神ガ形ノ意思ニ背イテ 漆話

勝田 信二かつたしんじ

24歳

熱い正義感と無鉄砲な若さを持つ新人隊員

士官学校卒の元警官であったが、魔怪まかいの襲撃の際に同僚たちの不甲斐なさに失望し、単身挑むも死にかけそこを榊原さかきばらに助けられる

任務より目先の命を優先することが多く、危険な目に合うことが多い




中井 亮なかいりょう

29歳

渋谷のバーでバーテンダーをしている男性

とある事件により視力がほとんど無いらしい




ミハル

12歳

かつて魔怪まかい襲撃に合い両親を失った

その過去から魔怪まかいを自分の手で倒そうとしている

本来は友達思いで素直な性格だが相手が大人となると口が悪くなる




アオト

12歳

ヒマリの幼馴染

途中で転校してきたミハルの最初の友達

ミハルの魔怪まかいへの恨みを聞き協力している

幽霊やオカルト話などが好きで

その1つである下水道に現れる影を確認すべく

忍び込んだ際に魔怪まかいを発見した




ヒマリ

12歳

アオトの幼馴染

ミハル、アオトとは友達同士で今のところ恋愛感情はない

無茶をしがちなミハル、アオトが放っておけず一緒に行動している




東郷 椎菜とうごうしいな

19歳

学園を卒業し、何かの目的を以て部隊に所属した。

自分の実力を疑わず、隊員と特に須加すが勝田かつたとは反りが合わない事が多く、独断で行動することが多い。

かなりの実力者で、榊原さかきばら管轄の部隊で個人戦力は群を抜いて高い。






Nは→後のキャラ演者が読む

※所々交代があるので注意してください。かなり大変です。






VHAぶいえいちえー

突如世界に現れた「魔怪まかい」と呼ばれる怪物を駆除するために設立された軍

Variant Hunt Army通称VHAぶいえいちえーと呼ばれる軍は

自衛隊や警察組織と違い、独立した権力を持つ

一般人や学園卒業者の中で実力保有者が入隊することができる

VHAぶいえいちえー兵を総称して兵員と呼ばれている




魔怪まかいについて

2000年に突如現れた異形の生命体。

理由や目的は不明だが人類を脅かす存在。

現れた当初は世界でも数十体しか確認されなかったが、年々数を増やしていた。

出現方法も繁殖方法などは不明となっている。

魔怪まかいの姿形は現存した生物に類似している為

生物が魔怪まかいに変異した説や妖怪や幽霊といった類である説だったり

一部では神の使い等と吹聴ふいちょうしている宗教までいる。




CARDIEDカディドとは

その素性、人員、目的一切が不明のテロ集団

突如姿を現れては殺戮を行う事から市民から恐れられている






役表

勝田 信二かつたしんじ♂:

中井 亮なかいりょう♂:

ミハル不問:

アオト不問:

ヒマリ&東郷 椎菜とうごうしいな♀:






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神ガ形ノ意思ニ背イテ 漆話






N→中井 亮なかいりょう

暗い部屋の中

小さな灯りを中心に集まる3人の子供たち

彼らは地面に地図を広げて何かの作戦会議をしているようだ。



ミハル

「それじゃ…あとは武器を集めないとだな」



ヒマリ

「武器って言ってもどうしたらいいの?

子供じゃ銃は買えないし」



アオト

「そうだよねぇ

いくらなんでも包丁じゃ大人だって倒せるかわからないよ」



ミハル

「安心しろ

良い作戦がある

新宿にとある店があるんだ

そこに張り込みをする」



アオト

「え?張り込んでどうするの?」



ミハル

「そこは射撃場がある店なんだ」



ヒマリ

「でもそこに私たちがいっても銃は買わせてくれないでしょ」



アオト

「そうだよミハル

前にそこで盗むって話もしたけど警備員とかしっかりしててダメだったじゃんか」



ミハル

「馬鹿だな、そうじゃない

あそこには銃を外でも持つような防衛隊の人も出入りしてる

そいつらの中で1人でいるようなマヌケなやつを狙って倒せばいいんだよ」



アオト

「でもそんなに上手くいくかな?

相手は大人だよ?

