神ガ形ノ意志ニ背イテ 陸話

登場人物名


榊原 義弘さかきばらよしひろ

32歳  (過去編→21歳)

大雑把な性格だが、部下を率いる防衛隊の一部隊の隊長。

説明下手でよく橘花たちばなに訂正される

勝田かつたを気に入り、傍に置いて色々指導している。

任務中ではかなり頭が回り、戦場をかけている。

筑波つくばとはかなり長い付き合いらしい




勝田 信二かつたしんじ

24歳

熱い正義感と無鉄砲な若さを持つ新人隊員

士官学校卒の元警官であったが、魔怪まかいの襲撃の際に同僚たちの不甲斐なさに失望し、単身挑むも死にかけそこを榊原さかきばらに助けられる

任務より目先の命を優先することが多く、危険な目に合うことが多い




須加 正樹すがまさき

30歳 (過去編→19歳)

榊原さかきばらの下についている隊員の1人。

榊原さかきばらの適当な説明には慣れているようで大体の説明で内容を理解している

部隊の中では狙撃を務める事が多く、高い位置からの索敵が得意である

※ナレ多いです




街田 茂まちだしげる

49歳 (過去編→38歳)

榊原さかきばらの師匠

大雑把でガサツな性格だが実力は確かで引退後の現在も英雄譚が受け継がれている

現在は記者をやっているようだが、身の上話をしないためどこに属しているかは不明




飛田 佐代子とびたさよこ

25歳

街田まちだの杜撰な生活を放っておけないお節介焼き

街田まちだに憧れている。




西原 麻衣にしはらまい

38歳

街田まちだ隊の隊員

街田まちだとは同年代で同期入隊

榊原さかきばら飛田とびたにも優しく接している




宇喜多 牧人うきたまきと

36歳

物静かな性格

読書が趣味

街田まちだとは仲が良い




代永 丈しろながじょう

36歳

榊原さかきばらよりも少し前から防衛隊に所属している隊員

嫌味を言うような性格で榊原さかきばらたちからは嫌われている

金こそ全てという性格の持ち主

射撃技術や統率能力は高く、そこだけを言えば榊原さかきばらよりも上である











Nは→後のキャラ演者が読む

※所々交代があるので注意してください。かなり大変です。






VHAぶいえいちえー

突如世界に現れた「魔怪まかい」と呼ばれる怪物を駆除するために設立された軍

Variant Hunt Army通称VHAぶいえいちえーと呼ばれる軍は

自衛隊や警察組織と違い、独立した権力を持つ

一般人や学園卒業者の中で実力保有者が入隊することができる

VHAぶいえいちえー兵を総称して兵員と呼ばれている




魔怪まかいについて

2000年に突如現れた異形の生命体。

理由や目的は不明だが人類を脅かす存在。

現れた当初は世界でも数十体しか確認されなかったが、年々数を増やしていた。

出現方法も繁殖方法などは不明となっている。

魔怪まかいの姿形は現存した生物に類似している為

生物が魔怪まかいに変異した説や妖怪や幽霊といった類である説だったり

一部では神の使い等と吹聴ふいちょうしている宗教までいる。




CARDIEDカディドとは

その素性、人員、目的一切が不明のテロ集団

突如姿を現れては殺戮を行う事から市民から恐れられている






役表


街田 茂まちだしげる♂:

榊原 義弘さかきばらよしひろ♂:

宇喜多 牧人うきたまきと須加 正樹すがまさき井之上いのうえ副長官♂:

飛田 佐代子とびたさよこ♀:

西原 麻衣にしはらまい&女将♀:

???&勝田 信二かつたしんじ代永 丈しろながじょう♂:




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神ガ形ノ意思ニ背イテ 陸話











N→西原 麻衣にしはらまい

病院の屋上でタバコを吸いながら榊原さかきばらは空をぼーっと眺めていた。

しばらくして勝田かつたが屋上へと上がって来る。

一息つく勝田かつたの手には新聞が握られていた。



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

榊原さかきばらさん、新聞を買ってきましたよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「おう、すまんな」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「他にも雑誌とかありましたが

新聞でよかったんですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これでいい

新聞なんてこういう時じゃないと見る機会もないだろ

………そういえば今日でもう4月になるのか」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「そういえばそうですね

入院生活だと日付間隔がわからなくなりますね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「4月1日か……」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「俺も見てもいいですか?

…オカルトコーナーだ、懐かしい

あ、これってまだ掲載されてるんですね

悲劇のエイプリルフール」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……悲劇のエイプリルフール?」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「俺が小学生だった時によくテレビでオカルト話としてやってたんです

もう何年も聞いてない話だったんですけど

まだこんな都市伝説が残ってるとは」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「もうその事件は解決した

犯人は捕まったからな

二度とそんなことは起きないはずだ」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「え…?捕まった?

結局正体は謎のままって内容だったと思うんですが…

犯人はどんな人だったんですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「………お前その事件について何を知ってるんだ?」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「えっと…どんなだったかな…

毎年3月末になると招待状が届き

その人がそこへ向かうと4月1日に必ず殺されてしまう

といった都市伝説だった気がします

俺が中学生ぐらいの時に映画化もされてたんで結構有名だと思いますよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「…都市伝説か

実際のところはそんな面白いものなんかじゃない」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「それは…どういう事ですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「聞くか?」



N→西原 麻衣にしはらまい

榊原さかきばらの瞳に真剣さが宿っており勝田かつたはそれをすぐに感じ取った。



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「…は……はい」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「その事件に俺も関わっていた

…というよりは運よく生き延びたという方が正しいな

だがそれがきっかけで俺の恩師は戦う事を辞めちまった」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「恩師…あの街田まちださんって人の事ですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これは確か極秘だったはずだが…まぁいいだろ

俺から聞いたって誰にも言うなよ」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「は、はい…!」






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街田 茂まちだしげる

「ぐぅぅぅぅうぅぅ~~~~がぁぁああ~~~ぐぅ~~~」



N→???

雑誌を顔に乗せ、大きないびきをかく男 街田 茂まちだしげる

彼はのちに剛鬼ごうきと呼ばれ

複数の伝説を残した有名な防衛隊員である。

だが、これはまだ彼が覚醒する前の話。

そして榊原さかきばらがまだ新人だった11年前のこと。



防衛隊の部隊ごとに設けられているオフィスにて

街田まちだを隊長とする隊の面々が待機しながらそれぞれの仕事をしていた。

作業をしながら部屋中に響く街田まちだの出すいびきが更に一層うるさくなると飛田 佐代子とびたさよこが席を立ち

街田まちだの顔にある雑誌を手に取るとグルグルと丸め出す。

すると棒状に巻いた雑誌で街田まちだの頭を勢いよく叩いた。



飛田 佐代子とびたさよこ

「起きてくださいっ!!!」



街田 茂まちだしげる

「フガッツ…!!?」



N→???

新聞紙でバチーンと頭を叩くと激しい音が辺りに響き渡り

街田まちだはその音で目を覚ました。



街田 茂まちだしげる

「あ…なんだ飯か?」



飛田 佐代子とびたさよこ

「なにっ寝ぼけてるんですか!!

もうお昼休憩とっくに過ぎてますよ!

それに寝るだけならまだしも

いびきが煩くて迷惑なんですよ!」



街田 茂まちだしげる

「あぁ~~~~

寝てたのか

今何時だ?」



飛田 佐代子とびたさよこ

「今ですか?

えっと…13時30分です」



街田 茂まちだしげる

「そろそろヤニ吸わねぇとだ

ってことだ、喫煙所行ってくんぞ」



飛田 佐代子とびたさよこ

「えぇえ!?もう仕事始まってますよ…!」



街田 茂まちだしげる

「その辺はあれだ!

飛田とびたに任せっからよ!

頼んだぜ!ガハハハ!!」



N→???

街田まちだはさっと立ち上がり

飛田とびたの肩を掴んで自席に座らせると堂々と部屋から出ていった。

咄嗟の行動に驚いて固まっていた飛田とびただったが

仕事を押し付けられたことにハッと気がつくと頭を抱え込む。



飛田 佐代子とびたさよこ

「ぁあ!!逃げたぁ!

あぁ~~~うぅ~~~~!!

また私の仕事が増えたあぁぁあ!!」



西原 麻衣にしはらまい

「ふふふ、ほんといつになってもしげちゃんは変わらないわよね」



飛田 佐代子とびたさよこ

「うぅぅ…いつになったらきちんと仕事をしてくれるのよ……」



西原 麻衣にしはらまい

「あの性格は前からなの

もう諦めましょう

私も手伝うわよ」



飛田 佐代子とびたさよこ

西原にしはらさん、いつもありがとうございます…」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺もやれることがあれば手伝いますので頑張りましょう」



飛田 佐代子とびたさよこ

「ホントにありがとう

新人がこんなにいい子だってのに隊長ときたら……

あぁーーもぅ情けないったらありゃしない!」



西原 麻衣にしはらまい

「ふふ、榊原さかきばらくんはあんな風に仕事中に寝るようになっちゃダメよ?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ははは…俺はサボったりしませんよ」



N→???

榊原さかきばらはパソコンで書類を打ち込みながらぼそっと呟く。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「それに…俺には隊長なんて出来ませんし

なりたくてもあの人みたいにはなれませんよ」



西原 麻衣にしはらまい

牧人まきとは今なにしてるの?」



宇喜多 牧人うきたまきと

「ん?俺か…?

あぁ、今は今月の会計をやってるところだ」



西原 麻衣にしはらまい

「悪いんだけど終わったらこっちも手伝ってくれる?

前の作戦の時に隊長が出した被害の始末書が結構多くてね」



宇喜多 牧人うきたまきと

「わかった

こっちが終わったら言うよ」



N→???

街田まちだは普段からこのよう大雑把で杜撰な人間だった。

だが、任務や訓練の際の街田まちだは違う。

部下たちが慕い着いていく理由があったのだ。

彼は類まれなる近接戦闘技術を持っており、未だ弟子らとの組手では無敗を誇っていた。



街田 茂まちだしげる

「おらっ!!こんなんで倒れててどうすんだ!

あ?もう限界か?

まだ俺は準備運動にもなってねぇぞ!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「うぐっ………!!ゼ―…ゼ―……

ちょ、ちょっと…勘弁してください……」



街田 茂まちだしげる

「あ~ぁ??もう弱音吐いてんのか?

情けねぇな~そんなんでどうやって魔怪まかいと戦うってんだ??」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぐッ……ハァ…ハァハァ……

もう少し…手加減してくださいよ…!」



N→???

