第12話 成長期⑧ 未確認

現在の状況を説明しよう!佐井寺家メイドの春日さんと母さんが玄関で対峙。

フシャー!!っと猫の威嚇音が聞こえんばかりの勢いで警戒している。それに困った顔の春日さん。


春日さんが仕掛けた!

「天道様とは私の仕えております、佐井寺の自宅にご訪問されることがしばしばあり、そこからの知り合いでございます。ぁあ、天道様は、お亡くなりに、、、なられたのですね。」 仕掛けてないか。うん。

僕は(そういえばヒカルの話で遺伝子研究所の副センター長が家に来てるって言ってたけど父さんのことか!?)と疑問が生まれてきた。


春日さんは

「私が仕える佐井寺の旦那様が保管している【本】にお仕事の関係でご興味を持っておられまして、しばしばご閲覧に来られていました。私が佐井寺家でお仕事戴く前から【本】を見に来られていらっしゃったのでご主人様とのお付き合いも長いかと思います。


来られなくなった時は7~8年前でしたでしょうか? 【本】の内容を研究し終えたのかあるいは、市民病院跡での爆発事件で研究所もお忙しくなったのかと想像していましたのに。本当にお悔やみ申し上げます。」


と言った。お母さんは、フッと緊張を解いていつもの顔に戻り

「そうでしたか!京介君はどんな本を見てたんですか?」と井戸端会議が始まりそうだった。


圧力なべがぴゅーぴゅ―泣いて、角煮の匂いがしてきておなかがすいてきた。味はわかんないけどね。春日さんは「お食事前に大丈夫ですか?」と聞き母さんは「タイマーなんで大丈夫なのよ。まだ作ったところだからできてないわ。」と答えていた。

これぞ「未角煮んみかくにん」なんちって。すぐ食べたかったのになぁ。


春日さんは

「天道さまのご閲覧中に私はお紅茶を運んで差し上げていたのですが、その【本】は見たことのあるような【お花】の絵が書かれた家紋の様なマークが特徴的で、表紙の分厚さだけで1センチ程あるなかなか重厚な外国語の書物でした。 私の知る限りその一冊しかご覧になられておりませんでしたので、遺伝子関連でよっぽど貴重な物かと想像しておりましたが、天道様は【アザレア教の裏聖典】だよとある時教えてくださいました。」


父さん。変な宗教に引っかかってないよね??


母さんは「もっと京介君の事、聞かせてくれない?」ってお願いして、春日さんは「えぇ喜んで」と優しい笑顔になって聞かせてくれた。


「研究所からそう遠くはありませんが、ご主人様が何度も来るのも大変だし、一度研究所に本を持ち帰ったらどうだ?と天道様に仰ったことがありました。」

 父さんうとまれてたんじゃないの? や、まてよ、母さんのこの重そうな胸の大きさ・・・。目的は【本】じゃない!春日さんだったんだ!いやらしいんだから!メイド服って補正かかるもんね。


「すると天道様はこの【本】は役に立たずにひっそり生きることを望んでると思うよ、だから佐井寺さんあなたのお家でゆっくりと休ませてもらえないだろうか?と言う会話を耳にしたことがあります。」


ん?なんだそれ、じゃ―何で父さんはわざわざ見に来てたんだ?


それから数分話して話が終わったようで、

「失礼します。」と春日さんがこちらに向かって頭を下げて硬直していたので、母さんと僕は

あ、これドア閉めないとずっとこのまま帰れないやつじゃん!って気づいて慌ててドアを閉めた。

ドアを締めた後、少し睨んだような目で父さんの名前が書かれた表札を見つめる春日さんの表情が【ビジョン】に見えて不思議に思ったが、どんな感情で何を思ったかなんてその時は考える余裕がなかった。


母さんたちがワイワイ話したせいで結局夕飯が遅くなってしまった。いいよ、角煮は冷えた時に味がしみ込むって料理番組が言ってた。まてよ、しみ込んだ味がわからないと意味なくないか?


夕食後、テレビを見ながら僕は思った事を口にした、むしろそれが出来なかったら僕じゃない。

「父さんは・・・遺伝子研究所の副所長だったんだね。」って言ったら

こちらを見ずに

「そうよ、カガミ お父さんの亡くなった理由を聞きたい?」って言われた

「うん。」と率直に答えた

母さんはこっちを向いて

「そーよね、もう中学生だもんね。」いんや、僕は芸人ではない。

「出来たら信用の出来る人にしか言わないで欲しいんだけど、いい?」母さんは真剣だ、これまでのやり取りで僕から父さんの死因を避けてきた事はわかっている。

でもこの会話の終わりに母さんが笑っている【ビジョン】を見た僕は少し安心して聞ける余裕が出来ていた。


「実は父さんの遺体はまだ出来てないの。」え?そーいや、お骨もお墓もないなぁ、やな予感。。

「さっき春日さんの言ってた爆発事件?」わぉ、木っ端みじん系??

「そう。テレビでは古い市民病院跡で投棄された機械と酸素ボンベが原因で爆発して、現場に居合わせた二人が死亡した・・・って事になってるわ。」

「ってこと??ホントじゃないの?」


母さんは隠していた事と、嘘をついてた事の後ろめたさか返事はせず、首を縦に振って返事をした。


「まず、あなたが思ってるお父さんはどんな人?」

 「明るくて、楽しくて、ゲーム好きで悪戯好き、いつも遊んでくれる兄ちゃんみたいな人、あとさっきまで売れない芸人と思ってた。」と言うと母さんは「あはははっ!」って笑って涙目を擦り

「まぁまぁいい線いってるわ。でも足りません。京介君はねよ。」って言った、母さんの自慢げな顔はつられて笑っちゃうぐらいかわいかった。

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