神ガ形ノ意思ニ背イテ 玖話

登場人物名


榊原 義弘さかきばらよしひろ

32歳

大雑把な性格だが、部下を率いる防衛隊の一部隊の隊長。

説明下手でよく橘花たちばなに訂正される

勝田かつたを気に入り、傍に置いて色々指導している。

任務中ではかなり頭が回り、戦場をかけている。

筑波つくばとはかなり長い付き合いらしい

昔受けた負傷が今も身体を蝕んでおり

いつ死んでもおかしくない




勝田 信二かつたしんじ

24歳

熱い正義感と無鉄砲な若さを持つ新人隊員

士官学校卒の元警官であったが、魔怪まかいの襲撃の際に同僚たちの不甲斐なさに失望し、単身挑むも死にかけそこを榊原さかきばらに助けられる

任務より目先の命を優先することが多く、危険な目に合うことが多い

中井なかいから教わった破装拳はそうけんを扱い

射撃の腕も上がってきており、実力が伸びてきている




須加 正樹すがまさき

30歳

榊原さかきばらの下についている隊員の1人。

榊原さかきばらの適当な説明には慣れているようで大体の説明で内容を理解している

部隊の中では狙撃を務める事が多く、高い位置からの索敵が得意である

先の任務で足を負傷しており、現在は入院中である




中井 亮なかいりょう

29歳

渋谷のバーでバーテンダーをしている男性

とある事件により視力がほとんど無いらしい

勝田かつたを弟子に取り、武術を教えている




街田 茂まちだしげる

49歳

榊原さかきばらの師匠

大雑把でガサツな性格だが実力は確かで引退後の現在も英雄譚が受け継がれている

現在は記者をやっているようだが、身の上話をしないためどこに属しているかは不明




代永 丈しろながじょう

36歳

榊原さかきばらよりも少し前から防衛隊に所属している隊員

嫌味を言うような性格で榊原さかきばらたちからは嫌われている

金こそ全てという性格の持ち主

射撃技術や統率能力は高く、そこだけを言えば榊原さかきばらよりも上である

先の任務以降行方不明となっている




橘花 真由美たちばなまゆみ

27歳

榊原さかきばらの説明を理解し、作戦伝達を務める事の多い女性隊員

榊原さかきばらとは長く同じ隊で行動しており、一番彼の考えや特性を理解している

戦闘では弾幕を張ったり、他隊員の立て直しの時間稼ぎや牽制けんせいを行う




筑波 柊つくばひいらぎ

年齢不詳

マッドサイエンティスト気質な女性

魔怪まかいの研究に人生を捧げており、クローンとなり長年研究を続けている

未だ研究結果を世界に公表することなく、自身のみで使っている

現在はなにか新たな兵器を製造することにご執心の様子




東郷 椎菜とうごうしいな

19歳

学園を卒業し、何かの目的を以て部隊に所属した。

自分の実力を疑わず、隊員と特に須加すが勝田かつたとは反りが合わない事が多く、独断で行動することが多い。

かなりの実力者で、榊原さかきばら管轄の部隊で個人戦力は群を抜いて高い。






Nは→後のキャラ演者が読む

※所々交代があるので注意してください。かなり大変です。






VHAぶいえいちえー

突如世界に現れた「魔怪まかい」と呼ばれる怪物を駆除するために設立された軍

Variant Hunt Army通称VHAぶいえいちえーと呼ばれる軍は

自衛隊や警察組織と違い、独立した権力を持つ

一般人や学園卒業者の中で実力保有者が入隊することができる

VHAぶいえいちえー兵を総称して兵員と呼ばれている




魔怪まかいについて

2000年に突如現れた異形の生命体。

理由や目的は不明だが人類を脅かす存在。

現れた当初は世界でも数十体しか確認されなかったが、年々数を増やしていた。

出現方法も繁殖方法などは不明となっている。

魔怪まかいの姿形は現存した生物に類似している為

生物が魔怪まかいに変異した説や妖怪や幽霊といった類である説だったり

一部では神の使い等と吹聴ふいちょうしている宗教までいる。




CARDIEDカディドとは

その素性、人員、目的一切が不明のテロ集団

突如姿を現れては殺戮を行う事から市民から恐れられている






役表


榊原 義弘さかきばらよしひろ &黒いローブを着た男 ♂:

勝田 信二かつたしんじ♂:

須加 正樹すがまさき代永 丈しろながじょう ♂:

橘花 真由美たちばなまゆみ ♀:

東郷 椎菜とうごうしいな ♀:

白いコートの男&神蔵 修也かぐらしゅうや 不問:

Jack&(その正体)♂:






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神ガ形ノ意思ニ背イテ 玖話






N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばら隊の面々は装甲車に乗り込み目的地へと向かっていた。


数時間前に突如通達された緊急任務

危険度が高い任務は緊急任務と称されて隊員たちに通達される。

任務内容はCARDIEDカディドの隠れ家への強行作戦

市民を脅かすテロリストらとの直接対決

あまりに突然すぎる緊急任務に不安と緊張を隠せない一同。


特に不安を煽っていたのは普段の任務よりも上質な支給武器の数々。

普段の装備は移動しやすく魔怪まかいの攻撃を回避できるようにと軽量型の装備が渡される。

だが今回は銃撃や刃物等を想定した重装備に身を包んだ5人は各々の武器の仕様を確認しつつ目的地へ着くまで待機していた。


榊原さかきばら橘花たちばなは両手持ちのアサルトライフル。

勝田かつたには大口径ピストルとマグナム。

東郷とうごうは普段のコ型の銃に加え、片手持ちのサブマシンガンが二丁。

須加すがは腰にさげた折り畳み式の槍と

普段使用している狙撃用のライフルではなく中距離戦闘を想定されたライトマシンガンを装備していた。



須加 正樹すがまさき

「なんだこりゃ…グリップでかすぎだろ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさんどうですか?

その武器扱えそうですか?」



須加 正樹すがまさき

「いつものスナイパーライフルより短ぇがその分重てぇな

最初の数回は取り回しに苦戦しそうだが

やってりゃなんとかなんだろ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「私も両手持ちの装備は久しぶりなので

訓練は受けてますが実際に使えるかは少し不安です」



勝田 信二かつたしんじ

「これだけの装備が支給されるというのは珍しいんですか?」



須加 正樹すがまさき

「かなり珍しいな

前に特異体が出た時もここまでは出なかったぜ

過去にこんぐらいあった時はクラスターの時だったか

まぁなんにせよ

そうそうこんな良い装備は渡されねぇぞ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「それほどまでCARDIEDカディドを警戒しているという事でしょうか…

どう思いますか隊長?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

その問いに榊原さかきばらは反応しなかった。

黙りこくったまま一点に腕輪を見つめており

こちらの話が全く耳に入っていないようだ。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長…聞こえてますか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……」



須加 正樹すがまさき

「おい…義弘よしひろ

それ使うの―――」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「安心しろ!お前ら!

どんな奴が出てきても俺に任せておけ!

このNE-XUSネクサスで全員ぶっ倒してやる!」



須加 正樹すがまさき

「…あんま無茶すんじゃねぇぞ

前みてぇにお前が最初に倒れられたら俺らも混乱すんだからな」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「わかってる」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

勝田かつた榊原さかきばらの表情の違和感に気づいていた。

普段と違いその瞳には焦り、不安、そして怯えがあるように見える。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん……

俺が早く敵を倒せば……

そしたら無理をさせずに済む…

そうすれば………榊原さかきばらさんは……)



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

勝田かつたは次に東郷とうごうの方を見る。

東郷とうごうは普段と同じく無表情で窓から外を眺めていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「……」



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさん……

貴女を人殺しにはさせません……俺が必ず止めて見せます)



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

東郷とうごうの言葉を勝田かつたは思い返していた。

以前言っていた復讐相手がこの先にいる。

おそらく彼女はその人物を前にした瞬間

迷いなく引き金を引くだろう。

それが彼女が戦う理由なのはわかっている。

だが勝田かつたはそれでも彼女を止めることを決意していた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なぁ…お前ら聞いてくれ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

全員は作業の手を止めて真剣な面持ちで榊原さかきばらの方を見つめる。

東郷とうごうもチラリと目線だけを榊原さかきばらへ向けていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「今回の任務………

これは予想でしかねぇが、かつてないほどの危険な任務になる

下手すりゃ俺らは全滅することだってあるだろう…

だから……その……なんだ

アレだ…アレ」



須加 正樹すがまさき

「なんだ…?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「いつも言ってますがアレじゃ全然伝わりませんよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「………頼む

…みんな……死なないでくれ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

その言葉を4人は静かに聞いていた。

だが須加すががその静寂を破るように笑いだす。



須加 正樹すがまさき

「ぷっ!ハッハハハハ!

また随分と直球だなぁ!!

ってかお前が言えたクチかよ!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「そうですよ!!

いつも隊長が言ってるじゃないですか

みんなを守って見せるって

私たちはそれを信じてます

そんな風に弱々しい隊長なんて…らしくないですよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「………そうだな

悪いな…柄にもなく弱気になってたみたいだ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「しっかりしてください!