休日の昼頃、榊原さかきばら街田まちだは小さな山の頂上にある展望台の真下にある公園で組手を行っていた。

街田まちだは休日にやるにはハードなレベルで榊原さかきばらを容赦なく打ちのめしており榊原さかきばらは毎度ボロボロになっていた。

だが、次第にそんな日々が続くと榊原さかきばらも慣れてきたのか怪我に強くなってきていたのだ。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「全然勝てねぇ…どうやったらいけんだよ……」



街田 茂まちだしげる

「ガハハハ!!そりゃそうだ!

俺を倒そうなんざ10年早ぇ!!

まだまだお前みてぇなヒヨッコには負けねぇよ!!

何度来たって返り討ちにしてやる!

ガハハハハハッ!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「はぁ……はぁ…ほんと手加減を知りませんね街田まちださんは」



街田 茂まちだしげる

「そりゃそうだ!戦場にぁ手加減もクソもあったもんじゃねぇ

だが、お前今日は結構よかった方だぜ

だがお前もちゃんと上達はしてるみてぇだな!!

前よかタフになってきてんじゃねぇか」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そりゃこんだけボロボロになってたら嫌でも学びますよ……いてて!」



街田 茂まちだしげる

「それもそうだな!ガハハハハハ!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「でもこんな近接戦ばかりでいいんですか?

魔怪まかいにこんな格闘が通じるとは思えないですよ

もっと銃とか、作戦とかについてやったほうがいいのでは…」



街田 茂まちだしげる

「敵が魔怪まかいだけだとは限らねぇぞ!

どんな奴が相手になるかわからねぇんだ

こういうのは覚えておいて損がねぇんだよ!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「殺人鬼や犯罪者と戦うことも確かにありますけど…

でもそういう奴らは基礎も何もないようなゴロツキじゃないですか

ここまで鍛えても仕方ないんじゃないですか?」



街田 茂まちだしげる

「そうとも限らねぇぞ

そろそろあの日も来ることだしな」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あの日…?あ、そういえばもう3月末ですよね……

あぁ…そういう事ですか

そろそろ4月1日が来ますね」



街田 茂まちだしげる

「そうだな

あのイカレ野郎が今年も現れるだろう…

今年こそ必ず俺がとっ捕まえてやる!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「その犯人ってどんな奴なんですか?

あまり俺ら新人には情報が入ってこないんです」



街田 茂まちだしげる

「そうだなぁ~毎年4月1日に現れんだ

毎年この時期になると殺害予告が届いてな

そいつが必ず死体になっちまうって話だ

都市伝説はそれに色々付け加えて話が広がってるが

実際に30人以上も人を殺してる大量殺人鬼だ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「30人も…!?どうしてすぐにでも逮捕しないんですか?」



街田 茂まちだしげる

「そいつの正体がずっとわからねぇんだ

死体以外なにも情報を残さねぇ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そうなんですね…

もしそんな奴がいれば防衛隊が確保しに行けばいいじゃないですか」



街田 茂まちだしげる

「既に戦ったんだ

その結果2部隊が全滅しちまった」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「…そ、そんなに強いんですか…!?」



街田 茂まちだしげる

「だろうな…だが俺は奴を捕まえる

俺はそいつらの仇を討ってやりてぇんだ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そうなんですね」



街田 茂まちだしげる

「そんなのだっていんだ

だから格闘戦も覚えなきゃなんねぇんだぜ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「…わかりました

それじゃ続きをお願いします!!」



街田 茂まちだしげる

「お!いいじゃねぇか!

やる気十分ってか!ガハハハ!!

さぁかかってこいよ!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「うぉぉぉぉぉぉっ!!!」



街田 茂まちだしげる

「いいじゃねぇか!!

でもまだまだだな!!!オラッツ!!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぐはぁぁぁああっつ!!!?」



N→???

それから次の日

早朝から街田まちだの格闘訓練に付き合わされた榊原さかきばらは複数箇所に擦り傷や痣を作っており

西原にしはらに消毒液を使って応急処置をされていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「痛っ!!いってて……ほんと強すぎますよあの人」



西原 麻衣にしはらまい

「毎日毎日よくやるわねぇ

こんな怪我ばかりでいつか死んじゃうかもしれないわよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ははは…そうなる前に何とか勝てるようにならないと身が持ちませんね」



西原 麻衣にしはらまい

「無理はしない事よ

いざ出動の時に怪我してちゃ危険だからね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ありがとうございます!」



宇喜多 牧人うきたまきと

「ところで、隊長と飛田とびたはどこにいったんだ?」



西原 麻衣にしはらまい

「今頃こっぴどく叱られてるわよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「叱られるって上にですか?」



西原 麻衣にしはらまい

「正確に言えば佐代さよちゃんによ

どうせ隊長は上からどれだけ怒られても気にしないわ」



宇喜多 牧人うきたまきと

「なにしたんだ?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁ…どうやら今日の訓練…

また練習場の使用許可取ってなかったみたいで…」



宇喜多 牧人うきたまきと

「あー…またか」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺はやったって聞いてたので全く疑ってなくて

そう言ったらそれは仕方ないからって飛田とびたさんが代わりに一緒に行ったんです」



宇喜多 牧人うきたまきと

「申請ぐらいただ窓口に言えばいいだけじゃないのか?」



西原 麻衣にしはらまい

「隊長がそんな面倒なことすると思う?」



宇喜多 牧人うきたまきと

「しないと思うな」



西原 麻衣にしはらまい

「でしょうね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ほんと大雑把な人ですね」



西原 麻衣にしはらまい

「昔からそうなのよ

あのタイプは頑固だから言うだけ無駄よ

私たちで何とかしましょう」



N→???

その頃、上官の会議室から出てきた街田まちだ飛田とびた

飛田とびたは身長差があるため飛び上がって頭を叩く。



飛田 佐代子とびたさよこ

「ほんっと…なぁにやってんですか!!!

あれだけ何度も使用許可だけは絶対取るようにって言ったじゃないですかァ!!」



街田 茂まちだしげる

「あ~~~やったかどうか忘れちまったんだ

ガハハハハ!まぁ細けぇ事はいいじゃねぇか!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「よくないんです!!!!

もしあそこで怪我したとしてちゃんと申請してなかったら労災も降りませんし

また始末書とか出てその度にやるの私じゃないですか!」



街田 茂まちだしげる

「そんなもんは知らん!

怪我なんか自己責任だ!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「隊長はよくても私たちはそうはいかないんです!!」



街田 茂まちだしげる

「ガハハハハハハハ!!

悪ぃな、いつも一緒に怒られてよ」



飛田 佐代子とびたさよこ

「な、なんですか急に!?

まぁ…仕方ないです

ここに配属された以上諦めてます」



街田 茂まちだしげる

「今度酒でも奢ってやるからよ

じゃあ行くぞ!ガハハハ!!」



N→???

街田まちだは背中をバチバチ叩いた後、事務所へとすたすたと歩いていってしまった。



飛田 佐代子とびたさよこ

「ちょ!ちょっと!待ってください!!

あの!私飲めないんですけど~~!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

それから数日後

街田まちだは家のソファーでいびきをかきながらうたた寝をしていた。

机には酒類やつまみが食い散らかされている。

チャイムの音が鳴ったが、街田まちだは起きる様子がない。

何度か強いノックがすると声が聞こえてくる。



飛田 佐代子とびたさよこ

街田まちださ~ん!起きてますか~」



街田 茂まちだしげる

「がぁぁああ~~~~ぐぅぅぅううぅぅ~~~~~!!!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「いびきしてるから中にはいるけども…」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

飛田とびたは合鍵を鞄から取り出し、扉に差し込む。

だが鍵穴は差し込めはしたがきちんと回らなかった。

そう、鍵が元々空いていたのである。



飛田 佐代子とびたさよこ

「え、鍵空いたまま!?

まったく……防犯意識はないの??

もう……入りますよ~」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

飛田とびたは扉を開ける。

案の上ソファーの上で晩酌をしていた跡が残っていた。



飛田 佐代子とびたさよこ

「こんなに散らかして…

ってかこの部屋臭っ!!?

タバコ部屋の中でも構わず吸ってるのね…はぁ~」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

飛田とびたは文句を口から漏らしながらゴミを少しずつゴミ袋に詰めていった。

きちんと燃える、燃えない、ビン、ペットボトルと分けていく。

大体のゴミをまとめ終えると掃除機を探す。



飛田 佐代子とびたさよこ

「あれ?掃除機はどこ?」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

部屋の中を探していると棚の隅に掃除機が埃を被ったまま放置されていた。



飛田 佐代子とびたさよこ

「掃除用具がホコリ被ってるなんて何のためにあるのこれ…」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

飛田とびたが掃除機を付けて掃除を始めるとしばらくして街田まちだが音で起きたようだ。



街田 茂まちだしげる

「ぁーーーー飲んだ飲んだ…

飛田とびたか……何しに来たんだ?」



飛田 佐代子とびたさよこ

「何しにじゃないですよ

今日は飲みに連れていってくれるって言ったじゃないですか」



街田 茂まちだしげる

「あぁ、そういや…今日だったか」



飛田 佐代子とびたさよこ

「それより鍵開けっ放しでしたよ!もう…泥棒に入られたらどうするんですか!」



街田 茂まちだしげる

「取るもんなんかねぇだろ」



飛田 佐代子とびたさよこ

「そういう問題じゃありません!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

飛田とびたが掃除機を立てながら机の上の灰皿やタバコの箱を見る。

複数の箱が置いてあり、空になったものだけでも相当な数があった。



飛田 佐代子とびたさよこ

「こんなに吸って…早死にしますよ」



街田 茂まちだしげる

「だろうな!ガハハハ!!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「笑いごとじゃないです」



街田 茂まちだしげる

「そういやもう昼か

腹減っちまったなぁ

出前でも頼むか?」



飛田 佐代子とびたさよこ

「私はもう食べてきました

出前やカップ麺ばかりじゃ健康に悪いですよ」



街田 茂まちだしげる

「って言っても料理なんかできねぇよ」



飛田 佐代子とびたさよこ

「はぁ~~わかりました

私が今から作りますよ」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

飛田とびたがあらかた掃除が終わったのか

掃除機を元あった位置に戻すと手を洗い、冷蔵庫をあける。

その姿を見ながら街田まちだは目の前の酒の残りを飲み始めた。



飛田 佐代子とびたさよこ

「まともなものがない…これってむしろ何が作れるのよ」



街田 茂まちだしげる

「お前もあれだ!

こんなおっさんの相手なんかしてねぇで男でも作れよな」



飛田 佐代子とびたさよこ

「ん!!余計なお世話です!!

