第10話

「キミィ! 日本人だよね!?」

黙りこくる私なんかお構いなしに、Aさんは私に話しかけてくる。

これはあれだ。

返事したら絶対変なのに巻き込まれるやつだ。

っていうか、その前にあのボスにタゲられる。


「聞こえてるよね!? いるのはわかってるんだけど!」

尚もAさんは続ける。

無視だ無視。

こんな厄介そうな外人、無視してさっさと離れよう。

「って、あっ! ちょちょちょまずいって!」

Aさんはまだ何か叫んでいるが無視。

このまま無視し続けよう、と私が意思を固めた途端、私の体は宙に勢いよく吹き飛ばされた。

まるで噴水のように。


「へ……?」

しかし驚けたのは一瞬で、数刻後私の身体は急降下を始める。

「はぁっ!? え、ちょっ! えっ!?」

「キミィ! 早く体軸回さないとそのまま死ぬよ!」

何故か私の横から聞こえてくる声の方を向くと、Aさんも笑いながら私と一緒に吹き飛ばされていた。

「くるよっ!!」

癪に触るが、完璧なタイミングで着地の瞬間を合図するAさん。

私たちは、ほぼ同時に飛び前転受け身の構えで着地し、衝撃を最小限に抑えながら無様にも地面を転がっていく。





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