第6話 ひとりっ子、サンタクロース信じない
ひとりっ子だと可愛がられるか厳しくされるかの2極化だと
私は思っている。もちろん、私の両親は厳しく私の家はクリスマス・キャロルのスクルージの会社かと思うほど厳しかった
小学生の時のお小遣いが毎月500円だ。
500円ですよ?奥さん、今どきのサラリーマンだって毎月もらっていますよ、奥さん。
私は誰に話かけている。奥さんて誰だ。
閑話休題。
よって【?】私はサンタクロースを幼稚園の物心つくかつかないかと思う時から信じていなかった。
子供は親に愛されるほど、長くサンタクロースを信じると言う論文まであると言うのに、我ながら不憫な幼稚園児だった。
しかし、世間は残酷なもので毎年クリスマスになると幼稚園ではクリスマス会と言うメルヘンで子供に夢をあたえる行事がある。
体育館で全さくら組さんだの可愛い名前の組の子供が集まり、歌を歌いサンタクロースに扮した園長先生がお菓子の袋を配ってくれる貧しい私の家にはありがたいお菓子セットが配られる日でしかなかった。
ちなみに、クリスマスは私を可愛がってくれた祖父母が毎年、リサーチをこっそりして高い人形やお菓子を買ってくれていたので満足だった。
行きたくもない風化しつつある年末の打ち上げの忘年会のように私は小さな背中に哀愁をただよわせながら忘年会・・・否、クリスマス会で盛り上がる体育館に向かった。
余興が終わり・・・否、歌や踊りが終わり少し照明が落とされた体育館にサンタクロースに扮した園長先生がさっそうと登場。
子供達が盛り上がる。私も同じ子供だが。
「サンタクロースさーん」と子供が引き留めるものだからアイドルの出待ちなみに園長先生の歩みが遅い。
さっさとお菓子をもらって私は家に帰り日常に戻りたかった。
隣かしこで騒ぐ知らない組の子供達の浮かれぶりに、まだ理性がそれほどない子供の私はイライラし始める。クリスマスなのに。
園長先生がやっと半分配りおえるあたり、私に限界がきていたのだろう。
「あのサンタクロース、園長先生だよ」
思わずとなりの子に言ってしまっていた。
「うわあああ」と泣き出してしまい、私はしまったと思いつつ
信じていたのかと、その子をうらやましくもなった。
「おやおや、どうしたのかな?」
泣いているとなりの組の子供をあやして笑わせる園長先生。
「楽しいクリスマスを」
しらけたてぼんやりした顔の私を喜ばせようとする園長先生。
今、思うとテレビやSNSでみる太っちょの白ひげの会ったこともないサンタクロースより一人一人の子供の気持ちに寄り添う園長先生は、本当のサンタクロースだったのかもしれない。
大人になった今、私はおじいさんになっているであろう園長先生のサンタクロースをどこかで信じている。
一人っ子の人生 桜海 ゆう @yuharuhana888
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