街田まちださんこそ結婚とかしないんですか?」



街田 茂まちだしげる

「俺ぁ…そうだな

面倒なんだよ」



飛田 佐代子とびたさよこ

「面倒って……街田まちださんらしいですけど」



街田 茂まちだしげる

「こんな仕事やってたらよ

いつ死ぬかわかんねぇだろ

そうなったら残されるやつに悪ぃからな

俺はそういうのはしねぇんだ」



飛田 佐代子とびたさよこ

「いつ死ぬ…か……そうですよね」



街田 茂まちだしげる

「俺がいつくたばるかもわからねぇだろ

それまでにぁ俺も後に託してぇんだ

だから義弘よしひろをこうやって鍛えてんだよ」



飛田 佐代子とびたさよこ

「やりすぎたら先に榊原さかきばら君から死んじゃいますよ」



街田 茂まちだしげる

「まぁそん時はそん時だな!ガハハハハ!!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「笑いごとじゃありません!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

少しして飛田とびたがラーメンを作り終わり街田まちだの前に出す。



飛田 佐代子とびたさよこ

「ほんとはもっとしっかりしたのを作りたかったんですけど

全然食材がなかったのでこれしか出来ませんでしたよ」



街田 茂まちだしげる

「ありがとよ!遠慮なくいただくぜ!

……ズズッ

おぉ美味いじゃねぇか!塩ラーメンってあんまり食わねぇが美味いもんだな!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「ホントですか?それならよかったです」



街田 茂まちだしげる

「お前はいい女房になりそうだよな」



飛田 佐代子とびたさよこ

「え…」



街田 茂まちだしげる

「だから早く男作れよな!

防衛隊でいいのがいるか分からねぇが良い奴探せ!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「余計な!お世話です!!」



N→???

そしてこの日が訪れた。

4月1日、街田まちだ部隊一同はオフィスに集まっていた。

非常招集を受け、指示を聞いた西原にしはらが他の隊員たちに任務説明を行う。



西原 麻衣にしはらまい

「まず作戦を話す前に

昨日、私たちの部隊宛てにこれが届いたの」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これは…手紙ですか?」



西原 麻衣にしはらまい

「えぇ、これはそれを写真で取ったものをプリントした資料なの」



N→???

数枚の資料には写真が貼り付けられており

そこには招待状のような紙が写っていた。

紙には綺麗な装飾がされており、中央に文字が書いてある。



街田 茂まちだしげる

「防衛隊…街田まちだ部隊の皆さまへ……

今宵お送りするショーへとご招待いたします

時刻は21時、東道ひがしみち小学校へお越しくださいませ

…なんだこりゃ」



西原 麻衣にしはらまい

「これは【仮面の傀儡くぐつ師】からの招待状

有名な都市伝説、4月1日の悲劇の元になった犯人です」



街田 茂まちだしげる

「これがそうなのか…舐めやがって」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あの仮面の傀儡師と呼ばれる殺人鬼

一体、何が目的なんだ?

どうして俺たちを…?」



飛田 佐代子とびたさよこ

「隊長…どうするんですか?」



街田 茂まちだしげる

「任務だから断るわけにもいかねぇだろ

ってのもあるが…ちょうどいい

奴は俺がぶっ飛ばしてやりたかったんだ!」



西原 麻衣にしはらまい

「目標は生きたまま捕縛せよとの事よ

そこは忘れないでよ」



街田 茂まちだしげる

「おうよ!

俺ら防衛隊を怒らせるとどうなるか見せてやるか

ガハハハ!!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「嫌な予感がします…大丈夫でしょうか?」



街田 茂まちだしげる

「ガハハハ!安心しろ!

お前らは俺が守ってやるよ」



飛田 佐代子とびたさよこ

「…わかりました

隊長に任せます」



西原 麻衣にしはらまい

「ちょっと待って……もう出動の準備ができたらしいわ

詳しい話は移動中に言うからまずは移動しましょう」



榊原さかきばら飛田とびた宇喜多うきた

「了解!」



N→???

一同が武器を揃えて装甲車に乗ると、東道ひがしみち小学校へと向かう。



西原 麻衣にしはらまい

「指定された場所は2年前に廃校になった東道ひがしみち小学校

校舎内には備品がほとんど残っているそうだけど

持ち主が居るらしいからなるべく壊さないようにだって」



街田 茂まちだしげる

「任せとけ!!」



西原 麻衣にしはらまい

「任せるって言ったっていつも壊すのってしげちゃんだから言ってるんだけど」



街田 茂まちだしげる

「あ、そうだったか?ガハハ!!

まぁ細けぇ事はいいんだ!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「ほんと…少しは反省してください」



宇喜多 牧人うきたまきと

「なぁ、その相手ってのは単独犯なんだよな?」



西原 麻衣にしはらまい

「単独以外での活動報告はない

過去の事例を見ても間違いないと思うわよ

それがどうしたの?」



宇喜多 牧人うきたまきと

「たかが単独犯を捕らえるのにこんな武装がいるのか?

俺ら以外にも2小隊いるんだろ?」



N→???

宇喜多うきたは全員が装備している長物を見て答える。

過去の任務で凶悪犯を抑えるような任務の場合

基本は拳銃のみの武装を指定されることが多かった。

だが今回はその指定がなく、弾薬などがまるで魔怪まかいに挑む際と同じ量が支給されたのだ。



西原 麻衣にしはらまい

「確かに……上もそれほど危険視してるってこと?」



街田 茂まちだしげる

「どんな奴だろうが俺がぶっ飛ばしてやる!

奴を見かけたら俺に知らせろ!」



西原 麻衣にしはらまい

「そうですね

私たちは発見次第隊長を呼ぶのを優先しましょう」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「仮面の傀儡師……どんな奴なんだろうか」



N→???

都市から少し離れた場所に小さな集落がいくつか並んでいる田舎に移動する。


東道ひがしみち小学校は1学年2~3クラスほどある学校で

周辺地域からも子供が集まるような学校だったが

付近で魔怪まかい出現が複数起こり、周辺に被害が相次いだ。

その影響を受けて市民が次々と引っ越して行ったため学校が経営できなくなり

廃校となってしまったようだ。


防衛隊一同が廃校に着くと、入り口の前に車を停める。

草木が生えており、付近は街灯もないため薄暗い。

少しして雲が晴れると月明かりが校庭を照らし

まるで心霊スポットのような不気味な雰囲気を醸し出していた。



街田 茂まちだしげる

「小学校か…こういうところに入るのはいつぶりだったか

ワクワクするな!ガハハハハ!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「遠足じゃないんですよ!

もっと緊張してください」



街田 茂まちだしげる

「さて、俺らはどっから行くか」



N→???

校舎は二つ並んでおり、2つとも3階建てをしており

他にもプールや体育館が隣接されている。

校庭には遊具が複数置いてあり、昔は活気があったのであろうことが読み取れた。



街田 茂まちだしげる

「B小隊は体育館で、C小隊は校庭周りをまわってくれ

俺らはまずは校舎に入ってしらみ潰しに探していくぞ!」



N→???

他2小隊が了解と答えると、装備を整え終わり校舎に入るために入り口に並んだ。



街田 茂まちだしげる

「いくぞ…お前ら!!」



宇喜多 牧人うきたまきと

「いつでも」



西原 麻衣にしはらまい

「えぇ準備万端よ」



飛田 佐代子とびたさよこ

「私もです」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「はい!」



街田 茂まちだしげる

「突入だ!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

街田まちだが校庭を真っすぐ進む。

それに続くように少し間隔をあけて4人も続いていく。

走りながら校舎の窓越しに中を確認しようとするが

中は薄暗く人影や中は見えなかった。

だが近づくにつれ校舎の不自然さに気がつく。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これは…飾り付け?」



西原 麻衣にしはらまい

「まるで文化祭みたい…普通こんなのがずっと残ってるわけないわ」



宇喜多 牧人うきたまきと

「目標が付けたものという事か…?」



飛田 佐代子とびたさよこ

「でも何のために?」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

一同が校庭の中央にたどり着いた瞬間

学校のチャイムの音が鳴る。



飛田 佐代子とびたさよこ

「わっ!!?び、びっくりした…なんだ…チャイムか」



西原 麻衣にしはらまい

「待って…なんで電気が通ってるの?」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

その言葉を言い終わるのを聞いていたかのようなタイミングで放送のノイズ音が響く。

少ししてノイズが止まり音楽が流れ始める。

それはサーカスやショーで聞くようなファンファーレのクラシック音楽であり

2年放置された施設のためか音が割れており、昔のレコードのような音質になっていた。

音楽が一通り流れて小さくなると、放送から声が流れてくる。



???

「防衛隊の皆さま…

傀儡師の送る悲劇のショーへようこそおいでくださいました!

悲劇的かつ凄惨!

命を代償に奏でる演目の数々を是非お愉しみください!」



街田 茂まちだしげる

「なんだこいつ…?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ショー…何をするつもりなんだ?」



???

「さぁそれじゃあ順番に校舎内へお入りください

順次演目をご紹介していくので今しばらくお待ちくださいませ~」



街田 茂まちだしげる

「こんな放送まで…ふざけやがって……」



西原 麻衣にしはらまい

「放送しているということは、放送室にいるという事でしょうか?」



街田 茂まちだしげる

「そうかもしれねぇな

まずは当初の指示通りに動いて

俺らは放送室を探すか」



西原 麻衣にしはらまい

「それでは各隊散開!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

B、C小隊はあらかじめ決めた場所へと向かっていった。

何かあった際はトランシーバーで連絡を取り合う予定である。



街田 茂まちだしげる

「俺らは先に進むぞ」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

正面にある昇降口から5人は警戒をしながら中に入る。

校舎内は狭いので背に長物の銃を背負い、拳銃を持ちながら進んでいく。



飛田 佐代子とびたさよこ

「見てください!…これ」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

玄関に入るとそこに校舎の地図が書いてある事に気が付く。

飛田とびたが近づき確認すると放送室の位置が記載されていた。



飛田 佐代子とびたさよこ

「放送室は3階の中央廊下にあります

階段はこの左右どちらからでも行けますね

どうしますか?」



街田 茂まちだしげる

「俺と榊原さかきばらは左から

西原にしはら達で右から3階に登れ

入れ違いにならねぇようにしねぇとだからな」



宇喜多うきた飛田とびた西原にしはら

「了解」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

街田まちだ榊原さかきばらは階段をゆっくりあがりながら小声で会話をする。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「もし目標と遭遇したらどうするんですか?」



街田 茂まちだしげる

「相手が武器を持っているならまずは無力化からだ

お前も気を付けろよ

問答無用で発砲許可が出てる

自分の身を守ることをまずは優先しろ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「はい、わかりました!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

階段を登って三階にたどり着く。

廊下に出ると反対側から飛田とびたらが発見でき、入れ違いにはなっていないことがわかった。



西原 麻衣にしはらまい

「こちらも遭遇せず不審な物音もなかったわ

ってことは…」



街田 茂まちだしげる

「奴は放送室かもしれねぇな

まだ放送が続いてやがるからな」



飛田 佐代子とびたさよこ

「この中に…」



街田 茂まちだしげる

「お前らは一旦外にいろ

もし逃走を図ろうとしたら足を狙って発砲して構わない

わかったか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「わかりました」



街田 茂まちだしげる

「いくぞ…!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

放送室は頑丈そうな扉をしており、開けるのに少し力がいるようだ。

街田まちだが扉に手を伸ばし、開く。

そこは放送に必要な器具が揃っており、他にも棚や机があり

一番奥には放送モニターであろう場所と目の前に椅子が置いてある。

そしてそこには誰かが座っていた。



???

