第12話
放課後、スマホに届いたのは、わかりきったメッセージだった。
―――今日は木嶋さん達と遊ぶ約束だから、一緒に帰れないと思う。ごめんね
うん、知ってた。
教室での会話からこうなるであろうことは予想済みだ。
だから僕もすぐに「わかった、先に帰ってるね」とだけ打ち返し、一度大きく息を吐いた。
今僕がいるのは、昇降口へと続く廊下の一角だ。
HRが終わった後、すぐに教室を出たから人気も少なく、美織達もまだ教室内でたむろっていることだろう。
彼らに追いつかれる前に学校を出ようと、足を前に向けたタイミングで、スマホが震える。
まだなにかあったんだろうかと、確認のために目を落とすも、そこには美織からの新たなメッセージが表示されていた。
―――よかったら、コウくんも一緒に参加しない?
それを見て、僕は思わず顔をしかめてしまう。
あまりにもありがた迷惑な誘いだったからだ。
「いくわけないだろ…」
美織なりに僕を気遣っての誘いだったのかもしれないが、僕が参加したところでどっちらけるだけだろう。
行ったところで邪険にされるのが目に見えてる。
いや、美織だけは積極的に話しかけてくれるだろうけど、そのことでクラスメイト達からの反感を買うのは目に見えて明らかじゃないか。
「ごめん、パスっと…」
目に見えた地雷を踏む馬鹿はいない。短く断りの返事を送り、僕はまた大きく息をつく。
声をかけれらたくなかったから、こうして先に教室を後にしてきたわけだけど、それはやっぱり正解だった。
教室で直接声をかけられていたら、もっと断りづらかったことだろう。
(こういうこと、最近増えたよな…)
こうして美織からの誘いを断るのは、一度や二度じゃなかった。
何度か誘われ、そのたびに断っていたのだが、そのせいで教室だけでなく帰宅してからの会話も上手くいかなくなっているように感じる。
いくら誘ったところで、僕の性格上応えることができないことは長い付き合いからわかってるはずだ。
あるいは、これが美織からのSOSであったとしても、応えることなんでできないことも、彼女なら理解してると思う。
なら何故こうして何度も僕を誘うのだろう。
今の美織が空気を読めていないなんてことはないと思うが、それが少し引っかかる。
だけど、考えたところでどうしようもない。
話し合うべきなのかもしれないが、それをしたところでなにかが変わるとも思えないからだ。
僕と美織の立ち位置は、確実にずれ始めているのだから。
(それを修正するには、きっと…)
ひとり思考の渦に沈みこもうとしたところに、もう一度スマホの震えが伝わってくる。
まだなにかあるのだろうかと少しうんざりしつつ確認し―思わず目を丸くした。
―――ねぇ、今度の休み、デートしない?
それまでの流れをぶった切る、彼女からのデートの誘いだった。
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