僕らじゃ3人ともやられちゃうんじゃ…」



ヒマリ

「そうだよね…」



ミハル

「大丈夫だ、俺に考えがある」



N→アオト

視点移り

勝田かつたは先の任務の際にて大怪我を負っていたが

幸いにも内蔵や血管などに損傷が少なく、あの事件から1か月ほどで早期退院する事となった。

勝田かつたは1週間の安静休暇を貰っており

榊原さかきばらや他の隊員たちもそれぞれの生活を送っているため

日課である射撃訓練場を借りることにした。

指定位置に立ちながら持参の銃を取り出し、的を狙って射撃する。

以前と比べて成績が上がっており、今日は特に毎ゲームごとの平均成績が良い日であった。



勝田 信二かつたしんじ

「あと1つ!!」



N→アオト

最後の一つを狙い撃つ。

電子音と共にスコアがモニターに映し出される。

スコアは自己ベストを更新する最高得点であった。



勝田 信二かつたしんじ

「よしっ!最高記録だ…!」



N→アオト

勝田かつたは咄嗟に隣のレーンに話しかけようとするがそこにいつもいる東郷 椎菜とうごうしいなの姿はなかった。

今までほぼ毎日のように見かけていた彼女だったが今日は珍しくいないようだ。



勝田 信二かつたしんじ

「そういえば東郷とうごうさん

退院したきり見てないな

……考えてても仕方ない

もう一度だ」



N→アオト

勝田かつたは再度15発を撃ち切る。

再び成績はよく、ここ数日の調子はかなり良好だ。



勝田 信二かつたしんじ

「これなら……いける」



N→アオト

榊原さかきばらから話された次の隊長になってほしいという願い。

勝田かつたはそれに向けて特訓をしており

ここ数日の調子の良さは彼に自信を与えていた。



勝田 信二かつたしんじ

「まだ15時か…中井なかいさん今日は大丈夫か聞いてみるか」



N→アオト

勝田かつたは射撃訓練場から出て、お気に入りのバーへ向かう。

入店した勝田かつたに気づいた中井なかいは頭を下げる。

勝田かつたは会釈を返すとカウンター席に座った。



勝田 信二かつたしんじ

中井なかいさん、こんにちは

あの…今日ってこの後空いていますか?」



中井 亮なかいりょう

「はい、あと40分ほどで終業になります」



勝田 信二かつたしんじ

「もしよければまた特訓をしていただきたいんです」



中井 亮なかいりょう

「構いませんよ

それでは終わり次第一緒に向かいましょう」



勝田 信二かつたしんじ

「ありがとうございます!」



N→アオト

40分ほど軽くワインを飲みながら待ち

私服に着替えた中井なかいと共に倉庫へと向かう。

歩いている最中、中井なかい勝田かつたに話しかけた。



中井 亮なかいりょう

「なにかよい事がありましたか?」



勝田 信二かつたしんじ

「え?どうしてですか?」



中井 亮なかいりょう

「行動と話し方に以前よりも自信が滲み出ていましたので」



勝田 信二かつたしんじ

「そ、そうですか!?本当に中井なかいさんはすごいですね

実は最近調子がよくて

銃の腕も日に日に上達してる実感もあって少し気分がよかったんだと思います」



中井 亮なかいりょう

「なるほど……」



N→アオト

中井なかいはじっと勝田かつたの方を見ると何かを考えてからうなずく。



中井 亮なかいりょう

「今日の稽古内容が決まりました

それでは到着ですね」



N→ヒマリ

中井なかいはカギを使って倉庫の扉を開ける。

勝田かつたは後から続いて入ると倉庫内の真ん中で立ち止まった。



中井 亮なかいりょう

「病み上がりでしょうが勝田かつたさん

修行のレベルを一段階あげましょう

今日はいつもよりも激痛を負う事になるかと思いますので覚悟をしておいてください」



勝田 信二かつたしんじ

「えっ!?レベルを上げるって…なぜ急に?」



中井 亮なかいりょう

勝田かつたさん。自信が付くことは悪い事ではありません

ですが慢心に近い今のままではあまり良い事ではないです

ですので、心を打ち砕く形にはなるかと思いますが

いつもより現実的な技を教えていきましょう」



勝田 信二かつたしんじ

「現実的…というと?」



中井 亮なかいりょう

「以前教えた破装拳はそうけん

あれは敵の武器を奪い、それを使用する技です

それとは違い今度は他の武術を教えましょう」



N→ヒマリ

中井なかいは格闘の構えをとった。

それに合わせて勝田かつたも近接格闘の構えになる。



勝田 信二かつたしんじ

「わかりました…それではよろしくお願いします」



中井 亮なかいりょう

「始めましょう

本日教える技は破装拳はそうけんのように武器を奪う技ではなく

相手の身体へと直接的に攻撃を与える技になります

まずは格闘を仕掛けてきてください」



勝田 信二かつたしんじ

「格闘…!殴りかかるということでしょうか?

わかりました!!

はぁぁっつ!!」



N→ヒマリ

勝田かつたは拳を突き出す。

相手の胸へと繰り出すその拳が当たる直前

中井なかいは横へと避けて勝田かつたの拳を返すように腕へと攻撃をする。

拳が中井なかいに当たる瞬間、勝田かつたの腕に激痛が走った。



勝田 信二かつたしんじ

「っぐああああぁああ!!いっ!!なんだッ!!この痛みは!!」



中井 亮なかいりょう

「これは相手の攻撃に合わせて反対から力をぶつけてダメージを与えることで関節を外す技です

勝田かつたさんの腕の関節は外されているので痛みがあるのです」



勝田 信二かつたしんじ

「お、俺の…!関節が外れて…ッ!!?」



中井 亮なかいりょう

「痛いでしょう、力を一度入れてください」



N→ヒマリ

中井なかい勝田かつたの腕を掴む。

激痛を耐えるように力を入れていた勝田かつただったが

中井なかいの言った通り痛みに耐えながらさらに力を勢いよく入れる。

その瞬間、中井なかい勝田かつたの腕をねじ曲げるように素早くひねった。



勝田 信二かつたしんじ

「痛っ!!………あ、あれ…?

痛みが…徐々になくなって……」



中井 亮なかいりょう

「関節を元の位置に戻しました

次第に痛みは引いていくはずです」



勝田 信二かつたしんじ

「な…いったい何をしたんですか?」



中井 亮なかいりょう

「貴方の繰り出す拳の向きと反する方向へ腕を曲げさせました

反発する力が一気に関節へと向かい腕の関節が外れたのです

今は手加減をしたので外れただけで済みましたが、本気を出せば相手の骨を曲げてしまうことも可能です」



勝田 信二かつたしんじ

「ま、曲げるって…骨を折るってことですか!?」



中井 亮なかいりょう

「相手の力と自身の力を作用させ相手の強固な防御や骨すら砕く技

私はそれを破装拳はそうけんにちなんで破砕拳はさいけんと名付けています」



勝田 信二かつたしんじ

「こんな技があるなんて……」



中井 亮なかいりょう

「この技の有用な点は相手との体格差がある場合でも効果的な事です

相手がこちらより一回り二回りも大きい場合であっても

この攻撃を耐えることはできないでしょう」



勝田 信二かつたしんじ

「二回りって…この技は魔怪まかいには通用するんでしょうか?」



中井 亮なかいりょう

「相手次第といったところですが、体格の小さな魔怪まかいであれば効果はあります

倒せるかどうかは魔怪まかいの生態次第ですので断言はできません」



勝田 信二かつたしんじ

「まさか…ここまで凄い技をまだ持っていたなんて……

中井なかいさん、本当に貴方は何者なんですか?」



中井 亮なかいりょう

「………」



勝田 信二かつたしんじ

「あ…すいません!急に何者かなんて…無礼ですよね」



中井 亮なかいりょう

「構いませんよ

……そうですね、以前の私はただの兵員でしたが

このような技を得たのはつい最近の事です」



勝田 信二かつたしんじ

「兵員…もしかしてV.H.A.ぶいえいちえーに所属していたんですか?」



中井 亮なかいりょう

「えぇ、ですが今はもう辞めています」



勝田 信二かつたしんじ

「そうだったんですね…理由を聞いてもいいですか?」



中井 亮なかいりょう

「この目ですよ」



勝田 信二かつたしんじ

「あ、あぁ…そういう事だったんですね

ありがとうございます!色々と教えていただいて!」



中井 亮なかいりょう

「構いません

それでは話の続きをしましょう

この破砕拳はさいけんがあれば相手の無力化を図ることができます」



勝田 信二かつたしんじ

「なるほど…本当にすごい技です……ですが俺が覚えれるでしょうか?」



中井 亮なかいりょう

「これの習得難易度は破装拳はそうけんよりも比較的簡単だと思いますよ

習得には理論的な部分を理解することが大事で

それさえ理解してしまえば後は再現するだけになります」



勝田 信二かつたしんじ

「理論…さっき言った力の向きとかですか?」



中井 亮なかいりょう

「えぇ、当然の事ですが力と力の衝突は一方的な力よりも強い衝撃を生み出します

それは日常生活で起こりうる交通事故や人同士の正面衝突がよい例ですね

これを利用し相手の部位へと攻撃する技

それが先ほどの破砕拳はさいけんになります

そうですね、まずは一つずつ教えていきましょう」



勝田 信二かつたしんじ

「はい!お願いします!」



N→ヒマリ

中井なかい勝田かつたに技の使い方を教える。

目の前で実演しながら説明をし、一時間をかけて理論を教え実際にやってみる事になった。



|勝田 信二《かつたしんじ

「いつでもお願いします!」



中井 亮なかいりょう

「それでは行きます

ふっ!!!」



N→ヒマリ

中井なかいの鋭い拳に対応できず勝田かつたはそのまま攻撃をまともに受けその場に倒れた。

その攻撃は胸に当たり、一瞬呼吸ができなくなったのだ。



勝田 信二かつたしんじ

「ガハッツ!!

……くそ!まったく見えなかった…!」



中井 亮なかいりょう

「もう一度です」



勝田 信二かつたしんじ

「ゴハァッ!!

