神ガ形ノ意思ニ背イテ 拾話

登場人物名


榊原 義弘さかきばらよしひろ

32歳

大雑把な性格だが、部下を率いる防衛隊の一部隊の隊長。

説明下手でよく橘花たちばなに訂正される

勝田かつたを気に入り、傍に置いて色々指導している。

任務中ではかなり頭が回り、戦場をかけている。

筑波つくばとはかなり長い付き合いらしい

昔受けた負傷が今も身体を蝕んでおり

いつ死んでもおかしくない




勝田 信二かつたしんじ

24歳

熱い正義感と無鉄砲な若さを持つ新人隊員

士官学校卒の元警官であったが、魔怪まかいの襲撃の際に同僚たちの不甲斐なさに失望し、単身挑むも死にかけそこを榊原さかきばらに助けられる

任務より目先の命を優先することが多く、危険な目に合うことが多い

中井なかいから教わった破装拳はそうけんを扱い

射撃の腕も上がってきており、実力が伸びてきている




須加 正樹すがまさき

30歳

榊原さかきばらの下についている隊員の1人。

榊原さかきばらの適当な説明には慣れているようで大体の説明で内容を理解している

部隊の中では狙撃を務める事が多く、高い位置からの索敵が得意である

先の任務で足を負傷しており、現在は入院中である




中井 亮なかいりょう

29歳

渋谷のバーでバーテンダーをしている男性

とある事件により視力がほとんど無いらしい

勝田かつたを弟子に取り、武術を教えている




街田 茂まちだしげる

49歳

榊原さかきばらの師匠

大雑把でガサツな性格だが実力は確かで引退後の現在も英雄譚が受け継がれている

現在は記者をやっているようだが、身の上話をしないためどこに属しているかは不明




代永 丈しろながじょう

36歳

榊原さかきばらよりも少し前から防衛隊に所属している隊員

嫌味を言うような性格で榊原さかきばらたちからは嫌われている

金こそ全てという性格の持ち主

射撃技術や統率能力は高く、そこだけを言えば榊原さかきばらよりも上である

先の任務以降行方不明となっている




橘花 真由美たちばなまゆみ

27歳

榊原さかきばらの説明を理解し、作戦伝達を務める事の多い女性隊員

榊原さかきばらとは長く同じ隊で行動しており、一番彼の考えや特性を理解している

戦闘では弾幕を張ったり、他隊員の立て直しの時間稼ぎや牽制けんせいを行う




筑波 柊つくばひいらぎ

年齢不詳

マッドサイエンティスト気質な女性

魔怪まかいの研究に人生を捧げており、クローンとなり長年研究を続けている

未だ研究結果を世界に公表することなく、自身のみで使っている

現在はなにか新たな兵器を製造することにご執心の様子




東郷 椎菜とうごうしいな

19歳

学園を卒業し、何かの目的を以て部隊に所属した。

自分の実力を疑わず、隊員と特に須加すが勝田かつたとは反りが合わない事が多く、独断で行動することが多い。

かなりの実力者で、榊原さかきばら管轄の部隊で個人戦力は群を抜いて高い。






Nは→後のキャラ演者が読む

※所々交代があるので注意してください。かなり大変です。






VHAぶいえいちえー

突如世界に現れた「魔怪まかい」と呼ばれる怪物を駆除するために設立された軍

Variant Hunt Army通称VHAぶいえいちえーと呼ばれる軍は

自衛隊や警察組織と違い、独立した権力を持つ

一般人や学園卒業者の中で実力保有者が入隊することができる

VHAぶいえいちえー兵を総称して兵員と呼ばれている




魔怪まかいについて

2000年に突如現れた異形の生命体。

理由や目的は不明だが人類を脅かす存在。

現れた当初は世界でも数十体しか確認されなかったが、年々数を増やしていた。

出現方法も繁殖方法などは不明となっている。

魔怪まかいの姿形は現存した生物に類似している為

生物が魔怪まかいに変異した説や妖怪や幽霊といった類である説だったり

一部では神の使い等と吹聴ふいちょうしている宗教までいる。




CARDIEDカディドとは

その素性、人員、目的一切が不明のテロ集団

突如姿を現れては殺戮を行う事から市民から恐れられている






役表


榊原 義弘さかきばらよしひろ &黒いローブを着た男 ♂:

勝田 信二かつたしんじ♂:

須加 正樹すがまさき♂:

橘花 真由美たちばなまゆみ♀:

東郷 椎菜とうごうしいな ♀:

神蔵 修也かぐらしゅうや 不問:

中井 亮なかいりょう♂:






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神ガ形ノ意思ニ背イテ 拾話






N→橘花 真由美たちばなまゆみ

東京郊外外れにある大きな公民館のような形状をした施設。

ここがCARDIEDカディドが使用するアジトであるとの情報を得た防衛隊は計12部隊、総勢70人にも及ぶ隊員を送り制圧作戦を開始した。


榊原さかきばら隊の面々は建物内でCARDIEDカディドの主要人と思わしき人物を発見するも取り逃してしまい

榊原さかきばら勝田かつたが建物内から追いかけ

須加すが橘花たちばな東郷とうごうの三名が建物の外周を回り挟み撃ちにする作戦へと移行する。


だが、建物内を進んでいた榊原さかきばら勝田かつたの前に

かつて防衛隊員であり敵対する事となった代永 丈しろながじょうが現れ二人へと襲い掛かってきた。

突然の接触に苦戦するも榊原さかきばらが放った銃弾により代永しろながを射殺する。

思いがけない接触に困惑する二人だったが先を急ぐことにした

だがそこにJジャックと名乗るCARDIEDカディド幹部が姿を現わす。


その頃

須加すが橘花たちばな東郷とうごうらは襲撃に合いながらも問題なく裏手に回ることに成功し、主要人と接触する。

その正体を須加すがは知っていた。

皆浦 淳徳みなうらじゅんとくという国会議員であり、代永しろなが東郷とうごうの両親を惨殺せよとの命令を出した張本人でもあった。

東郷とうごうは復讐を果たさんと皆浦みなうらへと銃弾を撃ち込むも

突然現れた神蔵 修也かぐらしゅうやによって逃亡を許してしまう。



榊原 義弘さかきばらよしひろ勝田 信二かつたしんじVSJジャック

須加 正樹すがまさき橘花 真由美たちばなまゆみ東郷 椎菜とうごうしいなVS神蔵 修也かぐらしゅうや


二つの大きな戦いが今始まろうとしていた。



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらNE-XUSネクサスの瞬発力を使って俊足で中井なかいに殴りかかった。

だが中井なかいはそれを驚異的な反射速度でひらりと避けると、避ける動きのままで肘うちを腹部に返す。

その一撃を受けた榊原さかきばらだったがNE-XUSネクサスの防御力により怯むことなく追撃の蹴りを放った。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「おらっつ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

中井なかいはその蹴りを後方へと下がって回避した。

榊原さかきばらは追撃が来ると予想していたが

中井なかいは身体の動きが気になるようで拳を握っては開くを繰り返している。



中井 亮なかいりょう

「直撃したのにほとんど効いてないとは…凄まじい耐久力ですね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「お前も…さっきとは全く違ぇ速さになりやがったな…

俺の攻撃を危なげもなく避けるとは…

さっきの液体…何をした?」



中井 亮なかいりょう

「先ほどもお伝えした通り、話すことはできません

そちらもその兵器について教えるつもりはないのでしょう?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「別に答える気がねぇわけじゃねぇ

説明してやってもいいが……俺の言い方はわかりにくいってよく言われてんだ

だから悪ぃが種明かしは無しだ」



中井 亮なかいりょう

「そうですか、それは残念です

その兵器に大変興味があったのですが…仕方ありませんね」



勝田 信二かつたしんじ

(すごい戦いだ…速さ、パワー、技術

どれを取っても俺じゃ全く着いていけない…

だけど…それじゃ榊原さかきばらさんが……)



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

二人の動きを圧巻の様子で見ていた勝田かつただったが

榊原さかきばらに近寄りながら話しかける。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!俺も援護します!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた…この戦いを邪魔するんじゃねぇ……

そもそも今のお前じゃすぐにやられちまう

部下をやらせるわけにはいかねぇんだよ」



勝田 信二かつたしんじ

「で…ですが!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「よく見てろ…俺は負けねぇ……そう言ったろ」



中井 亮なかいりょう

「大した自信ですね……

クフフ………はははは!

なんでしょう…楽しいですね!

この力……この戦い……こんなハイレベルな世界があったとは…!

嬉しいです……とても!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なんだテメェ…急にテンションが上がりやがって

気持ち悪い奴だな」



中井 亮なかいりょう

「愉悦…と言えばいいのでしょうか?

この力は色々なものが視える

聴こえる…そして感じ取れる……

とても心地よいです……だからなのでしょうか

…私は今とても気分がいい…!」



勝田 信二かつたしんじ

(何だこの人…本当に中井なかいさんなのか?

この傲慢な物言い…中井なかいさんらしくない……

ハイになっていると言えばいいのか

ここまでテンションが高いのは初めてだ…)



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あと…3、4分ってとこか……

あまり時間もねぇんでな

本気で行かせてもらうぞ…!」



中井 亮なかいりょう

「えぇ!私もそうさせていただきますよ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

中井なかい榊原さかきばらは同時に足を踏み込んだ。

榊原さかきばらの超高速な拳による連打

それを中井なかいは小さな動作で華麗に回避しており

榊原さかきばらの大ぶりな一撃を誘うように立ち回っていた。

榊原さかきばらもその思惑には気づいており、あえて殴り続け中井なかいのスタミナを削ろうとしている。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「オラァァァ!!!!!」



中井 亮なかいりょう

「ふっ!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ちっ!!全然当たんねぇ!!」



中井 亮なかいりょう

「ただの連打では掠めることさえできませんよ!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

(くそっ!!せめて一瞬だけでも隙ができりゃ…!!)