任務はこれからですよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁ」



勝田 信二かつたしんじ

(須加すがさんも橘花たちばなさんも

榊原さかきばらさんを不安にさせないように無理して強気で接しているんだ…

きっと二人も落ち着かないはずなのに……

そもそも…二人は榊原さかきばらさんのあの事を知ってるんだろうか……)



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

そんなことを考えている勝田かつたの肩を榊原さかきばらが突然掴んだ。



勝田 信二かつたしんじ

「わっ!!ど、どうしました!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あまり対人戦は教えきれてねぇが…とりあえず頭にだけ入れておけ

勝田かつた、絶対に油断すんな

相手は俺らを殺しにかかってくる

もしも敵を殺せるときがあれば迷いなく撃て

さもなければ撃たれるのは自分だ

必ず俺たちは勝って生き残らなきゃならない

東郷とうごう、お前もわかるな?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「はぁ………それを私に言ってどうするの?

そんな事とっくにわかってるわ

他人の心配をする暇があったら自分の事でも考えてたらどう?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ふ……いつもながら手厳しいな

わかってるならいいんだ

勝田かつた、それだけは忘れるなよ」



勝田 信二かつたしんじ

「…わかりました!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「敵はテロリストだ

油断も躊躇もするな

お前ら…気を引き締めてかかれ」



勝田かつた須加すが橘花たちばな

「了解!」






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N→東郷 椎菜とうごうしいな

同刻、CARDIEDカディドの隠れ家にて

暗い部屋の真ん中にある円卓テーブルを囲うように三人が座っていた。

白いコートの男、黒いローブの男と並び

ボロボロの服を着た男が座っている。

その正体である代永 丈しろながじょうは二人に端末を見せた。



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「防衛隊が0時過ぎにここを襲撃してくる

規模は12部隊、政府も絡んだ任務内容だ

武装も最上級のものが配備されるだろう」



Jack

「情報提供、感謝いたします

1つだけ質問をさせてください

――――――という隊員は動員されていますか?」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「あぁ?ちょっと待てよ……

あぁ~そいつは来てるぞ

で、それがなんだ?」



Jack

「いえ…作戦に不都合がないか確認をしたまでの事です」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「よくわからねぇが俺は命の危険を感じたら即座に逃げるからな!

それでいいんだろ?」



白いコートの男(神蔵 修也かぐらしゅうや兼任)

「好きにしろ

俺もあくまでディーラーを逃がす時間を稼ぐだけだ

それでいいんだろJジャック?」



Jack

「……構いません

それが取引の内容ですから」



白いコートの男(神蔵 修也かぐらしゅうや兼任)

「たかが支部を相手に大層な戦力で攻めてくるもんだな

奴らはどうしたらいい?

全員殺した方がいいのか?」



Jack

「ディーラーさえ避難させられれば私たちの役目は終わりです

後のことは指示がありませんので自由にしてもよいのでしょう」



白いコートの男(神蔵 修也かぐらしゅうや兼任)

「そうか……相変わらず大雑把な指示だな」



Jack

「それが…あの御方の考えです

私たちはそれに従うまでの事」



白いコートの男(神蔵 修也かぐらしゅうや兼任)

「お前らはそういう奴らだったな

そっちの指示には従う

だが指定してないことは好きに行動させてもらう」



Jack

「えぇ……それで構いませんよ」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「じゃあ決まりだな!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

話が終わるとその場から代永 丈しろながじょうは立ち去る。

代永しろながは歩きながら怒りに満ちた表情で銃をホルスターから手に取った。



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「必ず奴が…榊原さかきばらが来るはずだ……

ここをお前の墓場にしてやる……

必ず殺してやる…お前の部下も仲間も…

皆殺しにしてやろう!!

…くくく!ははははは!!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

残った白いコートの男はJジャックと呼ぶ黒いローブに仮面を被った男の方を見る。



白いコートの男(神蔵 修也かぐらしゅうや兼任)

「なかなかに扱いづらい奴だな」



Jack

「上手く扱う必要はありません

彼の役目は既に終わっています」



白いコートの男(神蔵 修也かぐらしゅうや兼任)

「それもそうだな

……そういえばJジャック。さっき隊員の名前を聞いてたが知り合いでもいるのか?」



Jack

「……お互いの詮索はご法度という契約のはずです」



白いコートの男(神蔵 修也かぐらしゅうや兼任)

「…それもそうだったな

聞いて悪かったよ」



Jack

「いえ…お気になさらず」



白いコートの男(神蔵 修也かぐらしゅうや兼任)

「じゃあ俺は一足先に持ち場に着かせてもらうぞ」



Jack

「よろしくお願い致します」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

1人部屋に残ったJジャックは静かに立ち上がる。



Jack

「あまり戦いたくはないですが…仕方がありません

…総てはカードの描くままに」






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N→神蔵 修也かぐらしゅうや

それから1時間後の隠れ家突入15分前

隊は各々の持ち場より少し離れた位置で指定時間まで待機していた。


榊原さかきばらは目的地であり戦いの地となる場所を眺めながら大きく深呼吸をする。

そこに須加すがが歩いてくると榊原さかきばらに缶コーヒーを投げ渡す。



須加 正樹すがまさき

「何考えてんだ?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁ……これ貰うぞ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらは貰った缶コーヒーを開けると一気に飲み干す。

近くの自販機で買ったばかりなのでまだ



須加 正樹すがまさき

「お、おい!!大丈夫かよ!?

熱くねぇのか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁ………嫌な予感がしてな

どうにも落ち着かないんだ」



須加 正樹すがまさき

CARDIEDカディド……俺は直接相手したことがねぇからな

どこまで強いのかわからねぇ

お前から見てどのぐらいの強さだった?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「以前…俺が戦った相手

そいつは俺よりも遙かに強い実力を持っていた

もし…あんなのが複数いるとなったら

いくらお前でも勝てるとは断言できねぇ」



須加 正樹すがまさき

「そこまでの相手か?

もし街田まちださんが戦うんなら勝てそうか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺が戦った奴が相手なら…な

もしそれ以上の実力者がいるとなったら話は変わってくる」



須加 正樹すがまさき

「そうなってくると厄介だな

いくらなんでもあのおっさんより強ぇのは勝てねぇぞ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「だが…俺にはこれがある」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらNE-XUSネクサスの腕輪を見せつける。



須加 正樹すがまさき

「お前それ……もうあと二回しか使えねぇんだろ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「だがまだ二回ある

一回の起動で倒せばいい」



須加 正樹すがまさき

「絶対にそれを使うなとは言わねぇ

温存して負けちまって死んじまうよりはいいからな

だがな……お前……

だからと言ってそれ使って死んじまってもなんにもならねぇぞ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺だってなるべくは使いたくねぇよ

だが…そうはいかねぇだろうな」



須加 正樹すがまさき

「…お前が死んじまったら俺らはどうすりゃいいんだよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「その時は少しの間、お前が率いてくれ

すぐに勝田かつたが代わってくれるはずだ

だからそれまでは橘花たちばな東郷とうごうを頼む」



須加 正樹すがまさき

「ふざけんなっての

そんな重ぇもんを押し付けてくんじゃねぇよ!

俺は楽だからお前のとこに来たんだぜ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「お前にしか頼めない…頼む」



須加 正樹すがまさき

「お前って本当に我儘だよな

…わーったよ

だが確実にできるとは断言しねぇかんな

俺だってここを生き残れるとは限らねぇんだぞ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「それでもいい、助かる」



須加 正樹すがまさき

「…もしお互い生きて帰れたら飯奢らせるかんな

俺だけじゃねぇ

勝田かつた橘花たちばな東郷とうごうは…まぁあいつは来ねぇだろうが

ひろみとよしえの分もだからな」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なるべく安い店で頼む」



須加 正樹すがまさき

「そりゃどうかな

言っとくが結構ひろみはグルメだからな

おっと…そろそろ時間だぜ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁ…行くか」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

別の場所では東郷とうごうは座りながら静かに銃をクルクルと手で回していた。

そこに勝田かつたがやってくる。



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさん…少しいいですか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「話が長くなると嫌だから手短にしてちょうだい」



勝田 信二かつたしんじ

「ぁ……はい……わかりました」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたは少し離れた位置に座ると話しづらそうに黙りこくる。



東郷 椎菜とうごうしいな

「話しかけておいて急に黙るなんて斬新な会話ね」



勝田 信二かつたしんじ

「す…すいません!!

その…言葉が出てこなくて……」



東郷 椎菜とうごうしいな

「いいから早く話してくれない?

時間が勿体ないわ」



勝田 信二かつたしんじ

「どうして…俺に榊原さかきばらさんの事を教えてくれたんですか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……」



勝田 信二かつたしんじ

「いつもの東郷とうごうさんだったら話さないだろうなと思ったので」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……なんでしょうね

私もなんとなく言っただけだから深い意味はないわよ」



勝田 信二かつたしんじ

「……なんとなくですか」



東郷 椎菜とうごうしいな

「で、それがなんなの?」



勝田 信二かつたしんじ

「俺…さっきの事……まだ信じられないんです」



東郷 椎菜とうごうしいな

「あら、そう

疑うぐらいならさっさと忘れたら?」



勝田 信二かつたしんじ

「い、いえ…!疑ってるわけじゃなくて!

