神ガ形ノ意思ニ背イテ 拾壱話

登場人物名


榊原 義弘さかきばらよしひろ

32歳

大雑把な性格だが、部下を率いる防衛隊の一部隊の隊長。

説明下手でよく橘花たちばなに訂正される

勝田かつたを気に入り、傍に置いて色々指導している。

任務中ではかなり頭が回り、戦場をかけている。

筑波つくばとはかなり長い付き合いらしい

昔受けた負傷が今も身体を蝕んでおり

いつ死んでもおかしくない




勝田 信二かつたしんじ

24歳

熱い正義感と無鉄砲な若さを持つ新人隊員

士官学校卒の元警官であったが、魔怪まかいの襲撃の際に同僚たちの不甲斐なさに失望し、単身挑むも死にかけそこを榊原さかきばらに助けられる

任務より目先の命を優先することが多く、危険な目に合うことが多い

中井なかいから教わった破装拳はそうけんを扱い

射撃の腕も上がってきており、実力が伸びてきている




須加 正樹すがまさき

30歳

榊原さかきばらの下についている隊員の1人。

榊原さかきばらの適当な説明には慣れているようで大体の説明で内容を理解している

部隊の中では狙撃を務める事が多く、高い位置からの索敵が得意である

先の任務で足を負傷しており、現在は入院中である/




中井 亮なかいりょう

29歳

渋谷のバーでバーテンダーをしている男性

とある事件により視力がほとんど無いらしい

勝田かつたを弟子に取り、武術を教えている




街田 茂まちだしげる

49歳

榊原さかきばらの師匠

大雑把でガサツな性格だが実力は確かで引退後の現在も英雄譚が受け継がれている

現在は記者をやっているようだが、身の上話をしないためどこに属しているかは不明




代永 丈しろながじょう

36歳

榊原さかきばらよりも少し前から防衛隊に所属している隊員

嫌味を言うような性格で榊原さかきばらたちからは嫌われている

金こそ全てという性格の持ち主

射撃技術や統率能力は高く、そこだけを言えば榊原さかきばらよりも上である

先の任務以降行方不明となっている




橘花 真由美たちばなまゆみ

27歳

榊原さかきばらの説明を理解し、作戦伝達を務める事の多い女性隊員

榊原さかきばらとは長く同じ隊で行動しており、一番彼の考えや特性を理解している

戦闘では弾幕を張ったり、他隊員の立て直しの時間稼ぎや牽制けんせいを行う




筑波 柊つくばひいらぎ

年齢不詳

マッドサイエンティスト気質な女性

魔怪まかいの研究に人生を捧げており、クローンとなり長年研究を続けている

未だ研究結果を世界に公表することなく、自身のみで使っている

現在はなにか新たな兵器を製造することにご執心の様子




東郷 椎菜とうごうしいな

19歳

学園を卒業し、何かの目的を以て部隊に所属した。

自分の実力を疑わず、隊員と特に須加すが勝田かつたとは反りが合わない事が多く、独断で行動することが多い。

かなりの実力者で、榊原さかきばら管轄の部隊で個人戦力は群を抜いて高い。






Nは→後のキャラ演者が読む

※所々交代があるので注意してください。かなり大変です。






VHAぶいえいちえー

突如世界に現れた「魔怪まかい」と呼ばれる怪物を駆除するために設立された軍

Variant Hunt Army通称VHAぶいえいちえーと呼ばれる軍は

自衛隊や警察組織と違い、独立した権力を持つ

一般人や学園卒業者の中で実力保有者が入隊することができる

VHAぶいえいちえー兵を総称して兵員と呼ばれている




魔怪まかいについて

2000年に突如現れた異形の生命体。

理由や目的は不明だが人類を脅かす存在。

現れた当初は世界でも数十体しか確認されなかったが、年々数を増やしていた。

出現方法も繁殖方法などは不明となっている。

魔怪まかいの姿形は現存した生物に類似している為

生物が魔怪まかいに変異した説や妖怪や幽霊といった類である説だったり

一部では神の使い等と吹聴ふいちょうしている宗教までいる。




CARDIEDカディドとは

その素性、人員、目的一切が不明のテロ集団

突如姿を現れては殺戮を行う事から市民から恐れられている






役表


勝田 信二かつたしんじ♂:

街田 茂まちだしげる♂:

筑波 柊つくばひいらぎ♀:

東郷 椎菜とうごうしいな ♀:

神蔵 修也かぐらしゅうや 不問:






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神ガ形ノ意思ニ背イテ 拾壱話






N→街田 茂まちだしげる

CARDIEDカディドのアジトに突入した榊原 義弘さかきばらよしひろ勝田 信二かつたしんじJジャックと呼ばれる幹部と激しい戦闘を繰り広げ、遂に決着がついた。

戦闘に勝利した榊原さかきばら勝田かつただったが

二度にわたるNE-XUSネクサス使用の反動を受けて

隊長 榊原 義弘さかきばらよしひろは身体の限界を迎え、命を落としてしまう。


一方、建物外周を回り挟み撃ちを狙っていた

須加 正樹すがまさき橘花 真由美たちばなまゆみ東郷 椎菜とうごうしいなの三名はそこに現れた神蔵 修也かぐらしゅうやと戦闘を開始し

ついにその攻撃を受け須加すが橘花たちばなは死亡してしまう。


修也しゅうやとの圧倒的な戦力の差に焦る東郷とうごう

榊原さかきばらからNE-XUSネクサスの腕輪を託され、仲間を助けるために合流を急ぐ勝田かつた



修也しゅうやVS東郷とうごう

どちらかが死ぬまで、この戦いは終わらない

決着の時はすぐそこまで迫って来ていた。






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N→筑波 柊つくばひいらぎ

東郷とうごう修也しゅうやの戦いは一時の平穏を迎えていた。

お互いに出方を伺っており、修也しゅうや東郷とうごうを見たまま微動だにしない。

その間に東郷とうごうは少しでも勝機を掴むため、頭の中で作戦を練っていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

(このままじゃ勝ち目はない

こっちの攻撃はほとんど見切られる上に

私は相手の刀が当たれば一撃でやられる

策を考えないと…)



N→筑波 柊つくばひいらぎ

東郷とうごうは手に持つサブマシンガンをチラリと見る。

この銃は今回の任務のため至急されたもので、まだ使ったことがないものだが

銃の型を見るに射撃レートや威力はコ型の拳銃の上位互換と言えるであろう。



東郷 椎菜とうごうしいな

(この中に入っている弾は

弾の形状がライフル弾と同種で貫通に特化された徹甲弾

これが当たれば通常の弾丸を受け付けない身体であってもダメージが通るかもしれない

というより…これが通らないとなると諦めるほかないわね)



N→筑波 柊つくばひいらぎ

東郷とうごう修也しゅうやの方を注視した。

刀はこちらに向けたままあだが東郷とうごうの動きを待っているようだ。

その表情は以前として無表情だが余裕の色が透けてみえる。



東郷 椎菜とうごうしいな

(ほんと嫌な奴ね…

負ける気がないからって余裕綽々とは……

でも…うだうだ考えてても仕方ないわね

この一撃が通らなければ私の負け

ただそれだけの事…いつもそうやって考えてきたはず

今日もそんな単純な裏表の賭けをするだけ…)



N→筑波 柊つくばひいらぎ

東郷とうごうがグッと銃を強く握ると

それに気づいた修也しゅうやが口を開く。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「死ぬ覚悟は決まったか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「そうね…腹は括ったわ

ただ負ける気はないわ

貴方を殺すつもりで行くわ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…そうか」



東郷 椎菜とうごうしいな

(勝田かつたさんと隊長は一体なにをしてるのよ……

肝心な時に何の役にも立たないなんてね……

これだから他人ってのは使えないのよ)