中井 亮なかいりょう

「本気で来るのではなかったんですか?

このままでは私はいつになっても倒せませんよ!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「言われなくてもやってやる!!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

(ダメだ…このままじゃ埒が明かねぇ!!

相手の狙い通りだとしてもこのまま攻めるしかねぇ!!)



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「イチかバチかだ!!」

『パワー・フィスト!!!』



中井 亮なかいりょう

「来ましたね…!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらは連打を止めて中井なかいに向けて渾身のストレートを放つ。

中井なかいは狙い通りと言った表情でその拳を対処しようとする。



中井 亮なかいりょう

(やはり決め技となるのは利き手のストレート

対人技の手数が少ないようですね)



勝田 信二かつたしんじ

(まずい!!あの攻撃じゃ…破砕拳はさいけんの格好の的だ!!)



中井 亮なかいりょう

「貰いました!はぁあっつ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

中井なかいはその一撃を破砕拳はさいけんで受け流そうとした。

だが中井なかいの腕がまるで勢い余ったかのように

拳から外れるとその一撃を腹部に受けてしまう。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「おらあぁぁああ!!」



中井 亮なかいりょう

「ごはああっつ!!?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

腹に当たった一撃を受けて中井なかいは倒れなかったが、口からペッと血を吐き出す。



勝田 信二かつたしんじ

「なっ!?今のが当たった!!!?」



中井 亮なかいりょう

「ぐ……なぜ外れて…?

そうか……この状態のせいか……元の身体との感覚の誤差が……!」



勝田 信二かつたしんじ

「よくわからないが

なんにせよ攻撃が当たってる!

いけますよ!榊原さかきばらさん!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「まだまだぁぁぁ!!

うぉぉぉぉぉっつ!!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらは追撃の手を緩めず中井なかいの顎に向けてアッパーの態勢に入る。

だがそれに合わせて中井なかいは両手の構え方を変えた。

その構え方は勝田かつたも知らないものであった。



勝田 信二かつたしんじ

「あの技は…いったい!?」



中井 亮なかいりょう

破壊拳はかいけん!!!』



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

中井なかいが両手での掌底を放つ。

その一撃は榊原さかきばらが振りかぶっているアッパーよりも早く榊原さかきばらの胸を捉えた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「うぐ!!!?」



中井 亮なかいりょう

「ハァッ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらはその一撃を受けて数歩後ろへと下がり激しく咳き込んだ。

体勢を少しだけ崩し、ふらつくように顔を下ろした榊原さかきばらの口から血が垂れてきていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「がはっ!?……ゴホゴホッ!!

ぐっ……!」



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「心配すんな…!まだまだ問題ねぇ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「まさか…NE-XUSネクサスの防御力を超えた一撃を与えるなんて…

…いったい今の技は!?」



中井 亮なかいりょう

「これは…勝田かつたさん……

貴方に教えた…破装、破砕……それらとは違い

私が最初に考案し、最終奥義としている

破壊拳はかいけんです……」



勝田 信二かつたしんじ

破壊拳はかいけん!……そんなものが……!?」



中井 亮なかいりょう

「装備を奪い、優位を取る破装拳はそうけん

力の流れを操作し、相手の装備や関節を狙って無力化させる破砕拳はさいけん

それら二つはあくまでカウンターや防御を主体とする技です

ですが…この破壊拳はかいけんは違います

自ら生み出す運動エネルギーを持って相手を破壊する

禍々しくも荒々しい技です

他二つの法則や理論を主とした繊細な技と違い

この技の習得難度自体はそこまで高くありませんし、使う技の種類も少ない…

ですが…こと対人においての威力は絶大ですよ……」



勝田 信二かつたしんじ

「なんて技だ……」



中井 亮なかいりょう

「本来であれば心臓の動きを止めるほどの威力だったはずですが

その兵器によってかなり威力が防がれてしまってますね

まさかここまで使っても倒しきれないとは……」



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!!あの技は危険です!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「わかってる……

お前……随分気前がいいじゃねぇか

自分の技を俺に教えるとは…舐めてるのか?」



中井 亮なかいりょう

「……そうでしたね……間違えてしまいました

あなた方は敵…でしたね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「何言ってんだ…テメェ

俺達はハナから敵同士だったんだろ!」



中井 亮なかいりょう

「これは勝田かつたさんへの修行ではなく…

CARDIEDカディドのジャックとしての指示……

ここまで混同してしまうとは………冷静にならないとですね」



勝田 信二かつたしんじ

「修行……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「テメェ…さっきから言ってることが全然わかんねぇんだよ!!」



中井 亮なかいりょう

「独り言です……お気になさらず」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そうかよ…じゃあ遠慮せずいくぞ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばら中井なかいへと再び攻撃を仕掛ける。

大ぶりな蹴りを放つも中井なかいはその蹴りの動きと逆側に流れるように移動し、榊原さかきばらの側面へと立つ。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「っつ!!?」



中井 亮なかいりょう

「甘いです!!」

破壊拳はかいけん!!!』



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらの横腹へと繰り出された両手での掌底

これを受けた榊原さかきばらはその場に膝をついた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぐわああぁぁあっつ!!!!」



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「く……な………

なんて……威力だ!!?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

勝田かつたは走って榊原さかきばらを庇うように前に出る。

中井なかいは躊躇しているのか攻撃がピタリと止まった。



中井 亮なかいりょう

勝田かつたさん……」



勝田 信二かつたしんじ

「やらせません!!」



中井 亮なかいりょう

「貴方が私と戦えば無事ではすみませんよ」



勝田 信二かつたしんじ

「覚悟のうえです!」



中井 亮なかいりょう

「そうですか……わかりました」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

その言葉を聞くと中井なかい破壊拳はかいけんの構えを取り勝田かつたへと容赦なく繰り出す。



中井 亮なかいりょう

破壊拳はかいけん!!!』



勝田 信二かつたしんじ

「ぐっつ!!!」

破砕拳はさいけん!!!』



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

勝田かつた破砕拳はさいけんの構えでその一撃を正面から受け流そうとする。

だが勝田かつたの力の何倍もの威力を誇るその一撃は勝田かつたの力では流すことができず、左腕一点にそのダメージが集中された。



勝田 信二かつたしんじ

「うぐぁぁあぁああぁぁぁぁあああぁぁああああ!!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

ボキリと大きな音が自分の耳にも聞こえるほど鳴り響く。

腕が違う方向へと曲げられた衝撃で勝田かつたは地面へ倒れ、のたうち回りながら激しい痛みに悶えた。



勝田 信二かつたしんじ

「うがぁぁぁぁああう……うで……がァァ……!!!」



中井 亮なかいりょう

「この技と教えた二つの技は最悪の相性関係にあります

つまり貴方の技や力では私には勝てません」



勝田 信二かつたしんじ

「そ……そんな………!!っぐ!!クソッ!!」



中井 亮なかいりょう

「これで……終わりです!!」



勝田 信二かつたしんじ

「クソォォォォォ!!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

地面に倒れた勝田かつたへとトドメと言わんばかりに手刀を首元へと繰り出そうとした。

だがその瞬間

いつの間にか中井なかいの背後に立っていた榊原さかきばら中井なかいへと拳を振りかぶっていた事に気がつく。



中井 亮なかいりょう

「なにっ!!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「おおおおおおお!!」



中井 亮なかいりょう

「ぐぁ!!!!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

中井なかいはその拳を顔に受け、吹き飛ばされた。

地面に倒れた中井なかいだったがすぐに立ち上がると榊原さかきばらへ向き直る。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!?」



中井 亮なかいりょう

「…かなりの耐久力ですね

完全に決まったと思ったのですが…」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「お前に…部下をやらせるわけにはいかねぇからな!

こんなとこで負けるわけにいかねぇんだよ!!」



中井 亮なかいりょう

「流石は防衛隊員……いや、その中でも貴方は別格ですね

…不屈の信念から来るその強さ

私にはないものですね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁそうだ…俺は防衛隊だ

市民を守るため…部下を守るため

テロリストなんかに俺は負けねぇ…!!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばら中井なかいに真っ向から攻める意思を込めて拳を突き出す。

対して中井なかいも退く気はないようで破壊拳はかいけんの構えを取った。



中井 亮なかいりょう

「正面から…ですか

いいでしょう!!

力比べといきましょう!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「うおぉぉぉぉお!!」

『パワー・フィスト!!!!』



中井 亮なかいりょう

破壊拳はかいけん!!!!』



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

二人の攻撃が同時に命中する。

お互いの攻撃はまるで自動車の衝突のような大きな音を出す。

激しい一撃を受けて二人は同時に吹き飛ばされ、中井なかいは壁に激突し

榊原さかきばらは勢いのまま無気力に地面を転がった。



中井 亮なかいりょう

「ッ!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「っ……ぐっ………う……」



勝田 信二かつたしんじ

「同時に当たった…!?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

破壊拳破壊拳の一撃を正面から受けてダメージは追ってはいるが

NE-XUSネクサスの防御力により耐えきった榊原さかきばらはゆっくりと立ち上がる。

勝田かつたは痛みに耐えながら立ち上がり、榊原さかきばらへと近づいた。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん、大丈夫ですか!!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「うぐっ……ハァ……ハァ………!」



勝田 信二かつたしんじ

「す…すごい!!まさか中井なかいさんを倒すなんて…!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ハァ……………ハァ……………!」



勝田 信二かつたしんじ

「流石は榊原さかきばらさんです!