その…なんて言えばいいんだろう

し…信じたくないというか

理解しがたいというか…」



東郷 椎菜とうごうしいな

「…それで?」



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさんが俺を隊長にしたがってた理由って

……面倒だとか……大変だからだとか

そんな適当な理由だと思ってました

でも……さっきの話を聞いて俺の中で合点がいったんです

榊原さかきばらさんは…俺に託したかったんだって……」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……」



勝田 信二かつたしんじ

「俺は不器用な癖にやりたいことが沢山あって

市民を守りたいとか…魔怪まかいを倒したい

でもそれと同じぐらい榊原さかきばらの意志を継ぎたいとも思ったんです

まだ一番なにが大事かってのはわからないんですけど…

それが俺の…引き金を引く理由です」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……へぇ、よくあの時の話を覚えてたわね

ちょっと気持ち悪いわ」



勝田 信二かつたしんじ

「気持ち悪いって…シンプルですね…

あの………それで…その…東郷とうごうさん

今回の任務が終わったら…あの時のお礼をさせてください

前にも言ったかもしれないんですがおすすめのバーが―――」



東郷 椎菜とうごうしいな

「礼なんていらないわよ

恩を着せたつもりもないしね」



勝田 信二かつたしんじ

「そ…そうですか……わかりました」



東郷 椎菜とうごうしいな

「そろそろ時間よ

早く行きましょう」




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N→神蔵 修也かぐらしゅうや

それから数分後、突入まで残り1分

榊原さかきばら隊の面々は武装を構えていつでも突入できる状態で待機していた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺たちは隠れ家の中枢に突入し

主要人物と思わしき人物の捕縛

または敵が抵抗の意思を見せた場合は即刻射撃してもいい

俺たちは必ず生きて帰るぞ!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「即刻射撃…相手は人ですよね

咄嗟に撃てるか自信がないです……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「難しいかもしれんがやるしかない」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「そうですね…覚悟しておかないと……」



須加 正樹すがまさき

「ちゃちゃっと終わらせてまた休暇を貰おうぜ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そうだな」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「そろそろ時間になります

5・4・3・2・1……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「行くぞ!作戦開始だ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらが走りだし4人も後に続く。

5人が進んでいくとすぐに各地で射撃音が鳴り始めた。

他の場所でも一斉に戦いが始まったようだ。

隠れ家は今は使われていない大きな公民館のような形状をしている。

地上より低い位置に入り口があり、窓や扉全てがシャッターで隠されており中が確認できない。

一同はその建物の入り口付近の壁に到着すると橘花たちばなが壁に小型C4を取り付ける。

それを確認すると5人は少し離れた位置に移動したのを確認すると橘花たちばながスイッチを押した。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「爆破!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

橘花たちばながスイッチを押すと小さな爆発を起こし

壁が崩れると人が十分通れる穴が空いた。

榊原さかきばらが突入の指示をハンドシグナルで送ると内部に突入する。

建物の中は広い一直線の長い道が続いており

一列になって間隔を空けながら先に進んでいくと突き当りに扉があることに気が付いた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「扉だ…!突入するぞ!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

扉を蹴破って開けると中は会議室になっていた。

部屋には向かい合うように扉が二つあり

たった今その扉が閉まる瞬間を目撃した。

そこには見覚えのある50代ぐらいの男性と黒いローブを着た3人がおり、その男を隠すように逃げていく。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長!もしかしてあの人物が…!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ちくしょう!あと少し遅かったか!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

その扉に榊原さかきばらは近づき再び蹴破って開ける。

部屋の奥は入り組んだ通路となっており、どの道を通ったのかわかりづらくなっていた。

奥まで逃げていったようでこのまま追いかけても追いつかないだろう。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「このまま追いかけてもこの重装備では追いつくことはできません!

内部の構造がわからないので先回りも難しそうですが…どうしますか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そうだな…須加すが橘花たちばな東郷とうごう

お前たちは地上から裏に回りこんでくれ!

俺と勝田かつたでこのまま追いかける!」



須加 正樹すがまさき

「わかった!必ず無事でいろよ!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「お前もな!」



N→Jack

榊原さかきばら須加すがは互いの胸を裏拳で叩き合う。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「二人とも…気を付けてください!」



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさんも無茶しないでくださいね!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「貴方にだけは言われたくないんだけれど

心配の気持ちだけは素直に受け取っておくわ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「それじゃあそっちは頼んだぞ!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

三人は来た道を戻り、地上へと向かう。

榊原さかきばら勝田かつたはそのまま扉の先へと進み

曲がり角や人が通って行ったであろう痕跡を見つけながら進んでいく。

奥へと進んでいるとその途中、二人へ向けて数発の銃弾が撃ち込まれる。

榊原さかきばらはいち早く気が付き物陰に姿を隠す。

勝田かつたも急いで近くの曲がり角の壁に隠れるとチラリと顔を出して敵の位置を探そうとする。



勝田 信二かつたしんじ

「どこから撃ってきてるんだ!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「死角から…手馴れてるな…

この感じ…まさか!?」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「はっ!久しぶりだな!榊原さかきばら!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

銃声が止むとどこからか声がする。

二人はすぐにその声の正体に気が付いた。



勝田 信二かつたしんじ

「この声は…!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

代永しろなが!?なぜお前がここにいる!?」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「そこのテメェ…あの時の新兵だな?

お前のせいで俺は地位も資金も何もかも失っちまった…!

そのツケをここで払ってもらおうか」



勝田 信二かつたしんじ

「貴方が東郷とうごうさんや仲間にしたことは!

到底許されることじゃないですよ!」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「許されるだって?

前も言ったが俺は俺のためだけに動く

阿呆の榊原さかきばらのとこの新米がなにを言おうが説得力がねぇんだよ!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

勝田かつたの顔の近くを銃弾が掠める。

暗がりの中だがマズルフラッシュが最小限に抑えられたアタッチメントを付けているためか射撃地点が掴めずにいた。

音はあえて大口径の銃を使うことでこの狭い建物内で反響し、頼りにならない。

その辺りも計算したうえで代永しろながは構えていたのだ。



勝田 信二かつたしんじ

「どこから撃ってきてるんだ!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた!お前は手を出すな!

代永しろながは俺が相手する!」



勝田 信二かつたしんじ

「ですが!一人では危険です!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あいつは…俺がケリをつけたいんだ!」



勝田 信二かつたしんじ

「………わかりました!」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「ケリをつけるだと?

ふっ!本当に阿呆は困る

お前らごときに負けるわけがないだろ

榊原さかきばら、まずはお前から殺してやる

次はそこの部下を殺す!!

その次は…わかるだろ!!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「んな事させるわけねぇだろ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばら代永しろながの影を見つけた。

10メートル先の物陰辺りに姿を捉える。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「居たッ!!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらは走ってその方向へと向かう。

銃弾を的確に避けて代永しろながの影を見かけた物陰へと銃を向ける。

だがそこに代永しろながの姿はなかった。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なっ!!居ない!!?」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「こっちだ!ウスノロ!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

背後から飛び出した代永しろなが榊原さかきばらの背後から組み付く。

榊原さかきばらは武装の動きづらさのあまりすぐに振りほどくことができず

組み付かれたまま代永しろながの思い通りに勝田かつたの方に正面を向けられた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぐっ!?」



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!!」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「動くなよ?」



勝田 信二かつたしんじ

「ぐっ!!!?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

勝田かつたは大口径ピストルを向けるも

榊原さかきばらを盾にするように姿を見せているため狙いが定まらなかった。



勝田 信二かつたしんじ

「このままじゃ照準が…!!」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「テメェは上司が殺されるところを見ながら

最後の言葉でも考えてるんだな」



勝田 信二かつたしんじ

「クソっ!!」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「ざまぁないな!榊原さかきばら!!

自信ありげに突っ込んできやがって!

自分が優秀だとでも錯覚したか!!?

これだから阿呆は困る!!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「っぐ…!!貴様ッ!!

なぜ…ここまで落ちぶれやがったんだ!!」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「落ちぶれただと?

笑わせんな!俺はもとからこういう性格だ!

お前のように平和だの善意だの臭い言葉を掲げる単細胞にはわからねぇか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぐ…最初会った時から気に食わん奴だったが!

ここまで…クソ野郎だとはな!」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「そのクソに殺されるんだよお前は!

あ~そうだ!前のあの女

東郷とうごうだったか!?

あいつも同じ隊だからな、来てるんだろ!?

今度こそ甚振ってから死にたいと願うまでゆっくりと苦しませてから殺してやるよ!

それを先にあの世から眺めてな!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

東郷とうごうを……部下を!!

お前のようなクズに会わせるわけがないだろ!!!」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「はぁ?調子にのるなよ!

