第11話

「……っててて」

首を押さえながら、Aさんは笑って立ち上がる。

「派手に飛ばされたけど、大丈夫そうだね」

「……勝手に巻き込んでおいて何その言い草」

思わず陰キャクオリティの、話かけるなムードが出てしまった。

客観的に見て今の返事は流石にまずかったか。


「あははっ、ごめんごめん。つい可愛い子がいたから話しかけちゃった」

「へ?」

??

可愛い子? どこに?

「え、ボクの眼の前に」

「え、どこ?」

可愛い子がいるなら見ておきたいものだ。

後ろを振り返るも誰もいない。

「え、だからキミだよ。キミ。わかってやってるでしょ」

Aさんは私の顔を掴んで、グッと正面を向かせる。


「ほら、可愛い顔。ボクの好み」

Aさんはにっこり笑って、スッと顔を近づけてくる。

「えっ、あっ、ちょ」

「動かないで」

半径30cmゾーンに立ち入ろうとするAさんから逃れようと、顔を避けるも、ぴっと顔を固定されてしまい動かせない。

「お詫びの印」

Aさんは、チュッと私の頬にキッスした。


「可愛い子、ゲットだぜっ!」

「はぁあああああ!?!?」

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