まさか……勝ってしまうなんて!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「いや………まだだ……」



勝田 信二かつたしんじ

「まだ……って?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

中井なかいがフラフラとした足でゆっくりと立ち上がる。

口や鼻から血を出しており、表情が先ほどまでの落ち着いたものではなく

怒りや焦りが入り混じったグチャグチャな表情をしていた。



勝田 信二かつたしんじ

「まさか………なんてタフさなんだ!!」



中井 亮なかいりょう

「く……ふふふ……………まだです……まだやられて…ませんよ…!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あれ食らって…倒れねぇとはな」



中井 亮なかいりょう

「そう簡単にやられるわけにはいきません…

私にはまだやらねばならぬ使命があります」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「しぶてぇ野郎だ

だが何度でも叩き込んでやる…」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらは再び攻撃を繰り出そうと足を前に出す。

だが、急にその足がピタリと止まる。

身体全体が言うとおりに動かず、榊原さかきばらはその状況からある事を察した。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「っぐ……!!!!!?」



勝田 信二かつたしんじ

「|榊原《さかきばらさん…どうしました?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「も……もう3分……経ったってのか?」



音声アナウンス(橘花 真由美たちばなまゆみ兼役)

『活動限界・活動限界

使用時間制限オーバー

―――――装甲を維持できません

NE-XUSネクサス

強制解除します』



勝田 信二かつたしんじ

「なんですか…その音は!?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらの身体が鈍く光り、NE-XUSネクサスの装備が一斉に崩れ落ちた。

以前解除した際と違い、まるで割れ物を落としたかのように勢いよく弾け飛ぶ。

そして、解除された際の蓄積された反動が一気に榊原さかきばらの身体へと襲い掛かった。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぐぁぁああぁぁあぁああぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁぁあああ!!!!!!!!」



N→中井 亮なかいりょう

その頃、東郷とうごう修也しゅうやと戦いを繰り広げていた。

東郷とうごうは高速で移動して修也しゅうやへと接近し格闘戦を仕掛けている。

刀を振りにくい至近距離での戦闘

それにより攻撃しつつ斬撃が当たりにくい状況を作り出していた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「相手は刀を持っているのに強気に近づくのは危険じゃないんですか!?」



須加 正樹すがまさき

「いや、あれでいい!

うめぇな…!あれならあいつもやりにくいだろ

だが近づくってのが最適だとはいえ

咄嗟に思いついて出来るもんじゃねぇぞ!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「流石は東郷とうごうさんです!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ちっ!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「随分と戦いづらそうね!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…」



東郷 椎菜とうごうしいな

「はぁっつ!!」



N→中井 亮なかいりょう

空中に飛び上がりながらサマーソルトのように一回転した回し蹴りを修也しゅうやの顔へと繰り出す。

だが修也しゅうやはそれを姿勢を低くして避けるとその隙をつき、一歩下がって東郷とうごうの正面目掛けて刀を振るった。



東郷 椎菜とうごうしいな

「やばっ――!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「!!」



須加 正樹すがまさき

「危ねぇッ!!」



N→中井 亮なかいりょう

須加すがが瞬時に東郷とうごうの前に飛び出て刀身を槍ので受け止める。

東郷とうごうが着地して体勢を立て直すと須加すがは刀を弾くように吹き飛ばし距離をとった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「いい援護だ」



須加 正樹すがまさき

「敵に…それも年下に褒められても嬉しくねぇもんだな

おい、東郷とうごう

ちょっとでも隙があったら一気に詰めてくるぞ、気を付けろ!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「援護…感謝はしておくわ」



須加 正樹すがまさき

「素直に受けとっておくぜ

だがそんなことはどうでもいい

油断すんじゃねぇぞ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「油断したつもりはないわ

予想以上に強敵なのよ…

以前戦った時とは別格ね」



須加 正樹すがまさき

「お前はこっから倒す策があんのか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「あったら苦労してないわ」



須加 正樹すがまさき

「じゃあ一旦交代だ…観察してたらなんか思いつくかもしれねぇからな

おい、少年!俺が相手だ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「どっちでもいいから早くかかってこい」



須加 正樹すがまさき

「生意気小僧が……!!

遠慮なくいくぞ!!どらぁぁ!!」



N→中井 亮なかいりょう

須加すがは連続で槍先を修也しゅうやに放つもそれら全てを的確に刀で弾かれてしまう。



須加 正樹すがまさき

(近接戦は圧倒的にこいつが有利すぎる)



須加 正樹すがまさき

「極地を使うしか…!!!」



N→

須加すがは使用限界の半分である0.5秒の間、極地を発動した。

それにより修也しゅうやの構えを読み取り、防御しづらい部分を特定する。

そして、そこに槍の必殺の一撃を繰り出す。



須加 正樹すがまさき

「喰らえ!!」

『フォーカスブリッツ!!』



N→中井 亮なかいりょう

須加すがが捉えた箇所に的確に放つ突き。

確実に当てるため再度攻撃の際に極地を0.2秒発動した。

通常極地を連続で発動させる場合集中力の切り替えにより疲弊するが

須加すがは半分の0.3秒程度であれば最小限のインターバルで再発動を行える。

その甲斐もあり修也しゅうやへその攻撃が命中し身体を貫いた―――



須加 正樹すがまさき

「当たってねぇ!?」



N→中井 亮なかいりょう

―――はずだった。

修也しゅうやは少し離れた位置に立っており、槍の攻撃は空を切っていた。

攻撃を振る直前の極地発動前のほんの一瞬のインターバル

その瞬間に発動されていた摩天幻肖まてんげんしょうによって位置情報を攪乱かくらんされたのだ。



須加 正樹すがまさき

「さっきのブラフの技…そんなノーモーションで使ってくんのかよ!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「残念だったな」



N→中井 亮なかいりょう

須加すがは焦って追撃をしようとする。

だがその時東郷とうごうが声をあげた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「ちょっとどいて!」



須加 正樹すがまさき

東郷とうごう!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「はぁっ!!」



N→中井 亮なかいりょう

東郷とうごう須加すがの前を横切る。

飛び蹴りを放つが修也しゅうやは軽々と片手で掴んで受け止めた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「不意をついたってのによく止めれるわね!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……このくらいは簡単だ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「ならこれはどう!!?」



N→中井 亮なかいりょう

東郷とうごうはもう片方の足で修也しゅうやの腕を蹴るようにして掴まれた手を振り払いながら後方に飛び下がり

着地する前に飛び上がった態勢のまま銃を向けて発砲した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…!」



N→中井 亮なかいりょう

だが、その射撃も瞬時に振られた斬撃により完全に弾かれてしまう。



東郷 椎菜とうごうしいな

「弾丸を斬るなんて…澄ました顔で凄い芸当をしてくれるわね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そんな小細工は通用しない」



東郷 椎菜とうごうしいな

「そのようね

攻守ともに隙がない……化け物ね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「化け物……か」



N→中井 亮なかいりょう

須加すが東郷とうごうの邪魔にならぬように少し下がり、橘花たちばなの近くへと寄った。



須加 正樹すがまさき

「やっぱり東郷とうごうはすげぇな…

だがこいつはそれ以上の実力者だ…

それを相手によくここまで食らいついてるもんだぜ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「でも…このままだと有効打がありません

どうしますか?」



須加 正樹すがまさき

「どうするったって……

こういうの考えるのは苦手なんだよな…」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「他部隊に援護要請を出しますか?」



須加 正樹すがまさき

「それじゃダメだ…

俺や東郷とうごうと同等のがいるならまだしも

頭数いたって仕方ねぇぜ

それは東郷とうごうも言ってたろ

せめて義弘よしひろが来るまで耐えてぇ…

そうだ、今のうちなら余裕があるはずだ

通信をしてみてくれ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「わかりました!」



N→中井 亮なかいりょう

橘花たちばなは無線機をつけて榊原さかきばらに向けてメッセージを送る。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長!強敵1名と交戦中です!

応答願います!」



N→中井 亮なかいりょう

だが榊原さかきばらからの返答はない。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長!応答してください!」



N→中井 亮なかいりょう

再び通信を行うもやはり返事がない。

橘花たちばなは焦りながら須加すがに報告をする。



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさん!

隊長や勝田かつた君と繋がりません!

まさか中で何かあったのでしょうか?」



須加 正樹すがまさき

「繋がらねぇ?…あいつに限ってやられてるわけねぇはずだ

今まさに戦ってるってとこかもな……

だが、だとしたらこりゃまずいぜ

来るかわからねぇ援護を期待して耐久するのも無理となると

俺らだけでこいつを倒さねぇといけねぇぞ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「そんな……そしたら一度建物内に入って合流するというのはどうですか?」



須加 正樹すがまさき

「もし交戦中だとしたらそこで乱戦になるのもダメだ

万が一にも挟み撃ちにされちまったら不利なのは俺らだ

室内戦だとこの長い槍は使えなくなって刀の独壇場だ

まだ開けたところで戦ってる方がマシだぜ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「でも…それでもこのままじゃ勝てませんよ!」



N→中井 亮なかいりょう

東郷とうごう修也しゅうやに銃を向けて動きを止める。

修也しゅうやも攻めてこないのを察して東郷とうごうは話し始めた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「まさか…貴方がCARDIEDカディドにいるなんてね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…だからなんだ?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「いえ、ちょっと休憩がてらお話でもしない?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「時間稼ぎのつもりか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「哀れな少女の話…

その子は学友を一気に失い、残された1人の少年を気にかけて

色々と調べていたそうなの

健気な子でね

手助けをしてあげたの」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……」



東郷 椎菜とうごうしいな

「その子とはそれっきりだったけど

どうなったのかって気になってたのよね

そしたら風の噂である事を聞いたのよ

どうやらその子、死んじゃったみたいなのよ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……」



東郷 椎菜とうごうしいな

「本当に馬鹿な子だったのよ

誰かのことを考えるあまり、自分が死んじゃうなんて

本末転倒ってのはこういう事を言うのよね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……」



東郷 椎菜とうごうしいな

「誰のことかわかる?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

夢野 天ゆめのそら…」



東郷 椎菜とうごうしいな

「正解…!

