なな 無身

 しめ鯖を切るのに失敗してしまった。

 〆忘れてダメになったコノシロが恨めしげに光るから、失敗してしまったの。

 千切れて、バラバラにして、酢飯と混ぜて、食べたかったものとは違うけれど、まあいいかで日々は続く。


 干上がったような唇が張り付いて切れては、しめ鯖を思い出す。

 目が覚めた時の倦怠と共に切られる魚の気持ちはバラバラだ。

 胃もムカムカしている。


 食べてないったら。

 切ってもいないんだから。


 瓶詰めの植物は勝手に生きてる。

 たまに霧吹きをかけてやるだけだから失敗もない。

 まあいいや植物も生きているし、小さなサボテンに手を乗せて、朝が来る。


 いつか大きなサボテンのステーキを食べよう。

 しめ鯖のように失敗はしないから、手のひらには無数の穴ぼこ。

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