N→筑波 柊つくばひいらぎ

東郷とうごうは銃口を修也しゅうやへと向けた。

攻撃をする直前、再び攻撃のプランを思案する。



東郷 椎菜とうごうしいな

(死銃乱射デスガトリングの動きは読まれてしまう

普通に撃っても当たらない

少しでも相手の隙をついた一撃を繰り出して撃たなければいけない

それが通らなければ私の負け……不利な賭けね

…ただ1つだけ

上位の相手でも通る可能性が高い技がある

初見でそれを見切るのは困難

でも、この技はできたら使いたくはない)



N→筑波 柊つくばひいらぎ

東郷とうごうが一気に修也しゅうやへと距離を詰める。

急速な切り返しから修也しゅうやの背後へと周り、蹴りを放つ。

だが修也しゅうやは脚を片手で掴み、そのまま東郷とうごうを投げ飛ばした。



東郷 椎菜とうごうしいな

「ぅ!!!」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

投げ飛ばされた勢いで東郷とうごうは背中から壁に叩きつけられる。



東郷 椎菜とうごうしいな

「がはッ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「まずっ――――」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

修也しゅうやが間髪入れずに壁にぶつかった衝撃で怯む東郷とうごうへと斬りかかっていた。

東郷とうごうは咄嗟に上体を反らして回避行動をとる。

斬撃は寸でのところで東郷とうごうには当たらず、顔の真横を掠めていた。

その一刀は壁に斬撃痕が残るほどの強力な一撃であった。



東郷 椎菜とうごうしいな

「危ないわね……」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

東郷とうごうの頬は斬撃により軽く切れており、傷口から血がゆっくりと滴っていた。

直撃を免れた事に安堵しながらもその血を袖で拭うと東郷とうごうは作戦を再び練り直す。



東郷 椎菜とうごうしいな

(こんな回りくどい策が通じるような甘い相手じゃないわね

舐めてはいるんだろうけど油断はしてない

ほんと…つくづく嫌な奴ね)



神蔵 修也かぐらしゅうや

「何度も言うがお前は俺には勝てない」



東郷 椎菜とうごうしいな

「そのようね…私と貴方じゃ相当な差がある

その目の力といい…なんなのよそれ

貴方…本当に人間なの?」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

その言葉を聞いた瞬間

修也しゅうやの目が少しだけ揺らぐ。

光る眼は普段のものと違い、動揺がわかりやすく映るようだ。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…どういう意味だ?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「心当たりがないなんて言わないでよ

そんな奇妙な目をしておいてただの人間ですとでも答えるつもり?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……それもそうだったな

……あまり他言するようなことではないが

少しぐらい教えてやってもいい」



東郷 椎菜とうごうしいな

「あら?随分気前がいいじゃない

その機嫌のまま私を見逃してくれたりしない?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「残念だがそうはいかない」



東郷 椎菜とうごうしいな

「ケチな人ね…

それで、いったいその目はなんなの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……」



東郷 椎菜とうごうしいな

「カグラの血ってのと関係があるの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……!?

どこでそれを…?」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

修也しゅうやは驚いたような瞳をする。

まだ攻撃を仕掛けてくる様子がないのを恐る恐る確認しつつ質問を続けた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「何のことを指すのかはよくわからない

けれどCARDIEDカディドの中で重要なワードであることは間違いない

そうでしょ?

それについては教えてはもらえない?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………」



東郷 椎菜とうごうしいな

「またそれも答える気がないってやつ?」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

修也しゅうやは少しだけ視線を逸らす。

片目を抑えるように手で覆うように隠す。

手を離すと片目だけが通常の瞳に戻っていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「この目…これがカグラの力の一つだ

これを使用すると通常時より更に感覚が研ぎ澄まされる

例えばお前の心臓の鼓動

それに目線や動作、音の発生源や大きさ

すべてが鮮明に情報として頭に浮かんでくる」



東郷 椎菜とうごうしいな

「なによそれ……その時点で既に人の成せるものを超えてると思うんだけれど」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それだけじゃない

この力を解放したことによって俺の皮膚は硬質化される

ただの刃物や銃弾程度では俺に多少の傷ですら付ける事はできない」



東郷 椎菜とうごうしいな

「どっちも効かないってわけ…?

それこそもう化け物の領域だと思うけれど

あまりに現実味がなさすぎてにわかには信じがたいわね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「信じるかどうかは好きにしろ」



東郷 椎菜とうごうしいな

(嫌なことを聞いたわね……この弾丸が通るかわからなくなったわ)



N→筑波 柊つくばひいらぎ

修也しゅうやが再び片目を抑えると再び緑色の不可解な光を発する瞳になっていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「目が…戻った……どうやらひとつも嘘はついていないようね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「理解したか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「えぇそうね……戦意を大きく削がれるようなとてもいい話だったわ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「話は終わりだ

お前もまだ打つ手があるんだろ?

それを早く見せてみろ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「…そこまで見抜いているなんて流石ね

そうよね…手を抜いて勝てる敵じゃない……」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

東郷とうごうはサブマシンガンを腰にさげると正面から修也しゅうやに攻撃を仕掛ける。

修也しゅうやは反撃に斬り返すがそれをものともせず拳を突き出した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「正面から…?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「はぁっ!!!」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

東郷とうごうの一撃が修也しゅうやへと当たる直前、瞬時に後方へと飛び下がる。

だが、それに合わせるように東郷とうごうは両腕を突き出す。

その手にはいつの間にか腰から持ち直していた二丁のサブマシンガンが握られており、銃口を修也しゅうやへと向けていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なに…!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

死銃直射デスレール!!』



N→筑波 柊つくばひいらぎ

拳を突き出した構えのまま銃を高速で連射した。

回避の体勢をとった修也しゅうやは空中に浮いたままであり、その攻撃を避ける術を持たない。

放たれた弾丸が修也しゅうやへと命中する。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ぐ!!?」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

連射された銃弾が修也しゅうやの身体へと命中し、後ろに下がる勢いのまま地面へと倒れ込む。

修也しゅうやは膝をついた状態で刀を杖代わりに立ち上がろうとしていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんだ今の技は…?ぐっつ!!」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

修也しゅうやの口から緑色の血が垂れてくる。

射撃を受けた腹部を手で抑えながら血をぺっと吐き捨てた。



勝田 信二かつたしんじ

「攻撃と同時に撃つとはな……」



東郷 椎菜とうごうしいな

「考えたものでしょ?

…って言ってもこの技は元ネタがあるんだけれどね」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

そう、この技は東郷とうごうが以前見た技を参考にしたものである。

代永しろなが勝田かつたの戦闘の際

勝田かつたが殴りの動きのまま射撃へと移る一撃を見せた。

それを東郷とうごうは咄嗟に思い出し真似をしたのだ。

だが東郷とうごうはこの技を使うのを少しだけ躊躇っていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

(勝田かつたさん如きの技なんて使う気なかったけど

でも技としての完成度は高いと思ったわ

実際に神蔵 修也かぐらしゅうやほどの相手にも効くんだからかなり有効な技よね…

どこで思いついたのか、誰から教わったか知らないけど

なんにせよ攻撃は当てられた、助かったわ

……これで勝機は見えてきた)



東郷 椎菜とうごうしいな

「形勢逆転ね

どう?流石にノーダメージとはいかないわよね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っ……そうだな

思ったよりも効いた…

だが、たかが銃弾の攻撃だ

俺を殺すには不十分だったようだな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「冗談でしょ?」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

修也しゅうやはゆっくりと立ち上がる。

多少のダメージは受けているようだが、あまり重傷ではないようだ。



東郷 椎菜とうごうしいな

「嘘でしょ…これでもまだ効かないっていうの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そうだな…今のを何十回も受ければ危ないが

そう何度も撃てるほど弾が残っているのか?」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

東郷とうごうは予備のマガジンを確認する。

あと2マガジン、30×2の60発。

当然ながら全くといっていいほど弾が足りない。



東郷 椎菜とうごうしいな

「………ほんとクソみたいな状況ね

これも効かないなんて……」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

東郷とうごうは焦りの表情を浮かべる。

修也しゅうやにはこちらの攻撃が通らない。

もう東郷とうごうに打つ手はなかった。



東郷 椎菜とうごうしいな

「万事休―――」



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさん!!!」



N→街田 茂まちだしげる

近くのアジトの扉が開くのと同時に勝田かつたの声が響く。

出口からは傷だらけでボロボロの状態の勝田かつたが腕を抑えながら立っていた。



勝田 信二かつたしんじ

「よかった…!無事だったんですね!!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

勝田かつたさん…?」



勝田 信二かつたしんじ

「これ……は………どういう事なんですか!?」



N→街田 茂まちだしげる

勝田かつたはその状況を見て驚愕の表情を浮かべる。

多量の血を出しながら動かない須加すが

首を斬られ頭のない状態で倒れている橘花たちばな

二人の死を察して勝田かつたの表情は絶望の色に染まる。



勝田 信二かつたしんじ

「ぁ…‥‥…!!な……なぜなんだ……!