その子は貴方のことを一心に考えてたってのに

志半ばで死んじゃったそうなの

可哀そうよね

仲間だの友情だの…そんなものを優先して

自分自身を後回しにするなんて…愚かとしか言いようがないわ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それをお前が言うとはな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「…なんですって?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前もここの仲間のために戻ってきたんじゃないのか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それこそお前のいう無駄な行為じゃないのか」



東郷 椎菜とうごうしいな

「えぇそうね…私もそう思うわ」



N→中井 亮なかいりょう

東郷とうごうはそれを聞くとむっとした表情をする。



東郷 椎菜とうごうしいな

「こうやって責めたら少しは堪えてくれるかと思ったけど

あの子の事どうでもよかった?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……」



東郷 椎菜とうごうしいな

「それともあの子が死んだこと知ってた?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……あぁ、知ってる」



N→中井 亮なかいりょう

修也しゅうやは刀を強く握りなおした。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「俺が殺した」



東郷 椎菜とうごうしいな

「………貴方が?」



N→中井 亮なかいりょう

東郷とうごうはその返事を聞き驚いた表情をする。



東郷 椎菜とうごうしいな

「まさか…貴方自身が実際に手をかけるなんて……

ちょっと予想外ね…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「俺を責めて油断させるつもりだったのか?

罪悪感に苛まれて手を抜くと思ったのか?

だとしたら残念だが効果はないようだな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「えぇ…そうね。作戦失敗

ちょっとは表情が変わると思ったけど…」



N→中井 亮なかいりょう

東郷とうごうは近くのドラム缶を踏んで空中へと飛び上がった。

二丁の銃を修也しゅうやへと向けて必殺の構えを取る。

だが修也しゅうやは刀を構えたまま動く様子を見せていない。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「これは…?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「必殺ってところよ!受けてみなさい」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…来い」



東郷 椎菜とうごうしいな

(避ける気がない…!?

なら…いいわ!喰らいなさい!!)

死銃乱射デスガトリング!!!』



N→中井 亮なかいりょう

コ型の二丁拳銃を乱射し、雨のように放たれた連射が修也しゅうやを襲う。

修也しゅうやはその連射に合わせて刀の構えを変えて技名を唱えた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天障壁まてんしょうへき



N→中井 亮なかいりょう

修也しゅうやが空を切るように斬撃を放つ。

残像が残るほどの速度で振られた一振りだが、残像だけが振り終わってもなお残っている

三度振られた斬撃が周りを漂い、傘のように降り注ぐ弾丸から修也しゅうやを守っていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「まさか…これも効かないなんて!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「以前見た技……そんなものが通用すると思ったか」



東郷 椎菜とうごうしいな

「あの時はショックガンだった

今度は実弾…流石に一発だけでもって思ったけど

掠めてすらいないなんてね」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさん…!?あの技は一体なんなんですか…?」



須加 正樹すがまさき

「刀の障壁…と言ったところか

…って自分で言っててなんだよそりゃ!!

こんなの使うやつにどう勝ったらいいってんだ!」



N→中井 亮なかいりょう

修也しゅうやは空中へと飛び上がる。

一言技名を呟くと着地前の東郷とうごうへと高速で迫っていった。



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天空翔まてんくうしょう



東郷 椎菜とうごうしいな

「早っ!!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前じゃ俺には勝てない」



東郷 椎菜とうごうしいな

「っつ!!!!!?」



N→中井 亮なかいりょう

東郷とうごうは空中で上半身を反らす。

その瞬間、身体の付近を刀の斬撃が掠めとる。

着地した東郷とうごうの装備に斬撃痕が刻まれており

防弾チョッキすら切り裂く斬撃

もしもまともに受けていればひとたまりもない威力であったことが伺えた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…よく避けたな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「はぁ……はぁ…!!」



N→中井 亮なかいりょう

激しく息を切らす東郷とうごう

その表情には焦りが映っており、冷や汗をかいていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

(危なかった……!?

今のを喰らってたら…間違いなく死んでいた…!)



N→中井 亮なかいりょう

久しく感じていなかった死への恐怖。

自らを超えるであろう強敵を相手に感情の欠けた東郷とうごうの中に残るマイナスの感情である恐怖心が身体中を駆け巡る。



東郷 椎菜とうごうしいな

「……まずいわね……復讐達成する前にこのままじゃ死ぬわね

戻ってこなけりゃよかった……」



須加 正樹すがまさき

「……おい!東郷とうごう!!

油断すんなって言ったろ!死ぬところだったぞ!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「言われなくてもわかってるわよ!!」



須加 正樹すがまさき

「わかってんならいい…!とりあえず一度距離を取れ!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「えぇ!」



N→中井 亮なかいりょう

東郷とうごうは呼びかけに応じ、飛び下がるように後ろへと下がった。

その表情は苛立ちを抑えるように不機嫌そうな顔になっている。



橘花 真由美たちばなまゆみ

東郷とうごうさんがあんなに声を荒げて…」



須加 正樹すがまさき

「相当焦ってんだろ…

東郷とうごうでも勝てねぇってなるとやべぇぞこりゃ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そろそろ…飽きてきたからな

とどめを刺させてもらうぞ」



須加 正樹すがまさき

「ちっ!!あっちもやる気ってか……

しゃーねぇ!!やるっきゃねぇだろうが!!

東郷とうごう!!!俺にやらせろ!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「はぁ!?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさんなにを!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「なに?一人で戦うつもり?」



須加 正樹すがまさき

「そうだ!橘花たちばなも近づくんじゃねぇぞ!!

おらぁぁあああ!!」



N→中井 亮なかいりょう

須加すがは槍を地面へと叩きつけるように勢いよく振りかぶった。

修也しゅうやはその攻撃が振られるよりも早く瞬時に後方に下がって回避する。

外したかと思ったその一振り

だがその行動は須加すがの思惑通りだった。



須加 正樹すがまさき

「今だ!!」



N→中井 亮なかいりょう

着地した体勢の修也しゅうやへ向けて須加すががライトマシンガンを構えて、引き金に指をかける。

着地した瞬間、常に修也しゅうやは軸足を意識しているのか動きが止まるのを須加すがは見逃していなかった。

大口径の弾丸から放たれる、圧倒的な連射力と高火力。

この連射を受けたら人間はおろか魔怪まかいですらひとたまりもない。

須加すがは容赦せずすべての弾薬を撃ち切るつもりで連射を続けた。



須加 正樹すがまさき

「喰らええええ!!!!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「!」



N→中井 亮なかいりょう

修也しゅうやへと乱射された弾丸は大きな音と付近に当たった煙により修也しゅうやの姿が見えなくなるほど煙を散らす。

圧倒的な連射の反動だったが極地を発動して無理やり照準を整える。

須加すがは鼻から血が垂れるほどの超集中を使い、反動制御をおこなっていた。

200発の弾丸を打ち切ると須加すがは息を切らしていた。



須加 正樹すがまさき

「ゼェ………ゼェ………

ゲホッツ!!ゲホゲホ!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「や……やった!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「考えたものね……」



N→中井 亮なかいりょう

須加すがは激しく咳き込む。

今まで使ったことのない極地の長時間使用。

それにより須加すがは急激にスタミナを使い切っており

息を限界まで止めた際の立ち眩みのような症状に襲われて膝に手をついていた。



須加 正樹すがまさき

「ハァ……流石につかれたぜ……

こんなに集中したの…初めてだぞ……」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「凄い…!?こんな大きな銃を…

まるで小型銃のように扱うなんて…!?」



須加 正樹すがまさき

街田まちださんがよく使ってたから俺もいけるって………軽く見てたが

はは………流石に……もう二度とこんな武器使いたくねぇぜ…

まだ手が痺れてら…」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「それでは…私たちは一度隊長と合流をしましょう!」



須加 正樹すがまさき

「おい……おいおい!

うそ……だろ………!?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「……え?どうしました?」



N→中井 亮なかいりょう

須加すがは一点に煙が立つ方向を見ながら驚愕の表情で目を見開いていた。

橘花たちばなは振り返って煙の中を凝視する。

煙が晴れるとそこには何事もなかったかのように修也しゅうやが立っており

服についた埃を手で払っていた。



須加 正樹すがまさき

「あの連射量……全部当たったらB-Classでも死ぬんだぞ……

どうなってんだよ……!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「そ……そんな!!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「本当に打つ手がないとはこの事ね…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………終わりだ」

『摩天楼』



N→中井 亮なかいりょう

修也しゅうやは刀を構える。

三人に向けて斬撃を放とうとしていた。

東郷とうごうは咄嗟に離れて様子を伺っており

須加すがは攻撃が来るのを察して回避しようとする。

だが橘花たちばなは驚いた表情をしながら立つ尽くしており、回避の行動がとれないようだった。



須加 正樹すがまさき

(まずい…この一撃…!!なんかやべぇぞ!!)



神蔵 修也かぐらしゅうや

「はぁぁあっつ!!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「え……………?」



須加 正樹すがまさき

「なにやってんだ!!橘花たちばなッ―――!!!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「ッ!!!」



須加 正樹すがまさき

「ちくしょうがぁぁぁあああ!!!」



N→中井 亮なかいりょう

斬撃が辺りの建物まで届く。

近くの瓦礫や建物の外壁に大きな斬撃痕ができており

建物の一部が崩壊し始める。

その攻撃で上がった土煙で再び4人の視界が遮られた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「なんて一撃よ……あれが摩天流の奥義なのね

とんでもないわ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「……ゲホゲホッ!!

いったい…なにが?

私…斬られてない……どうして?」



須加 正樹すがまさき

「無事か……………橘花たちばな?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさん…!?

は、はい!…私は大丈夫です!