この状況を考えてみろ

お前に選択権はねぇ!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ふざけるなぁ!!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらは気合をあげて振り払おうとする。

だが、その抵抗をいち早く察した代永しろながはナイフを取り出し榊原さかきばらに向けて振り下ろす。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「うぐっつ!!?」



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!!!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらは咄嗟に腕で防御する。

そのナイフの刃先が榊原さかきばらの腕に突き刺さった。

だがナイフごと代永しろながの腕を抑えると動きが止まる。

榊原さかきばらはその隙にもう片方の腕で肘うちをして振り払うと

懐に向けて蹴りを繰り出した。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「こんのッ!!馬鹿野郎がァ!!!」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「うぐっ!!?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

蹴りを受けた代永しろながは後方へと吹き飛ばされる。

だが態勢を崩されながらもホルスターから拳銃を取り出し、榊原さかきばらへと向けた。

ニヤリと笑い、引き金に指をかける。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「しまっ―――」



代永 丈しろながじょう(須加 正樹すがまさき兼任)

「貰った!死ねぇえぇ!!!!」



勝田 信二かつたしんじ

「ッツ!!!!?」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

銃声が鳴り響く。

その射撃を頭部に受けると、ドサッと音を立てながら地に倒れた。



N→勝田 信二かつたしんじ

その頃、須加すが達は地上に出ると建物を大きく周り反対へと向かっていた。

3人は建物沿いを移動しながら裏側に向かって走っていく。

すると4人の黒いローブを着た男たちが建物の影から姿を現わす。

須加すがはこの集団がCARDIEDカディドの刺客であることを察し、2人に呼び掛ける。



須加 正樹すがまさき

「来やがったぞ!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさん危ないです!!!」



須加 正樹すがまさき

「ここは任せろ!」



N→勝田 信二かつたしんじ

須加すがは咄嗟に腰にある折り畳みの槍を組み立てると2人の攻撃を同時に受けとめた。

2人を抑え込み、刺客の足が止まる。

だが同時に須加すがの動きも止まってしまい

もう1人の刺客が須加すがの側面から追撃をしかけようとしていた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさん!後ろ!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「ちょっとどいて!」



N→勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうが飛び上がりながら

須加すがへ攻撃した1人ともう1人の敵に回し蹴りを放つ。

それを受けて吹き飛ばされた2人のうち1人が橘花たちばなの方へと倒れると地面に打ち付けられた衝撃ですぐには立ち上がれない様子であった。

橘花たちばなは倒れた刺客へ銃を向け、威嚇をする。

だがCARDIEDカディドの刺客は橘花たちばなを見てニヤニヤと笑い、立ち上がろうとしていた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「う…動かないでください!!う、動くと…撃ちます!!」



黒いローブを着た男(榊原 義弘さかきばらよしひろ兼任)

「…ひっひひ!!ひゃあぁぁあっつ!!」



N→勝田 信二かつたしんじ

橘花たちばなに標的を変えた敵は手に持っていた短刀で橘花たちばなを狙う。

反応が遅れた橘花たちばなは引き金を引くことができなかった。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「ぁっ!!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「何をしてるの!」



N→勝田 信二かつたしんじ

銃声が鳴り響く。

東郷とうごうが撃った銃弾が橘花たちばなへと斬りかかった敵の頭を撃ち抜き、更に振り向きながらもう一人の倒れた敵へと銃弾を撃ち込んだ。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「ぁ……!!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「こんな時に恐れてどうするの!

油断するなってさっき隊長にも言われてたでしょ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「ご…ごめんなさい!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「はぁ……謝罪を求めてるわけじゃないんだけど…」



須加 正樹すがまさき

「どらああぁあっつ!」



N→勝田 信二かつたしんじ

須加すがは抑えていた二人を力を込めて吹き飛ばして追撃を浴びせていた。

その攻撃が命中したようで二人の刺客はそのまま倒れる。

強烈な一撃を受けて気を失っているようで手際よく須加すがが紐を使って手足を縛るとそのまま武器を持ち直した。



須加 正樹すがまさき

「いきなり襲い掛かって来やがったな…危なかったぜ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「二人とも…すみませんでした」



須加 正樹すがまさき

「さっき義弘よしひろも言ってただろ

撃てる時は撃てって

そうじゃねぇと…死んでたかもしれねぇぞ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「そうですよね……すみません

私が甘かったです」



須加 正樹すがまさき

「無理もねぇ…急に撃てって言われてもきついだろうからな

それよりも今回の任務…

相当危険なはずだが……さっきの相手といい

あまり手ごたえがねぇ…」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「あまり勢力は大きくないということでしょうか?」



須加 正樹すがまさき

「いや…そういう感じじゃねぇな

どっちかと言えば外れを引いた感じだな」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「外れを引いたというと?」



須加 正樹すがまさき

「ここは奴らの本拠点じゃねぇな

とはいっても一定数いるのは間違いない

だがただのアジトの一個ってだけなんだろう

こいつらはCARDIEDカディドの刺客じゃなく

ただの雇われの犯罪者集団だ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「という事は…危険性は薄いということですか?」



須加 正樹すがまさき

「俺らも相当な数がいる

所詮ただのゴロツキや犯罪者相手じゃ武装も実力もこっちのが上のはずだ

流石に負けはしねぇと思うぜ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「それなら少し安心しました」



東郷 椎菜とうごうしいな

「本当にそう思うの?

もし手練れがいたら数は問題じゃない」



須加 正樹すがまさき

東郷とうごう、お前はそう思うのか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

CARDIEDカディドの全貌は何も掴めてない

なのに負けないだなんて早計としか言いようがないわよ」



須加 正樹すがまさき

「その通りだ…そうあって欲しいって思っちまってるんだろうな」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「でも…隊長にはNE-XUSネクサスがあります

あれで勝てない相手なんているんでしょうか?」



須加 正樹すがまさき

「居たら困るぜ…そんなのにどうやって勝ちゃいいんだか」



N→勝田 信二かつたしんじ

3人が再び走りだすと少しして建物の反対側が見えてくる。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「そろそろ反対口に回れますよ…」



須加 正樹すがまさき

「かなり早く着いたな!

これで先回りはできたはずだ!」



N→勝田 信二かつたしんじ

3人が反対側の出口であろう場所に着く。

そこには既に3部隊が到着していた。

だがその部隊は既に壊滅しており血だらけの死体が転がっていた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「な…なんですか!?この死体の量は!!?」



須加 正樹すがまさき

「こいつら…俺らより先に突入した部隊だぜ…

もう全滅したのか!?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「ひどい…まさかこんなに一気にやられるなんて!」



N→勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうは1人ずつ死体を眺めながらとある事に気が付く。



東郷 椎菜とうごうしいな

「この傷…刃物でつけられたものね

それも圧倒的な技術よ

装備の隙間を確実に狙ってる」



須加 正樹すがまさき

「これをやった奴が近くにいるってのか…」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「待ってください!誰かがこっちに来ます!」



N→勝田 信二かつたしんじ

その時、出口の扉が開く。

そこからとある男が姿を現わした。



須加 正樹すがまさき

「こいつ……!?」



N→勝田 信二かつたしんじ

その男を須加すがは知っていた。

国会議員の一人である皆浦 淳徳みなうらじゅんとく

彼は国会議員の中で保守派の一人であり

V.H.A.ぶいえいちえーを推す二宮 和鷹にのみやかずたかとは敵対する政治家である。



皆浦 淳徳みなうらじゅんとく(Jack兼任)

「防衛隊…手が早いものだな…」



須加 正樹すがまさき

「なぜ…テメェ!!政治家がどうしてこんなところにいんだよ!!」



皆浦 淳徳みなうらじゅんとく(Jack兼任)

「…姿を見られた

必ずこの3人は殺せ」



N→勝田 信二かつたしんじ

黒いローブを着た刺客らは頷く。

須加すが橘花たちばなが刺客らに銃を向けるが

二人の前に東郷とうごうが立ち塞がった。



橘花 真由美たちばなまゆみ

東郷とうごうさん…?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「やっと…見つけた……お前が……!!」



皆浦 淳徳みなうらじゅんとく(Jack兼任)

「……?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「嬉しいわ…この時をずっと待ってた…………」



皆浦 淳徳みなうらじゅんとく(Jack兼任)

「そうか、こいつが…代永しろながの言っていた女隊員

あの東郷とうごうの娘か…」



東郷 椎菜とうごうしいな

「あら…私を知っているのね

なら単刀直入に言うわ

貴方を殺しに来たわ」



皆浦 淳徳みなうらじゅんとく(Jack兼任)

「ふっ…やれるものならやってみるがいい」



東郷 椎菜とうごうしいな

「言われなくてもそのつもりよ!」



N→勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうが銃を構え、発砲した。

だがその銃弾を遮るように影が現れる。

その影は弾を弾き、皆浦みなうらを庇うように立ち塞がっていた。



白いコートの男(神蔵 修也かぐらしゅうや兼任)

「お前たち先に逃げていろ

ここは俺がやる」



皆浦 淳徳みなうらじゅんとく(Jack兼任)

「ここは任せたぞAエース



白いコートの男(神蔵 修也かぐらしゅうや兼任)

「あぁ」



N→勝田 信二かつたしんじ

皆浦みなうらと三人の刺客は走り去っていく。



須加 正樹すがまさき

「待て!!逃がす―――」



白いコートの男(神蔵 修也かぐらしゅうや兼任)

「動くな」



N→勝田 信二かつたしんじ

白いコートの男は一瞬で須加すがの目の前まで近づくと刀を振った。

須加すがはそれを寸でのところでライトマシンガンの銃身を当てて防御する。



須加 正樹すがまさき

「っ!こいつ早い!!?」



白いコートの男(神蔵 修也かぐらしゅうや兼任)

