2-94.不死身

その頃、ダンジョンでは、のぞみたちが石像と戦闘を続けていた。


 修二は黄色い光を剣に強く纏わせ、鋭く石像を斬る。集中的に斬撃を食らわせたあと、大きく斬り払って吹き飛ばした。

 メリルは突進し、加速の重みを生かして石像を縦真っ二つに潰す。そして、潰れた石像を飛び越えると、足を踏ん張って着地し、


「ギガークローブレイクヨン!」と、動きを止めて言った。


 藍は『易経雷火剣えききょうらいかけん』を繰り出すと、スイたんを翳す。瞬時にスピードアップすると、電光石火のように走り出した。スイたんの七連続の斬撃は橙色に光り、石像は砂人形のように粉々に崩れ落ちる。


 デュクとヌティオスは背中合わせで戦っていた。

デュクが右手を大きく挙げて強い光を集め、『ボンバーグラッシャー』を打つと、ヌティオスもほぼ同じタイミングで、下の二本腕で『豻王咆哮弾かんおうほうこうだん』を投げ出す。ヌティオスの相手取る石像は向こうの岩壁にぶち込まれ、大きめの光弾を食らったもう一体は橋から落ちていった。


 ジェニファーも光の刃を長く伸ばした二本のさいを手に、確実に石像を刺し抜き、足蹴にした。後ろから攻めてくるべつの石像が迫るよりも前に、とっさに柄を回し、精確に股関節を刺す。まるで、石像の動きを先読みしているかのような見事な反転攻撃だ。さらに、奇襲を試みる石像をも蹴散らしていく。

 これは全てあの人の罠だ。

 そう思うと、ジェニファーは強く歯を食いしばりながらも、戦闘に対して強気で向き合うことができた。


(私の命をもらうというのは、こういう意味だったのか?!関係ない者まで巻き込むような、こんなやり方、私は決して認めない!)


 のぞみたちは健闘したが、石像は何度でも回復していく。めり込んだ石像は岩壁から抜け出し、橋から落下し、溶岩に飲まれたはずの石像すらも、大きな翼を振って舞い戻ってきた。


 さらに、石像たちには恐るべき学習能力があった。回復した者たちは、急にレベルアップしたように、妙に賢い動きをするようになった。のぞみたちの繰り出した技、スキル、攻撃パターンを覚えているかのように反応し、一度は効いたはずの技が簡単に躱される。攻撃に変化を付けるようにしても、やがて石像を倒すのが困難になっていくのは目に見えていた。


 のぞみも、動きのパターンに変化を付けながら『日月乱舞』を繰り返していたが、石像ガードたちとの戦いにゴールが見いだせない。

 次第に苦戦していく仲間たちを見て、こんな時に限って操士ルーラーのスキルが封じられていることが悔しくてたまらなかった。


(……八咫烏やたがらすを盾にして皆を応援できれば、もっと上手くいくはずなのに……)


 のぞみは刀を振りながら、腕に結ばれた縄を見て険しい表情になった。それでもしっかりと石像を倒していく。


(挫けちゃダメ、諦めちゃダメ。私が今できる技で、自分を守るだけじゃなくて、皆を応援しないと……)

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