第1話…エピソードⅨ…夏営地イマキヤ…

★中央アジアの人々のことわざ

できることなら笑顔で屈託なく生きよ、喜びが過ぎ去るとしても、

つらさもまた永遠ではないのだ。

1364年7月下旬の日曜日昼12時……夏営地イマキヤ

 テムジンたち14名とイヌワシ狩人たち27名及び兄弟姉妹・従兄弟従姉妹

たちがチュメニから帰って来た。全員イヌワシと猟犬を伴い、

沢山の獲物をらくだに乗せてきた。

全員に大金貨を10枚ずつ与えて労をねぎらった。


 テムジンがアドリアンにイヌワシの若いメスを一匹と大きな白い犬をくれた。

イヌワシの世話はラドミラのお母さんラガドに任せた。

白い大型犬だけ連れて行くことにした。

この白犬を白牙はくがと名付けた。

色が白くて牙が大きいからである。


 テムジンたちの騎馬に立派な馬具を新しく付けた。

弓だけが古いままである。

アドリアンは有名なトルコ弓……注①を使おうと考えた。

ただ製作するのに時間がかかるので何処かで購入せねばならぬ。

アドリアンはベルケサライにならあるかも知れないと考えた。

無くても毛皮やコークスを売って儲ければ良い。

アドリアンは全部隊総出でベルケサライへ向かった。


8月中旬の日曜日午前9時……ベルケサライの市場

 幸いトルコ弓は売っていた。バカ高い値段だ。

はりに付き大金貨1枚もする。

大金貨4000枚支払って4,000張り購入した。


 トルコ弓は来月にならないと入荷しない。

コークスを100トン売った。

小金貨50万枚つまり大金貨5万枚で売れた。

毛皮は売値が安くここでは売らなかった。


 小麦、ライ麦……の材料……やテンサイ、

馬鈴薯ばれいしょ、牧草、大麦、えんばく、塩などを

大量に購入して大金貨1万枚支払った。


 珍しい馬が目についた。大柄な馬で如何にも敏捷そうな黒馬だ。

アドリアンは気に入って購入することにした。

なんと大金貨100枚もする。思い切って購入し、

天翔てんしょうと名付けた。


 10歳~15歳までの男女の各種奴隷も購入した。

技術力のある奴隷は小金貨5枚必要だ。

選りすぐりの者ばかり男5,000名、女5,000名購入した。

小金貨3万枚支払った。


 木材を50年乾燥した物を4万張り分大金貨4,000枚費やして購入した。

弓職人を10名雇用した。鍛冶屋、農機具、武器製作の技術者及び

交易商人をそれぞれ10名合計40名雇用した。


 昼から格闘技大会があるようだ。


8月中旬の日曜日午後1時……ベルケサライの広場

 アドリアンとジェベ及びテムジンがそれぞれ騎馬戦、騎馬弓射撃、

格闘技に参加した。3人とも他を圧倒して優勝した。

サライのハンであるムラドに表彰され面目を施した。

ムラドからは3人にペルシャ風の反った佩刀はいとう

を一振りずつ与えられた。

アドリアンはジョチ・ウルスにおける交易商人の許可を与えられた。


 影の支配者ママイ29歳の妻トゥルンベク・カナム25歳の知遇を得た。

ママイはアドリアンを利用したいようだったが婉曲に断った。

トゥルンベクはベルディベク・ハンの娘である。

******

注①……トルコ弓

 トルコ弓は主に松などの針葉樹をベースに、

水牛の角、アキレス腱の膠を張り合わせて強度を増す。

各パーツの貼り合わせや補強には魚の浮き袋のにかわ

接着剤として使う。

 この植物性素材と動物性素材の組み合わせがコンパクトながら

他に類を見ない威力、射程距離を生み出している。

600mの射程距離は非常に魅力があるが時間がかかる。

 制作時は伐採した木材を50年乾燥させ、2年かけて弓に仕上げる。

ひとつの弓ができるまでに2世代の弓職人が必要になる。

こんなに時間がかかっては実用にならない。

******

★アドリアン14歳

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る