須加すがさんに…橘花たちばなさんまで…………!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……」



勝田 信二かつたしんじ

「くそぉぉぉぉぉ!!!!」



N→街田 茂まちだしげる

勝田かつた東郷とうごうが向きあっている相手を見た。

自分よりも年下で東郷とうごうよりも若いであろう青年が二人を殺したのだと理解する。



勝田 信二かつたしんじ

「くっつ!!お前が…!!二人を殺したのか!!」



N→街田 茂まちだしげる

勝田かつたはマグナムを片手持ちのまま修也しゅうやへと向けるが

既に満身創痍の勝田かつたの手はブレブレでどう見ても当たるとは思えない状態であった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「こいつも防衛隊員か…中から出てきたということは……

まさかJジャックが負けたのか…?」



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさん!下がってください!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……!?」



N→街田 茂まちだしげる

勝田かつたの左手にはNE-XUSネクサスの腕輪が握られている。

それに気づいた東郷とうごうは走って勝田かつたへと近づく。



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさ――――」



東郷 椎菜とうごうしいな

「つ!!!」



勝田 信二かつたしんじ

「ぐはッ!!!」



N→街田 茂まちだしげる

突如として東郷とうごう勝田かつたの腹へ向けて蹴りを繰り出した。

その蹴りを受けて勝田かつたは吹き飛ばされる。

勝田かつたは手に持っていたものを手放しそのまま地面に倒れ込んだ。



勝田 信二かつたしんじ

「と……東郷とうごう……さん!!?

いったい……なにを……!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……良いところに来たわね」



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうは歩きながらどこかへと向かう。

勝田の近くまで寄るとかがんで何かを拾う。

それは勝田かつたが蹴られた拍子に投げ飛ばしてしまったNE-XUSネクサスの腕輪であった。



勝田 信二かつたしんじ

「そ………それは……………」



東郷 椎菜とうごうしいな

「これ、借りるわよ」



勝田 信二かつたしんじ

「……何をする気ですか!!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……1つ聞くけれど

これを貴方が持っているということは隊長は死んだの?」



勝田 信二かつたしんじ

「……………はい」



N→街田 茂まちだしげる

勝田かつたは悔しそうにぐっと唇を噛み締めながら俯く。

その表情を見て東郷とうごうは事の顛末を察した。



東郷 椎菜とうごうしいな

「そういう事ね……だいたいわかったわ」



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうは腕輪を自身の腕に着けると修也しゅうやに向き合う。

勝田かつたはそんな東郷とうごうを止めようと手を伸ばすが激痛が襲い掛かりまともに動くことができなかった。



勝田 信二かつたしんじ

「ぐ……!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「どうせ動けないんでしょう

そのまま見てなさい」



勝田 信二かつたしんじ

「それは…榊原さかきばらさんのです

東郷とうごうさんが…使うことができるんですか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……さぁね?

あの科学者がその機能を入れていれば使えるかもね」



勝田 信二かつたしんじ

「それはどういう…?」



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうは腕輪をもう片方の手で握りしめる。



東郷 椎菜とうごうしいな

「貴方の言ってたこと正直そんなに気にしてなかったけど

今だけは貴方の言葉を借りるわよ、隊長さん

いつだって…自分らしくあれ

だったわよね」

『装着』



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうがコードを口にすると英語の羅列が腕輪から鳴りだした。

榊原さかきばらの身体に巻き付くように黒い根が伸びていく。

次第にスーツへ姿を変えていき、鈍く光ると完全に形成された。

榊原さかきばらの時と違い東郷とうごうの身体に合うように調整されているようだ。

東郷とうごうは形成されたスーツの性能を確かめるように身体を軽く動かしている。



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさんが…NE-XUSネクサスを!!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「やっぱりね…残してると思った

これも計算通りってところ?

でもなんでもいいわ…せっかくだから思惑に乗ってあげる

いいのよね、筑波 柊つくばひいらぎさん」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なんだそれは?」



N→街田 茂まちだしげる

修也しゅうや東郷とうごうを見ながら驚いた顔をしていた。

少し眺めた後、なるほどと言った表情をする。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そういう事か…

魔怪まかいを使って兵器を作ったのか

よく考えたものだな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「へぇ、よくわかるわね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「当然だ、わからないわけがない

カグラの血と魔怪まかいの遺伝子は密接な関係にあるからな

俺が一目見れば間違えたりしない」



東郷 椎菜とうごうしいな

「そうなのね…それについても聞きたいけれど

このスーツはあまり長時間戦えないのよ

ってことで始めましょう」



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうは腰に銃を下げ、腕をしなるように構えた。

その動きに合わせてサーベルようなものが飛び出す。

以前榊原さかきばらが使っていたものよりも一回り長くなっており

片腕のみではなく両腕から出ていた。



勝田 信二かつたしんじ

「あれは…この前よりも進化している!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「いくわよ!!」

『デュアル・ブレイド!!』



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうはサーベルを使って修也しゅうやへと斬りかかる。

両腕から連続で繰り出す斬撃を修也しゅうやは全て刀で受け止めた。

完全に抑え込んだかと思った修也しゅうやだったが、刀身からピシッと音が鳴ると少しだけ距離をおく。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なに…?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「あら…やっぱりすごいわねこれ」



N→街田 茂まちだしげる

修也しゅうやの持つ刀はところどころに大きな傷が入っており

いつ壊れてもおかしくないほどボロボロになっていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「まだまだ他にもあるのよ

見てみる?」



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうが両腕を重ねるとサーベルが引っ込み、腕から棘状の装備が片腕に4つずつ形成され始める。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…凄まじいものだな

まさかここまでとは」



東郷 椎菜とうごうしいな

「次行くわよ」

『ソーン・ミサイル!!』



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうが両腕を突き出すと棘が腕から離れ、まるでミサイルのように勢いよく修也しゅうやへ向けて放たれた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っ!!!」



N→街田 茂まちだしげる

修也しゅうやはその棘を全て刀で切り落とそうとする。

だが棘に刃を当てた瞬間、先端が大きな音をあげながら折れてしまう。

残った棘を避けるべく修也しゅうやは大きく態勢を変えてそれを回避した。

だが、その回避の動きに合わせて間髪入れずに東郷とうごう修也しゅうやへと殴り掛かる。



東郷 椎菜とうごうしいな

「もらったわ!!

