第9話

「さてさて、モンスターは---」

眼前にあった大きな岩の影に隠れながら、私は湖を偵察する。

あわよくば現状ポップしている敵の数を確認しようと思った私の目に飛び込んできたのは。

予想だにしなかった光景だった。


「……人?」

湖にいたのは、私と体格は同じくらい、だから165くらいの一人の女性だった。

明るい茶色の髪の毛と顔つきからして、アメリカ系だろうか。

まず間違いなく日本人ではない。

アメリカ人(仮称)Aさんは、Aさんの背丈の10倍くらいはありそうな巨大モンスターと戦っていた。

何故今までわからなかったのか、と言うような戦闘による激しい地鳴りとそれに伴って押し寄せる激しい波飛沫の音が、私の電子データ上の鼓膜を揺らす。

えっ。

ていうか、スルーしかけてたけどAさん余裕で水の上走ってる……。

てか、あの敵絶対ここらへんのボス。

普通はボスレイド組んで、大人数でかかるような相手。

それを一人で……?

イカレてるとしか思えない。


「ねぇ! そこのキミ!」

まずい。

初めて戦場で会った他人、しかも外人に興味をそそられて、思わず顔を乗り出してまじまじと見過ぎた。

私は慌てて首を引っ込めるも、遅かった。

Aさんはボスモンスターから距離を取るように下がりながら、私の隠れている場所から、大岩を挟んでちょうど反対側に来た。

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