君と同じ空を見上げた人

第1話 バカバカしい日常とスパイス

人は愛があるように見えるが、それは嘘である。



例えば、自分の好きな人がいてその人と結ばれることが出来た。しかし、ふとした時相手から「あなたとはもう無理。別れよう」と言われた。では、いつから僕のことを嫌いになったのか?例えば何ヶ月も前からだったのか…。そう考えるといつから貴方からでた「すき」という言葉はいつから偽りだったのか?

結論、人は愛があるのかわからなくなる。






と、変な妄想をしつつ、ノートに尽くしている今日の午後。お昼休みの後。一生懸命授業している新人の先生の話を聞くわけでも、隣のヤツの落書きを見ようともせず、ただ窓際の席で桜を眺めている。眺めていると言っても、頭の中は決して、桜が綺麗だとか、そんなことは何ひとつとして思っていない。僕、新谷尚は愛について考えた。

しかし、残念なことに僕には付き合った人などいない。小中ともにぼっち。女子と話した事は、全くない。最近話した人といえば、母である。昨日、ロンドンにいる母から意味もない連絡が届いたことくらいだった。

「じゃあ、30ページを…そうだなぁ…。新谷くん」

元々異性から好かれるどころか、同性からも好かれない。そんなやつに彼女なんてものは出来るはずもない。

「新谷くん!」

そして、また桜を見る…。が、刹那。

「え、」

僕は桜ではなく、その近くを歩いている一人の女の子に目を奪われた。黒髪ロングで、昔と変わらない四つ葉のクローバーとハートのヘアピンをつけている女の子。可愛いというよりかは、綺麗な女の子。

バン!

「いったぁ」

「新谷くん?さっきから当てているんだけども?」

ほかの教科より少し分厚い教科書で叩かれた。上を見上げるとそこには、茶髪でふわふわして、確か「ひーちゃん」と呼ばれている国語科の先生が僕の目の前に立っていた。

「新谷くん?お昼休み後で眠くなるのはわかるけどね、ちゃんと当てられたら答えなさい!」

「はい」と言う代わりに少し頷き、教科書30ページを読み始める。

(そういや、さっきの子…)

そう思いながら、理解などしていない文を読み始める。




罰として、国語科の先生からクラスメイトのノートを全て持ってこいと言われた。40人近い分のノートをせっせと運ぶ。職員室は2階。僕のいる教室が1階なのだが、職員室には校舎を1つ跨いでから行かなくてはならない。

先輩やら部活動に行く人とすれ違うのが、何故か気に入らない。

そんなこんなで職員室に着いた僕は、塞がった両手を必死で動かしてドアを開ける。もちろん、僕のことを知ってる人がいる訳では無いのでドアを開けてくれるのは先生くらいだ。しかし、その先生も生憎どこにもいない。カリカリと動かして、ようやっとドアを開ける。足でひょいとドアを閉め、国語科のひーちゃん先生のところに行く。

「ひーちゃん先生」

コーヒーを飲んでいる途中のひーちゃん先生は僕の呼び掛けにコップを急いで置く。

「ひっ、ひーちゃんではありません!」

「あーすみません。」

「もー新谷くんは!」

すこし頬をぷくっとしながら話す。これが同級生なら一瞬で恋に落ちていたくらい可愛らしい。

「あ、えーとこれ。」

そんな想像をやめ、先生に国語のノートを渡す。

「あら、ありがとうございます。」

ひーちゃん先生は片手で口元を隠しながらあわあわともう片方の手を僕の持っていたノートの方へそっと置く。

「いえ」と一言添え、会釈をしてその場を去ろうとした時…。

「先生。」

どこかで聞いたことのある声。凛としていて、でもどこか優しい声…。

「来週から転入する櫻澤雪です。」

聞き覚えのある声だと思った。やはり、やはりこの人だ…。櫻澤雪…。




















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