「………」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「須加さん!離れて!!」



須加 正樹すがまさき

「くそっ!そうもいかねぇんだよ!」



N→勝田 信二かつたしんじ

だが、すぐに白いコートの男は後方へ下がって距離を離した。

東郷とうごうがその男へと銃を向けており、それに気づいて回避したのだ。



東郷 椎菜とうごうしいな

「随分と久しぶりね

……神蔵 修也かぐらしゅうやさん」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…東郷 椎菜とうごうしいな

そういうお前は防衛隊にいたんだな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「こんなところで戦うことになるとは…変な巡り合わせもあるものね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「お前が防衛隊にいるのなら遅かれ早かれこうなっていただろう」



東郷 椎菜とうごうしいな

「それもそうね

私と貴方は最初から敵同士だったものね」



橘花 真由美たちばなまゆみ

東郷とうごうさん…知り会いなの?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「一度しか会ったことはないけれど知ってるわ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…………」



N→勝田 信二かつたしんじ

その見た目は成長しているが以前見た姿と変わらない。



東郷 椎菜とうごうしいな

「悪いんだけれど貴方と戦ってる暇はないの

放っておいてくれる?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「なら、まずはお前が武器を下ろせ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「懐かしいセリフね」



N→勝田 信二かつたしんじ

2人は今すぐにでも戦いそうな雰囲気を出しているが

そこに須加すがが槍先を修也しゅうやへと向けながら割って入る。



須加 正樹すがまさき

「ちょっと待ちな!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…」



東郷 椎菜とうごうしいな

「急になに?」



須加 正樹すがまさき

東郷とうごう、先に行け!

橘花たちばな!お前は俺のカバーいけるか!?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「任せてください!!」



N→勝田 信二かつたしんじ

橘花たちばな修也しゅうやに向けて発砲する。

修也しゅうやはそれを回避し、東郷とうごうから距離を離す。



東郷 椎菜とうごうしいな

「二人とも一体なんのつもり?」



須加 正樹すがまさき

「お前には…あいつを追っかける理由があんだろ!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……なぜ知ってるの?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「私たちが何も知らないと思ってるの…?

隊長から色々聞いてたのよ……

元々…こうするつもりだったの

何をするかもわかってる

良くない事だとも思う

でも仲間のためだからね…少しぐらいは目を瞑るわ」



須加 正樹すがまさき

「行けよ東郷とうごう

今を逃したら次が来るかわかんねぇぞ…

俺らはお前とまだあんまり話した事ねぇしお前がどんな奴かよくわかんねぇ

でも相当な思いで復讐しようとしてんだろ

だったらそれを止めたりしねぇ

だが……生きて帰れ

隊長からの俺ら仲間全員への命令だ!

それぐらいは守れ!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「また仲間……ね

………えぇ、わかったわ」



N→勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうは走って皆浦みなうらの後を追いかける。

修也しゅうやに後を追わせないように須加すが橘花たちばなは行く手を遮るように立ち塞がった。



須加 正樹すがまさき

「追いかけさせねぇぜ…

せめて俺らを倒してから行きな!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「なるべくは倒されないようにしたいんですけどね!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「追いかけるまでもない」



須加 正樹すがまさき

「なにっ…?お前の仲間じゃねぇのか?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「仲間……そんなもの必要ない」



須加 正樹すがまさき

(なぜ…追いかけない?

こいつらにとって皆浦みなうらは最重要人物のはずだぞ…)



橘花 真由美たちばなまゆみ

「私たちは…このまま戦いますか?」



須加 正樹すがまさき

「そうだな…少しすりゃ義弘よしひろたちも着くはずだ

そこまで耐えれりゃこっちのもんだ

踏ん張るぞ!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「わかりました!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……仕方ないな

かかってこい」



N→勝田 信二かつたしんじ

須加すがはライトマシンガンを背負い、槍を持つ。

橘花たちばなは銃を修也しゅうやへと向ける。

対して修也しゅうやは静かに刀を構えた。

その動きを見た須加すがは冷や汗を流す。

使い慣れている者の取り回しだ。



須加 正樹すがまさき

「やべぇな………持ちこたえられっか?

…あんま自信ねぇぞ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさんから見てどのぐらいの強さなんですか?」



須加 正樹すがまさき

「俺と義弘よしひろ二人がかりでもよくて相打ちできるかどうか…」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「そ…そんなにですか!!?」



須加 正樹すがまさき

「死ぬ気で挑まないとやべぇぞこいつは…」



N→Jack

その時、東郷とうごうは走りながら先へ進んでいた。

東郷とうごうの中で燻るモヤが足と止めさせる。

何か気に食わないといった表情をしながら後ろを振り返った。



東郷 椎菜とうごうしいな

「はぁ………………仲間ね」



N→Jack

なぜか東郷とうごう榊原さかきばらの言葉を思い返していた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なんかあった時は俺らを頼れよ

俺らはお前の仲間だ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「何度思い出しても暑苦しい言葉ね……」



N→Jack

須加すがの言葉を思い返す。



須加 正樹すがまさき

「だが…生きて帰れ

それが…隊長からの俺ら仲間全員への命令だ!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「言われなくても死ぬつもりはないわよ

生きてないと復讐は果たせないでしょうが…」



N→Jack

橘花たちばなの言葉を思い返す。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「仲間のためだから…ね

何をするかもわかってる

良くない事だとも思う

けれど少しぐらいは目を瞑るわ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「それはありがたいけれど…急になんの話だっていうのよ」



N→Jack

勝田かつたの言葉を思い返す。



勝田 信二かつたしんじ

「どうしてって…仲間だからって言ったじゃないですか」



東郷 椎菜とうごうしいな

「仲間仲間って…本当にうるさいわね……

いやに気持ちが悪い言葉……」



N→Jack

東郷とうごうは脳裏によぎる言葉を振り払って歩みを進めた。

未だ胸をざわめかせる謎の気持ちに説明が付けられぬままで。



東郷 椎菜とうごうしいな

「いちいちそんなことばかり言われちゃ気が悪いわね…」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

同刻、榊原さかきばら代永しろながの戦闘は決していた。

一発の銃声が建物内に鳴り響く。

すぐにドサッと音を立てて代永しろながが倒れるとそのまま動かなくなっていた。



勝田 信二かつたしんじ

「……なにが…!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……………」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらは立ち上がり腕に刺さったナイフを抜くと投げ捨てる。

おそるおそる勝田かつた代永しろながへと近づく。

脳天には銃弾が撃ち込まれてあり、そこから血が流れ出ていた。

その表情は驚愕に満ちており瞬きを止めて硬直しており、完全に死亡しているようだ。

榊原さかきばらはその死体を見ながら拳を握り締める。

敵になったとはいえ、死なせてしまうのは不本意だったのだ。



勝田 信二かつたしんじ

「これは………まさかこんなことに…」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……俺は……お前を心底気に食わなかった

だが……実力は認めてたんだがな………」



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ここで止まってても仕方がない…先を急ぐぞ!」



勝田 信二かつたしんじ

「…は、はい!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらは先へと進んでいく。

勝田かつた代永しろながの死体を再度見て唇を噛み締める。

ぎゅっと拳を握った後、溢れ出そうな気持ちを抑えたまま榊原さかきばらの後へと続いた。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん…もう結構進んでますが

そろそろ出口でしょうか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そうだな…そんなにでけぇ建物じゃない

流石にもう結構進んだはず…

……待て、誰かいるぞ」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

道を進んでいるとそこに一人の黒いローブを着た男がそこに居た。

今まで見た刺客らと違い、その男は目元を隠す仮面を被っており

こちらに向かって姿勢よく立っている。



Jack

「防衛隊の御二方

足を止めて頂きましょうか」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なんだてめぇは

そこをどけ!さもなければ撃つ!」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらは銃を構える。

だがその男は動じる様子もなく不気味に真っすぐ立ち尽くしていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「…銃を向けられて動じねぇとは

こいつ…かなり強いぞ

気をつけろ」



勝田 信二かつたしんじ

「本当ですか…?俺たちで戦って勝てる相手ですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「やってみなきゃわからねぇ…

だが相当な手練れなのは間違いない」



Jack

「…退いていただけませんか?」



勝田 信二かつたしんじ

「なに…?」



Jack

「我々の目的はここで殺し合うことではなく

ディーラーの退避にあります

それさえ完了すればここで戦う理由はありません

お二人もここで素直に退き下がってはいただけませんか?