くそっ!全然見えない…!」



N→ヒマリ

何度も倒されてるが一向に攻撃に対応できなかった。

座り込んだまま考えていると中井なかいが手を差し伸べる。

勝田かつたはその手を取って立ち上がった。



勝田 信二かつたしんじ

「ありがとうございます

まだ全然つかめないです

俺になにが足りてないんでしょうか?」



中井 亮なかいりょう

勝田かつたさん、貴方は一度頭で考えてしまう癖がありますね

なので新しいことや迷ったことを考えすぎて

情報を得てから行動するまでにタイムラグがあるんですよ

なので今のような咄嗟の際には攻撃が回避できなくなってしまっています」



勝田 信二かつたしんじ

「咄嗟に…でもそういうのって難しいものではないんですか?」



中井 亮なかいりょう

「えぇ、相手との実力差があれば不可能な場面というのも出てきます

ですが勝田かつたさんの場合は同レベルの相手であっても起こり得てしまうでしょう

これは勝田かつたさんの大きな弱点でもあります」



勝田 信二かつたしんじ

「弱点……

そう…なんですかね…」



中井 亮なかいりょう

「あまり納得できませんか?」



勝田 信二かつたしんじ

「いえ!そういうわけじゃないんですが…

その…俺はそんなに……弱いのかなって

また…わからなくなりました

最近調子がよかったので…俺自身かなり成長したと思ってたんですけど…」



中井 亮なかいりょう

「はい。確実に上達はしています

ですが今はその成長速度に対して心が追い付いていません

油断や慢心は時に自己評価を偏らせます

なのでここで一度挫折をしていただこうと無茶な修行をさせてしまいました

申し訳ございません」



勝田 信二かつたしんじ

「い、いえ!謝らないでください!

俺が…油断してただけなんですから」



中井 亮なかいりょう

「私の伝えたい事と少しずれてしまいました

一度休憩しましょう」



N→ヒマリ

中井なかいは建物内の小型冷蔵庫から水を取り出し、勝田かつたに一つ手渡す。

勝田かつたは勢いよくそれを飲み干すと大きなため息をつく。



勝田 信二かつたしんじ

中井なかいさん。俺は…どうなんでしょうか?

上達したとは言っていただけましたが…本当に俺は強くなってるんでしょうか」



中井 亮なかいりょう

「……」



勝田 信二かつたしんじ

「俺は…どうしてこんなに不器用なんでしょうか」



中井 亮なかいりょう

勝田かつたさん、貴方の戦う理由はなんですか?」



勝田 信二かつたしんじ

「戦う…理由……?」



N→ヒマリ

勝田かつたはその言葉を聞いた瞬間

東郷とうごうに言われた事を思い出す。

その答えはまだ一向に出てこないものだった。



中井 亮なかいりょう

「貴方の思う一番大切なこと、それはなんですか?」



勝田 信二かつたしんじ

「大切なこと……」



中井 亮なかいりょう

「今の貴方はそれを見失っています

色々なものを思い悩む中で真っ先に目指していたもの

それを思い浮かべてください」



勝田 信二かつたしんじ

「俺が…大事にしてたもの……多分…強くなることだと思います」



中井 亮なかいりょう

「強くなってどうしたいのですか?」



勝田 信二かつたしんじ

「え、強くなって……えっと……その先までは…」



中井 亮なかいりょう

勝田かつたさんにとって強くなることはあくまで目的を達成するための足掛かりのはずです

それが何か、まずは思い出すことが貴方への最適な修行になるでしょう

今日の修練は終わりにしましょう

ここから先は自分で導き出していただかなければなりません」



勝田 信二かつたしんじ

「自分で…ですか?でも俺は……答えがまったく見当もつかなくて」



中井 亮なかいりょう

「人は迷った際に何かしらの指針を持っています

たとえば森に迷った際には月を

時間を知りたいときには時計を

そして、重い決断をする際には大事なものを

それが何か、それは誰かに教えられるものではなく

自分自身で思いつくものでなければなりません」



勝田 信二かつたしんじ

「自分自身で……」



中井 亮なかいりょう

「それでは今日のところは私はお暇させていただきます

また後日、答えが分かった際は店をお尋ねください」



N→ヒマリ

勝田かつた中井なかいはそのまま倉庫を出る。

鍵を閉めると中井なかいは最後に会釈をしてから立ち去っていった。

残された勝田かつたは先ほどの言葉を思い出しながら立ち尽くす。



勝田 信二かつたしんじ

「俺が……大事にしているもの……わからない

一番大事なこと…一体なんだ

全然思いつかない」



N→中井 亮なかいりょう

呟きながら俯く勝田かつたの元に二人の子供が走ってきた。



ヒマリ

「あ、あの!すみません!!

私たちの友達を助けてください!」



勝田 信二かつたしんじ

「え!?助けるって何かあったのか?」



アオト

「裏路地で遊んでたら物が倒れて下敷きになっちゃったんです!」



ヒマリ

「どうか助けてください!」



勝田 信二かつたしんじ

「わかった!すぐ案内してくれ!」



N→中井 亮なかいりょう

ヒマリとアオトは走って路地へ進んでいき勝田かつたはそれを追いかけた。

二人が路地を進んで行き止まりに辿り着くと急に足を止める。



勝田 信二かつたしんじ

「その下敷きになった子はどこにいるんだ!?」



ヒマリ

「えっと……」



ミハル

「はぁっつ!!」



N→中井 亮なかいりょう

急に物陰から飛び出したミハルは鉄パイプで勝田かつたの頭を打ち付ける。



勝田 信二かつたしんじ

「うっ!!」



N→中井 亮なかいりょう

その一撃を受けて頭が朦朧とした勝田かつたはその場に倒れ込んだ。



アオト

「よしっ!成功したぞ!」



ミハル

「早く隠すんだ!急げ!」



ヒマリ

「う、うん!わかった!」



N→中井 亮なかいりょう

その声を聴いていた勝田かつただが次第に意識が暗くなっていく。



それから1時間後

ミハル、アオト、ヒマリら一同はゴミカートを押しながら隠れ家へと入る。

そこは何かの目的で使われていたであろう用具入れのような小屋で

小屋内には様々な道具が置いてあり、その中にあるパイプ椅子をミハルが持ってきた。

ゴミカートの中に隠した勝田かつたをアオトとヒマリで何とか外へ出すと椅子に座らせる。

そして勝田かつたの身体をロープとガムテープでぐるぐると巻いて椅子に縛り付けた。

ミハルは腰に隠すようにつけられているホルスターを外し、取り付けられている軍用ナイフと警棒、そして拳銃を手にとる。



アオト

「おおお!それが拳銃なんだ!僕にも持たせてよ!」



ヒマリ

「すごい!ねぇ私も触ってみていい?」



ミハル

「危ないから間違えて撃ったりすんなよ」



N→中井 亮なかいりょう

アオトとヒマリは興味津々で銃を眺めていた。



ヒマリ

「思ったより重いんだね…」



アオト

「そりゃそうさ!エアガンなんかと違うんだ!本物だぜ?」



ヒマリ

「でも大丈夫だったのかな…この人防衛隊の人でしょ?」



N→中井 亮なかいりょう

ポケットから出てきた防衛隊ライセンスを見てヒマリは不安そうな顔をする。



ミハル

「大丈夫だって

こんなぼーっとしてる奴なんか誰も気にしねぇよ」



アオト

「でもさ…これって犯罪だろ

流石に警察とかにバレたらヤバいでしょ」



ミハル

「警察だの防衛隊だのうるさいな!

あんな使えない奴らどうだっていいだろ!!」



N→中井 亮なかいりょう

ミハルが声を荒げると二人はしおらしくなる。



ミハル

「ひとまず武器は手に入ったんだ

もうこれでいつでも行ける!」



アオト

「そうだよね…でも今夜もう行くの?」



ミハル

「このおっさんが捕まったのがバレて捜索されたら厄介だ

なるべく早く動かないと」



ヒマリ

「そうだけど…夜って何時に行くの?」



ミハル

「そうだな…日付が変わった0時すぐに出発する」



ヒマリ

「えぇ…その時間家から出れるかな……

パパ門限きびしいから大丈夫かなぁ」



アオト

「僕のところもそうだよ

9時過ぎは家から出ちゃダメって言うからさ」



ミハル

「そんなの抜け出せばいいだろ」



アオト

「逆にミハルは大丈夫なの?」



ミハル

「……俺は―――

施設の消灯時間に抜け出せばいいだけだ」



ヒマリ

「あ…アオト!ちょっとは考えて言いなよ!」



アオト

「ごめんって!そんなつもりじゃなかったんだって…

ミハル…ごめん」



ミハル

「どうでもいいよ…

それよりまず一旦アオトの家に行って最後の作戦会議だ

懐中電灯を取りにいったりもしないとだからな」



N→中井 亮なかいりょう

そんな話の最中、勝田かつたは目を覚ます。

そこには先ほどの二人と自分の拳銃を持つミハルの姿があった。



勝田 信二かつたしんじ

「君たち…なぜそれを持って!

