第6話 歓迎会
キーンコーンカーンコーン。
放課のチャイムが鳴る。それと同時に一気に学校中が騒がしくなる。
うちのクラスも例に漏れず騒がしい。
「よっしゃあ、お前ら行くぞー!!!」
学級委員長の布施武臣が掛け声をかけると皆も「おー!」とノリノリで返す。
どこに行くかというとこれから皆でカラオケに行く。そこで藤白姫花の歓迎会をやる事になっている。もちろん全員参加で俺も参加する。
「よし、俺たちも行くぞ!金丸!」
黒川もかなり気合いが入っている。クラス皆で放課後にどっかにいくなんて事は初めてなので皆舞い上がっているのだ。
「おう!」
俺もちょっと舞い上がっている。いや、かなり舞い上がっている。カラオケは黒川と2人でいったことしかないので大人数のカラオケが楽しみなのである。
「金丸、分かってるよな?くれぐれも抑えてくれよ?」
「分かってるって。」
「頼むぜ。お前の歌はやばいからな。」
「おーい、金丸、黒川、早くしろー、おいていくぞー。」
武臣は2人に早く支度するように催促する。
「おう、悪い今行くー。」
俺たちはカラオケに向かった。
ーーーーーーーーーーー
今若者に人気のカラオケ店がある。店の名前はカラオケジャンジャン。名前に似つかず店内はおとぎ話や童話をモチーフにした内装で部屋ごとに違った物語の世界が楽しめるため何度来ても飽きないし、何よりインスタ映えがすごい。これで通常のカラオケ店と値段が変わらない。企業の努力が伺える。
加えてカラオケジャンジャンは他のカラオケ店に比べてパーティールームが広く、割安なため、学生が打ち上げなどで好んで使うカラオケ店。
金丸たち2年C組も例に漏れずにカラオケジャンジャン。彼らの部屋は白雪姫がモチーフで白雪姫が眠っていた森をイメージしている。
「では、ただいまより藤白姫花さんの歓迎会を始めたいと思います!わたくし、今回幹事をさせていただきました布施です!」
武臣は奇抜な衣装を着ている。白雪姫に登場する王子の衣装だ。カラオケジャンジャンはその部屋ごとに衣装を用意しており、レンタルすることもできる。
「いえーーい!!」
クラスの皆の歓声が飛ぶ。会場のボルテージは最高潮に達していた。
「ええ、ええ、どうもどうも。それでは本日の主役に挨拶をしてもらいましょう!どうぞ!」
武臣がマイクを置き、ステージを降りると、代わりに藤白がステージに立つ。
彼女もコスプレをしている。もちろん白雪姫のコスプレだ。
「今日は私のために素敵な会を開いてくれてありがとう。この会を通してもっと皆と仲良くなれたらなぁと思ってます。みんなで楽しんでいきましょう。」
そういうと藤白は優しい笑みを浮かべる。
「いえーーい!!」
皆ステージ付近に集まって盛り上がる中、俺と黒川は自分たちの席にいた。
「いやぁ、ほんと可愛いなぁ、藤白さん。もう白雪姫本人だろ。そう思うだろ、金丸。」
黒川の鼻の下は伸び切っている。小人のコスプレをしてその顔なのだから普段のキモさの二倍はある。
「あぁ、衣装負けはしてないな。」
俺はどっちかというと毒リンゴを食わせた王妃だと思うんだけどな。性格的に。
「だよなぁ。あれはもう白雪姫だぁ。」
黒川は藤白の衣装に完全に悩殺されている。すでに黒川の脳は正常に働いていない。
「でも、藤白が白雪姫だとしたら、キスで眠りから覚ますのは布施って事になるな。」
そう俺が煽ると黒川は表情が険しくなった。
「な訳ねだろ。あいつはせいぜい王子に憧れたコスプレ男、なれてもハリボテ王子だよ。白雪姫を眠りから覚ますほどのカリスマ性は無いね。…ったくあいつ真っ先に王子の衣装取りやがって。」
「でも、よ、よかったじゃねぇか。こ、こび、小人の衣装、似合ってる、ぞ。ブフォっ。」
金丸は笑いを堪えながら話していたが耐えきれず吹き出した。
「うるせぇなぁ!!お前もよく似合ってるぜ!!小人の衣装!!」
「ありがとーう。俺は素直に嬉しいよ。…ブフォっ。ははははは!!」
俺も小人の衣装を着ている。自分でもかなり浮かれているのは分かっている。でも今日は存分に浮かれておこう。
「もう笑うのやめろや!!」
俺たちもステージの方の奴らに負けないほど楽しんでいた。
「ったく。それもこれもあのハリボテ王子のせいだよ。」
「誰がハリボテ王子だよ。」
黒川が振り向くと後ろに布施が立っていた。
「まぁいいや。皆でカラオケ回してくからお前らも準備しとけよ。クジで当たった奴からだからいつでもいけるようにな。」
何歌おうかな。できれば皆が知ってて盛り上がる曲がいいか。
そういえば藤白はどんな歌を歌うんだろ。つかいつも何聞いてるんだ?音楽聞いてるところ見た事ないな。
ふと気になり藤白の方を見る。
「ねぇねぇ藤白さんは何歌うの?」
赤坂が質問すると
「えっとー、あ!サイクレとかよく聞くよ。」
「え!藤白さんもサイクレ聞くの?!私もファンなんだ!!ね、なんの曲が好き?」
「えーっと、私、ただ聞いてるだけでファンとかじゃ、ないから…」
「でもでも好きな曲くらいあるでしょ?」
「ごめん!飲み物とってくるね!!」
…これは音楽聞いてないな、、。大丈夫か?
「…っおいっ!」
「あ、あぁ、どうした?」
「どうしたじゃねえよ。さっきから話しかけてんのにシカトしやがって。ずっと藤白さんの方見てたぞ。藤白さんの美貌に見惚れるのはいいけど程々にしとけよ。」
「ばっ…見惚れてたわけじゃねよ。って、ん?」
金丸のスマホのバイブがなる。
藤白からだ。
『ちょっと抜け出してきて。ドリンクバーのところにいるから。』
十中八九、歌の件だろうなぁ。
「わりぃ。ちょっと飲み物とってくる。」
金丸は残ってたコーラを飲み干し、空いたグラス片手に部屋から出る。
ドリンクバーに行くと顔を真っ青にした藤白がいた。
「どうしたんですか。」
一応白々しく聞いてみる。
「…われる。」
「え?」
「嫌われちゃう!!私、音痴なの!普段から全然音楽聴かないから盛り上がる曲わかんないし。どうしよう!!」
かなり動揺している藤白。
「落ち着いてください。そんな音痴だからって誰も嫌ったりしませんよ。むしろ抜けてる一面あって可愛いってなりますって。」
「ならないわよ!少なくとも前はそうならなかった!だから音痴を晒すのは嫌!なんとかしなさい!!」
んな無茶な…。
「あ、ここにいた!もう主役がいてもらわなきゃ困るよー。ほら戻ろう。」
「あ、ちょっと赤坂さん?!」
赤坂はそのまま藤白を引っ張って行ってしまった。
「このまま見捨てたいところだけど、帰ってからが怖いしなぁ。なんとかするしかないか…。」
俺もコーラをコップに補充すると部屋へと戻った。
俺の主人は幼なじみ @mifune0710
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