「ようこそ

それではまずは一つ目の演目にしましょう!」



街田 茂まちだしげる

「何が演目だ

ふざけるな…遊びは終わりだ!

お前を確保する!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

座っている人はこちらに振り向かず喋り続けている。



???

「まず第一演目は―――」



街田 茂まちだしげる

「いい加減にしろって言ってんのが聞こえねぇか!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

肩を掴みこちらを振り向かせる。



街田 茂まちだしげる

「な!!?

なんだこりゃ…人形!?」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

座っていたのは人型をした人形であり、その顔にはへのへのもへじが書いてある。



街田 茂まちだしげる

「おちょくりやがって…

お前ら!ここにはいな―――」



???

「それではゲームスタート」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

放送室の扉が勢いよく閉まる。

街田まちだは急いで扉を開けようとするが堅く扉が閉ざされてしまっていた。



街田 茂まちだしげる

「な、なに!!?鍵か…鍵穴がない…どういうことだ!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

学校中にはいまだに放送のBGMが流れており

外の声が聞こえず、4人がどうなっているかわからなかった。



街田 茂まちだしげる

「ちくしょう!!どうなってんだ…」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

少しして街田まちだの鼻には焦げくさい臭いがしていることに気がつく。



街田 茂まちだしげる

「なんだこの臭い…」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

後ろを振り返ろうとした瞬間

部屋の中が赤く光った。

後ろで火の手が複数の箇所で上がっており

すぐに煙が部屋中を覆ってしまう。



街田 茂まちだしげる

「ゲホっ!ごほっ!!

くっそ!!吸い過ぎると不味ぃ!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

この部屋に窓はなく、付近も頑丈な壁に囲われているため入り口の扉以外に出られそうな箇所はなかった。

通気口も狭く、流石に街田まちだが通れるサイズではない。



街田 茂まちだしげる

「クソっ!!!煙は慣れてるつもりだが流石にこんな量は吸えねぇよ!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

街田まちだは扉に体当たりを繰り出す。

でかい衝突音がするが扉はそう簡単に開かなった。



街田 茂まちだしげる

「ぐっ!!くそっ!!

まずい…このままだと…!!

うぉぉっ!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

何度もタックルを繰り返しているうちに視界が徐々に曇っていく。

だが10回を超えたタイミングで扉の金具が揺れる音がしていた。



街田 茂まちだしげる

「いける!!うおおおお!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

再び勢いよくタックルすると扉が開き、そのまま街田まちだは勢いのまま廊下に飛び出た。



???

「脱出おめでとう」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

その言葉がきこえると放送室内にスプリンクラーが流れ

大量の水が部屋と外にいた街田まちだにかかり

徐々に火が消されていった。



街田 茂まちだしげる

「なっ……スプリンクラーがあったのか

ちっ…遊んでやがるな……ふざけやがって

絶対ぶっ飛ばしてやる…」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

周りを見るとそこに4人の姿がなかった。



街田 茂まちだしげる

「あいつら…どこいった?」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

街田まちだは無線を付けようとするが、無線からノイズがする。

どうやら先ほどの水が内部に入ってしまったようで壊れていた。



街田 茂まちだしげる

「おい…聞こえるか!!?

あ…?なんだこのノイズ……

くそっ…こんな安物なんて使うからだ……

あいつら…無事でいろよ」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

時は少し戻り

目の前で放送室の扉が閉まり、街田まちだが閉じ込められた。

飛田とびた宇喜多うきたが急いで扉を開けようとするがびくともしない。

後ろで付近を確認していた榊原さかきばらはどこかから足音がしたことに気がつく。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「…足音?」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

榊原さかきばらがゆっくり歩いていったのに気がついた西原にしはらは後ろから追いかけてくる。



西原 麻衣にしはらまい

榊原さかきばらくん!どこに行くの!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

西原にしはらさん今こっちで足音が…聞こえませんでしたか?」



西原 麻衣にしはらまい

「私は聞こえなかったけど

どこからかわかる?」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

階段を降りていくと放送の音に混ざって

水が流れる音がすることに気がつく。

どうやらその音の先は階段を降りた先にある女子トイレからのようだ。



西原 麻衣にしはらまい

「水音……多分あそこのトイレよね

行ってみましょう」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「はい!」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

女子トイレの扉を開けると

中の水道から水が勢いよく流れ出ており床が浸水していた。

二人はトイレの外から中を見ていたが、個室の中から音がする。



西原 麻衣にしはらまい

「誰かいるの!!?

……返事はない?

でも確実に聞こえるわ

榊原さかきばらくん、ちょっと汚いけど入りましょう」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

二人は銃を構えながら入ると、後ろで扉が勝手に閉まってしまう。



西原 麻衣にしはらまい

「なに!!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「な、なぜ!?俺は扉に触れてないですよ!!」



西原 麻衣にしはらまい

「まさか…しげちゃんみたいに閉じ込められた…?」



???

「ようこそ

それでは第三演目を開始しましょう」



西原 麻衣にしはらまい

「第三…?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「答えろ!何がしたいんだ!!」



???

「どこかの扉を開けるとそこに鍵があります

見つけることができるかな?

それじゃゲームスタート!」



西原 麻衣にしはらまい

「どういうこと…ゲームって

まるで遊んでるみたい」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「まずはここから出ないと…鍵が本当にあるかわかりませんが

とりあえず探してみましょう」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

扉は4つ並んでおり、1つずつ開けていく。

一つ目の扉を開けると中に服を着た人形が置いてある。



西原 麻衣にしはらまい

「もしかして、この人形が持ってるってこと?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「隣も見てみます!」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

2つ目の扉にも人形が置いてある。

3つ目、4つ目と開けるが同じく人形が置いてあった。

そしてその人形は街田まちだを除いた4人に似せたような見た目をしている。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「こっちにもあります!

なんだこの悪趣味な人形は…」



西原 麻衣にしはらまい

「鍵はある?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「っ……ありません!隣を探してみます!」



西原 麻衣にしはらまい

「こっちも…私は奥に行くわ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「わかりました!」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

二つ目の人形を探すも、何も持ってはいなかった。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「くそっ!扉の中になんてないじゃないか!」



西原 麻衣にしはらまい

「どこにあるっていうの!?」



???

「残念、時間切れ~

正解は~~~」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

その瞬間、入り口の扉が開く。

そこには椅子に座る人形が置いてあり扉の鍵を手に持ってこちらに見せていた。



???

「正解は入り口の扉でした~~~

実はスタートからすぐに扉の鍵は閉まってなかったんですよ~

確認を怠ったのがミスの要因だねぇ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ふざけるな!!」



西原 麻衣にしはらまい

「馬鹿にして…」



???

「それじゃ、不正解者には罰を」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「罰…!?」



西原 麻衣にしはらまい

「なにするつも―――」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

その瞬間、何かが水の中に落ちた。

コードが途中で切れた電線が天井の穴から落ちて水の中に入る。

水を伝った電気ショックが二人を襲う。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あがががぁああがあああがあぁぁぁぁ!!」



西原 麻衣にしはらまい

「がががああああがががっ!!!」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

感電した二人は身体の力を失いその場に倒れた。



???

「さぁそれでは次のステージへご移動願います」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

その言葉を聞いた瞬間、二人の意識は途切れた。



N→西原 麻衣にしはらまい

そしてその頃、宇喜多うきた飛田とびたは扉を開けようとしていた。

開かないため二人に意見を聞こうと背後を振り返る。

だが、そこに榊原さかきばら西原にしはらの姿はなかった。



飛田 佐代子とびたさよこ

「二人はどこに!?」



宇喜多 牧人うきたまきと

「本当だ…気づかなかった」



飛田 佐代子とびたさよこ

「こんな時にどこに…」



N→西原 麻衣にしはらまい

廊下の奥を注視すると、何者かが一番最奥の教室に入るのが見えた。



飛田 佐代子とびたさよこ

「今あそこに人が!」



宇喜多 牧人うきたまきと

西原にしはら達か?」



飛田 佐代子とびたさよこ

「遠くて見えなかったんですが確実に人がいました」



宇喜多 牧人うきたまきと

「もしや、目標か?」



飛田 佐代子とびたさよこ

「わかりません…」



宇喜多 牧人うきたまきと

「とりあえず見に行くぞ

ここで俺らが出来ることはない

他の部屋を探してみる方がいいはずだ

何か開けれる道具があるかもしれない」



飛田 佐代子とびたさよこ

「そ、そう…です……ね

わかりました…」



N→西原 麻衣にしはらまい

宇喜多うきたがすぐに廊下を進んでいく。

飛田とびたは何度か放送室を振り返り街田まちだの安否を気にしながら、廊下の奥へと向かった。


二人が教室の前に立つ。

扉には窓がなく、中の様子は開かないと伺えない。



宇喜多 牧人うきたまきと

「入るぞ」



飛田 佐代子とびたさよこ

「了解…」



N→西原 麻衣にしはらまい

教室の中に入るとその中心には椅子が5つ置いてあり

まるで椅子取りゲームをしているような配置で並べられていた。

その上には人形が置いてあり、その人形たちはまるで自分たち5人を模したような姿になっていた。



飛田 佐代子とびたさよこ

「なにこれ…なんで私たちの姿なんて」



宇喜多 牧人うきたまきと

「趣味が悪いな…」



N→西原 麻衣にしはらまい

その時、扉が勢いよく閉まる。



飛田 佐代子とびたさよこ

「え!?なんで急に閉まったの!?」



宇喜多 牧人うきたまきと

「なっ…まさか閉じ込められた!?」



N→西原 麻衣にしはらまい

そこでマネキンの中央にあるラジオから音が流れ始めた。



???

「ようこそ

第四演目を開始します

今回のゲームはこちら!」



宇喜多 牧人うきたまきと

「ゲームだと…?」



???

「この教室のマネキン

どれか一つに鍵が入っています!

ハサミがそこにあるのでこれで解体して探してみてね」



飛田 佐代子とびたさよこ

「ハサミ…ほんとだ確かに置いてある」



N→西原 麻衣にしはらまい

ラジオの近くにはハサミが二つ置いてある。



飛田 佐代子とびたさよこ

「ちょうど2つなんて…まるでここに私たちが入るのは計算されてるみたい…」



宇喜多 牧人うきたまきと

「仕方ない…やるぞ」



飛田 佐代子とびたさよこ

「あ…はい!」



N→西原 麻衣にしはらまい

二人はマネキンを乱雑に解体していく。

だがどこにも鍵はない。



宇喜多 牧人うきたまきと

「どこにもないじゃないか!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「人形はこの5つしかないはずですよね…どこにあるの」



???