……あれ…なんで俺縛られて…?」



N→中井 亮なかいりょう

この子供たちが自分を襲ったのだと状況を理解する。

勝田かつたは身動きを取ろうとするが、椅子がガタガタと少し動くだけで頑丈に縛られたロープやガムテープは外れない。



勝田 信二かつたしんじ

「君たち!その銃はオモチャじゃないんだ!

それにこんな事をしていったいどういうつもりなんだ!」



アオト

「それは…なんでもいいだろ」



勝田 信二かつたしんじ

「なんでもいいわけないだろ!

それは危険なものなんだ!

人を傷つける武器なんだぞ!」



ミハル

「知ってるよ、これで人が簡単に殺せるってことぐらい」



N→中井 亮なかいりょう

奥に拳銃を持ったまま座る男の子は立ち上がると勝田かつたに向け激しい怒りに満ちた視線を送る。



勝田 信二かつたしんじ

「それを使って何をする気なんだ?

犯罪をしようとしてるのか!?」



ミハル

「お前には関係ないだろ」



勝田 信二かつたしんじ

「それで強盗や犯罪をしたら君たちがどうなるかわからないの―――」



ミハル

「だから!関係ないって言ってるだろ!!」



N→中井 亮なかいりょう

ミハルは近くに転がる鉄パイプを持ち、縛られた勝田かつたの頭を叩きつけた。



勝田 信二かつたしんじ

「うがっ!!」



N→中井 亮なかいりょう

勝田かつたの額から血がゆっくりと垂れてくる。



アオト

「ちょ!ちょっと!流石にまずいって!!」



ヒマリ

「そ…そうだよ!!流石に怪我をさせるのは……」



ミハル

「お前らもだまれって!

こいつはたかが防衛隊のおっさんだ!どうでもいいんだよ!」



勝田 信二かつたしんじ

「たかが………一体どういうことだ?」



ミハル

「ウザいなぁ!もうッ!!」



N→中井 亮なかいりょう

再度鉄パイプで勝田かつたを殴ると、そのままの勢いで椅子ごと勝田かつたは倒れる。



ミハル

「もうここはいい!行くぞ!!」



ヒマリ

「待ってよ!この人はどうするの?」



ミハル

「ほっとけって!どうせ誰か助けに来んだろ!」



N→中井 亮なかいりょう

そう言ってミハルは部屋から立ち去っていった。



アオト

「待ってよミハル!」



N→中井 亮なかいりょう

アオトとヒマリもそれに続いて部屋から出ていく。

勝田かつたは1人縛られた状態で取り残されることになった。



勝田 信二かつたしんじ

「お、おい!待て!戻ってこい!

くそっ!もうどっか行きやがった!

どうするか…この状態じゃ助けも呼べないよな」



N→中井 亮なかいりょう

しばらくの間、勝田かつたは藻掻いていたが拘束は解けそうもない。

目を瞑ってなるべく力を使わないようにして助けを待つことにした。


それから少し経ち

ミハルら三人はアオト家の部屋で話し合いをしていた。

バッグに銃や懐中電灯を入れた後地図を広げ、マーカーで目印を書いていく。



ミハル

「この武器を入れれば準備は終わりだ

今日の0時に近くにある公園に集まってから向かうぞ」



アオト

「わかったよ

もしかしたらちょっと時間かかっちゃうかもだけど待っててよ」



ミハル

「あぁ、ヒマリもそれでいい?」



ヒマリ

「うん……でも本当に大丈夫かな……」



ミハル

「大丈夫だって言ってるだろ

これを使うのは俺なんだ

二人は懐中電灯で照らすだけでいいからな」



アオト

「うん、わかった

それじゃあまだ時間あるけどどうする?」



ヒマリ

「まだ七時過ぎだもんね」



ミハル

「そうだな…この後結構大変な一日になるだろうから少し寝ておこうぜ

後で親が起こしてくれるだろうからそれまで一旦休憩しよう」



ヒマリ

「そうしよっか

私、あんまり夜更かししたことないから心配だったんだよね」



アオト

「え~ゲームとかするんじゃダメ?」



ミハル

「この後眠くて失敗するなんてなったらダメだろ」



アオト

「そうだけどさ~ちぇっ

わかったよ、僕も寝る」



N→中井 亮なかいりょう

ミハルが真っ先に横になる。

アオトとヒマリもそれに続いて床に寝転がると少しずつ眠気が襲い掛かってきた。



ミハル

「…………………」



N→中井 亮なかいりょう

二人が眠ったのを見てミハルは薄っすらと目を開ける。

そしてミハルは音を立てないように立ち上がるとぼそっと呟いた。



ミハル

「ここまでありがとう

あとは俺がやる」



N→中井 亮なかいりょう

それから少しして

アオトとヒマリは誰かの声で目を覚ます。

アオトの父親が部屋に起こしに来たようでアオトを揺さぶって起こしていた。



アオト父(勝田 信二かつたしんじ兼任)

「おい、アオト!起きろ!!」



アオト

「ん………ぁ……なに?」



アオト父(勝田 信二かつたしんじ兼任)

「何じゃなくてもう20時だぞ

そろそろヒマリちゃんも帰りなさい」



ヒマリ

「もう…20時

わかりました…帰ります

ミハル帰ろ…」



N→中井 亮なかいりょう

ヒマリがミハルの方を見るとそこにミハルの姿はない。

二人がきょろきょろと部屋を見ているのを不思議そうにアオト父が見ている。



アオト

「あれ…?トイレにでも行ったのかな?」



アオト父(勝田 信二かつたしんじ兼任)

「何言ってんだ?ミハル君はもう先に帰ってたぞ」



アオト

「え?帰ったっていつ!?」



アオト父(勝田 信二かつたしんじ兼任)

「1時間ぐらい前だったか

ちゃんと挨拶して帰っていったから間違いないぞ」



アオト

「え……待って荷物は!?」



N→中井 亮なかいりょう

アオトは部屋中を見渡すが武器の入ったリュックがそこにはない。

先ほどマークした地図だけは置いてあるがそれ以外の荷物だけが忽然と姿を消していたのだ。

その状況を察したアオトの顔はひどく青ざめる。



アオト

「もしかして!ミハルは一人で行ったんじゃ!!?」



ヒマリ

「え!!?そんな…まさか!」



アオト

「やばい!行くぞ!!」



N→中井 亮なかいりょう

アオトとヒマリは急いで立ち上がるとアオト父を押しのけて部屋から出ると玄関に走っていく。



アオト父(勝田 信二かつたしんじ兼任)

「おい!アオト!どこ行く気だ!?

もう夜だぞ!!!」



アオト

「今それどころじゃないの!!」



ヒマリ

「行くってどこに行くの!?」



アオト

「あのおじさんのとこだよ!!

