2-102.黒幕と新しい影
飛空船の中にはアーリムの姿があった。彼は今、他の案件を解決し、イトマーラへと帰る道中にある。
アーリムは船内の個室でソファーに身を委ね、ワイングラスをくゆらせながら、ゴールドスカラベの実況投影を見ていた。そこで彼は、柱の間の入り口での石像たちや、柱の間内部での聖霊との戦い、そしてジェニファーが
「君が言ったとおり、スカラベをバレーヌの服に付けておいたおかげで、面白いものが見られた」
満足げに語るアーリムのそばには、一人の少女がいた。彼女はアーリムと同じソファーに座り、飼い猫のように彼の胸元に身を寄せている。
二人はもちろん、
「ラメルス先生が手を下すよりも前に、未来の『
十代後半という見た目の少女は、「くるりんぱ」にアレンジを加えた亜麻色のローテールをなびかせ、足を組んでいる。肩や腰、太ももが覗くセクシーなドレスが何とも艶やかだ。
「逃がした『尖兵』の連れてきた援軍は予想外だった。まさか、未来の英雄・
少女は切ない表情で、アーリムを上目遣いに見た。
「そう言うわりに、嬉しそうね、先生?」
「英雄と関われるなど、とんでもない栄光だからね」
「でも、これからどうすればいい?プランは続けるの?」
「ああ、言ったとおりに続けてくれ」
「でも……」
「宿命だよ。私はやるべき役目を果たす、何があろうとも」
「分かったわ、仰せのままに。それで、あの後輩はどうするの?」
投影された映像には、のぞみの深刻な表情が映し出されている。アーリムは悪意ある笑みを浮かべた。
「ふふ、構わない。カンザキノゾミ、彼女には最高のステージを用意する。命が尽きるまで、踊り続けてもらおう」
「先生ったら、意地悪ね」
少女は嬉しげに頬を赤く染め、妖艶な甘い笑みをこぼした。そしてご褒美でも求めるように、両手をアーリムの首に絡めると、そっと唇を近付けた。
飛空船はさらに飛び進み、雲海の中へと飛び込んでいく。
その晩、フミンモントル学院の研究室で、ヘルミナの変死体が発見された。
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