「残念~タイムオーバー

正解は~~~教卓の中のマネキンでした~~~」



宇喜多 牧人うきたまきと

「はぁっ!!?」



N→西原 麻衣にしはらまい

二人は急いで教卓を覗き込む。

その裏の隙間には人形が入っており

鍵をつまんで見せつけるような態勢で畳まれていた。



宇喜多 牧人うきたまきと

「こんなのわかるわけないだろ!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「ひどい!くそゲーよ、こんなの!」



???

「中心にあるものに目が行き過ぎたのが失敗の要因ですね

というわけで失敗した者には罰を」



N→西原 麻衣にしはらまい

エアコンが付く音がする。

そこから白い煙が流れてきて部屋中に充満していった。



飛田 佐代子とびたさよこ

「げほっ!ゲホッツ!!

うっ!!目がッ!痛いぃ!!」



宇喜多 牧人うきたまきと

「これは!!まさかッ!催涙ガス!!?」



N→西原 麻衣にしはらまい

二人が咳き込むが次第に呼吸ができなくなり、二人は倒れ込んだ。



???

「それでは次の演目にご移動願います」



N→西原 麻衣にしはらまい

その言葉を最後に二人の意識は暗転した。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


N→飛田 佐代子とびたさよこ

それから少しして

放送室を脱出した街田まちだは廊下内を歩いていた。

3階を探し終わり、1つずつ2階の部屋を探し始める。



街田 茂まちだしげる

義弘よしひろ飛田とびた

みんな…どこいったんだ?」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

そこに校舎内に放送が入る。



???

「これより体育館にて

本日のメインイベント

天秤てんびん』を開始いたします

主要演者である街田 茂まちだしげる

直ちに体育館の壇上までお越しくださいませ」



街田 茂まちだしげる

「俺を…呼んでんのか?

なんのつもりだ…」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

校舎を出て体育館に近づく。

どうやら体育館内にも電気が通っているようで

外から漏れ出る色とりどりの光が暗い中でも目立つように光っていた。



街田 茂まちだしげる

「何をするつもりだ…?」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

近づくと中から流れる音楽により中の様子が伺えない。

正面入り口が開放されており、そこにはレッドカーペットが敷かれていた。



街田 茂まちだしげる

「ここから入れとでも言いたいのか…」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

罠の可能性が高い。

だが街田まちだは細かいことを考えるのがとても苦手であった。



街田 茂まちだしげる

「くそっ!考えていてもわからん!

行くしかねぇ!」



N→西原 麻衣にしはらまい

体育館の正面入り口から銃を構えながら入る。

中央にはカーペットが敷かれており、壇上の講演台に向かって続いていた。



街田 茂まちだしげる

「何があるって言うんだ…?」



N→西原 麻衣にしはらまい

街田まちだが講演台まで歩いていくと、そこには赤と青のボタンが設置されていた。



街田 茂まちだしげる

「なんだこりゃ…ボタン?」



???

「レディース&ジェントルメーン!」



N→西原 麻衣にしはらまい

壇上の向かい、二階席にスポットライトが当たる。

その中央に仮面を被りタキシードに身を包んだ人が姿を現わす。

仮面の傀儡師は拍手をしながらこちらに話しかけてくる。



???

「ここまでお越しいただき誠に光栄です

防衛隊の街田 茂まちだしげる

申し遅れました

わたくし仮面の傀儡師と呼ばれる

しがないマリオネッターでございます

以後お見知りおきを」



街田 茂まちだしげる

「貴様っつ!なんのつもりだ!

なぜ俺をここに呼んだ!!?」



N→西原 麻衣にしはらまい

街田まちだは仮面の傀儡師に向けて銃を構える。



???

「おっと…ストーップ!

まずはお見せしたいものがあるんです」



N→西原 麻衣にしはらまい

仮面の傀儡師が指を鳴らすと、後ろのカーテンが開く。

街田まちだが振り返るとゆっくりと上からスクリーンが降りてくる。

下までゆっくりと降りてくると電源が付いた。



???

「こちらの映像をご覧くださいませ」



N→西原 麻衣にしはらまい

映像がゆっくりと切り替わり

そこに監視カメラのような視点のプールが映し出される。

薄暗いモニターのためよく見えないが、この学校のプールであることはわかった。



街田 茂まちだしげる

「これがなんだ?」



???

「それではライトアップ!」



N→西原 麻衣にしはらまい

仮面の傀儡師が指を鳴らすとライトが点灯する。

するとプールの様子が鮮明に映し出された。

そこには先ほど離れていったB,C小隊の隊員たちがプールの水面ギリギリに逆さで吊るされているのが映っている。



街田 茂まちだしげる

「な…なんだこれは…!!他の小隊が…!?

お前っ!!これはどういうことだ!?」



???

「これは貴方の連れてきたお仲間たちですね

そしてこちらは!」



N→西原 麻衣にしはらまい

再度、仮面の傀儡師が指を鳴らす。

すると二階席よりも高い天井すれすれの位置がライトアップされる。

そしてそこには逆さ十字に縛り付けられた榊原さかきばらら4人の姿があった。

4人の首にはロープがきつく巻きつけられており、その先が傀儡子の足元に繋がっている。

仮面の傀儡師が体育館に複数ある監視カメラに向かって一礼をしており、未だ街田まちだには目もくれていない。



街田 茂まちだしげる

「お前たち…!!!!!

こいつらを今すぐ解放しろ!さもなくば―――!!」



???

「ただいまよりメインイベント

天秤てんびんを開始いたします

それではルール説明を行います

この天秤は貴方の価値観によって測りを行い

どちらが大事なのかを判別できるシステムとなっております

これにて街田まちださん

貴方の大事なものを確かめることができるのです!」



街田 茂まちだしげる

「大事なもの…だと!?

ふざけるな!すぐそこから降りてこい!」



N→西原 麻衣にしはらまい

街田まちだが壇上から降りようとする。



???

「ストップ!ルール説明の途中です

ルールを破った場合、そちらの大事なものすべてが一瞬でなくなる事をお忘れないように」



N→西原 麻衣にしはらまい

傀儡師は街田まちだに見せつけるように短刀の刃先をロープにゆっくりと置く。



街田 茂まちだしげる

「テメェ……!人質ってわけか?」



???

「大事な演目道具にはお手を触れないようお願い致します」



街田 茂まちだしげる

「そいつらは道具じゃねぇ!俺の部下だぞ!!」



???

「他にご不明点ありましたらその場でおっしゃってくださいね」



街田 茂まちだしげる

「そいつらに手を出したらただじゃ済まさねぇぞ!!」



???

「それではルール説明も終わりましたので早速始めていきましょう!」



街田 茂まちだしげる

「テメェ!!人の話を―――」



N→西原 麻衣にしはらまい

仮面の傀儡師は街田まちだの話を聞かず杖のようなものを持ちながらタップダンスをし始める。



街田 茂まちだしげる

「何をやってるんだこいつは…」



???

「それでは一度目の選別

こちらの隊員

宇喜多 牧人うきたまきとさん

それとB小隊の半分の3人

顔なじみの部下と大勢の同僚

どちらの命が大事でしょうか!?」



街田 茂まちだしげる

「どちら…だと!?」



???

宇喜多うきたさんを選ぶ場合は赤のボタン

小隊3名を選ぶ場合は青のボタン

さぁ!Lets Choice!!」



街田 茂まちだしげる

「ふざけるな!!こんなの…選べるわけねぇだろ!!」



???

「ほうほう?選べないと?

という事はこの二つは同価値であるということですね!

二兎を追う者は一兎をも得ず

それではどちらも捨てたと見なし

どちらも捨てることにしましょう!!」



街田 茂まちだしげる

「何をする気だ!?

やめろッ!!」



N→西原 麻衣にしはらまい

モニターが突如切り替わり3人がアップで映し出される。

仮面の傀儡師が杖にあるボタンを押すと3人が頭から水中に沈められた。



街田 茂まちだしげる

「やめろ!!!貴様ッ!!やめろおおおお!!」



???

「取捨選択のできない半端な愚か者には喪失を」



N→西原 麻衣にしはらまい

モニターに映る3人はしばらくの間暴れていたが

数分もすると動かなくなってしまった。



???

「それではお次はこちらの番ですね!」



N→西原 麻衣にしはらまい

仮面の傀儡師が目の前のロープにサーベルの刃先を置く。

そして力を込めて一気に切り裂く。

その瞬間、宇喜多うきたの十字架の拘束が途切れ、天井から落下する。

宇喜多うきたの首には頑丈な紐が巻かれており

地面に落ちるより前に弾性衝突し空中で跳ね返る。

その衝撃が首に巻き付いたロープに圧力をかけ、強く締めてあげていた。



宇喜多 牧人うきたまきと

「ぐっ…があがががああぁぁあ!!」



街田 茂まちだしげる

宇喜多うきたぁぁぁぁぁぁ!!」



宇喜多 牧人うきたまきと

「うぅぅぅううぅ……‥‥ぐぐっ……がっぐ……

ぁが…‥‥…………………」



N→西原 麻衣にしはらまい

宇喜多うきたはしばらく動いて抵抗していたが空中に吊るされた状態で成すすべはなく口から泡を吐き動かなくなった。



街田 茂まちだしげる

「くっそおおおおおお!!貴様ッ!!!

なぜだ!!なぜ宇喜多うきたを!!!」



???

「それでは第二選択となります!

貴方の部隊、飛田 佐代子とびたさよこさんとC小隊3名

さぁ!どちらを選びますか!!?

飛田 佐代子とびたさよこさんを選ぶ場合は赤!

小隊3名を選ぶ場合は青!

さぁ!!Lets Choice!!」



街田 茂まちだしげる

「ふざけるな……ふざけるなあぁぁぁ!!」



???

「さぁ!それではカウントを致します

5・4・3・2・1……!!」



街田 茂まちだしげる

「くっそおおおおお!!!」



N→西原 麻衣にしはらまい

街田まちだはボタンを叩くように強く押した。



???

「0!!

選んだのは……」



N→西原 麻衣にしはらまい

街田まちだの後ろのモニターが赤く光る。



???

「選んだのは飛田 佐代子とびたさよこさん!

それじゃあ価値のない小隊3名は捨てましょう~」



街田 茂まちだしげる

「く…そ…こんなの……!!」



N→西原 麻衣にしはらまい

モニターが切り替わり、C小隊の3人が映し出された。

そして再び杖のボタンを押すと3人が水面に落とされるが

すぐに残りの3人も時間差で水の中に落とされる。



街田 茂まちだしげる

「なにっ!?なぜ全員を!!?