行くぞ!!」



ヒマリ

「うん!!」



N→中井 亮なかいりょう

アオトとヒマリは外へ飛び出す。

真っ先にアオトは勝田かつたを閉じ込めた隠れ家へと向かう。



アオト

「流石に1人じゃまずい!大人の力を借りないと…!」



ヒマリ

「大人って…あの人に頼むの!?

でも私たちの話を信じてくれるかな…」



アオト

「それでもそうするしかないだろ!他にどうすればいいっていうんだよ!」



ヒマリ

「わ…わかった……」



N→中井 亮なかいりょう

アオトとヒマリが急いで隠れ家に入ってくる。

そこには勝田かつたが脱出を試みていたのか、中が先ほどよりも散らかっているようだ。

床に倒れている勝田かつたは物音に気付いて目を開けた。



勝田 信二かつたしんじ

「君たちはさっきの…何しに来たんだ!?」



アオト

「あ…あの!さっきのミハルって友達を助けてください!」



ヒマリ

「お願いします!!」



勝田 信二かつたしんじ

「ちょ…ちょっと待ってくれ!助けるって

一体なにがあったんだ?」



N→中井 亮なかいりょう

アオトとヒマリは勝田かつたのロープやガムテープをはがしていく。

頑丈に巻き付けたため苦戦しているようだ。



アオト

「ミハルが…その……銃をとったのに理由があって…!

あいつは…1人で化け物を倒しにいったんです!」



勝田 信二かつたしんじ

「化け物って…まさか……魔怪まかいのことか?」



ヒマリ

「はい…!ミハルはそれで武器を手に入れるために…おじさんを襲ったんです」



勝田 信二かつたしんじ

「武器って…あんなのじゃ魔怪まかいは倒せないぞ!!」



ヒマリ

「で…でも……拳銃があれば勝てるってミハルが!」



勝田 信二かつたしんじ

「どこから聞いたか知らないが魔怪まかいはそんなに甘くない!

あの拳銃はあくまで護身用であって魔怪まかいを倒すための武器じゃないんだ!」



アオト

「じゃ…じゃあミハルはどうなるんですか!?」



勝田 信二かつたしんじ

「くそっ!なんでそんな無茶をした!!

防衛隊に連絡をすればいいって学校でも習わないのか!!?」



ヒマリ

「そ……それが………」



N→中井 亮なかいりょう

ヒマリは手を止めて俯く。



ヒマリ

「ミハルは…防衛隊が大嫌いなんです」



勝田 信二かつたしんじ

「防衛隊が嫌い…?」



ヒマリ

「ミハルは…2年前に私たちの小学校に転校してきたんです

その理由が…ミハルの親は……魔怪まかいに殺されちゃったって…聞きました」



勝田 信二かつたしんじ

魔怪まかいに……?」



アオト

「助けを呼んだけど…防衛隊は間に合わなかったって……

だからミハルは大人が嫌いで…

それで…自分たちの力で倒すってずっと言ってたんです」



勝田 信二かつたしんじ

「でも…なぜ魔怪まかいの居場所を知ってたんだ?」



アオト

「実は1か月前に他のクラスの子が下水道に探検にいったときに幽霊の声を聞いたって噂話をしてて」



勝田 信二かつたしんじ

「下水道?」



アオト

「学校からちょっと離れたところに河原があるんだけど

道路沿いのところに大きな穴が空いてて

そこから下水道に繋がってるんだよ」



ヒマリ

「そこに幽霊が出るって噂をしてて

とはいっても元々危ないところだから先生とかも行かないようにって言ってたのと

皆怖いの嫌いだからって本当に行く人はいなかったんですけど…」



アオト

「ぼ…僕が気になって一人で行ったんだよ……

そしたらそこで見たんだ!

でかい化け物がいるのを…」



ヒマリ

「それをミハルに言ったら先生や親に言うなって…

自分たちの力で倒すんだって言ってたんです…」



アオト

「最初は遊びだと思ってた…

でもおじさんを襲ったときに……本気でやるつもりだったなんて……知らなかったんだよ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「っ……!くそ…」



N→中井 亮なかいりょう

アオトとヒマリがロープを外し終わる。

ある程度ガムテープもなくなると勝田かつたの力でも自力で外せるようになっていた。

ガムテープをちぎって脱出すると、勝田かつたはすぐに立ち上がる。



勝田 信二かつたしんじ

「場所は知ってるか?」



ヒマリ

「こ…これです!」



N→中井 亮なかいりょう

ヒマリは地図を勝田かつたに手渡す。

地図を広げて場所を確認すると勝田かつたは急いで外へ出る。



アオト

「待って!おじさん!どうする気なの!!」



勝田 信二かつたしんじ

「俺は今から助けにいく

君たちは親でも誰でもいい

今からいう番号に連絡をしてくれ」



N→中井 亮なかいりょう

携帯番号の数字を言うとヒマリは持っていたメモ帳に番号を書いていく。



ヒマリ

「あの…この番号は一体?」



勝田 信二かつたしんじ

「それは俺の上司に繋がる番号だ!

勝田かつたって名前を出してから助けを呼ぶんだ!

わかったか?」



アオト

「で…でも僕たち携帯持ってないんだ」



勝田 信二かつたしんじ

「だったら家に一度帰って

親に頼むんだ

俺は…今すぐ助けにいく」



ヒマリ

「待って…おじさん!

おじさんの武器…今どこにもないんです…

もしかしたら全部ミハルが持って行ったのかも」



勝田 信二かつたしんじ

「それでも助けにいく!

あと…それと!

俺はおじさんって歳じゃない!

お兄さんだ!わかったか?」



ヒマリ

「は…はい!」



N→中井 亮なかいりょう

勝田かつたはそれだけ言うと小屋を飛び出て走りだした。

地図を見ながらその方向へと向かう。



勝田 信二かつたしんじ

「ガキんちょ!無事でいろよ!!」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



N→アオト

その頃、ミハルは河原の下水道入り口前に到着していた。

懐中電灯を手に持ち、銃をポケットにしまった状態で中へと入っていく。



ミハル

「ふぅ………はぁ………はぁ………」



N→アオト

ミハルは深呼吸をしながらゆっくりと歩みを進めていく。

暗闇の中いつどこから化け物が現れるかわからないため緊張と恐怖心で動悸が激しくなる。



ミハル

「はぁ………はぁ………どこだ……」



N→アオト

いつでも銃を取れるように警戒しつつ進んでいると遠くで何かが壁にぶつかったような物音がした。



ミハル

「あっちか!?」



N→アオト

音のした方へと早足で進む。

何度か鳴る音を目印に道を進んでいくと

ちょうど目の前の曲がり角の先から音がしている事に気がつく。

ミハルは覚悟を決めてライトで照らした。

だが、そこに魔怪まかいの姿はない。



ミハル

「あれ…?いない?」



N→アオト

道の奥や辺りを見渡すがそこには何もいない。

一安心からほっと息が漏れる。

その漏れだした感情に気づいたミハルは奮い立たせるように自分の顔を叩く。



ミハル

「なんで安心してんだ…俺は化け物を倒しに来たんだぞ……いなきゃダメだろ」



N→アオト

ミハルは自身の臆病さにため息をついてぼんやりと天井を見上げる。

その時、天井の暗がりに何かが蠢いているのに気がついた。

懐中電灯をおそるおそる照らす。

そこにいたのは天井に張り付く大きな蜘蛛の見た目をした魔怪まかいであった。



ミハル

「うわああぁああっつ!」



N→アオト

ミハルは懐中電灯を落とし、そのまま腰が抜けるように尻餅をついた。



ミハル

「て!天井にいるなんて!!」



N→アオト

ミハルは銃を構える。

その手は震えており、銃口は定まらない。



ミハル

「うあああああああ!!」



N→アオト

ミハルは引き金を引く。

だが、弾は出ない。



ミハル

「な……なんで!!?」



N→アオト

銃には安全装置があり、誤射防止のため勝田かつたは基本セーフティ―レバーを付けた状態で所持している。

素人が拳銃を使用する際に弾が出ないということの理由としてよく挙げられるものだ。

ミハルは焦って引き金を引くが一向に発射されなかった。



ミハル

「なんだよこれ!!?不良品かよ!」



N→アオト

魔怪まかいが徐々にミハルへと近づく。

ミハルはゆっくりと後ずさりしていくが、背後に壁が迫ると絶対絶命の状態となってしまう。



ミハル

「くそっ!!こんなとこで死ぬのかよ!!