もしかして助けてくれたんですか?」



須加 正樹すがまさき

「無事なら………よかった……ぜ……」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさん…?」



N→中井 亮なかいりょう

煙が突然吹いた風で晴れていく。

橘花たちばなが元いた場所には須加すががおり

その場で膝をついたまま動かない。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「ど…どうしました………っ!!!!!?」



N→中井 亮なかいりょう

須加すがの顔を見ようと橘花たちばなが正面に回る。

その時、須加すがの状況を見て橘花たちばなは驚愕の表情に変わった。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「す……須加すが………さ……」



須加 正樹すがまさき

「………はは

斬られ…ちまった……ぜ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「ど……どう……して

そんな傷を………!!?」



N→中井 亮なかいりょう

須加すがの肩から太ももにかけて

鋭利な斬撃が深く刻まれており、防弾チョッキを超えて斬撃が通っていた。

須加すがの目の前には一刀両断されたライトマシンガンが転がっている。

咄嗟に盾替わりとして銃身で防ごうとしたようだが

銃ごと斬られてしまっており、身体中から夥しい量の血が流れ出ていた。

須加すがの表情は虚ろで、ぼんやりと遠くを眺めているような目をしていた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「す…須加すがさん!!!!わた…っ…わたしを……か、庇って……!!!?」



須加 正樹すがまさき

「…っ………よ……しえ……ひろ………み……

すま……ねぇ……よしえ……あんま……遊んでやれなくて……

ひろみ……………旅行……連れてくって……言ったのに…

すまねぇな………あい……してる………ぜ…」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「な……なにを言ってるんですか……!!

家族が………いるじゃないですか!!

こんなところ…で!!死んだらダメですよッ!!」




須加 正樹すがまさき

「そ………う………だ………な………

おれ……は………生きて……かえ………

………………………………………」



N→中井 亮なかいりょう

ガクリと力がなくなったように須加すがが俯く。

橘花たちばなはその表情を見て最悪な真実を理解してしまう。

何度もその表情は見たことがあった。

命の灯が消えいった瞳。

とても冷たく、虚ろで、暗い色であった。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「す………す………須加すが………さん………」



東郷 椎菜とうごうしいな

「うそ…でしょ……」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさぁぁぁああああぁぁあああん!!!

あぁぁぁぁああぁぁあああ!!!」



N→須加 正樹すがまさき

視点移り

榊原さかきばらNE-XUSネクサス解除のダメージを受けて

身体中から耐えがたい痛みが押し寄せる。

その痛みは今の榊原さかきばらには到底耐えられぬものだった。

いや、たとえ万全であったとしてもショック死すらしてしまうほどの絶大な痛み。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぐわぁぁぁぁあああぁぁぁああぁぁぁっつ!!!!!!!!!!!」



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!!!」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらはドサッとその場に倒れる。

意識はまだ残っているようで這いつくばるように何かを呟いていた。



勝田 信二かつたしんじ

「良かった…!まだ生きて!!!

榊原さかきばらさん!!!大丈夫ですか!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぁ…が…………あぁ……………」



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!!俺が…時間を稼ぎます!!

榊原さかきばらさんは須加すがさん達と合流してください!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……こ……だ…………」



勝田 信二かつたしんじ

「……え?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「どこ……だ……か……勝田かつた………」



勝田 信二かつたしんじ

「後ろです!!榊原さかきばらさん!!!」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらは這いながら辺りを見渡している。

その表情を見て勝田かつたは気がつく。

その目、その濁り方。

まるで以前の中井なかいの瞳のように焦点の合わない瞳であった。



勝田 信二かつたしんじ

「さ………榊原さかきばら………さん………?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「どこだ……敵は………勝田かつた………ここは……なんだ……これ……」



勝田 信二かつたしんじ

「そんな……あと……1回……猶予があるんじゃ……」



中井 亮なかいりょう

「………もう…終わりのようですね」



N→須加 正樹すがまさき

中井なかいはゆっくりと倒れる榊原さかきばらへと近づく。

だが、勝田かつたがマグナムを片手で構えながら前に立ち塞がる。

その弾丸には徹甲弾を装填してあり、通常の弾丸と違い魔怪まかい用の強力な弾であった。



勝田 信二かつたしんじ

「やらせません!!!」



中井 亮なかいりょう

「……私がやらずともすぐに死んでしまいますよ」



勝田 信二かつたしんじ

「それでも……やらせません!!

榊原さかきばらさんは…俺の……上司でもあり

師匠でもあり……仲間でもあります…!

仲間を守れと……俺はそう…隊長から教わったんです!!」



中井 亮なかいりょう

「……やはり貴方は良い人だ

本当は……殺したくなどありません……

ですが、これが運命というのならば…仕方がありません」



N→須加 正樹すがまさき

中井なかいは銃を持つ腕を弾き、マグナムを吹き飛ばした。



勝田 信二かつたしんじ

「あっ!!!?」



中井 亮なかいりょう

「ふっ!!!」



N→須加 正樹すがまさき

中井なかい勝田かつたを蹴り飛ばす。



勝田 信二かつたしんじ

「がぁぁあああぁあ!!!」



N→須加 正樹すがまさき

蹴られた際に左腕を強く地面に打ち付け、強い痛みが襲い掛かった。



勝田 信二かつたしんじ

「くそっつ!!!つ…強すぎる!!

俺じゃ…中井なかいさんには勝てないのか!!?」



中井 亮なかいりょう

「…せめて苦しまないように殺してさしあげましょう」



勝田 信二かつたしんじ

「くっ!!」



N→須加 正樹すがまさき

中井なかい勝田かつたのマグナムを拾い上げ、勝田かつたの頭に向けて構えた。

榊原さかきばらはその様子がまったく見えていない。

だが本能で勝田かつたの危機を察知していた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「か………かつ……た………‥」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばら筑波 柊つくばひいらぎの言葉を思い出していた。



筑波 柊つくばひいらぎ(橘花 真由美たちばなまゆみ兼役)

「君の身体はもう限界だ

あとNE-XUSネクサスの起動には2度しか耐えれない

そしてその2度目が解除された時

君に人では耐えれない蓄積され続けたダメージを全て受けて

まず筋組織は完全に破壊され

血管は一瞬で収縮凝固化し

心臓が停止し、数秒後死に至る」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺…は……死ぬ………」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらは死への恐怖を抑えるように酒に逃げていた。

橘花たちばなから禁酒、禁煙を徹底させられてからは

彼の吐け口が失われたためか、榊原さかきばらの容態は一気に悪化していたのだ。

ここ数日、彼の耳は遠くなる時があった。

任務に向かう途中、部下たちの声が頭に入ってこない。

他にも熱さ、寒さを感知できなくなっていたり

定期的な過呼吸にも襲われていた。

そんな身体の不調が榊原さかきばら自身に死が間近に迫っていることを嫌でも通告をしてきていたのだ。

だが彼は仲間のため、部下のため、そして自らの信念のため戦う事をやめなかった。


そしてそんな彼だからこそ殺されそうになっている勝田かつたを見捨てることはできなかった。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぅ………が………あ………ぁ」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらは腕輪を再度掴んだ。

息も絶え絶え、意識は薄れており

目は見えず、音も聞こえず、何も感じない。

頭の中も今は何も考えられない。

ただ本能で、彼はそれだけで動いていた。

部下を、弟子を……仲間を守るために

勝田かつたはそんな榊原さかきばらの動きに気がつき止めようと叫ぶ。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!!!!そんなことをしたら死にますよ!!!!

貴方はもう戦えない!!!!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「おれは………ぶかを………まも……る」



勝田 信二かつたしんじ

「ダメだあああ!!!!!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「いつ……だ……って……………じぶん……らし……く

あ…………れ」

『そ……う……ちゃ…く』



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらがコードを呟くと英語の羅列が腕輪から再び鳴りだす。

倒れている榊原さかきばらの身体に巻き付くように黒い根が伸び、

スーツへと姿を変える。

榊原さかきばらは装着されたスーツの一時的な回復により

失われた五感が戻ってきた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「はぁぁぁぁああああっつ!!!!

おい……まだ終わってねぇぞ……!!」



中井 亮なかいりょう

「まさか……まだ立てるというんですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「当たり前だ……俺は…負けねぇ」



勝田 信二かつたしんじ

「さ……榊原さかきばらさん!!どうして!!!」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらの姿を見て勝田かつたは驚愕した。

なぜその身体で立ち上がれるのか

勝田かつた榊原さかきばらへと叫ぶように声をかける。



勝田 信二かつたしんじ

「なぜ…!!!もう……これで……死んでしまうんですよ!!!

どうして!!!使ったんですか!!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「悪いな………勝田かつた………

俺は…‥不器用なんだ

こうやって…背中を見せる事しか俺にはできねぇ」



勝田 信二かつたしんじ

「くっ……!!で、ですが!!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた……悪いが最後の頼みがある……」



勝田 信二かつたしんじ

「…………頼み……ですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「こいつは……俺だけじゃ勝てねぇ………

悪いが…お前も俺と一緒に命をかけてくれ……

俺と一緒に死んでくれ」



勝田 信二かつたしんじ

「な……!!?」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたはその言葉を聞いて驚く。

榊原さかきばらは今までずっと勝田かつたや仲間を守ろうと必ず前線に立っていた。

だが、そんな榊原さかきばらが隣で戦ってほしいと勝田かつたに懇願している。

その言葉を聞いた勝田かつたはふっと吹っ切れるように微笑んだ。



勝田 信二かつたしんじ

「わかりました……!!

