第5話 中学生時代 それぞれの道

3月。ボク達はサクラの雨の中卒業式を迎えた。


あれほど練習をサボっていたカケルがボクとソウタのロードワークに合流するようになって1ヶ月。笑える変化が起きた。


「背が伸びた?」

「15は伸びたんじゃね?」


5人の中では1番低かったのに1番高くなってしまっていた。


「もう今更サイズ変更とかひどくない?」

トモが小さくボヤく。


「顔も性格もナイスなオレ。更に身長までとは神様も罪ですなぁ」

「顔は認めますが性格はどうかと思います、カケル様?」

ソラ、言うねぇ、とみんなで大笑い。


学校もなくなり、当然部活などなく自主トレ以外の時間はトモの家に集まってワイワイと騒いでいた。あと少しで別れるボクらは必死に思い出を作ろうとしているみたいだった。


「ソウタとオレな、来週日曜日出発するわ。電車で行くことにしたから」

「そら、急ですな、と言いたいけど。俺も実は同じ日だな。時間は違うかもだが」


突然にカケルが、そしてタイチが告げる。

3人が同じ日のほぼ同じ時間に出発することになっていた。


「寂しくなるね」


ボクは思わず言ってしまった。

すぐに照れくさくなって反対を向いた。


「ラインつないでるじゃん。1日1回必ず入れようぜ。なんて言うんかな。定時連絡?」

「おう。夜9時にな。忘れるなよ」

OK。りょ。と各自。


「日曜日出発なら土曜日写真撮りに行かないか?」

トモの提案に皆、反対はなかった。


……


[13時いつものようにオレんち集合!]


土曜日。イキナリのラインで起こされた。


「9時やん。トモご乱心?」


トモの部屋はボクの部屋から見える。

このところずっと夜遅くまで電気がついて何かしているのがみえていた。あまりの真剣な様子にいつものように声をかけることができずにいた。


「ソラ、起きてる?」

窓越しにトモが話しかけてきた。

返事の代わりにカーテンと窓をあける。

「おは。なに?」

「ん~。別に。なんかね」

頭をポリポリかきながら、少し寝るから1時間したら起こしてとそのまま寝てしまった。


……なんだよ、もう。


小さな頃から見慣れているはずのその寝顔。

それなのに……。


スマホをだして、数枚。


トモは知らないよね。

窓が開いてるとき、ドキドキしながら撮っていた。もう覚えてないくらい小さな頃から。

寝顔。机に向かってる後ろ姿。朝の支度姿。

いろんなトモが残ってる。


ったくさ、全然変わんない顔して…。

無防備過ぎやん。

盗撮になるんかな?


ベッドではなくてその下で丸くなって寝てる。

いつものその姿もいただいて、スマホを戻す。


……


きっちり1時間後にトモを起こす。

用事があるって言っといて寝ちゃうって失礼やん、お預けされてるワンコと同じやん、と立て続けに文句を言う。


「ゴメンて。先に見せたかったんだけどさ」

眠いのに負けた訳だ。


「コレ。どうだ」

薄いグリーンのTシャツ。右肩から左腰にかけて5色のストライプ。背中には大きく『Team Sora』と左腕に『Sora』。

「カッコいいじゃん」

「みんなの分あるよ。ビックリさせようと思ってさ」

「コレ着て写真撮ろ、いっぱい、ね」


みんなで集まる最後の日。

さあ、………。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

このオモイ、とどきますか…… 神稲 沙都琉 @satoru-y

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