もし退いていただけるのでしたらお二人に追撃は致しません」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「悪いがそれはできねぇ

任務なんでな

逃げるわけにはいかねぇんだ!」



Jack

「そうですか…」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そういう事だ!警告はしたからな

悪いが撃つぞ!!」



Jack

「……」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

榊原さかきばらは足元に向けて銃を発砲する。

だがJジャックは射撃する前に動いており銃弾を回避した。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なにっ!?」



Jack

「交渉決裂ですね…残念です」



N→神蔵 修也かぐらしゅうや

Jジャックは格闘の構えを取る。

その構えを見た勝田かつたは何がか引っ掛かった。



勝田 信二かつたしんじ

「あの構え…どこかで……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「いくぞ勝田かつた!着いて来いよ!」



勝田 信二かつたしんじ

「は、はい!!」



N→Jack

そして場面移り

須加すがは槍を振り回し、修也しゅうやへと攻撃を仕掛けた。

連撃を繰り出し修也しゅうやに攻めるも

冷ややかな表情のまますべてを止められていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「防衛隊員…個々の力は大したことないと思っていたが

認識を改める必要があるな」



須加 正樹すがまさき

「上から目線で言いやがって…生意気なガキだな!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさん援護します!!引いてください!」



須加 正樹すがまさき

「わかった!」



N→Jack

橘花たちばなの掛け声を聞き

須加すが修也しゅうやを突き飛ばし自身は後ろへ下がる。

その瞬間を見計らい橘花たちばなは10発の射撃を行う

だがそれも修也しゅうやには見切られていたようで上体を少し反らして回避される。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「そ、そんな!?この距離の射撃を避けるなんて!??」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「鬱陶しいな

なら…お前から狙うまでだ」



N→Jack

高速で移動した修也しゅうや橘花たちばなへと斬りかかる。

だがそれに合わせて橘花たちばなの前に立った須加すがは槍で攻撃を抑えた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「ぅ!!!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…よく止めたな」



須加 正樹すがまさき

「そう簡単に仲間はやらせねぇよ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「厄介な奴だな」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「撃ちます!」



N→Jack

須加すがはその声を聞くと再び身体をずらし

後ろから発砲された射撃を避けた。

撃つところを自身の身体で隠したコンビネーションは絶妙で

普通であれば攻撃は避けることができないであろう。

だが、その銃弾が修也しゅうやに当たる直前

すり抜けるようにその射撃が外れた。



須加 正樹すがまさき

「な…!?なんだ今の!?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「これも避けられた!?」



N→Jack

橘花たちばなが別の方向へ向けて射撃をする。

その方向にはいつの間にか修也しゅうやがおり

銃弾を近くの大きなドラム缶を引っ張って盾のようにして弾いた。



須加 正樹すがまさき

「いつの間にあんなところに?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさんは見失ってたんですか!?

ど…どういうこと?」



須加 正樹すがまさき

「タネはわからねぇが…こいつ色んな技をもってやがるぜ…

だが…なぜ本気で来ねぇ!

俺らを舐めてるのか?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そういうわけじゃない

俺の目的は足止めだ

お前らの生死など俺に関係はない」



須加 正樹すがまさき

「だから本気を出さずに遊んでるってか!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「俺はわざわざ虫を潰すのに本気を出すほど馬鹿じゃない」



須加 正樹すがまさき

「ちくしょうが…!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「残り4マガジンです…このままでは無駄に弾を消費してしまいます」



須加 正樹すがまさき

「援護は助かるがいちいち呼びかけてこなくてもいいぜ

それで読まれもするだろうしな」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「で、ですが万が一にも誤射をしてしまったら……」



須加 正樹すがまさき

「大丈夫だ、なんとか避けてみせる」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「わかりました…須加すがさんを信じます」



須加 正樹すがまさき

「とはいえそういう問題の実力差じゃない

…しゃーねぇな

こっちも本気で行くぞ!」



N→Jack

須加すがは一点集中し修也しゅうやを凝視する。

1秒間の「極地」を発動させ、その構え隙を発見した。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「「極地」を使えるのか

…思ったよりも実力があるみたいだな」



須加 正樹すがまさき

「いくぞ!!!」

『ツイン・スピア』



N→Jack

須加すがは足を踏み込み突撃する。

現在の構え方で守りにくい部位である左の脇と右の腰

そこに向けて必殺の2連撃を放った。

これを回避するのは至難の業

だが修也しゅうやは上体を反らし、左の脇を回避する。

続く右の腰への攻撃を軸足をずらして大きく踏み込むとそれも避けてしまう。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……中途半端な完成度だな」



須加 正樹すがまさき

「なっ!?嘘だろ!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「援護が…間に合わない!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「終わりだ!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさん避けて!!!」



N→Jack

修也しゅうやの斬撃が須加すがの首元に向かう。

須加すがは大振りな攻撃の隙を突かれてその一撃を避ける術を持たない。

首が一刀のもとに飛ばされてしまう。

そう思った瞬間、銃弾が修也しゅうやへと放たれた。

その射撃を咄嗟に刀で弾くと攻撃を止めて再び後ろへ飛び下がる。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「今のって!?」



須加 正樹すがまさき

「危ねぇっ…!!助かった!

…ナイスだ橘花たちばな!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「い、いえ!私じゃなくて―――」



N→Jack

須加すがが銃声がした方向を見る。

そこには東郷とうごうが立っており、修也しゅうやの方へとコ型の拳銃を向けていた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……東郷 椎菜とうごうしいな



橘花 真由美たちばなまゆみ

「なんで…どうして戻ってきたの!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「どうして…?さぁなぜでしょうね」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「貴女がずっと探してた相手なんでしょ!

どうして…!?」



N→Jack

その言葉を聞くと東郷とうごうは訝し気な表情をする。

自分の行動をよく理解していない様子であった。



東郷 椎菜とうごうしいな

「私だって行こうとしたのよ

でもどっかの熱い二人の声が頭に響くほど煩くてね

気が逸れたから戻ってきたわ」



須加 正樹すがまさき

「どっかの二人ってそれ……ハハハ!

お前…意外と面白いやつだな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「ありがとう

でも私は貴方たちのこと面白いとは思ってないわ」



須加 正樹すがまさき

「やっぱり生意気だぜお前」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「それが東郷とうごうさんなんですよ

いきなり勝田かつた君みたいになられてもビックリしますしね」



東郷 椎菜とうごうしいな

勝田かつたさんと一緒なんて死んでもならないわよ」



須加 正樹すがまさき

「はははは!流石にあんなのが二人もいたら俺らも疲れちまうぜ!!

…ってことだ!CARDIEDカディドの坊ちゃん!

3対1になっちまうが悪く思うなよ!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「好きにしろ」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

その頃、榊原さかきばらJジャックに向けて銃を構えていた。

だがJジャックは微動だにしない。

だが榊原さかきばらは撃つのを躊躇っていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ちくしょう!なんだこの感じは……撃ちにくい!」



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!これは…撃った方がいいんですか!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「まだだ!抵抗してくるまで待て!」



Jack

「やはり心優しい方だ…

ですがそれでは命を落としますよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「やはり…?どういうことだ?

俺はお前を知らないぞ」



Jack

「…ただの独り言です

それではいきますよ」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

Jジャックはゆっくりと榊原さかきばらへと向かっていく。

榊原さかきばらは引き金に手をかけたまま相手が一歩近づくと後ろへと下がっていた。

言葉で言い表し難いプレッシャーを感じているのだ。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「くそっ!なんだこの感覚は…!!」



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!どうするんですか!!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「戦うしかないだろ!いくぞ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「わかりました!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

榊原さかきばらは銃で殴り掛かった。

だがその一撃が当たる直前勢いよく銃を弾き飛ばされてしまう。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なっ!!!」



Jack

「ふっ!!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぐああっつ!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

榊原さかきばらの胸に放たれた拳を受けて大きく怯む。

倒れかけた榊原さかきばらを庇うように勝田かつたが前に出るとJジャックへと殴り掛かった。



勝田 信二かつたしんじ

「うぉぉぉっつ!!」



Jack

「良い動きですね!ですが!!」



勝田 信二かつたしんじ

「なにッ!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

Jジャック勝田かつたの拳を横から攻撃し払いのける。

その勢いだけを逃がされた勝田かつたJジャックへそのまま突っ込んでしまう。

その際に蹴りを腹部へと受けて吹き飛ばされてしまう。

倒れた勝田かつたは自らの口から血が垂れ出した。



勝田 信二かつたしんじ

「ぐッ…!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた、無事か!!」



勝田 信二かつたしんじ

「ぐっ……俺は平気です!

それよりこいつは…!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁ…相当強ぇな……

明らかに俺らよりも技術が上だ…

どうするか……」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたは立ち上がりながらも

ある考えが頭に浮かび上がってくる。

答えの分からぬモヤモヤとしたものが戦う気持ちを削ぐように駆け巡っていた。



勝田 信二かつたしんじ

(なんだ…この違和感は……

何が気になるんだ…こいつの動き……どうしてあの人を思い出してしまうんだ)



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた……こいつを使う!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

榊原さかきばら勝田かつたに腕輪を見せつけた。



勝田 信二かつたしんじ

「それは…!!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「大丈夫だ!少し改良が加えられたらしくてな…

それならこいつは倒せるはずだ…」



勝田 信二かつたしんじ

「そ…そうじゃなくて――」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺にしかこいつは倒せねぇ

必ず勝って見せるから心配すんな!」



勝田 信二かつたしんじ

「違うんです!!!榊原さかきばらさん!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

大声を出す勝田かつたに驚き榊原さかきばらは言葉を止める。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさんは………既に身体が限界なんですよね……

もう……戦うことだって本当はできないんだって……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「知ってたのか…」



勝田 信二かつたしんじ

「知ったのはついさっきの事です…

やっぱり本当なんですね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「…………………そうだ」



勝田 信二かつたしんじ

「なら、ここは俺がやります!

