第8話 成長期④ 青と緑

中1の一学期が終わりに近づく7月。  僕は期末テストに向けて勉強をするべく、竜二と二人で佐井寺兄妹の家に向かっていた。だってテストできないんだもん準備はいるでしょ!


 【テスト】その言葉の響きが思い出させるのは母さんの苦笑い。あれはもう見たくないぜ!!

そこで他人に頼るのが僕流。 

きっとうちの宗派は浄土宗 他力本願寺なんだと思う。


頼ることが恥ずかしいとは思っていないし、そもそも11歳の誕生日のビデオレターで聞いた父さんの教えによると

【自分に能力が無いことを理解していれば、そこを補える仲間を頼ろう】だったから行動に出たわけで。

その時はちょっと子供には難しいよ~と思いながらもプレゼントの〚スーハミとソフト50本〛に飛びつき まんまとハマった毎日でした。


ソフトの裏に裏技の入力コードなんてサインペンで書いちゃって

コントローラの入力で【下 L 上 R Y B X A】を素早く入力して 必殺技一覧を見るって書いてました。ガチ勢だったんですかね?マイファザー。


それはそうと一緒に勉強やろうぜ!って竜二に相談したら

「普通に宿題やって授業受けてればいけるんじゃない?」と余裕だったので

「あっそう、竜二よか点数良い佐井寺兄妹に土下座してくるわ。」って言ったら

「まてまて!カガミの気持ちがいいほどのプライドレスに負けたよ!でも佐井寺邸は半ばダンジョン!お前ひとりでたどり着けるかな!?」 

「竜二がなかまになりたそうにこちらをみている。なかまにしてあげますか?って事?」

竜二はため息を付き「はいはい。」と言ってくれた。

「明日学校で勉強会できるか相談しろよ!あとカガミ!くれぐれも佐井寺んちで粗相はするなよ。」

僕は(ソソウ??)と思いその日帰って、尿漏れパッドの購入検討がなされた。


数日後

竜二は高そうな和柄の紙袋を携え

「かーちゃんが持ってけってよー水ようかんだって!親御さんに渡してって言われちゃったよー別に俺たち食べれないし重いし断ったんだけど、佐井寺んちデカいから失礼にあたるーってうるさくて」


「そりゃ よー噛んで食べたいもんやね。というか竜二んちよりでかいの!?」と聞くと

「2倍」くらいはあるよって言われてビビった。僕の家が原(竜二)宅の約半分の大きさのマンションだから、うちの4倍・・・。

「ヤバい。」 (佐井寺邸でトイレに行ったら迷子になって、みんなの場所まで戻れなくなって適当に入った部屋がネネちゃんの部屋で、間違えて衣装ダンスをあけてかわいいパンツを目の前で広げるビジョンを想像してしまった。)


「カガミ!何に笑ってるんだ!!正気に戻れ!」っと、キャッキャ言い合いながら竜二に連れられて歩くこと10分

明らかに高級住宅に入ってから空気が変わった。かまぼこ板の1万倍くらい高級なヒノキで出来た表札に達筆な字で【佐井寺】と縦書きされている入口門の目と鼻の先まで来てしまった。

「竜二、今ここで帰ったら不審者と判断され監視カメラ型の銃でハチの巣になるな。」と言うと

「途中コンビニでポテチとかコーラとか買ってたらこの時点で肘から先は無かっただろうな。」

と乗ってくれた。


 チャイムを鳴らすとすぐに100%見かけでジョブがわかる30代くらいの「メイド」さんがこちらに向かって来て、「天道様と原様ですね。こちらにいらしてください。」と門をあけて中に導いてくれた。

ナイスバディなメイドさんがいて若干ヒカルがなったが年の差のせいかはならなかった。

【人間大体がある!】 なんちって。


僕は「こんにちは~おじゃましまーす!」と言って付いていったが竜二は「こんなちは」とがっつり噛んでいた。


玄関から家のドアまでしばらく歩く間に竜二が「セキュリティスゲー」って言ってたので周りを見渡したけど青くてキレイな朝顔や真っ黄色に咲くミニひまわりが沢山咲いて小さな道を賑しているくらいで

僕は朝顔の花を手で触りながら「セキュリティ?なんでわかるんだよ」と言うと、

こっちを向いた竜二は「あ、ごめんその朝顔って花?小学校の時栽培したけど、見てると気持ち悪くなるんだ。」って言って下を向きメイドさんに小走りで付いていった。

まさか竜二にも嫌いな色があるとは!!さては【青】と【ミドリ】だな!


佐井寺邸のドアに着き、メイドさんに開けてもらったドアをくぐるときれいな大理石のエントランスにスリッパを履いたヒカルが「いらっしゃい!」と言い、その隣で裸足のネネちゃんが腰あたりで小さく手を振りニコニコしながら待ってくれていた。 


もともと美男美女だけど上流階級補正のせいでさらに神々しく僕たちが汚れものの様に感じた。(どこがセキュリティ万全なんだよ!家にウィルス2匹侵入しちゃってますよ竜二さん!)


僕は「お邪魔します~あ、今日はありがと!」と言い竜二は「カガミは怖いもんが無くて良いよなー、ヒカル・ネネちゃんこれ、かーちゃんから食べてって、二人のお父さんお母さんでどうぞ。」と重たかった紙袋をヒカルにリリースし一安心していた。


ヒカルは「なんか怖いことあったの??」って聞いてきたから

僕と竜二で「「ありまくりだよ!」」って返事して、竜二は更に「家の周りは電気流してるの?」と聞きヒカルとネネが二人で顔を見合わせて首を軽く傾け??って不思議そうな顔をしてくる。


ヒカルから水ようかんの袋を受け取ったメイドさんが目をパチクリさせて

「よくお気づきになられましたね、電気工事にお詳しいのですか?」と竜二に質問して

「いえ、全然」と答えていた。

なんでも貴重な蔵書があると言う噂を聞いて本泥棒が入ろうとしたことがあったらしく、その時はメイドさんが撃退したのだが、念のため設置しているらしい。


「あの時は物取りで良かったのですけど、メイドにも家族にも危害を加えられたくないとご主人様はおっしゃっられて、あの程度ならと断ったのですが、心配され設置に至りました。」とメイドさんは話した。【あの程度】つ、強いんだね たぶん。メイドファイターにジョブチェンジしときます。


階段を登っている最中

男子で「外暑かった?」「メチャクチャ暑かったー」って話してるとネネちゃんが

「私たちの部屋で、足だけ水浴びできるよ?」と言ってきた!

竜二は「ビニールプール?部屋でできるの?」といって驚いていたが、僕の反応は

「替えのパンツ忘れたよ!」と言ってしまい、ヒカルにチョップを食らった。

ネネちゃんは「ハハハ」と笑いながら目が冷たかった。


階段を登って何室もある部屋の一つに入ると、予想をはるかに上回る広さと備え付けの掘りごたつの様なテーブルに足湯ならぬ足水が10センチ程張っており涼めるようになっていた。


僕たちはそれを見た途端テンションが上がり足水・足湯つき掘りごたつの設備と機能について質問しまくった!

要するに6人ぐらい座れる掘りごたつに足元はプチ浴槽を付けて夏は水、冬は温水にして豪華で快適な勉強机にしているらしい。ビバ!自動お湯張り機能! 佐井寺両親はすごいね!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る