第20話 発症期⑥ 時間差攻撃
竜二が
「じゃあまず俺とカガミの、あと佐井寺兄妹も一応整理しよう、紙に書くとはっきりするかも。」
結局、僕の用意した紙に2人で書き込むことになった。
天道
無いもの 味覚
出来る事 回避率が高い
嫌いな色 赤 緑
感情 恐怖が無い
原
無いもの 触覚
出来る事 なんか見える、感じる
嫌いな色 青 緑
感情 諦めない
佐井寺
無いもの 視覚
出来ること 超聴覚
見えない色 白黒以外。 赤・紫外線は見える?
感情 驚かない
佐井寺
無いもの 聴覚
出来ること 超視覚
見えない色 白黒以外。 赤・紫外線は見える?
感情 怒らない
とりあえず書き終えた。確かに書き出すと何となく整理できた気がした。
「俺たち二人が佐井寺兄妹と違ってお互いよくわからないのは【出来ること】だな。」
竜二は続けて
「カガミは確かに回避率高いよな?ジョブはシーフか?」
「いや、まだ竜二のスマホをスティール出来てない。」
サッとスマホを隠す竜二。
「何で回避率高いの?」
僕は自分に説明ができる範囲の事を伝えた。
「なんか意識したらちょっと先のビジョンが目で見える。例えば竜二の水平チョップ。たぶん全部避けれる。」
「マジかよ。これからカガミを叩く時どうしたらいいんだ!」
「そこはいらんでしょ。」
「それっていつから?」
「物心ついた時からかな。」
「どんな時によく見える?」
「意識した時と悪意かなぁ善意かなぁ、どっちもかなぁ、人の気持ちが混ざってる時」
「つまり人の気持ち、もしくはカガミの意識が介入してて、
「今の所そうなるのかな?。」
竜二はなるほどなぁと呟いて考えていた。
「で僕は良いんだけど、結局、竜二はなにが見えてるんだ??」
「わからない。Wi-Fi?」
「僕に聞かれても、、、そういや竜二は触覚わからないけど今、鉛筆持ててるし物も持てるよね、その何かを感じ取ったり見たりして、持ててるのかも。」
「そう言われてみると身の回りのものほとんどにその感覚あるかも、目に見える物もある。しかもたぶん
「うげーそれ嫌だな、
「何?そのOBKって。」
「OBK?あ、おばけね。」
「普通に言え!一生使わねー無駄ワードじゃん!見た事も聞いたこともねーよ!」
僕は「それはどうかな?」とニヤリとした。
「で、それに得意や不得意はある?」
「あるある!冬のセーターとか!」
「は?冬のセーター?なんで?まぁ嫌いな人はいるんだろうけど。」
「冬のセーターはヤバいぜ!どこを触れば良いかわからないくらい怖い。」
「静電気?・・・電波?え?もしかして電気と電波を見たり感じたり出来るのか!?」
「そーかもなー。」まぁ本人はずっと前からだから気にもしてないか。
「確かに。電気かぁ...何か以前、そんなことで不思議に思った様な・・・。」
「そうそう、今なんか思い出しそうで・・・。」
喉元まで出てきている記憶を2人が思い出そうとしていたが思い出せず。まぁ良いかって事で次の話に進む。
「あと知りたい事、把握したい事は?」竜二に問いかけられ
「正直ありすぎてワカランし、知った所で中学の僕らに何ができるのかいまいちよくわかんないよね。あっそうだ竜二に言わなきゃいけない事がもう一つあった。」
「なんだね。言ってごらんなさい。」無い口髭を撫でながら上から目線だ。
「父さんがアティウスの遺伝子研究の副センター長だった。」
「え!!!本当か!?なんで?いや、なんでってのはおかしいか、亡くなった理由を聞いてもいいか?」竜二は急に真剣になって僕に問いかけてきたが、
「どうしよ。ベラベラ話すことじゃなかったかな、一旦母さんに相談してくるよごめん待ってて!」と言った。
部屋を出ようとドアを開けた瞬間母さんがこちらに来て
「あ、カガミも手伝って~フルーツ大福4個もあったから二人にどうぞ~。
「ちょうど良かった。母さん!竜二に、あの、この前の話を、えっと」しどろもどろだったらしい。
母さんは「良いわよ。あなたが
「ありがと!!」大福の乗ったお盆を受け取って部屋に戻る。
「ただいま。」
「お帰り。カガミんちだけど。ごめんな、無理しなくていいよ。俺もさっき焦っただけで言いたくない事もあるだろうし。」
「いんや、
「そもそも亡くなった理由は母さんしかわからないから、僕の知ってる内容だけになるんだけど。」