はぁぁっつ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ぐっつ!!」



N→街田 茂まちだしげる

空中で大ぶりに振られた拳の一撃

修也しゅうやはそれをまともに受けて刀を手放しながら吹き飛ばされた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ぐぁっ……!!!」



N→街田 茂まちだしげる

修也しゅうやはその一撃を受けて吹き飛ばされたが倒れることなく体勢を立て直す。



東郷 椎菜とうごうしいな

「アハハ!!流石に効いてるみたいね

流石…科学の力は偉大よね!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っ………確かに予想以上の力だ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「どうする?武器がなくなって形勢逆転よ

今日は妖刀を持ってないようだけど

使わないと負けちゃうかもしれないわよ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……あれは今は手元にない」



東郷 椎菜とうごうしいな

「誰かにあげたの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「貸しているだけだ

あの妖刀は人に貸しても効力を保てるからな

だが…流石に刀がないとなると不利だろうからな

仕方がない…」



N→街田 茂まちだしげる

修也しゅうやは袖をまくり、右腕に力を込め出した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「はぁぁぁぁあぁぁあ!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「何をするつもり?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「はぁぁぁああ!!!!」



N→街田 茂まちだしげる

修也しゅうやの袖の中から黒い触手のような何かが伸びていた。

それは修也しゅうやの腕に巻き付きながら手の先まで巻かれると次第に何かの形になるように手から先へ伸び始めた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「はぁ………はぁ………」



東郷 椎菜とうごうしいな

「は………?それって…なによ」



N→街田 茂まちだしげる

修也しゅうやの手にはいつの間にか刀が握られており

巻き付いていた触手のようなものは刀に吸い込まれるように消えていった。



勝田 信二かつたしんじ

「なにもないところから…刀を作り出した!!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「これをやるとスタミナを使うから避けていたが…仕方がないな」



N→街田 茂まちだしげる

刀身が鈍く光っている。

東郷とうごうは似たものを見たことがあった。

その光り方は以前生徒会室で見た妖刀に酷似しているのだ。

だがあの時見たものと違い、光の強さは比べるのもおこがましいほど弱々しいものであった。



東郷 椎菜とうごうしいな

「それって…妖刀よね?

二つ目を持っていたの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「似ているように見えるが…これは違う

妖刀に似た何か…というべきの名もなきただの模造刀だ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「そんなわけないでしょ

普通の刀はそう光ったり何もないところから生まれたりしないわよ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「悪いがこれ以上は何も答える気はない

そして…これでお前には勝ち目がなくなった」



東郷 椎菜とうごうしいな

「勝ち目が…?どういう事よ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そのままの意味だ

お前はこの刀には勝てない

その兵器をどう使おうがな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「一体その刀はなんなのよ…本当に何から何まで意味がわからない

せめてそれぐらいは教えてもいいんじゃないの?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「死にゆく奴に答える必要性を感じない」



東郷 椎菜とうごうしいな

「ほんとケチな人…」



N→街田 茂まちだしげる

修也しゅうやはゆっくりと東郷とうごうへと向かって歩き始めた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「そんなに言うならこれでどう!!!?」

『デュアル・ブレイド!!!』



N→街田 茂まちだしげる

修也しゅうやに向けて東郷とうごうはサーベルの連撃を浴びせる。

だが修也はそれに対して刀を振るいながら技を繰り出す。



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天斬まてんざん!』



東郷 椎菜とうごうしいな

「うそ!!?」



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうのサーベルが弾かれると刃でぶつかった箇所が綺麗に切断されてしまっていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「くっ!!!」

『ソーン・ミサイル!!!』



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうは後ろに数歩下がりながら間近で腕の棘を発射する。

だがそれも修也しゅうやは刃を振るって技を発動した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天障壁まてんしょうへき!』



N→街田 茂まちだしげる

修也しゅうやが振るった斬撃の後が空中に残り障壁のように棘を受け止める盾のように防いだ。



東郷 椎菜とうごうしいな

「嘘でしょ、これも…!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…!!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「うっ!!?」



N→街田 茂まちだしげる

修也しゅうやの障壁に防がれ、棘が尽きた瞬間

一気に東郷とうごうへと距離を詰めてくる。

修也しゅうや東郷とうごうを通り過ぎ、反対方向へと着地する。

東郷とうごうは咄嗟に距離を離しながら自身の身体を眺める。

するといつの間にか東郷とうごうの身体からは血が流れていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「ぐっ……嘘でしょ……この装備ごと斬るなんて!」



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうの腹部は大きな斬撃が刻まれてあり

NE-XUSネクサスの装備を超えて肉体にダメージを与えていた。

幸いにも本体へのダメージは少ないが少なくとも完璧に直撃されていたら

もっと深い傷を負っていたであることが容易に想像できる。



勝田 信二かつたしんじ

「まさか…!?NE-XUSネクサスの防御力すら超えてしまうなんて…!?

あの少年は…一体何者なんだ!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「くそ……やばいわね……」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「外れたか……この妖刀の使い方がよくわかってなくてな

だがもう把握した

次は確実に当てる」



東郷 椎菜とうごうしいな

「そのようね……」



N→街田 茂まちだしげる

修也しゅうやは先ほど橘花たちばなを仕留めた時と同じ構え方をする。

おそらくこれが修也しゅうやの切り札なのだろう。

東郷とうごう勝田かつたの方をチラリと見る。



東郷 椎菜とうごうしいな

(……ボロボロのあの人じゃ協力しても足手まといにしかならないわね

もうこれしかない…すべてをここに込める

それで勝てなきゃもうおしまいね)



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうは先端が斬られたサーベルを構えながら二丁のサブマシンガンを構える。

そしてその状態で棘を形成させた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「お互い全力の一撃ってところね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そのようだな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「どうやらこれで勝負がつくようね……」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「来い…」



東郷 椎菜とうごうしいな

「えぇ…行かせてもらうわ」



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうはくるりと空へ回りながら飛び上がる。

空中で回転しながら銃を修也しゅうやへと向けると引き金に指をかける。



勝田 信二かつたしんじ

「あの技は…死銃乱射デスガトリング……?

いや…違う!!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

NE-XUSネクサスと私の技の融合…

これが今の私の全力よ!!」

死銃剣暴嵐デスサイズ・ストーム!!!』



N→街田 茂まちだしげる

引き金を高速で連打し、激しい連射を行う。

そしてそれに合わせて棘とサーベルを修也しゅうやへと射出する。

そのサーベルと棘が銃弾の嵐の周りを回りながら発射され、銃弾を何度も何度も反射させ修也しゅうやへと撃ち込む。

その反射によりエネルギーが乗算され、激しい威力と共に修也しゅうやへと襲い掛かる。

それが当たればいくら神蔵 修也かぐらしゅうやであれどひとたまりもないであろう。

だが修也しゅうやはそれに対して奥義を繰り出した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天裂切断まてんれつだん!!!』



N→街田 茂まちだしげる

修也しゅうや東郷とうごうへと一直線に飛び上がる。

東郷とうごうの攻撃は修也しゅうやに降り注ぐも

それを修也しゅうや摩天障壁まてんしょうへきを繰り出しながら自身を守りつつ東郷とうごうへと近づく。

そして東郷とうごうの至近距離まで迫ると鋭い斬撃を繰り出す。

それは最高威力の縦に振り下ろされる摩天楼まてんろうとは違い

真横に薙ぐように繰り出され、更にその威力、範囲、スピードはどんな技をも上回っていた。














ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



N→街田 茂まちだしげる

ぼんやりとした意識の中、東郷とうごうは目を覚ます。



東郷 椎菜とうごうしいな

(ここは……まぁなんとなく想像がつくけど……

負けちゃうなんてね……

………学園に入って実力を伸ばしたはいいけど

二宮にのみやから情報を貰って防衛隊に入って……

やっと見つけたと思ったら…それを逃がして

本命を見つけたかと思ったら…それより仲間とやらを優先して……

優先順位がなってないわね……何やってんだか)



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうは静かに上を見上げる。

ここがどこなのか認識ができない。

走馬灯なのか、あるいは地獄なのか

それともそれ以外の何かなのか

今の東郷とうごうには深く考えることはできない。

東郷とうごうが唯一思いつくことは亡き両親への悔やみだけであった。



東郷 椎菜とうごうしいな

「パパ…ママ……ごめんね

仇撃ち……できなかった」



N→街田 茂まちだしげる

そんな世界の中、東郷とうごうを呼ぶ声がする。

何度も聞いた耳に響くあの煩い声。



東郷 椎菜とうごうしいな

「うるさいわね…

ほんと……もっと静かに喋れないものなの?」



N→街田 茂まちだしげる

再び東郷とうごうを呼ぶ声がする。

その声の持ち主は考えずともわかっていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「もう…いいわよね

深いことを考えるの…やめる事にしたわ

色々と…どうでもよくなった

後はあの口煩い人に任せることにするわ」











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうは一撃を受けて激しく血を吹き出しながら地面に落下した。

血だまりの中、起き上がる力もないようで静かに倒れている。



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさぁぁぁあああぁぁああん!!!!!!」



N→街田 茂まちだしげる

勝田かつたは激痛が走る身体を抑えながらも東郷とうごうへと駆け寄った。

そして東郷とうごうを抱き起こすとゆさゆさと身体を揺らす。



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさん!!!しっかりしてくださいッ!!!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「ぐ…………がぁ………あぁ………

……あーあ………負けちゃった」



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごう………さん………」



N→街田 茂まちだしげる

勝田かつたは悲しげな表情で東郷とうごうを真っすぐ見つめていた。

色々な感情が渦巻き合ったであろうその瞳を見て東郷とうごうはふっと笑う。



東郷 椎菜とうごうしいな

「…なんて顔してんのよ」



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさん……!!俺が…!