一緒に戦いましょう!!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁ……!最後の足掻き

とくと見せつけてやるぞ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「はい!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そういう事でな…

第二ラウンドと行こうぜ…CARDIEDカディドの刺客!」



中井 亮なかいりょう

「美しい師弟愛だ……

……貴方たちは滅ぶべき下賤な種ではなかった

ただの………不器用で実直なだけの……いえ

私も……命を賭けて挑ませていただきます」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばら勝田かつたの二人が並び立つ。

中井なかいは二人を同時に相手する覚悟を決め

破壊拳はかいけんの構えを取った。



中井 亮なかいりょう

「最期の言葉は済みましたか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁ俺が伝えるべきことは…既に伝えてる」



勝田 信二かつたしんじ

「……はい、あれですよね」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつた榊原さかきばらは同時に足を踏み込んだ。



榊原さかきばら勝田かつた

「いつだって自分らしくあれ!!!」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたは拳を中井なかいへと繰り出す。

だが中井なかいはそれを片手で受け止めた。

そのタイミングで榊原さかきばらも正面から中井なかいの顔を殴りつける。

中井なかいはその一撃をモロに顔面に受けた。



中井 亮なかいりょう

「うがっつ!!!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「うぉぉぉぉぉっつ!!」



中井 亮なかいりょう

「ぐっつ!!!はぁぁあああつ!!」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらの追撃を勢いよく弾くと榊原さかきばらに反撃の手刀を浴びせる。

だが榊原さかきばらはそれを避けることなく受けて怯まずに拳を突き出した。



中井 亮なかいりょう

「防御をしない…!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「真っ向からのステゴロだ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「おおおお!!」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらに合わせて勝田かつたも同じように拳を繰り出す。

だが中井なかい勝田かつたへと蹴りを当てた。



勝田 信二かつたしんじ

「ゴハッツ!!?」



中井 亮なかいりょう

「ふっつ!!!」



N→須加 正樹すがまさき

怯んだ勝田かつた中井なかいは追撃をしようとする。

その攻撃は膝をついた勝田かつたへと目掛けて繰り出された。

中井なかいはその一撃を榊原さかきばらが庇って受け止めると予想していた。

だが榊原さかきばら勝田かつたを無視し、攻撃を優先した一撃を放ってきていた。

勝田かつたに攻撃が当たり、勝田かつたは地面に倒れるが

予想外の行動に榊原さかきばらの一撃を回避できず、真正面から受けてしまう。



中井 亮なかいりょう

「っ!!!?ぐぁあっつ!!!

まさか……庇うことなく!!

刺し違えるつもりで!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「おおお!!」

『フルパワー・フィスト!!』



中井 亮なかいりょう

「ぐあぁっ!!!!」



N→須加 正樹すがまさき

間髪入れずに出された追撃を中井なかいは受けてしまう。

先ほどまでのストレートよりも更に大きく強く振りかった一撃は中井なかいの頭部を完全に捉えた。

それを受けた中井なかいは血を口から吐き出しながら衝撃で顔全体が多き揺れる。

だが中井なかいはその態勢のまま腕だけを榊原さかきばらの懐へと潜り込ませており、破壊拳はかいけんの構えをとっていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「しまっ―――――――――」



中井 亮なかいりょう

「はああああぁぁぁああ!!!!」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらの心臓へ撃ちだされた破壊拳はかいけん

その一撃をまともに受けてしまった榊原さかきばらは正面からフラリと倒れる。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぁ……」



中井 亮なかいりょう

「決まりましたね…!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「があぁあああ!!」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらは倒れるその瞬間

膝を地面についたまま身体全体で中井なかいにしがみつく。



中井 亮なかいりょう

「なにを…!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「掴んだぜ!!!」



中井 亮なかいりょう

「なに…?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「いけぇぇぇぇええ!!!!!勝田かつたァァァァッ!!!」



勝田 信二かつたしんじ

「うぉぉおぉぉぉおおぉぉおぉぉ!!!!!」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたは抑えつけられ身動きが取れない中井なかいに飛び上がりながら拳を振るった。



中井 亮なかいりょう

「まさかっつ!!?っ!!!!」



N→須加 正樹すがまさき

中井なかいはその一撃を受けるが勝田かつたの拳では威力が足らず、あまりダメージを受けていないようであった。



中井 亮なかいりょう

「こんな攻撃では私には―――」



勝田 信二かつたしんじ

「まだだぁぁああ!!!」



中井 亮なかいりょう

「効かないんですよ!!!!」



N→須加 正樹すがまさき

中井なかいは身体を勢いよく動かして榊原さかきばらを振り払う。

そして正面から突進を仕掛けてくる勝田かつたに対して中井なかい破壊拳はかいけんの構えを取った。



中井 亮なかいりょう

『破壊―――!!!!』



勝田 信二かつたしんじ

(やはりその動きは!!!)



N→須加 正樹すがまさき

だが中井なかい勝田かつた破壊拳はかいけんを繰り出すその瞬間

榊原さかきばら中井なかいの片腕をガシッと力強く掴む。

それにより中井なかいは態勢を大きく崩される。

その隙を狙って勝田かつたは拳を突きだした。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「やらせねぇぜ」



中井 亮なかいりょう

「ッ!?」



勝田 信二かつたしんじ

「はぁぁああぁぁあっつ!!」



N→須加 正樹すがまさき

中井なかいはその攻撃を身体で受ける。

生身の人間の拳ではダメージは入らない…はずだった。



中井 亮なかいりょう

「ぐわぁあああぁあああああああ!!!!!!!!????」



N→須加 正樹すがまさき

中井なかいは後方へと勢いよく吹き飛ばされた。

そのまま壁に身体を打ち付けて倒れる。

殴られた箇所に手をあてた。

そこからは夥しい量の血が流れ出ていたのだ。



中井 亮なかいりょう

「いったい…なにを……!?」



勝田 信二かつたしんじ

「はぁ………はぁ…………ハァ………!!」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたの手を凝視する。

手には先ほど取り上げたマグナムがいつの間にか握られており、その銃口からは煙が出ていた。

そう、勝田かつたは最初の殴りで中井なかいから銃を奪い

今の正拳とほぼ同タイミングで腹部へとマグナムを発砲したのだ。

これは、勝田かつた中井なかいから最初に教わった技

破装拳はそうけんであった。



勝田 信二かつたしんじ

「や……やった………!

当たった………!!」



中井 亮なかいりょう

「ゴハッ………!!?

まさか……ここで……その技を……!?」



勝田 信二かつたしんじ

「これは…貴方から教わった……技……ですよ

俺は………確かに……迷いっぱなしで

不器用で……才能もない……

でも……必死に……覚えたんですよ……

……榊原さかきばらさんに……東郷とうごうさんに……

須加すがさんに………橘花たちばなさんに………

そして………中井なかいさんに沢山のことを教わって

やっと……このレベルですけど……

俺は……まだまだ弱いですけど………ここまで来ました

これが俺の全てです!!」



中井 亮なかいりょう

「ゴホゴホッ!!!……ぐ………

まさ………か……まけ……る……なんて……」



N→須加 正樹すがまさき

言い終わる前に中井なかいはふっと気を失ったようでその場に倒れた。

榊原さかきばらはその光景を眺めながらゆっくりと立ち上がると勝田かつたへと向き直る。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん…俺……勝ちました……!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……あぁ……よくやった

かつ―――」



音声アナウンス(橘花 真由美たちばなまゆみ兼役)

『活動限界・活動限界

使用時間制限オーバー

―――――装甲を維持できません

NE-XUSネクサス

強制解除します』



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん………?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「………………………た」



N→須加 正樹すがまさき

ドサッと音を立てて榊原さかきばらは背中から倒れる。

勝田かつたは急いで駆け寄ると榊原さかきばらの肩を持った。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!!!

榊原さかきばらさん!!!!!」



N→須加 正樹すがまさき

遠のく意識の中、まるでこだまのように響く勝田かつたの声。

だが榊原さかきばらは声が出なかった。

もう声も届いていないのかもしれない。

榊原さかきばらはもはや激痛も何も感じていなかった。

死の間際、彼の中に平穏な時間が訪れる。

痛みも、苦しみもない。

ただ静かな時間。

そんな中、自分を呼ぶ声。

勝田かつた榊原さかきばらを呼んでいるのだろうと理解していた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「…………………」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらはゆっくりと腕をあげる。

そして勝田かつたの胸を強く、拳をあてた。

話すことができない彼なりの讃辞。

そして激励として胸を強く叩いた。

そのメッセージはきっと勝田かつたに届く。

そう信じて。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん………」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……………………」



N→須加 正樹すがまさき

ふっと榊原さかきばらが微笑む。

そしてその手にはNE-XUSネクサスの腕輪が握られており、勝田かつたがその手を取ると榊原さかきばらの手の力が一気に弱くなった。



勝田 信二かつたしんじ

「え……………」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらはゆっくりと目を閉じる。

力なく腕が落ちると、榊原さかきばらの鼓動が完全に鳴り止む。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん……榊原さかきばらさん………!!

目を開けてください!!!榊原さかきばらさん!!!」



N→須加 正樹すがまさき

どれだけ呼びかけようと榊原さかきばらは目を開けることはない。

勝田かつたはそんな榊原さかきばらの姿を見て嗚咽と絶望に塗れた声で叫んだ。



勝田 信二かつたしんじ

「うぁぁぁぁぁあああっぁぁあああぁああああぁぁぁぁぁぁぁあっつ!!!!!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

再び視点移り

橘花たちばな須加すがへと駆け寄った。

須加すがの肩を掴んで揺らすが力なくゆさゆさと揺られるだけでもう動くことはない。



東郷 椎菜とうごうしいな

「まさか……あの人がやられるなんて…」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「す………すが………須加すがさ……ん!!!

あぁあっ!ぁぁぁぁああああぁあ!!!!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

橘花たちばなは両手持ちのサブマシンガンを一気に修也しゅうやへと撃ち込む。

怒りに任せた乱射。

だが修也しゅうやはそれを軽々と避けると一気に橘花たちばなへと詰め寄る。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「やけくそに撃って当たるわけないだろ……」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

修也しゅうや橘花たちばなを殺そうと斬撃を繰り出す。

だが橘花たちばなはその接近に対して須加すがの持っていた槍を取ると修也しゅうやへと突き出した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なにっ!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「え!?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「ああぁぁぁああぁぁ!!!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

橘花たちばなは槍を持ったまま叩きつけるように修也しゅうやへと連撃を繰り出す。

だが修也しゅうやはそれを受け止めていたが、それを弾いた瞬間

橘花たちばなは手持ちの閃光グレネードを足元に投げ、自身は耳と目を塞ぐ。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「うっ!!!?」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

強烈な閃光と甲高い炸裂音が辺りに鳴り響く。

それを間近で受けた修也しゅうやは少しよろめいた様子で離れた位置まで下がっていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ぐ………っ!

