した2階の部屋に散って行った。僕は荷物を置いて一人で1部屋だった事にビビりつつ、内装をパシャパシャスマホで写真撮って母さんに【無事付きましたよメール】したあと窓から外を眺めた。


すると眼下にきれいな海が広がってて「うわぁ~~。」と感嘆しつつまた写真を撮っていた。入り江がすぐ近くに見えて、歩いて数分の場所に小さな砂浜が見える。


「カガミ遅いよ!」とヒカル

「ごめんごめん!テロに襲撃されたときの脱出ルートと、お腹のテロが起きた時のトイレの場所確認マッピングに時間がかかってしまったよ。」と言い訳をしてみんなに謝った。


一階ではみんな集まって春日さんの用意してくれたお茶を飲んでいて、これからヒカル達の母さんとメイドの春日さんがアイスクリームを買いに行きたいって話をしてたので僕も空気を読んで

「お手伝いします!」って言ったらヒカルのお父さんに、

「母さんたちに任せよう!」って言われて見つめられた。


僕は、ヒカルの父さんが【】と言う意味で発言したと解釈して

「そうですね!友達でハミるのは良くないですね!」と返した。(アイスのパシリ止めろよ!)君たちに言ってんだぞ そこの3人!!



ヒカルの父さんは到着後自室で着替えたのか涼しげでカジュアルな浴衣に着替えててカッコよさが増していた。


いつもの服装は知らないけど、正装に正された姿のヒカル達の父さんの大事な話が今から始まる、という緊張感が僕達4人の周りに漂っているようだった。


「さっそくで悪いんだけど今からする話は中学生の君たちには少し難しいかもしれない。」僕に気を使った言葉だ。ヒカルから前評判を聞いているかも知れない。カガミはバカだって。覚えてろよヒカル!!


「まず今からいう話は、先日の図書館にあったハイドラの罠、君たちでいう所の【撒き餌】でも気付いた通り、他人に話すと危険な場合があるから、話す、もしくは相談する人を慎重に選ぶこと。

また、私がと言うより佐井寺一族が所有している【アザレア教の裏聖典】の話だけは口が裂けても他人に言わない事を約束してくれ。」


きたっ!とうとう父さんが調べていた文献の確定情報に辿り着いた。僕はゴクッと唾をのんだのが他の人に聞かれてないか心配になるくらいだった。


「あと原君。」

「あっ、はい!」竜二は結構ビビってる。 あ、そーかぁ未来のお父さんになるかもしれないしなぁ。なんてね。ネネちゃんとの関係に釘でも刺されるんじゃねーか!?どうぞお父さんこいつは痛み感じ無いんで五寸釘でハートをブッ刺して下せぇ!!



「先日は森竹堂の水ようかんご馳走様でした。おいしかったよ!あそこの好きなんだよね~親御さんにもよろしくお伝え願えるかな?」

そっちかい!!


「いえ!こうしゅくです!」ハハハ噛んだな!バカめ!な。緊張で口が拘縮こうしゅくしたんじゃねーか?


ヒカルもネネちゃんも、いやいや父さんそんなん聞きたいんじゃないよって顔してる。コミカルな良い家族だね。


「本来ならに言われた通り、高校ぐらいまで話さずに、何の心配もなくただただ普通の生活をさせてあげたかったんだけど、中学生になってもう色んなことが立派にわかる年になってきたよね。 ヒカルから聞いた図書館の件で君たちの冷静な行動を評価しているんだ。私の知っていることを出来る限り、順を追って話すよ。」

と言った佐井寺パパの優しい笑顔の瞳の奥に真剣さが伝わる輝きが確かにあった。


「一番古い話は現物があるから置いといて」 ん???何のことだ!?


「ヒカルとネネが生まれる少し前の話からしよう。」二人は顔を見合わせて少し恥ずかしそうだった。


「母さんの羊水検査、これはお腹の赤ちゃんを守る水を使った検査なんだけど、それを少し貰って遺伝子研究所に解析されると言うプロジェクトが出来た事を知って、私たち夫婦は参加の是非を問われた。結果から言うと、参加していて良かった。私らの結果は双子って事はある程度エコー検査で分かっていたけどもしかしたら先天性心疾患があるかもしれないと、後にT-SADティーサッドと呼ばれる疾患

Tear (裂ける) Atrial  (心房) Septal  (中隔) Defect (欠陥)【裂傷性れっしょうせい心房しんぼう中隔欠損ちゅうかくけっそん

で世界で生存期間が最長15歳の難病である可能性が非常に高いと診断され、絶望したんだ。」

 どの親もそうだ、今は笑ってるけど本当に壮絶な苦難をに乗り超えてここにいるんだ。



「ここでまた歴史は遡る。」まだ前があるのか??

「私の祖父が古書を集めるのが趣味でお金を散財するほど本にのめり込んでいたんだけど、どうも他とは違う毛色の本を手に入れたみたいで。内容は物語のような日記のようなものでアルビノの内容が申し訳程度に乗っていた。アルビノってのは白色個体、色を持たない動物だったり人間だったりの事だよ。

 今と違って内容の知らない祖父は、英語が出来る訳でもないので日本語訳したくて信用のおける翻訳者を探していたんだけど、程なくして他界。大量の本の一部として私の父に受け継がれたんだ。」


ほんとに歴史の授業みたいだ、けど興味があるからか面白く感じるぞ。


「父はそれからずいぶんとそれを放置していたんだけどある日、新聞の片隅に【求むアルビノ情報!】と書かれた遺伝子研究所の欄を見つけ、祖父の悲願を託す為、翻訳を条件に投稿した。投稿して国の人が来るまでに2年もかかった。父はその頃にはもう有料老人ホームに入所してたので、何も知らない私が引き継ぐことになった。

そこへやってきたのが僕の友だちでもあり、本来では知り得ないT-SAD患者の情報の一部を【本の提供】を交換条件に私に教えてくれた、若くして国に選ばれた天才。 旧遺伝子研究所所長【天道 京介】 カガミ君、きみのお父さんさ。」

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