第4話
アパートの敷地を出ると生暖かい風が吹き抜ける
人影の見えない道を歩いて浩介は近所にある公園へと向うと、街灯に照らされたベンチにどかっと深く座り、深呼吸をする
「さて、どうすっかな。警察を呼ぶか、一先ず誰かの家に転がり込んで様子をみるか・・・」
浩介は手に持ったワインの残りを一気に飲み干してから腕を組んで考え始めた
(警察を呼ぶというのは少々ハードルが高いかもしれない、部屋に大鎌を抱いた少女が寝ていたなんて信じてもらえるのだろうか?
いや、信じてはもらえないだろう、少なくとも俺だったら信じない)
酔っぱらいの戯言と思われるかもしれないし、場合によっては職質されて終わりという可能性も高い
「・・・泊めてくれる奴を探すか」
浩介は携帯を取り出し、いつもつるんでいる仲間に電話をかけ始めた
自分のアパートで過ごすより人の家に転がり込んでいる日の方が多い浩介にとって、泊めてくれる仲間を探す事は日常茶飯事だった
こんな事なら自分のアパートになんて帰るんじゃなかったと後悔しつつ、静かな公園に呼び出し音を響かせた
・・・・・・
一人、二人、三人と電話をかけていくが誰も出ることはない、呼び出し音だけが淡々と流れていく
「おかしいな」
焦燥感に襲われながら四人、五人と立て続けに電話をかけるが、誰一人として電話に出る事はなかった
携帯を握りしめ、しばらく虚ろな目で暗い宙を眺めていた浩介は怒りが込み上げて来るのを感じ始めた
やがて何かを決意したようにすっと立ち上がり、一度は役目を終えた空の瓶を再び手に取った
「人の家に忍び込んで寝ている方が悪い、例え何があろうと俺は悪くない」
自分に言い聞かせるように呟きながらアパートへの道を歩き始めた
アパートに近付くにつれて腹の痛みが大きく鋭くなっていく、片手で痛む個所を抑えながらも侵入者への怒りで頭が一杯になった浩介が足を止めることはなかった
公園へ向かう何倍もの時間をかけて帰宅すると、
浩介はそこで再び混乱の渦に叩き落されることになる
真っ先に目に入ったのは、台所で料理をしている幸の姿だった
「おかえりなさい」
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