第3話 一人っ子、孤食

小学生の高学年から、両親共働きの私は、夏休み、冬休み、午前中だけの授業の時は、孤食が当たり前でした。



学校から帰ると、母親の「何か買って、食べて」の置き手紙と千円が、暗い部屋のテーブルに置いてあるだけです。


それを見た瞬間、寂しさとそれでも食べなきゃいけない虚無感と現実が押し寄せた。


他人事のように、自分のランドセルが床に落ちる音を聞きながら、ドスンと心まで床に落ちる音がしたのを、大人になった今でも覚えてる。


近くのコンビニで、適当なパンとジュースを買って、また暗い部屋に戻る。


テーブルの上に置く、レシートとお釣りのカチャカチャ鳴る音。


独りで食べる、味気のしない食事。



私は、大学生になった後も、大人になった後も、いまだに人と食事をすると、ぎこちなく、独りで食べると、何も感じない孤食にほっとする、


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