やけくそじゃない……ただの無鉄砲な戦い方じゃない

なんだ…こいつ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「どういうこと…?

すんなりやってたけど結構上手い戦い方よ

私がやるならまだしも…あの人が…?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「よ…くも!!!よくも須加すがさんぉぉぉぉっ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「仲間の死という悲劇

それから生れる突発的な覚醒

偶発的に発動された極地……まさかこのタイミングでか……」



東郷 椎菜とうごうしいな

「覚醒……そんなこともあるのね」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「ぁぁぁああああああ!!!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

橘花たちばなは咆哮のように叫びながら修也しゅうやへ突進を行う。

乱雑な槍の使い方だったが、驚異的なスピードと反射神経を見せる橘花たちばなの攻撃を修也しゅうやは尚も防ぎ続けていた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「はぁあああああっつ!!でやぁぁぁあああっつ!!

あぁぁあああ!!!らあああっつ!!!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「これが極地……凄まじいわね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「だが………それもあくまで中途半端なものだ!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

修也しゅうやは力を入れて一撃を弾いた。

そして刀を構え直す。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「あぁっ!!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「未完成の極地…まさかお前ごときが使うとは思ってなかった

だが…練度の差というものはそう埋められるものではない

例え覚醒しようが運がよかろうが、それだけで勝てるほど現実は甘くない

本物の極地を見せてやる

……まぁ俺のは正確には違うがこれが完成形だ」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

修也しゅうやの目がキラリと光り、瞳の色が変わっていく。

白目だった部分は赤黒く染まり、光彩が徐々に黄色から緑色へと染まっていった。

瞳の周りの肌がまるで壁が剥がれるようにぺりペリと剥がれだすと

中の肌から赤と緑が織り交ざった肌が見えだす。



東郷 椎菜とうごうしいな

「な……なに……なんなのよそれ……!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天まてん―――』



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

言い終わるや否や

繰り出された大きな斬撃が橘花たちばなの身体を横一閃に薙ぐ。

その斬撃を受けた橘花たちばなは力なくその場にドサリと倒れ込んだ。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「…………え」



東郷 椎菜とうごうしいな

「嘘でしょ……」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

橘花たちばなは何が起きたかをすぐに理解した。

先ほどの攻撃を受けてしまい、敗北したのだと。



橘花 真由美たちばなまゆみ

(あぁ……私……負けちゃったんだな………)



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

橘花たちばなは防衛隊に入った時のことをぼんやりと思い返していた。


大学4年生のある日の事

橘花たちばなは防衛隊員募集の誘いをニュースで見かける。

そこには魔怪まかいの出現により生活領域を追われたもの

家族や友達を失ったもの

それらが映り、彼女の中の正義心が刺激された。


いつしか彼女は防衛隊員となる事を目指しており、それを両親へと伝えると父親が断固として反対をしてきた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「何度も言わせないで!

もう決めたの、私は防衛隊に入る!」



橘花たちばな父(須加 正樹すがまさき兼役)

「何を言ってるんだ!女が軍人など!!できるわけがないだろ!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「でも…世の中には魔怪まかいに怯えて暮らす人達がいるんだって……

私…何かできることがあるならやりたいの!!」



橘花たちばな父(須加 正樹すがまさき兼役)

「この馬鹿娘が!!!

お前はうちの工場を継げば死ぬまで食っていけるんだ!!

なぜ命を賭けてまで他人を救わにゃならんのだ!!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「でも!それでも!!私はもう決めたから!!」



橘花たちばな父(須加 正樹すがまさき兼役)

「おい!!!真由美まゆみ!!!!

戻ってこい!!!!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

(そうだ……私は……お父さんの反対を押し切って……)



橘花 真由美たちばなまゆみ

「お母さん…ごめんなさい

無理言って…」



橘花たちばな母(東郷 椎菜とうごうしいな兼役)

「もういいのよ。

とても立派だと思うわ

でも…同時に心配な気持ちが強いのよ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「ごめんなさい…でも居ても立っても居られなくて

私に出来ることあればやりたいの!

私は特に何が得意でもなかったから…

やりたいって思う事がやっと見つかったの…だから!」



橘花たちばな母(東郷 椎菜とうごうしいな兼役)

「わかったわ、もう止めない

お父さんだってあぁは言ってるけど

真由美まゆみの事が心配なのよ……わかってあげて」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「うん…わかってる

心配かけてごめんね」



橘花たちばな母(東郷 椎菜とうごうしいな兼役)

「一つだけ約束して

必ず……無事で帰ってきてね」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「うん、わかってる」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

それから2年の訓練期間を終えて

橘花たちばなは防衛隊員となっていた。

体力試験はギリギリの合格であったが

それ以外の成績は高く、戦術支援役として榊原さかきばら隊へと配属されたのだ。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「今日から配属となりました

橘花 真由美たちばなまゆみです」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「おう、お前が橘花たちばな

俺は隊長の榊原 義弘さかきばらよしひろ

色々俺もまだわかってねぇ事は多いが、頼むな」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「はい!よろしくお願いします」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

榊原さかきばらの隊長としての実務はお世辞にも隊長らしいとは言えなかった。

任務の時はまだしも、報告や説明が下手で粗雑なところが目立つ人。

だがそれでも橘花たちばなは放っておけなかった。



橘花 真由美たちばなまゆみ

(ほんと……隊長って……頑固だし

大雑把だし……でも頼りになる人だった)



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

新しく入ってきた須加 正樹すがまさき

隊長とは新人からの付き合いのようで

とても優秀な隊員であった。

他にも新人で入ってきた勝田 信二かつたしんじ東郷 椎菜とうごうしいな

彼らには自分にない戦闘技術や才能があった。

それに対して、橘花たちばなは目立ったものもなく

日々悩んでいた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「私は……何もできない……

止めることも…私が何かを変わることもできない…

私には何ができるんでしょうか…

勝田かつた君のように成長もできません

東郷とうごうさんや須加すがさんのような強さもありません

私は……一体何をしたら……」



須加 正樹すがまさき

「お前がいるから俺らは今の強さがあるんだ

それだけでも橘花たちばなを使い物にならないなんて感じたことはねぇんだよ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさんはあぁ言ってくれたけど……

やっぱり…私って弱いなぁ……

もっと……強く…ありたかったな………)



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

そして少し戻り

修也しゅうやの一撃が当たる直前のことだ。

橘花たちばなはふと過去を思い出していた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

(これが…走馬灯なんだ……

隊長……須加すがさん……勝田かつたくん…東郷とうごうさん……)



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

橘花たちばなはゆっくりと流れる時の中で自身の行いを振り返っていた。

自分のこれまでが意味のあったものなのかと。

答えは出ないのだろうが、どうしてもそれが頭に浮かんできた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

(突然思いついて選んだこの道だった

ただ…誰かの力になりたい

それだけの気持ちだけだった

私には何の才能もなかったし

最後まで強くなれなかった……

本当にこれでよかったのかな……

お母さん……お父さん……

私は……立派な防衛隊員になれてたかな……)



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

地面に倒れた橘花たちばなはぼんやりと空を眺めていた。

まだ薄暗く、付近では建物倒壊による小さな煙が立っている。

だが煙の隙間から小さな星が見えた。

広い宇宙の小さな光

ちっぽけで、薄暗く、雲に隠れたら見失ってしまうような小さな星。



橘花 真由美たちばなまゆみ

(こんなに空は広いのに……あんなにちっちゃい

まるで私みたいだなぁ…………)



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

修也しゅうやの足元に転がった橘花たちばなの頭部。

それはぼんやりと空を眺めており、その目が完全に濁るまで星の光が反射していた。

修也しゅうやはその死体を冷ややかな目で見ると東郷とうごうに視線を移す。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「これで二人目だ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「………まさか二人ともやられちゃうなんてね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「あとはお前だけだ」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

東郷とうごう修也しゅうやに銃を向けていた。

だが引き金は引かず互いに様子見の状態を貫いている。



東郷 椎菜とうごうしいな

「そうね……どうしましょうか

このままじゃ敗色濃厚ね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「こいつらを庇わなかったのがお前の敗因だ

三人相手なら手に困っていただろう」



東郷 椎菜とうごうしいな

「何言ってるのよ

どうせ本気を出したら三人まとめて倒せてたんでしょ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「どうだろうな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「それに、もしこの二人を庇おうとして私が斬られたんじゃ意味がない

それぐらいわかるでしょ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「仲間を見捨てて、一人になった

それが結果だ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「貴方に仲間なんて言葉を使われても響かないわね

どうせ仲間や友達なんていなかったんでしょ?

私と同じ臭いがするもの貴方」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「一緒にするな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「あら、そう?

