第23話 発症期⑨ 最後の空想

「僕もT-SADティーサッドだった。」


ネネちゃんが小さく

「え?」と言ったが、ヒカルは予想の範囲内だった為、話を聞き続ける。


「この事はつい最近、母さんから教えてもらってその時、信用の出来る人にしか言わないよう。」

ヒカルは疑問の目で僕を睨み続けていたが、話を最後まで聞いてから整理したかったのか、口をつぐんだままだった。


僕と竜二は頃合いを見て手を放しリンクを辞めた。


「口止めされている理由はたぶん僕にある。何人かいたT-SAD患者のうち僕を含めた2人は【劇症型】って言われる進行が早いタイプの子供で心臓のエコー検査で5~6歳が限界だったらしい。僕の手術をする為の法律が整っていなかったのか、そもそも倫理的にNGだったのかまだわからないけど、そのどちらかだった。」


後ろめたさがあった。犯罪者の子供と思われる恐怖も、みんなとリンクをしている時生まれた。 少し言うのを躊躇ためらったが、言葉にしてみんなにも生かされてるのかって事を伝えたかった。


「僕は手術にこぎつけたらしい。それで僕は今ここに生きていられてる。【法に乗っ取った方法じゃない手段】で僕は5歳の頃から今日まで生かされてるんだ。」


 口に出して言ってしまえば簡単なことだった、母さんの言ってた【法に乗っ取った方法じゃない】事を3人にどう思われているは少し気になったけど、今さら信用したのにこちらから疑うのは野暮やぼだ。


さっきまでみんなと触れ合っていた手を見つめ、震えが収まっていた事に気付いてホッとした。

見上げるようにみんなの顔を見直したら、優しい笑顔で微笑ほほえんでた。




ヒカルは笑顔のまま

「違うよ、カガミだけじゃないよ、だから。法律なんてのは確かに破ってしまえばいけないけど、もカガミの父さんが大事に思ってる事が勝ってここにいるんだろ?無数にある選択肢の中でトーナメント方式で進みあがったカガミの父さんの行動は、もし非難されて文句を言うやつがいたとしても、僕から言わせたら【法律を叫ぶ前に試合に勝ってからほざけよ!】って思うよ。」


竜二は「俺もカガミがここに生きてるっていうが全てだと思う。」と言ってくれた。

「ありがとう。」


やっと僕はモヤモヤした気分から解放された。涙を汗のせいにして鼻から上を腕で擦りながら目に入った様に「痛てて」と下手な嘘をついたけど、みんなにはバレてたみたいで顔を見合わせて3人に笑われたよ。



少しの沈黙が僕たちを包んだが嫌な感じではなく、仲のいい者同士、気軽に居て話してなくても安心感に包まれている、そんな感じの沈黙に思えた。



「カガミ君ありがとう。」ネネちゃんは一時戻ってこれないかと心配したけど落ち着く事が出来た。

ヒカルは改まって「取り乱してごめん。カガミに助けられたよ。君は一体何の欠如なんだ?」


そーだったまだ言ってない事たくさんあったな。


だよ。 色はアカとミドリも苦手なんだ。」

ヒカルは「そうか・・・だから、不安が消えていったんだ。」と納得し、隣のネネちゃんもうんうんと首を動かしてた。


「僕は、もしかしたらみんなより少しだけ先の映像が見えるのかもしれない。」下手に考えた説明より思った事を素直に話そう。


「え!?それって凄くないか??予知とかできるんじゃ?いや、そんな事、前に一度感じたような・・・。」

ヒカルさん今は【その日永遠の3分】の事は思い出しちゃならねぇ!!!!


僕は急いで話をすり替えるように次の「テーマ」に移った。

「凄くない!いや、最近ようやく気付いたよ。【恐怖が無い】って事と【先が見える】って事のコンボが小さい頃ホントに厄介だったって。」


「小さい頃から竜二しか友達がいなかったんだけど。」お、ネネちゃんがかわいそうな目で見てるな。

「僕は無意識にみんなもに同じ事が出来ると思って周りを傷をつけ続けてきたんだ。当然避けれると思って投げたボールが顔に当たって嫌われたりしたけど、僕からしたら【何で避けれないんだ?】【なんで取れないんだ?】って嫌われた後に疑問しか残らなかった。」


「竜二は大丈夫だったの?」とヒカル。

「あ、俺は痛くないから。でも笑いながら鉛筆投げて来た時はヤベー奴だと思ったよ。」

やめろ!ネネ様の評価が星付けれないとこまで下がってるのに。



「いよいよ情報の整理が必要になってきたな あと、まだ死んだって決めつけるのは早いね、理由があって減っただけかもしれない。アティウスには7人が誰かってのは絶対に把握できてるんだ、父さんに聞いてもらうよ。」と言った。やっぱりヒカルは年上のような頼りがいがあるな。


僕も追従して

「ヒカルとネネちゃん、ついでに竜二達、何人かは5歳で手術適応が通って成功したらしいから、きっと人数が減った理由は他にあるんだよ。そう信じたい。」

「ついでかよ。」弱々しいがツッコミも竜二に戻ってきた。ボケのペースを上げてリハビリしなきゃね。



あっそうだ「ヒカルの父さんで思い出したけど、僕の父さんと知り合いみたい。」


「「え???どうゆう事?」」ヒカルとネネちゃんが同時に質問してきた。

僕はメイドの春日さんが家に来て父さんの名前を見つけたくだりを手短に話し、アティウスの副センタ―長だったことを告げた。


ネネちゃんの反応は「だからカガミ君に親近感があったのかも。」と妙に納得。そうだった小さい頃に会ってるんだもんね。でもネネさんの僕への対応に親近感は感じませんよ!僕のせいだけど。


ヒカルはヒカルで「雰囲気似てるような気がしてきた」と後付けの知ってる感を出してきて。


竜二までも ラな言い方で「それは、父さんがカガミを守って死んだ時にアビリティを引き継いだせいかもしれないな。」と指をさして言ってきた。

いや僕は孫でもなければ女でもない!素早さはあるけど。

「最後に空想ファンタジー話すなよ!分ムダにしたぜ!」と言ったが、

ニヤニヤした竜二がいる一方で、佐井寺兄妹はよく分かって無かった。それが普通だよ。

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