第4話話題を···
俺と橘はバイトを終え、本屋を後にした。陽が落ち、辺りは暗くなり、夜風が吹くなかで自転車を押し歩く俺の隣に彼女が歩幅を合わせながら夜道を歩んでいた。
彼女は電車通学らしく、高校からバイト先である本屋にしても電車と徒歩で通っているとのこと。本屋から近場の駅まで徒歩の彼女と隣に並び、帰っている現状が夢のようだ。
以前にも何度か二人で帰ることはあった。
しかし、俺から誘ったことなどないし、彼女に誘われたこともなかった。
重度のコミュ症ではないが、彼女ほどのコミュ力は備わっておらず、他人との会話はぎこちないことが大半だ。
飲み屋、飲食店、スーパーといった建物が建ち並び、スーツ姿の男性や女性といった仕事帰りの社会人だったり、制服姿の高校生や大学生らしき男女といった通行人が行き交い、比較的に活気がある。
「──のバンドを聴いてますよね、何かおすすめはありますか?」
「うん、おすすめ......ですか、それなら──」
話題を振るのは彼女からばかりで彼女に返すので精一杯な俺は助けられてばかりだ。
駅に到着してしまえば、彼女と話せるひとときの幸せは終わりを迎える。
なんとか、俺から話題を......他愛ない話題でも──。
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