2-101.治せない傷
未来から来た『
「いつまで待つんでしょう……お腹がぺこぺこになってきました」
「コールちゃん、ポーションで何とか凌ぎましょうヨン」
前戦で戦っていた
手当ての済んだティム、ラーマ、楓たちは、目を閉じて精気を養うようにして時間を過ごしている。柱の間には、聖霊を養えるだけの自然の
「そういえば、島谷さんは大丈夫なんでしょうか……?」
心配するのぞみに、楓が薄く目を開けて応えた。
「んだな、
ラーマが目を閉じ、気を安定させたままで続ける。
「ハヴィテュティーさんが、彼の意識がまだあると言いました。おそらく、ダンジョンのどこかに落とされたのでしょう」
「ふん、肝心な時にさっさと離脱しちまうとはな。修行が足りないぜ」
「
京弥はばつの悪そうな顔をすると、ティフニーの手当てに協力しているのぞみを遠く眺めた。
「それはたしかに、今後の課題だ。それよりも、神崎さんの許嫁(いいなずけ)ってのが、まさかあの男とはな……意外すぎるぜ」
京弥は彼の顔をはっきりと覚えている。それは、冬休みに
「神崎さん、ハイニオスに転学してきた理由を、彼への憧れって言ってたッスよね?そりゃ、あのレベルの男がお相手なら、わざわざ
「そこまで!女の子の恋バナの詮索はなしだべ?」
「ははっ、悪いッス。でも、あんな強い奴が許嫁なんて、つい色々と気になっちまうッスね」
噂話が原因か、のぞみが小さくくしゃみをした。
周囲の心苗が各々のペースで休息を取っているなか、のぞみは少しも休まずに、ずっと蛍のそばで、救急処置を見守っている。
「ハヴィー姉さん、森島さんは……?」
「ええ、二人の『
「『章紋術』でも完全には治せないなんて……」
「彼女の骨の一部は、人造金属でできているようなの。『ヒーリング』が効かないのは、きっと普通の素材ではないんでしょうね。モリジマさんのプライバシーに関わる部分ですから、私には何も言えません。できることはただ、生命反応を引き伸ばすことだけ」
のぞみは蛍の深い傷の奥に、金属の脊髄が覗いているのを見た。それは彼女の過去にまつわる秘密だろう。
学校での蛍は、決して模範生ではなかった。だが、実際に戦いが始まれば、誰よりも前に出て、のぞみを庇うことにも一切、躊躇わなかった。のぞみは蛍が、いざという時に強い心を持っているのだということを、改めて知った。
「私にも手伝わせてください。
「それは心強いですね」
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