あとは俺が戦いますから!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「はぁ………馬鹿ね

勝てるわけないでしょ

私が……NE-XUSネクサスを使っても勝てない相手よ

よく……考えたらわかるでしょ」



勝田 信二かつたしんじ

「でも……それでも!!

俺は……!!!東郷とうごうさんを…!!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「仲間……だから見捨てられないって?」



勝田 信二かつたしんじ

「っ……!!そ…そうです!!

俺は…榊原さかきばらさんに誓ったんです!

俺は隊長になるって…だから……部下を……仲間を守らないといけないんです!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「ほんといつまで経っても暑苦しいわね……

前に変わったって言ったけど

あれ撤回⋯⋯するわ

変わらないわね⋯ずっと」



勝田 信二かつたしんじ

「それが…俺の戦う理由ですから………!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……!!?

ぷっ………ヒヒヒッ!アハハハハ!!!」



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうはケタケタと笑う。

その顔、その笑い方を勝田かつたは見たことがなかった。



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごう……さん……?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「………………デート」



勝田 信二かつたしんじ

「え?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「前誘ってたでしょ………

よく行く…………バーがあるって……」



勝田 信二かつたしんじ

「あ……あぁ……はい

覚えてたんですね…」



東郷 椎菜とうごうしいな

「仕方が……ないから…………行ってあげるわよ」



勝田 信二かつたしんじ

「え…?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「あれだけ…………色々…………聞いた……のよ

………私の………いう事ぐらい………聞いても…………いいでしょ」



勝田 信二かつたしんじ

「そ……それは…………はい!

俺でよければいくらでも!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「そうね……でも……………

今………は……………さ

つかれ………た………から………

また…………こん……ど…………………

………ね………………………………

………か…………つた………さ……ん…………

……………………………………………」



勝田 信二かつたしんじ

「………ッッッ!!!!!」



N→街田 茂まちだしげる

勝田かつたは唇を血が出るまで強く噛みしめた。

NE-XUSネクサスの腕輪から電子音がする。

そしてそれは残酷な真実を呟いた。



音声アナウンス(筑波 柊つくばひいらぎ兼役)

『使用者の心音停止確認

生命反応ロスト

NE-XUSネクサス解除します』



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうの身体からNE-XUSネクサスが解除される。

ボロボロと形成されたスーツが剥がれていき、消滅した。



勝田 信二かつたしんじ

「…………………東郷とうごうさん」



N→街田 茂まちだしげる

東郷とうごうは目を閉じて眠るように死んでいた。

あの皮肉の詰まった言葉や、冷ややかな瞳すらもう見せることはない。

修也しゅうやはそんな二人を静かに眺めていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

ゆっくりと修也しゅうや勝田かつたに近づく。

刀をすっと向けるが勝田かつたは抵抗の意志を見せなかった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「抵抗しないのか?」



勝田 信二かつたしんじ

「俺は……………もう………いいんです

殺してください…………」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

ゆっくりと顔をあげる勝田かつた

その表情は絶望に染まっており

既に戦いの意志や生きる気力などは残ってなかった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「抵抗しない奴を殺すのは俺の流儀に反する

死にたいのならば最後まで足掻いてみせろ」



勝田 信二かつたしんじ

「…もう………身体が………動かないんです………」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………そうか」



勝田 信二かつたしんじ

「どうして………あなた達は……こんなことを………?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…………なぜ……か………」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

修也しゅうやはそれに対して長い間、沈黙した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「これが決められた運命だからだ」



勝田 信二かつたしんじ

「決められた…………?

いったい…………だれが?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それがどうやら人類という種族の罪らしい」



勝田 信二かつたしんじ

「罪だなんて………俺達は…………

ただ……市民を……仲間を……守りたかっただけです………」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「さぁな……だが、お前らはいわば被害者だ

お前ら個人に罪があるとは俺も思わない」



勝田 信二かつたしんじ

「被害者………?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…話し過ぎたな」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

その時、遠くから大きな音が鳴る。

修也しゅうやが上空を向くと、そこには謎の男が飛び上がっており足を振り上げながら修也しゅうやへと蹴りかかってきていた。



謎の男(街田 茂まちだしげる兼任)

『エアロ・ストライク!!!!』



神蔵 修也かぐらしゅうや

「!?」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

上空から振り下ろされるかかと落としを修也しゅうやは両腕で受け止める。

だがその勢いは強く修也しゅうやは膝をついた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っぐ!!?」



謎の男(街田 茂まちだしげる兼任)

「どらぁあああ!!!」

『パワー・フィスト!!!』



N→筑波 柊つくばひいらぎ

着地した体勢のまま、男は渾身のストレートを修也しゅうやに叩きこむ。

腹部にクリーンヒットした一撃を受けて修也しゅうやは吹き飛ばされた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ぐぁぁっつ!!

くっ⋯いったい……何者だ!?」



謎の男(街田 茂まちだしげる兼任)

「ガハハ!!!これ受けて無事たぁ…テメェ!

ガキの癖してタフじゃねぇか!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「この一撃の威力……

的確な攻撃箇所の選別……

まさかお前は…?」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

謎の男は勝田かつたを庇うように立ち塞がると両手の骨をポキポキと慣らしながら修也しゅうやを睨みつける。

勝田かつたはそんな謎の男を見てある男の影が重なって見えた。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん……!?」



謎の男(街田 茂まちだしげる兼任)

「助けに来たぜ」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

その男の姿がはっきりと目に映る。

だがその男は榊原さかきばらではなく、それよりも年上であろう大柄な男であった。



勝田 信二かつたしんじ

「あなたは……?」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

修也しゅうやはその人物に思い当たる節があるようでふっと笑う。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前がそうか……

防衛隊の伝説…豪鬼と呼ばれる伝説の隊員……

街田 茂まちだしげるか…」



街田 茂まちだしげる

「坊主、俺を知ってるのか?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「テロリストや犯罪者にお前を恐れる人間は多い

まさかそんな大物がここに来るとはな

防衛隊を辞めたとか死亡したとか噂が経っていたが…?」



街田 茂まちだしげる

「あぁ確かに防衛隊は辞めたぜ

今回来たのは個人的な頼みからだ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「頼みだと?」



街田 茂まちだしげる

「そういうわけだ!