貴様っ!最初から全員殺すつもりで―――」



???

「おや!!?機械の故障ですね

まさかこうなるとは…申し訳ございません!

こちらの不手際で6名となってしまいました」



街田 茂まちだしげる

「今すぐやめろ!!!」



???

「そうですね……かしこまりました」



N→西原 麻衣にしはらまい

ボタンを再度押す。

すると3人が水から上げられた。

だが間違えられた方の3人は水から出されることはなく

仮面の傀儡師は何度かボタンを押しているようが身体全体で困惑を表現していた。



街田 茂まちだしげる

「おい!!どういうことだ!早く戻せ!!」



???

「おや?反応しない…機械の故障?

えぇとこういう時は………仕方がありません

それではこちらの選択は一度中止といたしまして…

次の選択へと移りましょう!」



街田 茂まちだしげる

「あいつらをこのままにする気か!!?

……もう…やめてくれ……!!」



???

「では第三選択の時です

今回はこちらの2人!」



N→西原 麻衣にしはらまい

今度はライトが飛田とびたと後ろのモニターが映される。



???

「今回選ぶ二つはこちら

一つは飛田 佐代子とびたさよこさん

もう一つは先ほどの残り6名

さぁどちらを選びますか?」



街田 茂まちだしげる

飛田とびた……!」



N→西原 麻衣にしはらまい

飛田とびたの事を街田まちだは思い返す。

大雑把な自分を支えようとしてくれていた事

年齢差はあるが自分に恋心を向けてくれていた事

そしてそれに答えることができずしらを切ってきていた事

それらが街田まちだの脳内を駆け巡る。



街田 茂まちだしげる

「くそ……」



飛田 佐代子とびたさよこ

「ま……街田まちだ……さん……」



N→西原 麻衣にしはらまい

飛田とびたは息も絶え絶えに声を出す。

どうやら目を覚ましたようだが、首に巻き付くロープとダメージであまり意識がはっきりしていないようだ。



街田 茂まちだしげる

飛田とびたっ!!無事か!!?」



飛田 佐代子とびたさよこ

「わ……わたしより……6人を……選んでください……」



街田 茂まちだしげる

「何を…言ってるんだ…」



飛田 佐代子とびたさよこ

「1人の…命より……6人を……お願い……します…」



街田 茂まちだしげる

「ふ…ふざけるな…!!俺は…お前を見殺しにはできない!!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「お願いします……た……隊長…!」



街田 茂まちだしげる

「ぐっ………くそっ!!

くそっ!くそ!!くそくそくそ!!」



N→西原 麻衣にしはらまい

街田まちだはボタン2つを眺める。



街田 茂まちだしげる

「ちくしょおおおおおおおっつ!!!!」



N→西原 麻衣にしはらまい

街田まちだはボタンを押した。

赤色の光がモニターから映る。



街田 茂まちだしげる

「……飛田とびた……すまん……

俺は…お前を……死なせたくねぇんだ…」



飛田 佐代子とびたさよこ

「そ……んな……なん……で……」



街田 茂まちだしげる

「俺は……お前が……大事だった……

すまねぇ……俺の我儘だ…」



飛田 佐代子とびたさよこ

「そ……そんな……こと……」



???

「それでは今回選んだのは赤

というわけで小隊6名を選びました~」



街田 茂まちだしげる

「なっ!!ち、違う!俺は飛田とびたを!!」



???

「今回赤は小隊6名、青が飛田とびたさんとなっております」



街田 茂まちだしげる

「なにっ!!!待て!それは言われてないぞ!!

まさか…お前わざと言わなかっただろ!!!」



???

「最初に言ったとおり

ご不明点がありましたらその場で仰っていただかないと対応しかねます

というわけでそれじゃあ不要な方を捨てましょう~」



街田 茂まちだしげる

「やめろおおおお!!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「ま…街田まちださん……」



街田 茂まちだしげる

「止めろ!!頼む!!やめてくれぇぇぇっ!!」



飛田 佐代子とびたさよこ

「私は……たい…ちょうが……だい……すき…でし――

――――――っぐ!!!!」



N→西原 麻衣にしはらまい

飛田とびたが十字架から落とされ、そして首を吊るされた。

その衝撃は強くグキリと大きな音が体育館内に響く。

飛田とびたは衝撃に目を見開いたまま動かなくなった。



街田 茂まちだしげる

「貴様ぁぁぁぁぁあっつ!!!殺す!!

殺してやるッ!!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

街田まちだが銃を構える。

咄嗟に物陰に隠れた仮面の傀儡師は少しだけ顔を出して街田まちだの様子を伺っていた。



???

「台から離れるのはルール違反だよ!!

罰則は全員処刑だ!そうなりたくなかったらすぐに戻って!!」



街田 茂まちだしげる

「ぐっ……貴様ッ……!!」



???

「それじゃあ気を取り直して…最終選択!

赤は榊原 義弘さかきばらよしひろさん

青は西原 麻衣にしはらまいさん

大事な部下もしくは旧来の同僚

さぁ~どちらを選ぶでしょうか!

これは最後の演目になりますので特別に時間制限を伸ばさせていただきます!」



街田 茂まちだしげる

義弘よしひろ………西原にしはら………

どっちを…選べっていうんだ……!!ふざけんな…!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぐぅっ……街田まちださん!!」



街田 茂まちだしげる

義弘よしひろ!!」



西原 麻衣にしはらまい

「隊…ちょう……榊原さかきばら君を!!選んで!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ま…待って……ください!

俺よりも…西原にしはらさんを!!」



西原 麻衣にしはらまい

「なに…言ってんのよ!

若いのが生き残らないと……ダメでしょ!!」



街田 茂まちだしげる

「くそっ…こんなの……選べるわけないだろ!!!」



西原 麻衣にしはらまい

「……っ、隊長!!!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

榊原さかきばら西原にしはらが強く街田まちだに訴える。

互いに自分を犠牲にしようとする姿を見て街田まちだは焦る一方であった。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「くそ……クソっ……」



西原 麻衣にしはらまい

「たい…ちょう……!」



街田 茂まちだしげる

西原にしはら……」



西原 麻衣にしはらまい

「せめて……榊原さかきばら君だけは……救ってください!」



街田 茂まちだしげる

「何を…言ってるんだ……」



西原 麻衣にしはらまい

「……もうこれしか……ない!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

西原にしはらは片腕を動かし、袖口からグレネードを取り出した。

そのピンを指で引き抜き、床に落とす。

だがグレネード本体は固く手に握りしめていた。



街田 茂まちだしげる

「何をする気だ!!!やめろッ!!!」



西原 麻衣にしはらまい

「っ……ぅ……

死にたく……ない……」



街田 茂まちだしげる

「に……にし…西原にしはら……!!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

西原にしはらの吐露した言葉

それは心の底で怯える死への恐怖

そしてそれは西原にしはらの手を震わせる。

だが、彼女はそれでも手を離さなかった。



西原 麻衣にしはらまい

「どうか……二人だけでも……助かって………」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

西原にしはらの持っていたグレネードが爆発する。

西原にしはらはその爆発で吹き飛び、身体がそのまま床に落ちた。



街田 茂まちだしげる

「あぁぁ……ぁぁ……!!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

その爆発の影響で吊るされていた榊原さかきばらの十字架の台が壊れそのまま床に落下した。



街田 茂まちだしげる

「ぐっ!!義弘よしひろ!!!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

街田まちだは壇上から飛び降り急いで榊原さかきばらの元へ向かう。

だが落下には間に合わず榊原さかきばらは床に勢いよく叩きつけられた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ごはあっつ!!」



街田 茂まちだしげる

義弘よしひろォォォ!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

榊原さかきばらの近くによると、まだ榊原さかきばらには意識があった。

あの落下だったが、思った以上に出血はしていないようだった。

だが、後ろに倒れる西原にしはらは既に息絶えており、街田まちだは怒りを抑えるように強く拳を握り締める。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ふっ…ははは

街田まちださんの…訓練の……おかげで……頑丈だったみたいです…」



街田 茂まちだしげる

「だから……大事だって…言っただろ……」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

それを上から眺めていた仮面の傀儡師は拍手をする。



???

「素晴らしい!

なんとも感動的な師弟愛でしょうか!

同僚よりも!長く戦った仲間よりも!

自分を愛してくれた者よりも!

弟子を選ぶとは!なんともドラマチック!

ビューティフル!!ファンタスティック!!」



街田 茂まちだしげる

「黙れぇぇぇえ!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

街田まちだは銃を乱射する。

仮面の傀儡師はそれを物陰に隠れて回避した。



???

「おっと危ない…

それでは次の演目は外になります

街田まちだ様、次もお越しくださいね」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

仮面の傀儡師はそのまま走って外に出て行った。



街田 茂まちだしげる

「ここで待ってろ…あいつは……必ず殺す!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぐっ……待ってください!俺も行きます!」



街田 茂まちだしげる

「そんな怪我で何ができんだ…俺はまだ無傷だ……

俺がケリをつける!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

榊原さかきばらの制止を無視し街田まちだは外に出る。

校庭に出るとその中央に仮面の傀儡師が立っており、こちらを真っすぐに見つめていた。

街田まちだは近づき目の前で足を止める。

体格は街田まちだの一回りも二回りも小さくその立ち振る舞いからは強者のオーラは感じ取れない。

だが表情が見えず、慌てる様子もない



街田 茂まちだしげる

「貴様……何のために……こんなことを!」



???

「何のためですか…?」



街田 茂まちだしげる

「こんな事を…どうして貴様は!!

仲間を…人をどうしてそんな平然と殺せるんだ!!」



???

「………そうですねぇ」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

仮面の傀儡師は黙りこくる。

街田まちだはゆっくりと銃を向け、引き金を引こうとする。



???

「遊びたかったからですかね」



街田 茂まちだしげる

「……なに」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

その瞬間、銃の先端がスパリと切断された。



街田 茂まちだしげる

「なっ!!?なんだ!!?」



???

「それじゃ次の遊びはこれですね

ここで私と戦いましょう

いわゆるラスボス戦です」



街田 茂まちだしげる

「部下たちを……殺しておいて…

遊ぶ…だと……ふざけるな……ふざけるなァ!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

街田まちだは拳を握り締め、仮面の傀儡師へ殴りかかる。



???

傀儡舞踊会マリオネットダンスパーティー



N→宇喜多 牧人うきたまきと

仮面の傀儡師は指をまるで傀儡人形を操作するような手ぶりをする。



???

