第12話

「いやいやいやいや。えっ!? いや、何してんの!」

「お詫びのキス」

「お詫びっていうか、ただのAさんの自己満足でしょ」

「バレた? ていうかAさんって誰?」

Aさんは、はにかみながら後ろに振り向く。

「あのボスモンスター?」

「舐めてんのか」

「てへぺろっ」

「はぁあああああああ。最悪だぁ……」

可愛いアピールするAさんを横目に、頭を押さえながらしゃがみ込む。

いやまあ、Aさんは可愛いから、可愛いアピールはおかしい、ていうかその考えがおかしい、何言ってんの私!


「アメリカじゃこれが普通だよ? 知らないの?」

「最近は外人も、過度なボディータッチはしないって学校で習ってますけど」

「うっ! 日本の教育恐るべし……」

Aさんは、コミカルな動きで頭を押さえて後ずさる。


「てな茶番はさておき、キミ。名前は?」

「知らない大人には名前を教えるなって先生が」

「いやキミそういう優等生キャラじゃないでしょ。知らないけど」

くっ、バレたか。

「瀬良」

「下の名前は?」

Aさんは優しく聞いてくる。

「俠華。任侠にんきょうの俠に、蓮華れんげの華」

「へぇ、随分かっこいい名前だね」

外人にはわからなそうな漢字で伝えたのに、理解したように指で文字をなぞりながら答えるAさん。


「私はオリヴィア。オリヴィアメルリ。よろしくね、キョーカ」

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