行くぞ坊主!!歯食いしばれ!!」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

街田まちだ修也しゅうやへと殴り掛かった。

修也しゅうやは刀を構えると必殺の構えを取る。



街田 茂まちだしげる

「おおおおおおおお!!!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天障壁まてんしょうへき



N→筑波 柊つくばひいらぎ

修也しゅうやが刀を振ると刃の残影が修也しゅうやを守る盾となった。

だがそれを見ても尚、街田まちだの拳は止まらない。

まるで盾を殴りつけるように拳を繰り出した。



街田 茂まちだしげる

「どらぁああ!!!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なに!?」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

街田まちだの拳は盾を貫くように殴り抜け

そのまま修也しゅうやへと振りかざされる。

だが修也しゅうやに拳が当たる瞬間、修也しゅうやの身体を透けるように拳を空振りした。



街田 茂まちだしげる

「あ!!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天幻肖まてんげんしょう



N→筑波 柊つくばひいらぎ

修也しゅうやを見失った街田まちだだったが、街田まちだは何もない場所へ向けて拳を振りかぶる。

そして空を切ったかに見えた拳だが金属と硬いものがぶつかるような音が周囲に鳴り響く。



街田 茂まちだしげる

「おらああぁああ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っ!?…なぜ気づいた!!?」



街田 茂まちだしげる

「あ?決まってんだろ!!

勘だ勘ッ!!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「勘で当てられたら俺の技の意味がないな……」



神蔵 修也かぐらしゅうや

(豪鬼……これほどとは

予想以上の実力だ…)



N→筑波 柊つくばひいらぎ

修也しゅうやは少し離れると必殺の構えを取る。



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天楼まてんろう!!」



街田 茂まちだしげる

「んだとッ!!?おおぉぉぉぉぉぉ!!!」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

上から振り下ろされる一撃に対して

街田まちだは両手で挟むように刀を抑えつけた。

横からの強い衝撃により振り下ろす一撃の威力が相殺され

街田まちだに刃が当たることはなかった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「白刃取りだと!!?」



街田 茂まちだしげる

「こんなもんが効くわきゃねぇだろ!!」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

街田まちだは刃を真横に投げ、そのまま蹴りを繰り出す。

修也しゅうやはそれを片腕で抑えるが、強い衝撃に数歩後ろへよろめいた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………ここまでとはな」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

修也しゅうやは両目を抑えるように手で覆う。

すると先ほどまで光っていた両目が次第に普通の目に戻っていった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……ふぅ

これは提案だが、この戦い見送ることにしないか?」



街田 茂まちだしげる

「ぁあ?なんだ坊主、逃げるのか?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「どう捉えても構わない

ここで戦ってもお互いに得がないだろう

お前の目的は…どうやらその隊員を守るためだろうからな

手打ちを受け入れるのなら

これ以上そいつやお前に追撃をしない」



街田 茂まちだしげる

「………ちっ、いいぜ

さっさと行っちまいな」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

街田まちだはポケットから煙草を取り出すとライターで火を点けて吸い始めた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……理解が早くて助かるよ」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

修也しゅうやは背を向けてその場から走り去っていった。



街田 茂まちだしげる

「退き際がいいとは…生意気なガキだな」



勝田 信二かつたしんじ

「………おわったのか?」



街田 茂まちだしげる

「おい、無事か?」



勝田 信二かつたしんじ

「…………は……い」



街田 茂まちだしげる

「あ?!お、おい!!無事か―――」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

戦いが終わった安堵からか勝田かつたの視界はボヤケ始める。

耐えがたい疲労に襲われるとそのまま意識が暗くなっていく。

目の前で倒れる東郷とうごうを見ながら勝田かつたの意識は暗い闇の中へと沈んでいった。



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごう………さん………すみません…………」











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



N→筑波 柊つくばひいらぎ

それから3日後

先の任務の負傷により左腕をギプスと包帯で固定していた勝田かつた

彼は一人で霊安室の前に待機していた。

この後須加すが橘花たちばなの親族が遺体確認に来るとのことで

同じ部隊であった勝田かつたが立会人となることを指示されていたのだ。



勝田 信二かつたしんじ

(……みんな死んでしまった

俺だけが生き残ってしまった……)



N→筑波 柊つくばひいらぎ

勝田かつたは4人の遺体が並ぶ部屋に入る。

顔には白い布が被されており、勝田かつたはその顔をまだ見ていない。

榊原さかきばら橘花たちばな須加すが東郷とうごう

4人の死を勝田かつたは受け止められておらず

未だ遺体を直視することができなかった。



勝田 信二かつたしんじ

(………どうしてこうなるんだ)



N→筑波 柊つくばひいらぎ

勝田かつたはゆっくりと部屋を出る。

すると廊下の奥から二人の人物が姿を現わした。



勝田 信二かつたしんじ

「あ………」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

その二人を見て勝田かつたは深く頭を下げる。

相手も勝田かつたに気づいたようで軽く会釈を返していた。



橘花たちばな父(街田 茂まちだしげる)

「貴方が…娘の隊の勝田かつたさんでしょうか?」



勝田 信二かつたしんじ

「はい…」



橘花たちばな父(街田 茂まちだしげる)

真由美まゆみの父です…」



須加 ひろみすがひろみ(東郷 椎菜とうごうしいな兼任)

「私は…須加 正樹すがまさきの妻のひろみです……

あの………主人は……この奥ですか?」



勝田 信二かつたしんじ

「はい……お二方とも遺体のご確認をお願いします」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

勝田かつたが二人を霊安室に通す。

遺体が眠るベッドの前にそれぞれが立った。

そしてゆっくりと勝田かつた須加すがの顔にかけている白い布を外してその顔を明らかにする。



須加 ひろみすがひろみ(東郷 椎菜とうごうしいな兼任)

「ぁぁぁぁぁ………あなた…

…なんでよ……‥よしえになんて言ったらいいのよぉぉぉぉ!

いやあぁぁあああぁぁあああ!!」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

ひろみはその場に膝をついて泣き崩れる。

須加すがを強く抱きしめ、ひどく嗚咽を漏らしていた。

橘花たちばなの方に移った勝田かつた橘花たちばなの白い布を外す。

すると橘花たちばな父は涙を堪えるように険しい表情をしながらその場でぐっと唇を噛み締めた。



橘花たちばな父(街田 茂まちだしげる)

「ぐぅぅっ………こんのッ………親不孝もんが…!!!

馬鹿野郎ッ!!!」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

橘花たちばな父は橘花たちばなの顔を見ながらぎゅっと拳を握り締めていた。



橘花たちばな父(街田 茂まちだしげる)

「こんな事になるんなら……軍人なんてやらせるんじゃなかった………

俺の……俺のせいだ………」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

二人が悲しみにくれていると橘花たちばな父が勝田かつたの肩を掴む。

俯きながら勝田かつたを直視できないまま振り絞るように声を出した。



橘花たちばな父(街田 茂まちだしげる)

「娘の……最期は………どんな……最期だったんですか?」



勝田 信二かつたしんじ

「え………っと…………その……

おれ………自分は…………

須加 正樹すがまさきさんや橘花 真由美たちばなまゆみさんとは別行動になっていて……

合流したときには既に……息はありませんでした………」



橘花たちばな父(街田 茂まちだしげる)

「そうか………

娘は………娘が命を賭けた意味は……

本当にあったのか?」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

その言葉を聞いて勝田かつたは目を閉じる。

ぐるぐると駆け巡る感情を抑え、勝田かつたはゆっくり口を開く。



勝田 信二かつたしんじ

「自分は……そう信じています」



橘花たちばな父(街田 茂まちだしげる)

「っぐ……………ありがとう………

ありがとう………ありがとう………!!」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

その言葉を聞いて橘花たちばな父の涙腺が崩れ、涙が流れ始める。



勝田 信二かつたしんじ

「自分は席を外します……

何かありましたらいつでもお声がけください……」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

勝田かつたは部屋から出ると廊下に立っていた。

長い間、二人が出てくるのを待ちながら勝田かつたは考え事をしていた。



勝田 信二かつたしんじ

(俺は……なぜ生き残ってしまったんだ

身寄りもなく…弱いだけの俺が………)