いやだ……俺は!こいつを倒すって決めたんだ!」



N→アオト

ミハルは覚悟を決めて正面から殴りかかる。

魔怪まかいにその拳がぶつかるも、小さな音が鳴るだけで魔怪まかいは何の反応も示さない。

それどころか魔怪まかいはそのまま進行し、ミハルをその前足で蹴飛ばした。



ミハル

「ゴハッツ!!!!」



N→アオト

ミハルは壁に背中から叩きつけられる。

地面に倒れた際に身体中が擦り切れ、血が至るところから滲み出す。



ミハル

「痛っ…!痛ぃ!痛ってぇ!!」



N→アオト

ミハルは立ち上がると目の前に蜘蛛の魔怪まかいが迫ってきていた。

蜘蛛の魔怪まかいは未だ敵体意識を向けていないのかじっとミハルを見下ろしている。



ミハル

「ちくしょう!!なんでこの銃撃てないんだ!」



N→アオト

ミハルは銃を持ち、本体の側面を見る。

そこに小さなレバーのような部分があり、それを動かすとカチッと音が鳴った。



ミハル

「そっか!?これが邪魔してたんだ!

くそーーッ!!当たれ!!!」



N→アオト

ミハルは銃を向けて引き金を引く。

目の前まで迫っていたため、いくら不慣れな子供であろうと射撃は命中する。

だが予想以上の反動に拳銃は後ろへと吹き飛ばされてしまった。



ミハル

「あっ!!銃が!!」



N→アオト

だが蜘蛛の魔怪まかいは弾丸が命中した影響からか甲高い音を立てながら後ろへ後ずさりしていく。

そしてドサッと身体ごと倒れると動かなくなった。



ミハル

「や……やった!!倒した!!

倒したんだ!!」



N→アオト

ミハルは喜びのあまり痛みを忘れて立ち上がると、ガッツポーズをとる。



ミハル

「やっぱり…大したことないじゃないか!

アオトやヒマリがビビりすぎだったんだよ!」



N→アオト

魔怪まかいを見下ろしてミハルは唾を吐きかける。

その時、魔怪まかいはすっと足を動かしてミハルを吹き飛ばした。



ミハル

「ぐあああぁあっつ!!」



N→アオト

吹き飛ばされたミハルは地面を転がりそのまま倒れてしまう。

痛みに耐えながら顔を上げると魔怪まかいがゆっくりと立ちあがった。



ミハル

「な……なんで!!?

今銃を…当てただろ!?」



N→アオト

魔怪まかいはゆっくりとミハルを見つけると、こちらに迫ってくる。

先ほどと違い敵意を向けた視線でミハルを噛み砕こうと大きく口を開いた。



ミハル

(し…死ぬんだ……俺は……こんなとこで……)



ミハル

「くそぉぉぉぉぉぉっ!」



N→アオト

魔怪まかいがミハルに噛みつく直前

目の前に飛び出してきた男がミハルを抱えて横へと飛んで回避した。



勝田 信二かつたしんじ

「っぐ!!おいガキんちょ!大丈夫か!!?」



ミハル

「お前…さっきのおっさん!なんでここにいるんだ!」



勝田 信二かつたしんじ

「あの子たちから話は聞いた…なんて無謀なことをしやがるんだ!」



ミハル

「お前に何がわかんだよ!

防衛隊は俺ら家族を助けてくれなかった!

俺の家族は…お前らに見殺しにされたんだよ!その気持ちがわかんのかよッ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「……わかるさ

俺も…似たようなことがあった」



ミハル

「…似たようなこと?」



勝田 信二かつたしんじ

「元々俺は警察だったんだ

だが、警察は市民を守らない…弱くて守れないんだ

その時、俺は絶望したさ…世の中クソだってな

だがそんな俺を助けてくれた人がいたんだ」



ミハル

「だから何だよ……結局助かったんじゃないか!

俺は父さんも母さんもあの時に失ったんだよ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「あぁ…だから全部わかるとは言わない

だけど少しはわかるつもりだ」



ミハル

「わかったような口を利くなよ!!

俺らみたいな子供にやられるようなおっさんに言われたくねぇよ!」



勝田 信二かつたしんじ

「そんな俺ですら魔怪まかいを相手にしたらチリ同然なんだ

ガキんちょがどれだけ頑張っても倒すことは無理だ」



ミハル

「無理だと…!!じゃあなんだったんだよ!!」



N→アオト

ミハルはぽろぽろと涙をこぼす。

悔しさに唇を噛み締め、絶望に満ちた嗚咽をあげながら振り絞った声を出した。



ミハル

「じゃあ……俺は何のために………

俺はあいつらを倒すために……復讐するために…!

それだけを考えて生きてきたんだ!!

もう…俺にはそれしか生きる意味がないんだよ!!!」



勝田 信二かつたしんじ

「馬鹿野郎!!!」



N→アオト

その言葉を聞いた勝田かつたは怒号を返す。

ミハルはその気迫に押されて言いよどむ。



勝田 信二かつたしんじ

「…俺の仲間にも同じことを言ってる人がいる

だけど俺は復讐しかないなんて

そんな事…ちっとも理解できない」



ミハル

「じゃあ……どうしたらよかったんだよ……」



勝田 信二かつたしんじ

「ガキんちょ…お前いくつだ?」



ミハル

「12だけど…」



勝田 信二かつたしんじ

「俺は24歳だ

お前の倍も生きてる

だが俺だってまだ生きる意味なんか考えたことねぇぞ」



N→アオト

蜘蛛の魔怪まかい勝田かつたを警戒し近づく様子がない。

どうやら臆病な性格のようで、勝田かつたを見たままぴたりとも動くことがない。

勝田かつたはぐっと拳を握り締め、魔怪まかいを前にする。



勝田 信二かつたしんじ

「生きる意味……そんなもん

死ぬときにでも考えたらいい

今は…明日強くなることを考えりゃいいんだ!」



N→中井 亮なかいりょう

勝田かつた魔怪まかいへと詰め寄る。

魔怪まかいはそれに合わせて前足で攻撃を仕掛けるが、それを寸でのところで回避すると拳を魔怪まかいの身体へと叩き込む。

体格差は勝田かつたより少し大きい程度のため、拳の一撃は予想以上に効いている。

その為、少しだけ押し込むことに成功した。



勝田 信二かつたしんじ

「この図体のままの強さ!いける!!」



N→中井 亮なかいりょう

魔怪まかいの側面に周り、拳や蹴りを叩きこむ。

攻撃は効いているようで魔怪まかいも攻撃を返すが蜘蛛の魔怪まかいの攻撃は勝田かつたには当たらなかった。



勝田 信二かつたしんじ

「だが…このままじゃ有効打がない!どうしたら…!!」



N→中井 亮なかいりょう

相手を倒す手段を考えたその一瞬

油断したその瞬間に蜘蛛の魔怪まかいは口から糸のようなものを吐き出した。



勝田 信二かつたしんじ

「うぉっ!!」



N→中井 亮なかいりょう

咄嗟に上体を曲げて回避した勝田かつただったが間髪入れず振るわれた突進を受けて勝田かつたはそのまま下水道の水の中に吹き飛ばされた。



勝田 信二かつたしんじ

「ぐわぁああっつ!!」



N→中井 亮なかいりょう

勝田かつたが水に落ちる。

蜘蛛の魔怪まかいは水の中に追撃することはせずゆっくりとミハルの方を見た。



ミハル

「ひっ…!!お、おい!おっさん!!」



N→中井 亮なかいりょう

ミハルは呼びかけるも返事はない。



ミハル

「くそ!!口だけかよおっさん!!

