第2話 くだらない会話と元同中

問。人気者とはなんなのか。人気のアイドルや俳優さんや女優さんを見ていつも思う。彼らは何で判断されているのか。多少顔が悪くても演技が出来れば女優になれる。俳優になれる。人気が出る。アイドルは歌が出来ればアイドルになれる。ダンスが出来ればアイドルになれる。

しかし、その裏で全く人気のない者もいる。演技ができてもウザがられたりするやつもいる。顔が可愛くてもだ。じゃあ、何をすれば人気になるのか。それについてしばしば考えていた。



僕はこの人を知っている。

遡ること中学一年生。

「お前、そんなことも出来ねぇのかよ?あ?」

「すっすみません…」

ビクビクと怯えながらいつ殴られてもおかしくない状況なので頭を必死に隠すことしか出来ない中学時代。絆創膏が貼ってある腕に足。見えないところに付いた痣。そう、僕は虐められていたのだ。

今日は、罰ゲームやらなんらかでクラスメイトに告白するという事だったが、僕にはとてもじゃないけど無理だった。

「お前、面白くねぇな?」

そう言うと、僕よりも一回りくらい背は高く、ガタイも良いいじめっ子に殴られそうになった。殴られそうになったということはなぐられていないのだけれど。

「やめなさい。」

黒髪ロングが星のようにキラキラと靡き、その人は僕の前に立った。

「いじめ?自分が弱い者の上に立って満足?」

そう、鋭い視線を相手に送りながらツンツンとトゲのある言葉を発するのは櫻澤雪だった。

僕は櫻澤雪とちゃんと話したことも、お友達でも無かったのに僕を助けてくれた。

それに怯えたのか、いじめっ子達はどこかへ言ってしまった。

少し間を置いて、座り込んでいた僕に櫻澤雪は手を伸ばしてくれた。

「大丈夫ですか?」

「あ、ありがとう」

手をぐっと引っ張ってもらうと、さっきまで上から見ていた櫻澤雪が今は同じ目線…いや、少し僕のほうが高いので少し見下ろす形になった。

「ダメですよ。」

「え?」

「貴方、いじめにあっているのに反撃しないなんて、ダメですって言っているんです。」

「あ、すみません。」

僕は俯きながら髪の毛に手を当てる。

櫻澤雪の言っていることは正当だ。虐められているのに、反撃をしないのはやはり自分が弱いからだ。だからこそ、彼女の言葉が胸に刺さった。

「次もし、あいつらに何かされたら今度はちゃんと立ち向かいなさい。いいですか?」

「は、はい!」

櫻澤雪の林檎のように美しい赤色の目がこちらに少し近づき僕のことを見上げている。

「では、またいつか」

そう言うと彼女は僕の前から姿を消した。

そう、姿を消したのだ。

それ以来、彼女をこの学校で見なくなった。転校したのだ。詳しくは知らないが、親の都合でここよりもずっと遠い所へ行ったらしい。






「え、」

そして、そんな彼女が今日

「?」

僕の前に現れたのだ。

「櫻澤…雪?」

僕は戸惑いながら彼女の名前を言う。咄嗟に出てしまったので、少しオドオドしつついた。

「あ、え、えーと」

傍から見たら引かれてしまうその行動に櫻澤雪はじっとこちらを見つめている。

「あなたは?」

櫻澤雪がこちらに話しかけてきた。

「え、あー僕?」

「あなた以外誰がいるの」

中学の頃と変わらないそのツンツンとトゲのある声に僕はまた戸惑う。あの時は僕ではなくそのいじめっ子に向けた言葉だったので余計にだ。

「僕は新谷尚。前、同じ中学だったんだけど…」

そう小さな声で言う。

「そうなの?知らないわね」

「え?」

僕の中で時間が止まった。

ショックだったのだ。ずっと想っていた人に忘れられていたのだ。いや、確かにそうかもしれない。あの少しの出来事なんて覚えているはずもない。



でも、やはり少し寂しかった。僕の初恋の人に忘れられていたなんて…。

















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君と同じ空を見上げた人 @Aya0321

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