と前置きをして話だした。
「父さんは僕と誰かを守るために爆発事故で死んだって事になってる。」
竜二はさっそく「ん?」ってなったけど、先が聞きたいのか返事をせず首を縦に動かすのみだった。
「この前、春日さんってわかる?佐井寺の家のメイドさんが家まで送ってくれた時に、家の表札を見て父さんの名前に気付いたんだよ。父さんは佐井寺の家に何か難しい本を閲覧しに足を運んでたみたい。副センター長として。」
「うんうん、それで?」
「母さんから父さんのしていた仕事や立場、研究の事を初めて教えてもらった。アティウスで医療のトップがセンター長。遺伝子研究のトップが副センター長の父さんだったって事がわかったんだ。」
「そうか、、、俺たちのT-SADの事がわかってて、あえて息子に言わない。もしくは言えなかった?」
「どっちかだと思う。それと僕はT-SADの【激症型】ってやつで心臓の筋肉が裂けていく
竜二が頭をまわす。僕は大福の皿を竜二にまわす。
「どうぞ、頂き物ですが。」
「どうも、頂かれ物ですが。」
「激症型はまだ生きているのか?」
「わからない。でも僕ともう1人の子供を生かす為に何かをして、結果、父さんは死んだんだと考えてる。それ以上は詳しく聞けてない。ホントごめん。」
僕は父さんの【法に乗っ取っていない事】が解らないうちは、無駄に喋らなくていいと考えてそれについては話さなかった。
「いや、充分だよ。逆に情報が多過ぎて整理できてない。自分たちで調べて理解して、また聞きたい事があればカガミの母さんに知恵を借りよう!」
僕は首を縦に振り返事した。
「でも亡くなった理由が気になるな、他にもカガミの父さんが読んでいた本も気になるし、アティウスメディカルセンター自体も何だかきな臭い。センター長は知ってるのかな?ま、要するにこれがカガミが隠した方がいいって内容だな?」
ほとんど言われてしまった。
「そうだね。でも佐井寺兄弟には一緒に協力してもらってるし友達だと思ってるから、いつかはわからないけど来るべきその時に遠慮なく話していいと思ってる。」
竜二は 「ああ分かった。」と言って。とりあえずメモにやるべき事を書くと、その内容をスマホに写真で記録した。
しばらく2人悩んだ顔をしていたが、
ぼくは思い出したように「あ、竜二、ちょうどいいじゃん食べる時リンクしてよ」と言って
足をピトッとつけてフォークと大福を口に運んだ。
「「旨っ!」」
2人でハモって顔を見合わせた。
僕が先に「念願の!これが!!念願の!!味覚だぁ~~~~~!!!!!」と叫んだ。
竜二も「フルーツ大福めっちゃうまいじゃん!」って言ってた。
マンゴー味とキウイ味のフルーツ大福はメチャクチャうまくって二人とも一瞬でぺろりと食べてしまった。なくなった時、ちょっと涙が出てきた。
「かーちゃんにまた買ってもらおう。」って竜二が言ってたから
「ずりぃなー、こんなに和菓子がおいしいなんて知らなかったよ。他も食べたことあるの?」と聞くと
「森竹堂は【ようかん】が一番人気だって母ちゃん言ってたけど食べたことない。佐井寺家に行った水ようかんも食べたくなってきたー、俺もフルーツ大福がはじめてだし。」と竜二
「次に佐井寺家に行くときに母ちゃんに持たされたら、くすねて4人で食べよう!!」
と竜二が名案を浮かべた。
僕は味が消える寂しさから竜二の足を踏んで強制リンクしていたんだけど
僕が「どこのヨウカンだっけ?」と聞いた時
竜二は一瞬にして顔色が変わった。気付いてしまったんだ。リンクの解除も忘れて、
後で気付いた僕が声に出してしまった。
「モリ竹堂のヨウカン」「森の・・・ヨウカン」
リンクによって竜二の恐怖が僕に分配され、一緒に怖がって二人して顔を見合しながら
「「オービーケ―!!」」と叫んでしまった。
某ゲームに出てくるオバケの出るスポット【森の洋館】は
幼心の子供達に必要十分な恐怖とトラウマを与えてくれた場所の名前らしく。僕は数年越しの時間差攻撃によってその恐怖を味わうこととなったのだ。
リンクもいい事ばっかじゃないね。先に恐怖から離脱させてもらいます。足ふみ解除と。
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