榊原さかきばらさんは戦ってはダメです!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた………」



勝田 信二かつたしんじ

「俺を…隊長にさせたいんですよね!

だったら…まだ教えてもらわないといけないことが山ほどあるんですよ!

今死んだら……俺は……誰に教えを乞えばいいんですか………

俺は…不器用です

…教えてくれる人が居ないと……すぐに迷ってしまいます

だから俺は…榊原さかきばらさんが居ないと

いつになっても一人前にはなれません!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「…………」



勝田 信二かつたしんじ

「だから榊原さかきばらさん……ここは俺にやらせてください!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ダメだ」



勝田 信二かつたしんじ

「なぜですか!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた…ありがとな

俺の事を気遣ってくれてんだろ

だがな…部下ってのは上司の背中を見て育つもんだ

俺や須加すがだってそうだった

あのおっさんの背中を追ってここまで来た

だからこれは意地みたいなもんでな

お前に見せてやりてぇんだよ

俺がこいつに勝つところを」



勝田 信二かつたしんじ

「で…ですが!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「それにこれは上官命令ってやつだ

お前はそこで見てろ」



勝田 信二かつたしんじ

「っ!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そういうわけでタイマン張らせてもらうぞ

待たせて悪かったな…」



Jack

「お気になさらず」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「案外良い奴なんだなお前……!!

行くぞ…いつだって自分らしくあれ」

『装着!!』



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

榊原さかきばらがコードを叫ぶと英語の羅列が腕輪から鳴りだす。

榊原さかきばらの身体に巻き付くように黒い根が伸びていく。

次第にスーツへ姿を変えていき、鈍く光ると完全に形成された。

その色は以前のとものと少し違い黒みがかかった色をしている。



Jack

「その力は…?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「いくぞ……CARDIEDカディドの刺客…!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

榊原さかきばらは先ほど飛ばされた銃を拾い上げてJジャックに向き直る。

拳を握りしめて強く足を踏み込むと跳躍しながら勢いよく前へ出た。

その速度は人間が出せるような速度ではなく

勝田かつたの動体視力では見逃してしまうほどであった。

更には以前のNE-XUSネクサスよりも改良されているのかスピードが少し上昇している。

榊原さかきばらが正面から拳を突き出す。

だがJジャックは当たる直前その一撃を身体全体の力を込めて受け止めた。



Jack

「っぐ…!!?…力が格段に向上している…!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「まだまだいくぞ!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

榊原さかきばらは連続で拳で殴り掛かる。

だがそれを寸でのところで回避したJジャックは次第に後ろへ下がっていき

すぐに壁まで追い詰められてしまう。



Jack

「…くっ!!?なんてパワーとスピード……まさかこんな兵器があるとは…」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「トドメだ!!」

『パワーフィスト!!!』



Jack

「ッ!!!!!?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

榊原さかきばらの繰り出す渾身のストレート

それは風を切る音を鳴らしながらJジャックの顔へと目掛けて繰り出される。

だがJジャックはそれを流すように後方の壁へと受け流した。

数歩下がるJジャックの手元には数秒前まで榊原さかきばらの背負っていたライフルがあった。



勝田 信二かつたしんじ

「え……今の技は!!!?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたはその技に見覚えがあった。



勝田 信二かつたしんじ

「今のは…破装拳はそうけん!?

なぜこいつが!!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「銃を奪っただと!?

だが…構わん!まだまだ行くぞ!!!」



Jack

「…っ!!!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

Jジャックは奪った銃を榊原さかきばらに向けて連射する。

だがそれを榊原さかきばらは両腕で防ぐようにして弾く。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「効かんッ!!」



中井 亮なかいりょう

「銃弾が通らない!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これでトドメだ!!」

『スイングアッパー!!!』



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

振り子のように大ぶりに振りかぶった拳をJジャックの顔へと目掛けて放つ。

予想外の追撃に反応が遅れたJジャックはその一撃を顔へ受けてしまう。



Jack

「ぐぁぁああっ!!!!?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

Jジャックはそのまま吹き飛ばされてしまい、地面を転がるように倒れた。

榊原さかきばらはガッツポーズをすると勝田かつたの方へ向けて拳を突きつける。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「どうだ!!これがNE-XUSネクサスの力だ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「……まさか……この仮面の人って……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた!!

言ったろ!俺は勝つってな!!」



勝田 信二かつたしんじ

「あ……あぁ…はい!

そうですね……流石です!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なんだ…急にどうした?」



勝田 信二かつたしんじ

「あ、いえ…!ここまでの強さ…

一体何者だったんだろうと…思ったので……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そんなに気になるのか?

まぁそうだな…そこで倒れてるから顔を見てみればいい

ついでに手錠をかけて捕縛しておいてくれ」



勝田 信二かつたしんじ

「わかりま―――なにっつ!!?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

Jジャックはフラフラとしながらゆっくりと立ち上がった。

仮面はヒビが入っており立ち上がる際にピシッと音を立てて割れてしまう。

仮面は壊れてしまいそのまま地面へと落ちて、その顔が露わになる。

その顔は勝田かつた榊原さかきばらともに見覚えがあった。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「お…お前は!!?」



勝田 信二かつたしんじ

「な………なぜ…………」



Jack

「……………」



勝田 信二かつたしんじ

「どうして貴方が!!?」



Jack

「………姿を見られてしまいましたか」



勝田 信二かつたしんじ

「どうして貴方がCARDIEDカディドにいるんですか!!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたはひどく驚きながら叫ぶようにその名前を呼んだ。



勝田 信二かつたしんじ

中井なかいさんッッ!!!」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「……………このようなところで再会するとは……

非常に残念です……」



勝田 信二かつたしんじ

「まさか……CARDIEDカディドに入ったんですか!?」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「………」



勝田 信二かつたしんじ

「いつから…ですか!!?」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「…………」



勝田 信二かつたしんじ

「答えてください!!!」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

勝田かつたさんと出会う頃には…既に」



勝田 信二かつたしんじ

「そんな……なぜ……俺に…

…技を…教えを………力を与えたんですか……」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「…………」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「こいつが…お前の師匠なのか……」



勝田 信二かつたしんじ

「…………はい」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「お前……なんのつもりだ……

俺の部下を勧誘でもするつもりだったのか……

いや違ぇ…そんなことはもうどうでもいい

なぜお前が……CARDIEDカディドに属してるんだ…」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「…………」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「確か…古里 亮二こざとりょうじと言ったか……

CARDIEDカディドに殺されたはずのお前がなぜ…生きててCARDIEDカディドにいるんだ!!」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「……私は…………貴方と同じですよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なに?…どういうことだ?」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「あの事件で死にかけ…CARDIEDカディドに身を預けることになったんですよ……

経緯は違いますが、選択の余地が私にはありませんでした」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「…だからテロリストに力を貸してるってのか!!?」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「最初はそうでした

ですが…今は違います

私は私の意思でCARDIEDカディドに忠誠を誓っている

もう…以前の古里 亮二こざとりょうじは死んだんですよ」



勝田 信二かつたしんじ

中井なかいさんの意思………?

一体なんのためですか!?」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「それは…貴方たちにお答えすることはできません

ですが……一言で言えば…………贖罪です」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「意味が解らねぇな

テロ行為をしておいて何が贖罪だ…!

所詮お前がやってることは犯罪だろ!!」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「理解していただきたいとは思っていません

おそらく話してもわからないでしょう」



勝田 信二かつたしんじ

「俺を……鍛えたのは…何のためだったんですか?」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「………」



勝田 信二かつたしんじ

「なぜあんなにも真摯に俺を教えてくれたんですか…?」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「……理由は特にありません

ただ…隠すつもりはなかったんです

それだけは嘘ではありません」



勝田 信二かつたしんじ

「ですが……なぜ貴方ほどの人がテロリストに…!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「理由はもうどうでもいいだろ…

わかるのはこいつは人類の敵であり、俺らの敵だ

そして俺の部下や仲間にも危害を加える害悪そのもの…

ここで必ず倒す…」



勝田 信二かつたしんじ

「人類の……敵……」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「…………」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた

わかってるだろうが…こいつは敵だ

下手な情けをかけるんじゃねぇぞ!」



勝田 信二かつたしんじ

「倒す………わかりました…」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「どっちにしても…お前に俺が倒せるのか?