N→筑波 柊つくばひいらぎ

榊原さかきばら東郷とうごうには身寄りはなく

二人を訪ねる者はいない。

勝田かつたは数時間待機した後

遺族とその後の手続きを行うべく霊安室を後にした。











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N→街田 茂まちだしげる

勝田かつたは以前から通っていたバーの前に立っていた。

ここのバーテンダーの一人である中井 亮なかいりょうCARDIEDカディドに関与していたため

その責任に負い、店は営業停止処分を受けていた。



勝田 信二かつたしんじ

「………」



N→街田 茂まちだしげる

そんな勝田かつたのポケットから着信音が鳴り始める。

見知らぬ音に驚きながらポケットから何かをゆっくりと取り出す。

その音の発生源はNE-XUSネクサスの腕輪であった。



勝田 信二かつたしんじ

「誰から…?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「やぁ、勝田かつたくん

久しぶりだね」



N→街田 茂まちだしげる

NE-XUSネクサスの腕輪の液晶パネルに筑波つくばの顔が映し出される。

筑波つくばは笑顔で手を振りながら話し始めた。



筑波 柊つくばひいらぎ

「悪いんだけどさ

今からこのNE-XUSネクサスを届けてほしいんだ

ちょっと改良案を思いついてね

今すぐにでも開始したいから頼めるかい?」



勝田 信二かつたしんじ

「わかりました……今から向かいます」



筑波 柊つくばひいらぎ

「それじゃあ自由に入れるようになってるからそのまま入ってきてよ

それじゃまた後でね」



N→街田 茂まちだしげる

筑波つくばがキーボードを押すと通話が切断される。

静かに俯く勝田かつたはゆっくりと研究所へと歩いていった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


筑波 柊つくばひいらぎ

「お届けご苦労様だね勝田かつたくん

さぁて~どんな実践データがとれたかなぁ?

おっ?おおぉぉぉ!!?

こんないい戦いをしてたんだね二人とも!!

流石だね!!」



N→街田 茂まちだしげる

筑波つくばは腕輪を機械にセットしながら興奮した様子でキーボードを激しく操作している。

勝田かつたはその場に立ち尽くしながらそれを眺めていた。



筑波 柊つくばひいらぎ

「ふむふむ~新しく使用したツインサーベルは耐刃物との硬度に問題があり

ソーンミサイルの方は…こっちは4つだと足りなかったかな?

でもこれ以上だとスーツの持続限界に関わって―――」



勝田 信二かつたしんじ

筑波つくば博士……」



筑波 柊つくばひいらぎ

「ん~そうだな

このままだと対A-Class想定が相手だと耐久性に不安要素が残る

新しくVAぶいえー-TiGてぃぐ88つーえいと-09ないんのものを使えば安定化を図りつつ火力向上も見込めそうだ

今の副作用に対して、使用効率を上げるために……」



勝田 信二かつたしんじ

筑波つくば博士!!」



N→街田 茂まちだしげる

勝田かつたが大声をあげる。

だが筑波つくばは背を向けたままこちらを向かなかった。



筑波 柊つくばひいらぎ

「なんだ?まだ居たんだ?」



勝田 信二かつたしんじ

「二人は……NE-XUSネクサスを使いました」



筑波 柊つくばひいらぎ

「うん、知ってるよ」



勝田 信二かつたしんじ

「最後まで…自分の信念に従い戦い抜きました……」



筑波 柊つくばひいらぎ

「そうかい、それで何か用かい?」



勝田 信二かつたしんじ

「どうして……榊原さかきばらさんに………

NE-XUSネクサスを使わせたんですか?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「お、これは……なるほど現存の武器と併用して使用したんだ!

なるほど!これは面白い使い方だね!!

こういう用途を考えると武器と―――」



勝田 信二かつたしんじ

「なぜ…!!あそこまで榊原さかきばらさんに無理をさせたんですか!!」



筑波 柊つくばひいらぎ

「ちょっと今それどころじゃないから後にしてもらえるかなー」



勝田 信二かつたしんじ

「ふざけないでください!!!」



N→街田 茂まちだしげる

勝田かつた筑波つくばを振り向かせて胸倉を掴んだ。

きょとんとした顔をしていた筑波つくばだが、急にむっとした表情へ変わった。



筑波 柊つくばひいらぎ

「なんだい、急に怒り出して?

嫌な事でもあった?」



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさんにも……なぜNE-XUSネクサスを使用させたんですか!!?

これが危険だったってことは…筑波つくば博士が一番わかってるんじゃないんですか!!」



筑波 柊つくばひいらぎ

「…あーーーー」



勝田 信二かつたしんじ

「それなのに俺らをまるで実験道具のように使うなんて――」



筑波 柊つくばひいらぎ

「………あのさ、勝田かつたくん」



N→街田 茂まちだしげる

筑波つくば勝田かつたの手を掴む。

すると女性のものとは思えない驚異的な握力を前に勝田かつたの腕がギチギチと音を立て始めた。



勝田 信二かつたしんじ

「ぐ…がぁぁあぁああっつ!!!」



筑波 柊つくばひいらぎ

「なにか勘違いしてないかい?」



N→街田 茂まちだしげる

筑波つくば勝田かつたの身体を持ち上げると勢いよく壁に叩きつけた。



筑波 柊つくばひいらぎ

「ふッ!!!」



勝田 信二かつたしんじ

「がはっつ!!!?」



N→街田 茂まちだしげる

一瞬の出来事で何が起きたかわからなかったが

激痛と背中を打ち付けられて息が止まったことで状況を把握することができた。



勝田 信二かつたしんじ

「ぐ……こんな…力が……?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「1つずつ訂正しようじゃないか…

まずさ、君は何を勘違いしてるか知らないけどさ」



N→街田 茂まちだしげる

勝田かつたの頭を掴むと強く頭を握り締めた。



筑波 柊つくばひいらぎ

「人のせいにしないでもらえるかい?」



勝田 信二かつたしんじ

「ぐぁああああ!」



筑波 柊つくばひいらぎ

「君たちがここまで戦ってこれたのは榊原さかきばらくんが居たからだろ?

でもさ、その榊原さかきばらくんは死にかけて

普通なら前線復帰なんて出来ない状態だったんだ

彼たっての希望で戦えるように治してあげたのは私だ

それを叶えてあげたんだ

云わば私は恩人だよ

特異体の時だってNE-XUSネクサスがなかったら全滅してたかもしれない

今回の件だってそうだろ?

NE-XUSネクサスがあったからこそ君たちは勝ち

勝田かつたくんが生き残れたのは全部私の力添えがあったからだ

それをなんだい?私のせいにしたいのかい?

まぁ別にどう思ってくれてもいいんだけどさ

君は感謝こそすれど責任転嫁されても困るんだよね

いや、一つ訂正しよう

君の感謝なんか貰っても嬉しくないからね

黙っててくれればいいのさ」



N→街田 茂まちだしげる

筑波つくば勝田かつたの頭から手を離すと席に戻った。



筑波 柊つくばひいらぎ

「わかったかい?

君は私に対して多大なほどの恩がある

それを仇にして返そうが構わないけどさ

私を怨むなんてお門違いも良いとこだよ」



勝田 信二かつたしんじ

「……」



筑波 柊つくばひいらぎ

「確かに二人の事は多少なりとも気の毒だとは思ってあげるよ

けれどいつまでも死人の話をしてても仕方がない

過ぎた事をうだうだ言うのはみっともないよ

男らしくないね」



勝田 信二かつたしんじ

「過ぎた…こと……?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「そうさ、もう一つ君の間違いを訂正しておこう