第三幕サードアクト!』



N→宇喜多 牧人うきたまきと

風を切る音がする。

指を動かしながら校庭の至る所に引っ掛けた細いワイヤーを巻き取り、街田まちだに巻き付くように絞った。



街田 茂まちだしげる

「なんだこれは!!?」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

街田まちだはその正体がわからないが途中で身をかわそうとする。

目の前に何かワイヤーのようなものが通ったことに気がつき警戒しながら周りを確認する。



街田 茂まちだしげる

「なんだこの技は…何をした!?」



???

傀儡舞踊会マリオネットダンスパーティー

僕オリジナルの対人用殺傷技術ですよ」



街田 茂まちだしげる

「なんだそりゃ…ふざけてるのか」



???

「大真面目ですよ」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

一気に巻き取ると街田まちだの足を霞める。

そのワイヤーに斬られた箇所からは血が滲み出し、痛みが街田まちだを襲う。



街田 茂まちだしげる

「ぐぅっ!!?痛ってぇ!!

なんだ!なぜ紐ごときで切れる!?」



???

「電熱線って上手く使えばナイフより切れるんですよ

知ってました?」



街田 茂まちだしげる

「どこで…こんな装備を……!

自作したってわけでもねぇだろ!!

どうやってこれを…」



???

「確かに自作はしていませんが…設計は私なんですよ」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

仮面の傀儡師が指を動かすのに合わせて街田まちだは避けるが完全には避けきれず至る所が切れていった。



???

「それでは…そろそろ終わりにしましょうか」



街田 茂まちだしげる

「なに!!?」



???

「トドメです」

傀儡舞踊会マリオネットダンスパーティー第二幕セカンドアクト



N→宇喜多 牧人うきたまきと

一気に強く指をからめる。

その巻き取りによって周囲のワイヤーが一斉に街田まちだを切り刻んだ。



街田 茂まちだしげる

「ぐぁあああああ!!」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

身体中を斬られ勢いよく血が噴き出す。

街田まちだはそのまま地に倒れると動かなくなった。



???

「ゲームオーバー……とはいえ不完全燃焼ですね

あぁそういえばもう一人…生存者がいましたね

あっちと戦うとしましょうか」



N→宇喜多 牧人うきたまきと

仮面の傀儡師は街田まちだをチラリとみると一瞥し

そのまま体育館へと向かっていった。



街田 茂まちだしげる

「……く……くそ……」



N→西原 麻衣にしはらまい

体育館で待っていた榊原さかきばらの元に外から迫る足音が聞こえてくる。

その足音は街田まちだの大らかな足取りではないため

違う人物であることが伺える。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「お前……街田まちださんはどうした!!」



???

「さぁどうでしょう?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「許さない……みんなの…仇だ!!

うぉぉぉっつ!!!」



N→西原 麻衣にしはらまい

榊原さかきばらは殴りかかる。

しかしそれをひらりと回避する仮面の傀儡師は何かを悩んでいた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「お前!!避けてばかりかよ!!

かかってこいよ!」



???

「う~ん……どうしましょうか」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「何を迷ってやがる…!?」



???

「貴方の方が弱いんですね

ん~デザートはあっちの街田まちださんの方にしておけばよかったですね」



N→西原 麻衣にしはらまい

仮面の傀儡師は指をはわし、榊原さかきばらに向けて構える。



???

傀儡舞踊会マリオネットダンスパーティー



N→西原 麻衣にしはらまい

瞬時に仕掛けたワイヤーを絡めとり、榊原さかきばらへと斬撃を繰り出す。

初見では咄嗟に反応ができず榊原さかきばらは両足を複数個所同時に斬られ

激痛のあまり立ってられず正面から倒れてしまった。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぐああぁぁあぁつ!!

な、なんだ!?何が起きた!?」



???

「どうしましょうか…まぁ今日はこれぐらいでいいとしましょうか

それじゃあ…トドメですね」



N→西原 麻衣にしはらまい

仮面の傀儡師は榊原さかきばらを見下ろしながら指を再び動かしワイヤーを巻き取る。



???

傀儡舞踊マリオネットダン――――」



N→西原 麻衣にしはらまい

その瞬間、仮面の傀儡師の背後から拳が迫る。

咄嗟に反応ができず勢いよく顔を殴られて後方へと吹き飛ばされた。



???

「ぐわあぁあっ!!な…なんだ!!?」



N→西原 麻衣にしはらまい

吹き飛ばされて倒れた仮面の傀儡師の前に立っていたのは街田 茂まちだしげるであった。

血だらけでどうやって動いているのかわからないが、その目には憤怒の意思が宿っている。

傀儡師は痛みに耐えながらも嬉しそうに笑いながら立ち上がった。



???

「あ…あれ…まだ動けたんですね!

なんだ…!よかった!!

それではまた違うゲームをしましょう!

一つ思いついたのがございまして

きっとたのし―――ぐはああっつ!!」



街田 茂まちだしげる

「………ッ!!」



N→西原 麻衣にしはらまい

再度顔面に拳を受ける。

吹き飛ばされながら体育館の外へと飛ばされた。



???

「痛いっ…痛い…

ちょ…ちょっと待って!まだあるんですよ!

他にももっと君たちの仲間にもたのし―――ふがあっつっ!!」



N→西原 麻衣にしはらまい

首を掴まれた後、再び顔面を殴られる。

仮面の傀儡師は校庭に倒れて空を眺めながら意識が朦朧としていた。



???

「ちょ……っとま―――ぶはっ!!!」



街田 茂まちだしげる

「っッッ!!!!」



N→西原 麻衣にしはらまい

倒れる仮面の傀儡師に馬乗りになり、街田まちだは両手で拳を全て顔面に振り続けた。



???

「ぐはぁっ!!!ま!!まって!!

ちょっと!!タイ…!

ぶはっつ!!ごわっつ!!

し……ぐはっ!!

死んじゃう…って…ぎゃあっ!!」



街田 茂まちだしげる

「ッツ!!!!!!

っ!!があぁあっつ!!!!

はぁあっつ!!ッつ!!!!!

らあぁああっつ!!」



N→西原 麻衣にしはらまい

仮面の傀儡師は動かくなる。

だがそれでも止まらず拳を振り続けた。

恨みを、悲しみを、怒りを、殺意を

街田まちだの中で溢れる感情全てを拳に込めて放つ。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

街田まちださん!!!!!!」



N→西原 麻衣にしはらまい

街田まちだの後ろから榊原さかきばらが羽交い絞めにする。



街田 茂まちだしげる

「邪魔を!!するなッ!!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

街田まちださん……もうそいつは……意識がないです…」



街田 茂まちだしげる

「……っつ!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「今回の任務は…生け捕りです……殺してはいけません!!」



街田 茂まちだしげる

「こいつは……!

俺の部下を……殺したんだ!!!

生かしてはおけねぇ!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「見てください…!こいつの顔……!」



N→西原 麻衣にしはらまい

街田まちだはハッとなり仮面の傀儡師の顔を見る。

血だらけでグチャグチャになった顔はひどく変形してしまっていた。

だがその顔を見て街田まちだは気がつく。



街田 茂まちだしげる

「こいつ……まさか……未成年…の……ガキか……?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「多分……そうです」



街田 茂まちだしげる

「なんだと……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

榊原さかきばらさん、手錠をかけてこのまま置いておきましょう

この怪我です、すぐには起きません

俺は体育館にいる人たちの生存者を確認してきます

街田まちださんは他隊の方を…」



街田 茂まちだしげる

「いや…俺が体育館に行く」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ですが―――」



街田 茂まちだしげる

「頼む………行かせてくれ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「…………わかりました」



N→西原 麻衣にしはらまい

街田まちだは体育館に行く。

そこに倒れていた宇喜多うきた飛田とびたを抱きかかえて横に寝かせていく。

西原にしはらの残骸は損傷が激しく回収を断念した。



街田 茂まちだしげる

「……………………」



N→西原 麻衣にしはらまい

全員の目を閉じさせると街田まちだは拳を床に殴りつけた。

血が出ようとも、何度も何度も殴り続けた。

行き場のない後悔と怒りを発散するようにただひたすらに。



街田 茂まちだしげる

「がああぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁあああああああああ!!!!!!」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

4月1日の悲劇のエイプリルフール

この日、B,C小隊の6人

街田まちだ隊の

飛田 佐代子とびたさよこ

西原 麻衣にしはらまい

宇喜多 牧人うきたまきと

計9人が死亡した。


生存者は街田 茂まちだしげる

榊原 義弘さかきばらよしひろ

そして小隊6人を合わせた計8人であった。




それから数か月後

仮面の傀儡師の取り調べが行われた。

それによりこの男の詳細がわかってきた。


名前は鷹篠 新羅たかじょうしんら

年齢は14歳

親族は不明、学校などにも通っていないという

現在でこのような行為に至るまでを調査されているという。



それから街田まちだは吹っ切れたように魔怪まかい討伐に全力を注ぐようになった。

たった5か月の間にA-Class6体、B-Class28体その他100以上の魔怪まかいを単独撃破するほどまでになっていた。

次第に他隊員から剛鬼ごうきと呼ばれるほどまでその名は轟くようになっており、V.H.A.ぶいえいちえーや数々の実力者たちにも知れ渡る事となった。


更に数か月後、鷹篠 新羅たかじょうしんらの裁判が行われた。

その報せを防衛隊本部の喫煙所にて

街田まちだ榊原さかきばらはたばこを吸いながら待機していた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

鷹篠 新羅たかじょうしんらの裁判

もうそろそろ終わると思います」



街田 茂まちだしげる

「あぁ……そうだな」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「どのような刑になると思いますか?」



街田 茂まちだしげる

「死刑だ!!それ以外ありえねぇだろ!!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そ……そうです……よね

すいません」



街田 茂まちだしげる

「わりぃ……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「いえ…こちらこそすいません」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

そこに榊原さかきばらの知り合いである代永しろながが歩いてくる。

どうやら裁判の結果を報せに来たようだ。



代永 丈しろながじょう(???兼任)

「結果がわかったぞ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

代永しろなが……結果はどうだったんだ…」



代永 丈しろながじょう(???兼任)

「懲役20年だ」



街田 茂まちだしげる

「は……?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「20年……たったそれだけ…?」



街田 茂まちだしげる

「………っつ!!!」



代永 丈しろながじょう(???兼任)

「お、おい!!どこに行く気だ!!?」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

街田まちだはその場から立ち去り、走って裁判所へと向かう。

駐車場からは防衛隊副長官である井之上いのうえが出てくるところだった。



井之上いのうえ副長官(宇喜多 牧人うきたまきと役兼任)

街田まちだ…もう結果は聞いたようだな」



街田 茂まちだしげる

井之上いのうえさん!!懲役20年って…!どういうことですか!!」



井之上いのうえ副長官(宇喜多 牧人うきたまきと役兼任)

「報せの通りだ

我々も最後まで極刑を求め続けたが結果は弁護人の勝訴だ」



街田 茂まちだしげる

「んだと……なぜなんだ…!!

