第9話 成長期⑤ 驚きと怒り

「竜二はそもそも佐井寺邸には はじめてくるの?」って今更ながら聞いたら

「うん」って言って

ネネちゃんが

「竜二くんとは校区は一緒だけど、お兄ちゃんと私、小学校は養護学校と家庭教師だったから。中学校からは凄い楽しいよ!!」と話してくれた。

竜二とは小学校は違ったみたいだった。


兄妹がメイドさんとお茶やらおかしやら勉強道具を運んでくる間に


「俺たちバカからさぁ、 佐井寺兄妹が好きで勝手に仲良しだと思って、2人の障害の事なんて忘れていたけど、本人たちは悩むところもあるし、今も俺たちからどう思われているか心配になったり気になって怖がったりしてるのかもしれないな」ってボソッと話してきた。

竜二は他人の事を考えれる。やっぱり良いやつだ。あとバカはお前だけな!


今のセリフ僕が言った事にして二人にこっそり聞かせてあげたいよ。もちろん手柄は僕だが。


ようやく勉強とおかしの準備が整い、ヒカルに「先に入るよー!」と言って早速一番に足水に入って

「一番乗りだぜ!うひゃー気持ちー!」とか言ってると竜二も入ってきて

「おーこれは涼しいねー!でも足に力が入らなくって踏ん張れないなぁ」と返してきた。

僕は暫くちゃぷちゃぷと足から伝わる冷感を楽しみながら足水を見ていると不意に

(立つとき滑ったらどうしよう テスト点数低かったらどうしよう)っていう不安がよぎって怖くなった。

僕らはその小さな違和感に気付けず、佐井寺兄妹が座り水に足を触れた瞬間、

ヒカルが「!?目があんまり見えない!」

ネネちゃんが「え?あ、そーいえば、私も耳が聞こえにくい。。。」

ってなった。

どーなってるんだ?僕と竜二が顔を見合わせてから「え、大丈夫?」って聞くと

「ん~なんというか、不安な感じはしないよ。」と言ってネネもうんうんと頭を振る。


僕はこの前プールに入った時みたいにサーモグラフィの世界がぼんやり見えたんだけど、

「あー僕たちいつも入ってるからいいーや!」と言ってヒカルが抜け出した。その後「ネネも。」と

水から出たので一瞬で景色が戻った。


あんなすぐ出るなんて「竜二おまえ水虫か?」と聞いたら

「ちがうちがう!」って必死だった。親友の俺にだって嘘くらいつくよな。帰り一緒に薬局に行ってやんよ。


「さてと不安もあることだろうし勉強しよう!」と僕が言うと

「カガミが不安だなんてよっぽどなんだな、今日はバカガミの為にありがとう。ではよろしくお願いいたします!」

と言って後頭部を掴まれ頭を下げさせられたが

「俺たちゲザリスト(土下座専門職)は自分の意思で下げる頭はよくても、人に下げさせられるのはプライドが許さねーんだよ!」と反発してやったぜ。

相変わらずネネちゃんの冷たい視線で冷え切った僕は足水から上がるのでした。



その日は17時までまじめにテスト勉強をして、その後ネネちゃんに間違えた問題を教えてもらってる

間、竜二が「話したいことがあるんだけど。」って言いだした。

ヒカルもネネちゃんも「「なになに?!」」と竜二の方を向いた。

僕も数学を解きながら「情報だけ後でくれ!、後で必ず追いつく!」と死亡フラグを立ててしまった。


「竜二程度の質問ならこの兄妹に出来ないはずないぜ!締めちゃってくださいネネの姉貴!」

と小物感たっぷりで冷やかしている傍らでいやに真剣な顔の口から出た言葉は、二人を悩ませるものだったんだ。


「ヒカル、この前、昔は目が見えなかったって言ってたけど、」

「あぁ、、これは手術で・・・」というヒカルの手にそっとネネちゃんの手が重なって、多分会話が心配になって寄り添ったんだと思った。

それの光景を竜二は良く思わなかったのか、珍しく怒り気味&食い気味で

「その見えている左の目はネネちゃんの目だよね?」と言った。


 (まぁ双子とはいえ目のまえでイチャコラされたら竜二だってって!え!?もしかして竜二ってネネちゃんの事好きなの??え?え?ていうかネネちゃんの目1個取ったの?)

僕は大混乱した挙句

 「え!?そーなの?!!」と解答権も持たないのに発言。チャチャしか入れてないキングオブ小者。それが天道カガミだ!


続けて竜二は言いたい事を口にする。

「ネネちゃんは小さい時の話だからって怒らないの?」ネネちゃんは俯いて何も言えなそうだった。

僕はさすがに4人の仲を保ちたくなって、口を出させてもらった。まぁさんざん出してたけどね。


「竜二!どーしたんだよ!ヒカルも驚いてるよね?別にいいじゃんか、昔どんなだっても今楽しけりゃ!」おっと映画で一番最初に死ぬ奴のセリフのように軽かったかな?

竜二は返事を待っている、くやしいが僕の声は届いていなかった。

そしてちょっとした時間が流れたのか、流れてないのか解らなかったけど、冷静にヒカルは返答をし始めた。


「まずカガミありがと。カガミのそうゆう所 見習いたいよ。でね竜二。ネネへの気持ちは僕にぶつけられても困るけど、僕はネネがいないと今の時点では生活が厳しい。竜二の事は好きだし邪魔者かもしれないけど兄として君を応援している。」 ヒカルは続けて

「二人の質問に一緒に答えてすまないんだけど僕は別に驚いていないし、ネネは別に怒ってない。というより・・・僕は【】しネネは【】んだ。」

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