CARDIEDカディドの刺客…!」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「今のままでは無理でしょう……

ですがここからは私も手加減できません……」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

中井なかいは無線のようなものを取り出す。



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「…Aエース。作戦変更です

目撃者は…全員殺してください」



勝田 信二かつたしんじ

「なっ!!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「貴様……本当にここまで落ちぶれやがってたとはな……」



N→Jack

数分前に戻り

修也しゅうやへと須加すがが攻撃をしかける。

槍による刺突と柄を使った殴打を振りかざし修也しゅうやを追い詰める。

だが修也しゅうやはそれをひらりと回避し、少し離れた位置へと飛び下がってしまう。

だがそこに間髪入れずに東郷とうごうが攻め入った。



東郷 椎菜とうごうしいな

「はぁっ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ちっ!」



N→Jack

東郷とうごうは蹴りを繰り出すも修也しゅうやはそれを片腕で受け止める。

そのまま連続で繰り出される蹴りや拳を防御していた。

攻撃を何度も当てているのだが修也しゅうやは軸足を動かさずに耐え続けている。



東郷 椎菜とうごうしいな

「前は途中で終わったけど

今日はあの時の続きができそうね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「懐かしい話だ

お前もその頃よりは腕を上げているようだな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「あら?お褒めの言葉…ありがたく受け取らせてもらうわ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そうか…!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「うッ!!」



N→Jack

修也しゅうや東郷とうごうを蹴飛ばす。

その一撃を受けた東郷とうごうは少しのけぞったが受け身を取り、少し距離を置こうとする。

その回避に合わせて修也しゅうや東郷とうごうへと攻撃をしかけようとする。

だがその瞬間、須加すがが攻撃を繰り出した。



須加 正樹すがまさき

「どらああああっつ!!」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っ!」



N→Jack

須加すが修也しゅうやの刀を抑えつけるように槍をぶつける。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「ちっ…!」



須加 正樹すがまさき

東郷とうごう…!今だ!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「わかってるわよ…!」

死銃乱射デスガトリング!!』



N→Jack

東郷とうごうは必殺の高速乱射で修也しゅうやへと攻撃をする。

だがそれが当たる直前、修也しゅうやの姿はユラユラと揺らめき

その弾丸は当たったように思えたが外れてしまっていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「これは…あの時の!?」



須加 正樹すがまさき

「今のも避けるのか!?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

摩天幻肖まてんげんしょう



N→Jack

修也しゅうやはいつの間にか須加すがの背後にまわっていたようで

斬撃を振り下ろそうとする。

だがその瞬間、数発の銃声が鳴り響いた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「っ!!?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「当たった!!」



須加 正樹すがまさき

「ナイスだ!!」



N→Jack

銃弾が当たった一瞬の隙をつき、須加すがは槍の一撃を腹部へと直撃させた。

修也しゅうやはその攻撃の勢いに押されごみ箱のある方向へと吹き飛ばされた。



須加 正樹すがまさき

「いいぞ!橘花たちばな!!よく当ててくれた!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「いえ!先ほどの指示があったからです!」



須加 正樹すがまさき

「だがなぜ俺らには姿が見えなかった?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「そういう事…大体わかってきたわ

あの技は私たちの感覚を狂わす技だった

だけど戦いの基礎が足りてない者には効果が薄かった」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「基礎が足りてないって……ハッキリ言うわね」



須加 正樹すがまさき

「だが…そのおかげで勝てたんだ!

結果オーライだよ!よくやっ―――」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「流石に3人の連携となるときついな」



須加 正樹すがまさき

「なにっつ!!?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「嘘‥!!なんで立ち上がれるの!!!?



N→Jack

修也しゅうやはそのまますっと立ち上がり身体についた埃を手で払っている。

その表情を見るにあまり効いていないようで涼しい顔をしていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「…まさか効かないなんて」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「……いくらなんでも1対3はやりづらいな」



須加 正樹すがまさき

「どういうことだ…!!?

俺の槍先も橘花たちばなの射撃だって当たったぜ…

なんで怪我のひとつもしてねぇんだよ!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「流石は神蔵かぐらの子といったところね」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…!?お前…なぜそれを?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「私だって無知じゃない

お得意先から色々と聞いているのよ」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「………」



N→Jack

修也しゅうやが表情を変える。

少し驚いた顔をしていたが、すぐに真剣な顔へ戻った。

その時、修也しゅうやのポケットにあった無線機から声がする。

修也しゅうやはそれを取り耳元へと近づけた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「何の用だ?」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「…Aエース。作戦変更です

目撃者は…全員殺してください」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「そうか…わかった」



N→Jack

修也しゅうやは無線をしまうとその瞳の色を変える。

先ほどとは違い、明確な殺気を乗せた目に威圧された須加すがは恐怖のあまり鳥肌がたっていた。



須加 正樹すがまさき

「…おいおい!さっきまで本気で戦ってなかったのかよ…

東郷とうごう…こいつは何者なんだ……!!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「さぁね…でも一つだけ言えるのは

月ノ都つきのみやこ学園の生徒会に入るほどの実力者だってことだけよ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「あそこの生徒会…まさかそんなに優秀な人間がなんでCARDIEDカディドに?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「さぁ…?でも…私は以前この男に負けてる

私もその頃よりは腕をあげたとは自負してたけど…

悪いわね…こいつがここまで腕を上げてたなんて誤算だったわ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

東郷とうごうさんでも負けてるなんて…

そんな相手に勝てるの…?」



神蔵 修也かぐらしゅうや

「…ここでお前達を殺すことにしよう」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……不味いわね

二人とも………油断したら一瞬でやられるわよ」



須加 正樹すがまさき

「あぁ…そうだろな…

さっきから身体が震えて仕方ねぇ…

街田まちだのおっさんが機嫌悪い時みてぇだぜ…」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「二人がそこまで警戒するなんて…

私にはわからないけど…きっと強者にだけわかるオーラを感じ取ってるんだ…

隊長……………」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

場面切り替わり

中井なかいは懐から小瓶を取り出す。

その小瓶の蓋を開けると、中に入っている液体を飲み始めた。



勝田 信二かつたしんじ

「あ…あれはいったい?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「急に何をし始めやがった?」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「ぐぅっ!!!?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

中井なかいは胸を抑えて苦しみ始めた。

顔中の血管が浮き出るほどに力を込めているようで

俯くように顔を下ろし表情がわからなくなる。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なんだ……? 一体何を飲んだんだ?」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「ぐっ……はぁぁぁぁぁぁっつ!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

苦しみ悶えていた中井なかいの髪の色が徐々に薄くなっていく。

頭から少しずつ白みがかっていく髪が全体にいきわたると同時に

中井なかいが落ち着いてきたようで次第に息が整ってきていた。



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「……………はぁ……はぁ……」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

ゆっくりと中井なかいが顔をあげる。

息が荒くなっていたが、すぐに落ち着いたようで最後に大きな一息をつくと

深呼吸を止めた。



勝田 信二かつたしんじ

中井なかいさん……?」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「……この力が………やはり素晴らしい」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

中井なかいが瞳を開く。

その瞳は緑色をしており、白目の部分はひどく充血していた。

中井なかい勝田かつた榊原さかきばらを凝視すると少しふっと笑う。



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「……ふふ、勝田かつたさん

口から血が垂れていますよ」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

勝田かつたは手で自身の口を拭う。

その時に違和感に気がついた。



勝田 信二かつたしんじ

中井なかいさん…!?

もしかして……目が視えるんですか!!?」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「えぇ……始めまして…そのようなお顔をされていたのですね」



勝田 信二かつたしんじ

「もう…ほとんど視えてないって……」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「はい…視えてませんでしたよ

でも今は違います

ハッキリと視えています」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「どういうことだ…あの小瓶の液体

中は一体なんだったんだ?」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「それはお答えできません

残念ですが…ここで御二方を殺させていただきます」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

中井なかい破装拳はそうけん破砕拳はさいけんとはまた違う構えを取る。



勝田 信二かつたしんじ

「……中井なかいさんどうして!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「…なにが起きたか知らねぇが

…決着をつけるとしよう!」



中井 亮なかいりょう(Jack兼任)

「ここからは…中井なかいとしてではなく

CARDIEDカディド幹部のJジャックとして戦いをさせていただきます」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……なんだか知らねぇがぶっ倒してやる!!」



勝田 信二かつたしんじ

中井なかいさん…俺は……貴方を止めてみせます…

俺が止めないといけないんだ…!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

視点移り

修也しゅうやは挑発するように3人へと刀先を向ける。

数的有利な現状に対して不敵に笑うその表情には余裕が浮かび上がっているようにみえた。



神蔵 修也かぐらしゅうや

「さぁ死ぬ気でかかってこい。防衛隊」



須加 正樹すがまさき

「油断するなよ…二人とも!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「わかりました…!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「えぇ…そっちも無駄死にしないことね」



N→勝田 信二かつたしんじ

戦いはここから更にボルテージを上げていく

この戦いの結末は

ひどく残酷で救いがない

これは悲劇の物語

戦いの後に残された絶望の物語

救済を求めてただひたすらに戦う隊員たちの物語











神ガ形ノ意思ニ背イテ 玖話 完

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・アドリブ演技に関して

この台本はアドリブを入れる事を前提として書いています

なので演者様方の判断で挟んで頂いて構いません

是非素晴らしい演技にアクセントをつけてください

しかし作風に合わないものはご遠慮ください



・性別変更や比率に関して

作者はあまり好ましくは思っていませんがある程度ならば可とします

そのある程度の境界線は他の演者様たちとの話し合いに委ねます



・特殊なものについて

台本を演じる際に読み込まないで演じる行為や

言語を変える、明らかに台本無視と取れる

特殊な行為をするものは認めていません

流石に読み込んで普通に演技してください

多分そうじゃないとこの台本は演じれないです



二次創作等、商権利用問題のある場合、質問や不明点ございましたら

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