ちくしょおおおお!!!」



N→中井 亮なかいりょう

ミハルは立ち上がろうと気力をあげるも一向に立ち上がれない。

その時、奥の道から二人が走ってくる音が聞こえた。



アオト&ヒマリ

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

「やぁぁぁぁぁぁぁっつ!!」



N→中井 亮なかいりょう

二人は鉄パイプの先端に軍用ナイフをグルグルと縛った即席槍を二人で持ち、同時に走って魔怪まかいに突き刺した。

魔怪まかいは先ほどより大きな声をあげて緑色の血を吹き出す。



ミハル

「アオト!!ヒマリ!!なんで!!?」



アオト

「なんでって…!助けにきたんだよ!」



ヒマリ

「そうよ!私たちで化け物を倒すんでしょ!!」



ミハル

「馬鹿!!逃げろ!!」



N→中井 亮なかいりょう

魔怪まかいはそのまま身体を動かすと槍が刺さったまま後方へと下がる。

そして三人を見つけると怒りを露わにした鳴き声を出した。



ミハル

「お前達だけでも逃げろって!!」



アオト

「やだよ!!置いてくなんてできるかよ!!」



ヒマリ

「そうよ!!絶対にいや!!」



N→中井 亮なかいりょう

三人は徐々に追い詰められる。

もう武器はないため三人は恐怖のあまり泣き出す。



勝田 信二かつたしんじ

「おおおおおおお!!!」



N→中井 亮なかいりょう

雄たけびをあげた勝田かつたが身体全体で突進を仕掛ける。

魔怪まかいはそれを受けて壁に身体を打ち付けると、勝田かつたの方に標的を変えた。



ミハル

「おっさん!!」



勝田 信二かつたしんじ

「悪い!油断した!!」



N→中井 亮なかいりょう

勝田かつたは三人の前に立ちふさがるように移動した。



ミハル

「どうして…逃げればよかったじゃんか!どうして助けに来たんだよ!」



勝田 信二かつたしんじ

「俺は…防衛隊の隊員だ

市民を守るのが俺の責務だ!」



ミハル

「カッコつけんなよ!お前…勝てるのかよ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「確かに…俺は弱いさ

同じ隊の中でも経験は一番浅い

実力だって新人の仲間に100回やって100回負けるらしい

そんな俺じゃ誰も倒せないのかもしれないな」



ミハル

「じゃあ――」



勝田 信二かつたしんじ

「だがな…!

ガキ見捨てて逃げるほど腐ってねぇよ…

それに…たとえ弱くても……

それでもお前達を守ってみせる

その為なら弱くたって勝ってみせる!!」



N→中井 亮なかいりょう

勝田かつたの背中が先ほどよりも大きく見えた。

何かが変わったような気配を3人も感じ取っていたのだ。



勝田 信二かつたしんじ

「おぉぉぉぉッ!!!」



N→中井 亮なかいりょう

勝田かつた魔怪まかいに突進をしかける。

魔怪まかいの前足に向けて蹴りをしかけるが、その攻撃でも魔怪まかいはひるまなかった。



勝田 信二かつたしんじ

「まずい!!!」



N→中井 亮なかいりょう

魔怪まかいの反撃を回避した勝田かつた魔怪まかいの背中に刺さった槍を発見する。



勝田 信二かつたしんじ

「あれは…!

でもあれをどうやって取るか…!」



ミハル

「おっさん!!これを!!」



N→中井 亮なかいりょう

ミハルは銃を勝田かつたに投げる。

勝田かつたはそれを掴むとミハルに向かって指をさす。



勝田 信二かつたしんじ

「俺はおっさんじゃねぇ!お兄さんだ!」



N→中井 亮なかいりょう

魔怪まかいの足に向けて拳を突き出す。

殴りつけた衝撃で魔怪まかいの足がよろける。

その拳の突き出しと同時に手に持った銃の引き金を引いた。



勝田 信二かつたしんじ

「おらああ!!」



N→中井 亮なかいりょう

魔怪まかいの前足を銃弾が貫き魔怪まかいの足は大きくよろける。

その瞬間を逃さず勝田かつたは背後へと大きく周り、槍を抜き取った。



勝田 信二かつたしんじ

「喰らえぇぇぇぇっつ!!!!」



N→中井 亮なかいりょう

壁を蹴って進む勢い、それに反撃するように突撃を仕掛けてくる魔怪まかいの正面、頭部に向けて槍を勢いよく突き刺した。

その刺突により頭に深く槍が突き刺さり

魔怪まかいは断末魔のような大きな声をあげてそのまま動かなくなる。

勝田かつたは確認のため、頭に向けて一発の銃弾を撃ち込むが魔怪まかいの反応はない。

完全に死亡したようだ。



勝田 信二かつたしんじ

「や……やった!!初撃破だ!!

よっしゃぁぁあ!!!見てたかガキんちょ共!!」



N→中井 亮なかいりょう

勝田かつたは三人の元による。



勝田 信二かつたしんじ

「怪我はねぇか?」



アオト

「僕たちは大丈夫です…」



ヒマリ

「私もです」



ミハル

「俺は見たらわかるだろ…」



勝田 信二かつたしんじ

「馬鹿野郎が…死にに来たようなもんだぞ

生きてたのは運がよかっただけだ!

これより強かったら俺じゃ勝てなかった

わかってんのか?」



ミハル

「わかってる…俺じゃ勝てなかった…

でもじゃあ…どうしたらよかったんだよ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「復讐だとか…俺はよくわからねぇ

だけどそのお前の気持ちだけで友達を危険に晒すんじゃねぇよ!

お前の大事な友達だろうが…」



ミハル

「大事な…友達……」



アオト

「ごめん…ミハル

僕らさ……最初からミハルを1人で行かせるつもりなかったんだ」



ミハル

「は?…どういうことだよ?」



ヒマリ

「私たちね…化け物倒すとか……そういうのどうでもよくって

ただ…ミハルと一緒にいたかっただけだったの…」



アオト

「だから…何かあったら大人を呼ぼうと思ってたんだ……ごめん」



ヒマリ

「ごめんなさい…騙してたわけじゃなかったの

ただ…ミハルが心配で……」



ミハル

「そう…だったのか」



勝田 信二かつたしんじ

「いい友達持ってるじゃねぇかよ

そういうやつは一生大事にしろよ」



ミハル

「言われなくても…わかってるよ……」



勝田 信二かつたしんじ

「ぷっ…はははは!」



N→中井 亮なかいりょう

勝田かつたは何かを思い出したように笑う。



ミハル

「なにがおかしいんだよ!」



勝田 信二かつたしんじ

「わるぃ…お前根性あるなって思ってな

今時ガキで戦おうとするようなのがいるもんなんだなってな」



ミハル

「ガキで悪かったな…!」



勝田 信二かつたしんじ

「どうしてもあいつらと戦いたいならまずは勉強して

その後、鍛えて鍛えて鍛えまくれ

そっから防衛隊に来い」



ミハル

「防衛隊……俺が?」



勝田 信二かつたしんじ

「お前の中にある正義心

忘れんじゃねぇぞ

だが勇気と無謀は違う

それをしっかり理解してから一緒に戦おうぜ」



ミハル

「……わかったよ

その…ありがとう」



アオト

「あの!本当にありがとうございます

それと…その……ごめんなさい」



ヒマリ

「でも…私たち……お兄さんを襲いました…

もしかして私たち警察にいくんですか?」



勝田 信二かつたしんじ

「あぁ…そういえばそうだったな……

その事は内緒にしてくれねぇか?

