第3話 中学生時代 その2

中学に入って3年の間、ボクの胸はボクの気持ちを全く無視して大きくなっていった。

身体の中もどんどん大人の階段を駆けあがっていく。毎月一度訪れる鬱陶しいものに心底ウンザリさせられていた。


トモやタイチ達もすっかり様変わりしている。タイチなど、柔道をしていることもあり以前とは別人だ。クマのような身体でボクを軽々とネコ持ちしてくれる。ホント、嫌味なヤツだ(笑)。


ボクとトモ達とは前のようにはあまり絡まなくなった。トモとは表面的には変わらずなのだろうが、なんとなく壁を感じる。

寂しい。


トモ達が騒がしくジャレているのをぼんやりながめている、ボク。もう前みたいにはできないんだろうか?ヤツらと目があえば何事もなかったように筋トレを始める。


ムナシクナイ?


ワカンナイ。サビシイ?


放課後。ボクは部活へと大急ぎで向かう。

2年の夏休み途中でバスケをやめ、陸上一本にしぼった。皆で力をあわせてやる、ってのになんだか気まずくなり、陸上に変えた。


走っている間は頭が空っぽになる。

風が凄く気持ちいい。

そう、感じたときはタイムがのびている。


……


「えっ、タイチ。タイチ、ちょい待って。ソレ、本当に本当の話しなの?」

久しぶりにグループで集まっていた。

それぞれ、部活など何もない日曜日。

トモの家に集まってゲームをしていた。


「ソラが俺らさけてたからなかなか言えなかったのよ〜、なあ」

カケルがふざけて言う。

「俺とソウタはサッカーで行くよ」

カケルとソウタはクラブが運営している専門学校へ進むと言う。

「ソラがいたら俺、ダメだったかも」

ソウタは笑いながら言う。

そらそうだ、ソラに感謝しろとトモとカケルが茶化す。

今までの変なわだかまりがなくなって前に戻ったみたいだ。


「トモは。なんだっけ」

オイッとツッコミが入る。

「ボクは服飾に進む。やりたいことたくさんあるからね」

意味ありげにウインク。なんだ?

「ボクはまだ決まってない」

ボクは正直に答える。みんな凄いな。やりたいことがちゃんと決まってる。

「ソラはさ、陸上でもバスケでもサッカーでも声がかかってるじゃん。勉強もなんかスゴいとこ声かかってるって聞いた」

ソウタがバラした。

「なんで知ってんだよ!」

つい、声が大きくなってしまった。ゴメン、と小さく謝る。


「とりあえず。ボクらは卒業してバラバラになっても。チームソラの隊員だ。ソラ隊長の一声でどこへでも集合することを誓いますっ」


何だそれ、と全員がカケルを指さして大笑いする。ヒデェ忘れたのかよ、とカケルはすねる。


「あっ、待って」

トモがいきなり部屋を出ていく。

数分後、戻ってきたときは小さなマントとバッチを持っていた。


「それぞれ。みんなで作ったじゃん」

「いやいや、作ったのは自分です」

そういえばトモがみんなのマントを作ったっけ。懐かしいな。


もう一戦やろうぜ、とタイチが声をかけた。


ボクはこのまま時間がとまればいいな、と考えていた。




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