第14話 成長期⑩  I miss you

「もう一つは新生児の先天性心疾患の可能性のある赤ちゃんを見つけて調査する事だったの。」

僕らの事だ。


「その中で更に 限られた病気の子供を絞った。心臓の上のお部屋、左右あるんだけど、左右の壁が脆くて徐々に裂けていく病気を持った子供達」


T-SADティーサッドだね。」


「そう。知ってるの。そうよね。・・・ずっと子供と思っていたもの。診察の横で聞いてても頭になんか入ってないと思ってたら。気づいたら中学生だし。」

母さんは優しい目で見つめてきた。


「さっき言ってたもう1人の子ってのは竜二?」

「それは違うわ、あ、竜二君は元気?」

「先週もうちきたじゃん!あいつめっちゃ元気だよ!今日わかったけど、竜二もT-SADティーサッドで双子の佐井寺兄妹もだった。僕もかと思ったけど、胸に手術の痕がないから違うって言われたよ。」


「佐井寺さん!あっ!あの【奇跡の双子】の!2人とも元気!??」

「あ、うん。たぶん元気だよ。」


「そう!良かった。そうね、あなたはそのままT-SADティーサッドじゃない事にしておいた方がいいわ。」

なんでだ?それはそうと佐井寺兄妹って奇跡の双子なの?良いなぁ僕も【奇跡の】とかなんか欲しいなぁ。


この時僕は気づかなかったが徐々に【ある病気】が発症しつつあった。


「あのねカガミ、前から診察で耳にしてると思うけどあなたもT-SADティーサッドなの。3歳の時、心筋生検っていう検査で、何人かいるT-SADティーサッド患者のうち、あなたともう1人、合わせて2人の心筋細胞に【激症型】が見つかったの、それは症状が強くて進行が速かった。心臓エコーの診断では5~6歳まで生きられたら良い方だったの。」窓の外を見ながら母さんは続けた。


「移植も考えたわ。でも時間と費用を考えると国の遺伝子研究所、その時にはもう合併しててアティウスメディカルセンターになってたけど、そこのセンター長の案を受け入れる方が合理的だった。そっちの方が良かったって事ね。」


「まって、アティウスメディカルセンターと遺伝子研究所は一緒って事だよね?センター長がで、副センター長の父さんがってことでOKですか?」


「そうそう。ね?すごいでしょ?」母さんはまた得意げだ。


「他の子供たちは5歳で手術適用が通って、順次手術をしていったみたい。結果、手術自体はすべて成功したのよ。 他の子供達が元気に退院していく中で、私たち一家ともう一家族はチアノーゼが進む子供を指をくわえて見ているだけの日々を悶々とした気持ちで過ごしたわ。チアノーゼってのは酸素がうまい事、体に送れなくって息が出来ない様な感じね。


でもその段階で【劇症型】は成す術がなかった。スタッフたちは必死になって別の道を模索していたわ。特に実の親よりもセンター長の方が必死になっていたの。【一族の命題だ】って言ってた気がする。彼らは何が何でも救うつもりだった。その熱意が叶ったのか、何かのいたずらか、代償が大きいけど、カガミたちを救えるチャンスが舞い込んできた。」


「カガミともう一人の病気を救ったのが京介君だった。でも・・・。その為に爆発事故で亡くなったって事にして死んでもそれを隠してる。」


「ダメな親だと思った??それでもね、私はそれでも カガミがいる方が幸せなんだよ。だから京介君は私達を救ったヒーローなの。」

母さんの目が僕を真っ直ぐ捉え緊張した僕は次に話す言葉を考えた。


父さんが死んだ事が 初めて飲み込めた。


今日まで父さんならキャッチボールしよう!とかバットもそろそろ買って練習しようぜ!って言ってたから何だかふらっと帰ってきそうな気がしてた。

必死に飲み込まないように【理解】することを吐き戻してたけど、

母さんの言葉でその【理解】が粉々に砕けてすとんと喉を通って飲み込んでしまったんだ。


息が荒くなったその口から出た言葉は母さんの事なんか考えない自分勝手な言葉だった。


「父さんに・・・会いたいね。」


僕は知らないうちに涙が出てて思った事を口にしてしまったんだ。


母さんが後ろに来てて背中からぎゅーっとしてきた。前と違って優しい笑顔で笑ってる。


「ずっと、あなたの中にいるじゃない。」


キラキラした夜の街が窓から見える。ぼやけた視界でみた窓の中には反射した僕たちがいたんだけど、その後ろから父さんが2人を優しく抱いてくれてる幻を見た気がした。







暫くして泣き止んだ僕に


「話、難しかった?まだまだわからない事あるよね、今日はここまで!質問はある?」


「えぇっと、質問?ていうか色々あるんだけど、一個だけ。まず訂正?と言うか、最近のニュースを国語の先生が授業の初めの5分間で僕たちに分かりやすく解説してくれるんだけど。」僕は五本指を前に出して話した。


「人間のアルビノが、宗教上の理由でたてまつられて、そこまでは良いんだけど、その体の一部を食べるとご利益を得られるからって言って殺されて食べられたりしてる国が実際にあるみたいだね。その事でしょ?さっきの話。」


母さんは

「なにそれ、怖っ!」と言って寒気が走ったポーズをして引いている。


まじか、母さん本当に父さんがモンスターを保護すると思って今日まで生きてきたのか!


なんとここに来て死んだ父さんの株をあげるのに一役買われるとは、僕も親孝行者だよ。まぁ隠し子がいなけりゃ唯一の肉親だし、母さんに助け舟でも出しますか!泥舟ですがどうぞ。


「要するに父さんは、例えば白くならないようにするとか、生まれてすぐ保護するとかその問題を遺伝子研究で解決したかったんだよね?」


「あ〜そうゆう事・・・みたいね。そうよ!そうそう!わかってんだから!」母さんに焦りの顔がチラつく。ハハハ・・・。ポンコツめ!



「とりあえずカガミはテスト勉強でしょ!頭良いのに頑張らないと勿体ないじゃない!」


いやいや、なんで頭良いんだよ!ネネちゃんは抜群に良いけどヒカルも竜二までも、僕より賢いんだぜ、

「母さん。息子がカワイイのは分かるけど僕も自分の実力くらい把握できる年になりました。おかげさまです。」ぺこんとお辞儀。

「が、友達に比べてやっぱり頭は良くないよ!病院のテスト結果も小さい時に比べて筆記が増えて更に難しいし、安定の最下位 6/6(ロクブンノロク)位は伊達だてじゃないよ!」


と言ったら目を丸くして

T-SADティーサッドの子供達は総じて頭が良いはずよ?京介君が言ってたの。まぁ前は7位だったから順位は上がったじゃない?」って言われた。

でも最下位は嫌なんでとりあえず勉強してきます。

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