銃取られたなんて言ったら始末書が大変でな」



N→中井 亮なかいりょう

その言葉を聞くとアオトとヒマリは安心したように笑顔になった。



ヒマリ&アオト

「わかりました!」



ミハル

「なぁ……おっさ―――」



勝田 信二かつたしんじ

「おっさんじゃねぇって言ってるだろうが!」



N→中井 亮なかいりょう

勝田かつたはミハルに拳骨をする。



ミハル

「痛っつ!!?なにも殴ることないだろ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「ちょっとは痛い目見ねぇと学ばねぇだろ」



ミハル

「いてて………!

あの…さ、俺でも…その……戦えるかな……

防衛隊員に……なれるのかな?」



N→中井 亮なかいりょう

勝田かつたはそれを聞くと真剣な面持ちになる。



勝田 信二かつたしんじ

「お前に気絶させられるような俺がなれてるんだ

お前にならなれるさ」



ミハル

「…わかった。俺やってみるよ」



勝田 信二かつたしんじ

「おう…覚えておく

俺は勝田 信二かつたしんじ

お前の名前は?」



ミハル

「ミハル……新藤 海晴しんどうみはる



勝田 信二かつたしんじ

海晴みはるか…よろしくな!」



N→アオト

それから榊原さかきばらや防衛隊の隊員たち数名がかけつける。

状況を説明すると子供たち三人に事情聴取をしたが、子供たちは偶然巻き込まれたとして処理され、大ごとになることはなかった。

今回の事件はオフの防衛隊員が子供たちを助けたとして美談化されニュースとして翌日報道されることになる。



それから翌日、勝田かつたは射撃訓練場に向かうと受付で使用許可を貰う。

射撃レーンに向かうと隣には先に東郷 椎菜とうごうしいながおり銃を撃っていた。



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさんお久しぶりです!」



東郷 椎菜とうごうしいな(ヒマリ役兼任)

勝田かつたさん?

任務ぶりね、で今日はどうしたの?」



勝田 信二かつたしんじ

「いえ!ただ練習をしに来ただけですよ」



N→アオト

勝田かつたの射撃を見ると東郷とうごうは手を止めた。



東郷 椎菜とうごうしいな(ヒマリ役兼任)

「最近なにかあった?」



勝田 信二かつたしんじ

「え?どうしてですか?」



東郷 椎菜とうごうしいな(ヒマリ役兼任)

「変な顔をしてたから」



勝田 信二かつたしんじ

「え??俺ってそんなに顔に出ますか?」



東郷 椎菜とうごうしいな(ヒマリ役兼任)

「えぇ…わかりやすいわよ」



勝田 信二かつたしんじ

「そうですか!流石ですね東郷とうごうさんは

俺実は…昨日魔怪まかいを倒しまして」



東郷 椎菜とうごうしいな(ヒマリ役兼任)

「そうなのね、おめでとう」



勝田 信二かつたしんじ

「それで…前に東郷とうごうさん言ったじゃないですか

俺に銃の引き金を…戦う理由を持っておけって

それがわかったんです」



東郷 椎菜とうごうしいな(ヒマリ役兼任)

「へぇ…で、それは何にしたの?」



勝田 信二かつたしんじ

「俺はなんのために強くなりたかったのかわかったんです

強い者は弱い者を守る

それは力を得た者の責任だ

そんな風に語るヒーロー作品は多いです

そんなよく聞く言葉ですけど

それが俺の考えそのものだったんです」



東郷 椎菜とうごうしいな(ヒマリ役兼任)

「へぇ…」



勝田 信二かつたしんじ

「俺は誰かを守るために強くなりたかった

それを俺はずっと見失ってました

でも…もう見失いません

俺は弱くても市民を守るために戦う

その為に俺は防衛隊に入ったんです!」



東郷 椎菜とうごうしいな(ヒマリ役兼任)

「……そうなのね

…ふぅん……勝田かつたさん変わったわね」



勝田 信二かつたしんじ

「ありがとうございます!」



東郷 椎菜とうごうしいな(ヒマリ役兼任)

「浮かれてあっさり死なないことね

前も言ったけど死なれたら気分悪いのよ」



勝田 信二かつたしんじ

「そうですね…!

東郷とうごうさんの気分を害さないためにも頑張りますよ!」



東郷 椎菜とうごうしいな(ヒマリ役兼任)

「お好きにどうぞ…」



勝田 信二かつたしんじ(モノローグ)

俺はよく迷い、悩み、選択を間違えてしまう

それは俺の弱さなのかもしれない

だがそんな弱さであっても俺は受け入れる。

たとえ弱くたって誰かを守るために俺は諦めず戦い続ける

昔の俺はどんな大人になりたいと言っていたか思い出してみる。

確かその時は皆を守れるような強い人になりたい

そんな風に言っていたな

まだ今の俺は強い人ではない

だが必ず市民を守ってみせる

もう俺は後悔をしたくない

その為に命を張り続けるんだ

例え泥臭くてもかっこ悪くても

ただひたすらに俺は戦う











神ガ形ノ意思ニ背イテ 漆話   完

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき



6話よりハイペースでの7話投稿となります

まさかここまで筆が乗るとは思いませんでした

今回は壱話や弐話で張った言葉を色々と使用していますが

元々そのセリフたちは今回の話で回収する予定だったんです!

まさかそういう意味で張っていたなんて!って驚いてくれると嬉しいですね


今回も勝田かつたの成長回だったわけですが

次回8話は橘花たちばなに少し焦点を当てようかと思います。

どんな話になるかはまだ内緒ですが、今回出てこなかった

榊原さかきばら須加すが橘花たちばなは確実に登場します。

そして勝田かつたもまた出てくるのでいつも通りの別章となります。

6,7話と中井なかいや新キャラ達が多かったので最初の頃とテイストが少し違う話にはなっていますが楽しんでいただければ幸いです。


さて長くなりましたが

次回8話もお楽しみに

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


利用規約


ミクロさん台本を動画、配信で使用するのは全てご自由にどうぞ



・アドリブ演技に関して

この台本はアドリブを入れる事を前提として書いています

なので演者様方の判断で挟んで頂いて構いません

是非素晴らしい演技にアクセントをつけてください

しかし作風に合わないものはご遠慮ください



・性別変更や比率に関して

作者はあまり好ましくは思っていませんがある程度ならば可とします

そのある程度の境界線は他の演者様たちとの話し合いに委ねます



・特殊なものについて

台本を演じる際に読み込まないで演じる行為や

言語を変える、明らかに台本無視と取れる

特殊な行為をするものは認めていません

流石に読み込んで普通に演技してください

多分そうじゃないとこの台本は演じれないです



二次創作等、商権利用問題のある場合、質問や不明点ございましたら

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