第7話
「飲みにいかないか?」
閉店作業をしながら新人の子に声をかけると
「わぁ、誘ってくれるの待ってたんですよ~」
目をキラキラさせ嬉しそうに浩介の腕に抱き着いた
「そういえば、街でデートしてるとき以外に誘ったことはなかったな」
浩介はこれまでアパートの近くで誰かと飲みに行くのを無意識に避けていたことに気付き、何故避けていたのかと考えてみたが答えはでない、浮かんでくる言葉はどれも透明で認識することが出来なかった
・・・・・・
「今日も楽しかったですよ~またデートしてくださいね、先輩」
笑顔でひらひらと手を振り駅へ向かおうとする所を、浩介はちょっと待ってと呼び止める
「うちに泊まり来なよ」
「・・・いいんですか?」
人差し指を頬に当て少し考えたようなポーズをしてから新人の子は答える
「初めてなんだ、もっと一緒にいたいって思える人に出会ったのは」
新人の子は目を細めながら浩介の手を取ると、返事の代わりにニコリと笑う
コンビニに寄って大量の酒とおつまみを買い込み、手を繋ぎながら二人はアパートへの道を歩く
途中、誰かの視線を感じたような気はしたのだが、部屋に着いてからの事で頭が一杯になり浮かれている浩介にとってそんな小さな事はどうでも良かった
やがて浩介は週一、二回しかバイトに入らなくなり、その時間をデートに費やすようになっていく
上目遣いで頼まれればブランドのバッグだろうと躊躇うことなくプレゼントをする
控えていたはずの仲間たちとの飲み会も徐々に増えていき、頑張って溜めていた貯金もあっという間に底をついた
なぜお金を貯めていたのか、浩介はその理由も分からなくなっていた
「別に、以前に戻っただけだ」
言いくるめるように自分自身に語り掛ける
同じ頃、浩介は針で突かれたような腹の痛みに悩まされるようになった
薬を飲んでも治る気配はなく、近所の病院で診療を受けるが原因は分からない
「あーくそっ、なんで治らねぇんだ」
痛みを堪えながら、仰向けに部屋の床に寝転がると同時に携帯の通知音が鳴るが、画面を見るのも億劫だと放り投げてから深い眠りについた
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