私の事を正義の味方か何かと勘違いしてるようだからハッキリ言ってあげるよ

私は私以外の人類の事を取引が可能な生物の一種族としか思ってない

人類が滅ぼうが、君たちが死のうが、あるいは無様に生き残ろうが

私には何の関係もなければ興味もない

私は常に研究のためだけに生きてるんだ

だから私に道徳を語ろうが時間の無駄なんだよ

あれだね、犬に論語というだろ

君と私では根本から考え方が違うんだ

それを理解したまえよ

改めて言おうか

私は君たちの味方じゃない

それだけは肝に銘じておきなよ」



勝田 信二かつたしんじ

「…………ッ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「それじゃ私は研究に戻るから邪魔しないでよ

あ、そうそう

NE-XUSネクサス届けてくれてありがとう

手間をかけた礼にお金でもあげるから美味しいものでも食べてきなよ

それじゃあね~」



N→街田 茂まちだしげる

筑波つくばはポイっと1万円札を投げ捨てる。

そのまますっと立ち上がると駆け足で部屋を出ていった。

残された勝田かつただったが数分の間静かに俯いていたが

急にゆっくりと立ち上がり無言のまま建物を後にする。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



N→筑波 柊つくばひいらぎ

土砂降りの雨が降る中、勝田かつたは4人が眠る墓地へと足を運んでいた。

傘を差しながら持参した花を各々の墓の前に置いていく。

手を合わせると勝田かつたは誰に届くわけでもない独り言を話し始めた。



勝田 信二かつたしんじ

須加すがさんや橘花たちばなさんの家族にお会いしました……

なんて伝えればいいか…すごく困ったんですよ……」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

須加すがの墓の方を見る。



勝田 信二かつたしんじ

「奥さんとお会いしました……とても悲しそうでしたよ……」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

橘花たちばなの墓の方を見つめる。



勝田 信二かつたしんじ

橘花たちばなさんのお父さんが来ましたよ……

とても厳しそうな方でしたけど……橘花たちばなさんを大切に想ってたのが伝わりました…」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

榊原さかきばらの墓の方を見つめる。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん………まだまだ教わりたいこと……

沢山あったんですよ………

まだタバコや……女遊びってのも……いつか教えるって……言ってたじゃないですか」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

最後に東郷とうごうの墓の前に立つ。



勝田 信二かつたしんじ

「きっと…いらないって言うんでしょうけど……一応置かせてもらいますね」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

他の墓前と同じく花を置いた。



勝田 信二かつたしんじ

「………………」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

勝田かつた榊原さかきばらの吸っていたものと同じタバコの銘柄を持っており

それを吸おうと箱を空けるが、手元にライターがない事に気づく。



勝田 信二かつたしんじ

「あぁ…ライター……買ってなかった

流石にお墓の前にタバコ置くのは…やめておいた方がいいですかね……」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

そうしていると、一人の男が訪ねてきた。

手に酒瓶を2つ持っており

1つずつ榊原さかきばら須加すがの墓の前に置く。



勝田 信二かつたしんじ

「貴方は……あの時の…」



街田 茂まちだしげる

「師より先に死ねなんて…俺は教えてねぇぞ……馬鹿野郎どもが」



N→ 筑波 柊つくばひいらぎ

その男、街田 茂まちだしげるは手に残った一升瓶を空けぐいっと飲み始めた。



街田 茂まちだしげる

「……それ貰っていいか?」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

街田まちだ勝田かつたの持つタバコに指をさす。



勝田 信二かつたしんじ

「あ…はい!どうぞ」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

タバコを一本手渡すと、街田まちだはライターを取り出しタバコを吸い始める。



街田 茂まちだしげる

「ふぅー…………はぁ……………」



勝田 信二かつたしんじ

「あの……街田 茂まちだしげるさん…ですよね

榊原さかきばらさんから…名前は伺ってます」



街田 茂まちだしげる

「おう、お前はあいつの弟子の……名前なんつってたか」



勝田 信二かつたしんじ

「えっと……俺は勝田 信二かつたしんじといいます」



街田 茂まちだしげる

「そういやそう呼んでたな」



勝田 信二かつたしんじ

「あの……こんなことを…突然言われても……困るかもしれないんですけど…」



街田 茂まちだしげる

「なんだ?」



勝田 信二かつたしんじ

「俺を…鍛えてくれませんか?」



街田 茂まちだしげる

「ぁ?」



勝田 信二かつたしんじ

「俺は…もう……こんな風に……失いたくないんです

その為には…力が必要です……

俺にできることならなんでもやる覚悟はあります…!

なので……その……俺を…鍛えてくれませんか?」



街田 茂まちだしげる

「…………」



勝田 信二かつたしんじ

「その…すいません………急にこんな話をして…」



街田 茂まちだしげる

「……話に聞いたまんまの奴だなお前は」



勝田 信二かつたしんじ

「…話?」



街田 茂まちだしげる

「あいつから頼んできやがってよ

お前を助けてくれってな

まったく…面倒なこと俺に押し付けやがって」



勝田 信二かつたしんじ

「そんなことを…榊原さかきばらが?」



街田 茂まちだしげる

「あぁ…悪いが俺ぁ面倒なことが嫌いなんだ」



勝田 信二かつたしんじ

「そ……そうですよね……」



街田 茂まちだしげる

「弟子が師に頼み事とぁ生意気だがよ

俺に頭を下げて頼んできやがってな

筋通したアイツの頼みを断るってのは俺にぁできねぇ…」



勝田 信二かつたしんじ

「え、それじゃあ…!」



街田 茂まちだしげる

「望み通りビシバシ鍛えてやるよ

だがよ…泣き事や口答えは許さねぇぞ

それにきつかろうがしんどかろうが俺ァ手加減しねぇ

死ぬかもしれねぇぞ?」



勝田 信二かつたしんじ

「覚悟のうえです!」



街田 茂まちだしげる

「ガハハ!!!いい返事じゃねぇか!!

…それじゃ……早速始めんぞ!

着いてきな!!」



勝田 信二かつたしんじ

「はい!」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

CARDIEDカディドの隠れ家と思わしき地帯への防衛隊の制圧作戦

計12部隊で行われたこの一件だったが

生存者は勝田 信二かつたしんじを含め

たったの5名であった。


この事件は情報統制が行われたが情報はどこかの新聞記者によりリークされ

世間に知れ渡る事となる。

この犠牲に見合う成果を得られなかったことで

世間から防衛隊への支持率が急激に低下してしまう。


対して、今回の件の数日後に発生したクラスター対処をV.H.A.ぶいえいちえーが速やかに対処したとの報道も行われ

相対的にV.H.A.ぶいえいちえーの評価が大きく上昇していた。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


N→筑波 柊つくばひいらぎ

街田まちだとの戦闘を終え、離れた位置に戻ってきた修也しゅうやのもとに一人の黒いローブを羽織った仲間が合流する。

その女性は修也しゅうやよりも少し年下ぐらいの少女であった。



茜(東郷 椎菜とうごうしいな兼任)

修也しゅうや様、言われた任務!

完璧に遂行して参りましたぁ!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「成果はどうだった?」



茜(東郷 椎菜とうごうしいな兼任)

「こっちに来たのが確か…30人ぐらいだったんですけど

全員殺しました!

もう余裕でしたよ!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そうか…よくやった」



茜(東郷 椎菜とうごうしいな兼任)

「ありがとうございます!!エヘヘ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それで遥はどこにいる?」



N→筑波 柊つくばひいらぎ

その名前が出ると茜はムスッとした表情を浮かべる。



茜(東郷 椎菜とうごうしいな兼任)

「むぅ……遥は体調がわるくて先にどっか行っちゃいましたよ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「発作か?」



茜(東郷 椎菜とうごうしいな兼任)

「そこまでじゃなくて

ちょっと気分が悪い程度だって言ってましたよ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ならいい…先に遥と合流するぞ」



茜(東郷 椎菜とうごうしいな兼任)

「あ、そうだ修也しゅうや

どうしてすぐにあの大男を殺さなかったんですか?

まだ時間に余裕はありますよね?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「確かに戦えば勝てるかもしれない

だがあいつはかなりの手練れだ

極地を習得するものとの戦いは油断できない

妖刀もない以上不確定要素を避けただけだ」



茜(東郷 椎菜とうごうしいな兼任)

「そうだったんですね!

さすがは修也しゅうや様!

そこまで見抜いていたんですね!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それもあるが…あの場のあいつは俺を倒すことが目的じゃなかった

そういう相手はなるべく殺す気はない」



茜(東郷 椎菜とうごうしいな兼任)

「え~でもいいじゃないですか〜

あんなのいくら死んだって大丈夫ですよ?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………そうだな」











神ガ形ノ意思ニ背イテ 拾壱話 完

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





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