でも私みたいに何も信じてない

仲間も友達も必要ない

そんな顔に見えるけれどね」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

修也しゅうやは刀についた血を地面へと振り払った。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「友達なら一人だけ居た…」



東郷 椎菜とうごうしいな

「一人だけ?いったいそれは誰?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………」



東郷 椎菜とうごうしいな

「相変わらず秘匿主義な人ね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それはお互い様だろ

お前だって生まれてから正直に話したことがあるのか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「えぇそうね……その通りだわ」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

東郷とうごうはコ型の銃を脇のホルスターにしまい

腰に下げた大きいホルスターから二丁の小型サブマシンガンを取り出す

その弾丸には徹甲弾が使用されており、強力な一撃を叩きこめる。

だが、装填されているこの35×2の計70発のみ。

外してしまえば負けてしまうだろう。



東郷 椎菜とうごうしいな

(もし…これが効かないってなら

もう本当に打つ手がなくなる……)



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

クルクルと手で回しながら修也しゅうやへと向き合った。

修也しゅうやは人のものとは思えない謎の瞳をしたままこちらに刀を向けている。



東郷 椎菜とうごうしいな

「一つ聞かせて

私をこのまま見逃すってのはどう?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前達3人を殺せ

これが俺の出された指示だ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「それじゃあ無理ってわけね

ケチな人…」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「それが俺の役目だからな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「役目ね……貴方ほどの人物がどうしてCARDIEDカディドの下についているのか甚だ疑問ね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「下についたつもりはない」



東郷 椎菜とうごうしいな

「は?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「あくまで目的が同じというだけだ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「よくわからないけれど…覚悟は固いといったところ?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そうだ…さぁ、いつでもかかってこい」



東郷 椎菜とうごうしいな

「そうね…こうなった以上腹を括るわ

死ぬ気でいかせてもらうわね」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

再び視点移り

勝田かつたNE-XUSネクサスの腕輪を受け取った。

榊原さかきばらをそっと地面に寝かすと勝田かつたはゆっくりと立ち上がろうとする。

だがその瞬間、物音が背後からした事に気づき勝田かつたは振り返った。

中井なかいが気を取り戻しており、フラフラとした足つきで立ち上がっていた。



勝田 信二かつたしんじ

「な……中井なかいさん!!?」



中井 亮なかいりょう

「ぐ……ゴホッ…ゴホッ!!

………よく……も…やり……ましたね!

まさか…ここまで……やられてしまうとは…!」



勝田 信二かつたしんじ

「そ…そんな……どうして

その傷で立てるんですか!!?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

中井なかいの腹部からはおびただしい量の血が流れ出ており

腹回りの肉が付近に飛び散り内臓が視えるほどの重傷を負っている。

その血の色は赤黒いものではなく、緑色をしていた。

それは勝田かつたも何度も見ているものと酷似している。

そう、まるで魔怪まかいの血の色なのだ。



勝田 信二かつたしんじ

「な…なんですか……それ……!

緑色…の……血……?ど…どういうことですか!?」



中井 亮なかいりょう

「ふふ………聞いても無駄ですよ

…私ですらよくわからないのですから……」



勝田 信二かつたしんじ

「―――ッ!!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたはマグナムを中井なかいへ向けた。

だが中井なかいはこちらに敵意こそ向けているがこれ以上戦うつもりはないようで少しずつ後ろへと下がっていく。



勝田 信二かつたしんじ

「…投降してください!

私だって……貴方を撃ちたくない!!」



中井 亮なかいりょう

「甘いですね……油断したら撃たれると……

躊躇することは命取りになると…そう教えたはずですよ…」



勝田 信二かつたしんじ

「ですが……それは中井なかいさんもそうだった……

明らかに何度も俺を殺すチャンスはあったはずです!

どうしてですか…?

どうして中井なかいさんはCARDIEDカディドに!!」



中井 亮なかいりょう

「私は…‥あの御方に…忠誠を捧げたのです…!」



勝田 信二かつたしんじ

「あの御方……?いったい誰の事ですか?」



中井 亮なかいりょう

CARDIEDカディドのボス……JOKERですよ……

私は彼の思想に賛同し…総てを捧げているのです……」



勝田 信二かつたしんじ

「ジョーカー…?そいつは一体……?」



中井 亮なかいりょう

「彼は…我々人類の罪を……償うための機会を与えているのです」



勝田 信二かつたしんじ

「罪だなんて……俺らはただ……市民を守るために戦っているだけです!

それのどこが悪いのですか!!」



中井 亮なかいりょう

「……それは……また次の機会にお話ししましょう

私たちはまた近いうちに姿を現わします……

そこまで勝田かつたさんが生きていれば…ですが

また再びお会いできる日を楽しみにしていますよ」



勝田 信二かつたしんじ

「近いうちに…?」



中井 亮なかいりょう

「そうです……

破滅の……最終日ラストワンに……すべてがわかります

総てが……決まり…終わるのです」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

中井なかいはそのまま勝田かつたに背を向けながら走り去っていく。



勝田 信二かつたしんじ

「待てッ!!中井なかいさん!!!

うぐっ……!!!!?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたは追いかけようと足に力を込めるが

全身に走る痛みのあまり走ることができず足を止めた。

茫然と立ち尽くしていた勝田かつただったが

ゆっくりと振り返り、榊原さかきばらの方を眺める。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん…………」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたの足を重くする悲しみの気持ち。

だが勝田かつた榊原さかきばらの言葉を思い返していた。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさんだったら……俺の知っている隊長は

きっと…真っ先に……仲間を守れって……

助けに行くはずだ……」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたはギュッと覚悟を込めて拳を握り締める。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん……俺は………

東郷とうごうさん達の援護にいきます……」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたは深く頭を下げる。

自分をここまで育ててきてくれたこと

自分を守ってくれていたこと

そして自らの命を賭けて道を示し続けてきてくれたこと

それら全ての感謝を込めて勝田かつたは深々と礼をし続けた。



勝田 信二かつたしんじ

「今まで……ありがとうございました!!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたは上体を起こしてゆっくりと歩いて出口方面へと向かう。

急がなければならないが、満身創痍の勝田かつたには歩くだけで精一杯だった。



勝田 信二かつたしんじ

「うっ…!!!

…無線…は…………」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたは無線を取り出す。

だが先ほどの戦闘の際のダメージで故障しているようで電源が入らなかった。



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさん……須加すがさん……橘花たちばなさん……どうか……どうか無事でいてください!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

壁に手をつきながら勝田かつたはまるで這うようにゆっくりと出口へと歩みを進めた。

残る仲間を助けるため

榊原さかきばらの意志を継ぐために

勝田かつたは次の戦地へと赴いていく。



M→勝田 信二かつたしんじ

命を賭けて部下を守ろうとしたもの

それに着いていった者ら

彼らの命は無惨にもあっさりと散ってしまう

勝利と引き換えに失った代償はとても大きい

残された者たちに悲しみだけを遺して




























橘花 真由美たちばなまゆみ

「ここは……?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「よう橘花たちばな



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長…?どうしてここに?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺らはどうやら死んじまったみたいでな

さっき須加すがが来たところだったがお前も来ちまったか…」



須加 正樹すがまさき

橘花たちばなもあいつにやられちまったか

ほんとあいつ強すぎるぜ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「そんな……二人とも……いえ

私も……死んだ?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁそういうことだ

俺らがまさか街田まちだおっさんよりも先に死ぬとは思ってなかったな」



須加 正樹すがまさき

「でもあーいうのって結構しぶとく生き残ったりすんじゃねぇか」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「言えてるな」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「二人とも…どうしてそんなに気楽なんですか?

私たち死んでしまったんですよ!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁ~…なんだろな

こういうのもなんだが、やっと肩の荷が下りた気分で

ちょっと気分もよくてな」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「何言ってるんですか!?

勝田かつたくんや東郷とうごうさんが心配じゃないんですか!!?」



須加 正樹すがまさき

「まぁ心配っちゃ心配だぜ?

俺もここに来た時はそりゃ焦ったが

でもあっちの様子はわかんねぇからな」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「だから後の事はあいつらに任せる」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「任せるって……そんな無責任な……」



須加 正樹すがまさき

「こいつの大雑把なところは今に始まったことじゃねぇだろ?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「はぁ…………それもそうですけど」



須加 正樹すがまさき

「もし俺だけ生きてたら隊長なんて面倒くせぇの押し付けられてたかもしれねぇんだぜ

マジでよかったぜ!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「でも…須加すがさん

須加すがさんは家族だっているのに……」



須加 正樹すがまさき

「そうだな…流石にそっちは心配だぜ

でもあいつらなら俺がどうして命を賭けたか必ずわかってくれる

もし二人がこっち来たら家族サービスをうんとしてやらねぇとな」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「こっちに来たら…って縁起でもないですよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そうだ、久々に三人で一杯やらないか?

須加すがが家族ができてからあんま行けてなかったもんな」



須加 正樹すがまさき

「そういや三人では長いこと行ってなかったな

たまにはぱーっと朝まで飲み明かすってのも悪くねぇな」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「今はそれどころじゃ……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「心配する気持ちは俺にだってそりゃある

だが今の俺らにはやれることがねぇ」



須加 正樹すがまさき

「だから細かいこと考えるのは後にして

今は死人らしくあいつらに後を託すとしようぜ

ってさっき義弘よしひろと話してたんだよ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「死人らしくって…

二人とも本当に適当なんですから………」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これが俺流なんだよ

いつだって自分らしくあれって言ってんだろ

長い休暇をもらったと思おうぜ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「……はぁ~~~わかりました

もう深く考えないようにします…

…せっかくの休暇なら美味しいところ連れてってくださいよ」



須加 正樹すがまさき

「そういやお前、俺らに飯奢るって話してたよな?

橘花たちばな、今日は義弘よしひろの奢りにすんぞ!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「えぇ、そうしましょう!

確かに散々私たちに仕事押し付けたんですから

たまには私たちだって無理言ってもいいはずですよ!」



須加 正樹すがまさき

「たらふく高くて美味いもん頼んでやろうぜ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「はい!

早く行きますよ榊原さかきばらさん!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「おいおい………しゃーねぇ

だがちっとは遠慮しろよな」












神ガ形ノ意思ニ背イテ 拾話 完

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


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・アドリブ演技に関して

この台本はアドリブを入れる事を前提として書いています

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・特殊なものについて

台本を演じる際に読み込まないで演じる行為や

言語を変える、明らかに台本無視と取れる

特殊な行為をするものは認めていません

流石に読み込んで普通に演技してください

多分そうじゃないとこの台本は演じれないです



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