あんなクズがどうして死刑じゃないんだ!!」



井之上いのうえ副長官(宇喜多 牧人うきたまきと役兼任)

鷹篠 新羅たかじょうしんらは未成年だ

彼は幼少期より身寄りもなく犯罪に手を染めてしまうような環境にあった

それが大きく考慮されたのだ

他にも精神鑑定の結果も出た

複数の点から倫理観や常識の欠如が見られたのだ

事情聴取には素直に応じていた事、その間に反省の意思が見られた事

よって更生の余地ありと判断された」



街田 茂まちだしげる

「更生だと……ふざけるな!!

ふざけるなぁあぁ!!」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

街田まちだ井之上いのうえに掴みかかる。

ボディーガードがそれを止めにかかり、複数人で引きはがそうとするが街田まちだは止められなかった。



井之上いのうえ副長官(宇喜多 牧人うきたまきと役兼任)

「私にもどうにもできなかったことだ

わかってくれ…それが法律なんだ」



街田 茂まちだしげる

「わかれって……何をだよ!!!

……ふざけるな!!!

あいつらの死をたったの20年だと………!!!」



井之上いのうえ副長官(宇喜多 牧人うきたまきと役兼任)

「そうだ…第二審以降で量刑が変わることはあるだろう

だが現在提示されている弁護から鑑みるに死刑が求刑されることはおそらくない」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

力なく膝をつく街田まちだに対して井之上いのうえは車に乗る前に顔を合わせることなく告げる。



井之上いのうえ副長官(宇喜多 牧人うきたまきと役兼任)

「上官への暴力行為、刑罰に値する

街田 茂まちだしげる、お前に無期限謹慎処分を言い渡そう」



街田 茂まちだしげる

「…………」



井之上いのうえ副長官(宇喜多 牧人うきたまきと役兼任)

「頭を冷やせ、街田まちだ



N→飛田 佐代子とびたさよこ

井之上いのうえ副長官はそのまま護送車に乗って去っていった。

これは後で知ったことになるが

政府関係者の中に彼を支援する者が居たという噂を耳にする。

過去の被害者の中には恨みのある人物が仮面の傀儡師に依頼して抹殺するための手段として利用していたという。

その複数の人物が鷹篠 新羅たかじょうしんらを擁護し罪が軽くなっていたのだ。

その事を知った街田まちだは政府に対して強い欺瞞を覚えるようになった。




街田 茂まちだしげる

飛田とびた………西原にしはら……宇喜多うきた……」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

普段の数倍の量の酒を飲んで無理やりにでも酔おうとしていた。

だがどれだけ飲もうとも気持ちが晴れることはない。

既に感情は怒りを超えており、その矛先がわからなくなっていたのだ。



街田 茂まちだしげる

「俺ぁ……もう……無理だ」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

榊原さかきばら街田まちだの兄弟子であり、友人である須加 正樹すがまさきと喫煙所にてタバコを吸いながら話をしていた。



須加 正樹すがまさき(宇喜多 牧人うきたまきと兼任)

「もう街田まちださんの謹慎から3か月か」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そんなに経ってたのか…」



須加 正樹すがまさき(宇喜多 牧人うきたまきと兼任)

「今そっちの隊はどうなってんだ?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「今俺以外に4人入ってくるって話だが

街田まちださんが復帰しないからな

毎日事務ばかりやってる」



須加 正樹すがまさき(宇喜多 牧人うきたまきと兼任)

街田まちださんから連絡はあったのか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ずっと音沙汰無しだ」



須加 正樹すがまさき(宇喜多 牧人うきたまきと兼任)

「あの人に限ってそれはねぇとは思うが

思い詰めて身投げなんかしてねぇだろうな

もう歳だろあのおっさん」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「わからん…」



須加 正樹すがまさき(宇喜多 牧人うきたまきと兼任)

「………義弘よしひろ、会いに行ってやれよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺は…会ってなにを言えばいいのかわからない

運よくただ生き残っただけの俺に……一体何が言えるんだろうか」



須加 正樹すがまさき(宇喜多 牧人うきたまきと兼任)

「だがお前にしか聞けねぇことだ

一番弟子は俺かもしれねぇけど俺はあの事件を体験したわけじゃない

おっさんの苦悩を理解できるのはあの場にいたお前だけだ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……そうだな。わかった」



須加 正樹すがまさき(宇喜多 牧人うきたまきと兼任)

「どこに居んのかわかるのか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「場所はわかる

共通の嫌な思い出の場所だ」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

榊原さかきばらはよく休日に訓練をしていた展望台に足を運んだ。

展望台の階段を上るとそこには街田まちだが先におりタバコを吸いながら遠くを眺めていた。



街田 茂まちだしげる

「久しぶりだな、義弘よしひろ



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「お久しぶりです街田まちださん」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

街田まちだはタバコを榊原さかきばらに差し出した。



街田 茂まちだしげる

「吸うか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「いただきます」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

街田まちだのタバコを一本貰い、ライターを借りて火をつけた。

お互いに沈黙の時間が流れる。



街田 茂まちだしげる

「俺ぁよ、防衛隊辞めることにしたんだ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「辞める……本気ですか?」



街田 茂まちだしげる

「辞表、ついさっき出してきたとこなんだ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そんな……街田まちださん

逃げるんですか………」



街田 茂まちだしげる

「あぁ…そうだ

俺はもうやめだ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「………」



街田 茂まちだしげる

「俺らは何のために戦ってる…?

国のためか?

偉いやつのご機嫌取りのためか?

仲間のためじゃなかったのか

市民のためじゃなかったのか

あんなおふざけで部下をほとんど失っちまった

その仇すら殺すことができねぇ

俺にぁもう…なんもわからねぇよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……情けないですよ

街田まちださんからそんな弱気な言葉を聞きたくなかったですよ」



街田 茂まちだしげる

「悪ぃな……俺はもう折れちまった

もう…この拳の振るう先がなくなっちまったんだよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「でも……隊長はどうするんですか……

俺らの隊を……見捨てるんですか?」



街田 茂まちだしげる

「そりゃよ…義弘よしひろ

お前に託すぜ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「え…はぁっ!?俺ですか!?

無理ですよ!まだ指揮をしたことなんてありませんし

まだまだ俺はわからないことだらけです!」



街田 茂まちだしげる

「俺だって最初はよくわからねぇままやったもんさ

だが……お前ならやれる

俺は信じてるぜ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そんな…勝手な……」



街田 茂まちだしげる

「まぁやってみて無理ならやめりゃいい

そういうもんは誰かがやるんだ

お前がやりたいならやれ

やりたくねぇなら逃げちまえ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そういうものでしょうか…」



街田 茂まちだしげる

「そう!結局お前がやりたいようにやりゃいいんだ

俺は面倒になったら辞めちまうのが自分らしさってやつなんだよ!

あれだ!よく言うだろ!いつだって―――」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「自分らしくあれ……ですね

わかりました……やってみますよ」



街田 茂まちだしげる

「ガハハハハ!よくわかってんじゃねぇか!

それじゃ、後は頼んだぜ」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

街田まちだはタバコを地面に捨てて靴で火を消すとそのまま榊原さかきばらの横を素通りした。

街田まちだは振り返る事なく手を振り

榊原さかきばらはその背中を見送りながら見えなくなるまで敬礼をし続けていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そういう事があってな

俺は無理やり隊長にされて今までやってきたんだ」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「そんなことが…あったんですね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あの時、俺は正直ほとんど気を失っていた

街田まちださんの苦悩は計り知れないものだろう

だから俺は引き止めることができなかった」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「それは…そうですよね……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「前にも言ったがあの人は裏を知っても尚生きてる理由がわかるか?」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「いえ…全くわかりません」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あの人はあの事件の日

本当は仮面の傀儡師によって殺される予定だったんだ

色々裏事情を知ってた街田まちださんを上層部は危険視した

だが、結果まさか勝つとは思わなかったんだろうな

その後街田まちださんの伝説が語られるような戦果を挙げ続けて

飼い慣らそうとした

だから階級も上がっていったし報酬もたんまり出た

だがそれを知った街田まちださんはもう完全に防衛隊を見限ったんだ」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「まさか…防衛隊がそんなことを?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「クソみたいな話だろ

結局自分たちの汚点をばらされたくねぇからって色々やったが街田まちださんは辞めちまった

暗殺しようとしたのかもしれねぇがあの強さだ

おそらく断念して放置してんだろうな」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

街田まちださんはそんなに強いんですね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「やべぇぞまじで

見たらわかるがありゃ生物として格が違ぇ

俺があの兵器使っても下手すりゃ負けるぞ」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「え!!?あれを使っても?

そんなレベルだったんですか!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「まぁそういうわけだ

さっきも言ったが俺から聞いたって言うなよ」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「は…はい!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺らも病室に戻るとするか

ちょっと今日の夜は行かねぇといけないところがあって準備もしねぇといけねぇんだ」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「外出ですか?身体は大丈夫なんですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「別に問題はない

お前より軽傷だったからな」



勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

「わかりました、お気をつけて」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「おう」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

その日の夜

とある居酒屋にて



街田 茂まちだしげる

「女将さん、注文いいかい?」



女将(西原 麻衣にしはらまい兼任)

「あいよ…あら?いらっしゃい」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

店内に入ると真っすぐ街田まちだの隣のカウンター席へと腰かける榊原さかきばら



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「やっぱりここにいましたね」



街田 茂まちだしげる

「よくわかったじゃねぇか」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ここ行きつけだって言ってましたもんね

ちょっと話があってきたんです」



街田 茂まちだしげる

「なるほどな

悪ぃ女将!また後で注文呼ぶわ!」



女将(西原 麻衣にしはらまい兼任)

「あいよ」



街田 茂まちだしげる

「で、どうした?

俺になんか用か?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「実は…」



街田 茂まちだしげる

「あーなんだ込み入った話か?

じゃあ待て

酒がねぇとダメだな!

女将~!

あれ取っといたのあったよな?一升瓶

あれ持ってきてくれ

…で、なんだ?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺が前に言った俺の部下の勝田かつたの事なんです」



街田 茂まちだしげる

「あ~最近入ったって青臭い坊主の話か?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そうです

そいつを隊長にしたいって話

あいつ、すぐには受けれないけどいつかはって言ってくれたんです」



街田 茂まちだしげる

「おう、そりゃよかったじゃねぇか

お!ちゃんとあったな!ありがとよ

義弘よしひろ、お前も飲むか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺はやめておきます

一応まだ入院中の身なので」



街田 茂まちだしげる

「アルコール消毒だ!一杯ぐらい付き合え!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……わかりました

一杯だけですよ」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

榊原さかきばらのおちょこに日本酒を注ぐ。

ぐいっと一気に飲むのを見ると街田まちだが笑う。



街田 茂まちだしげる

「ガハハ!お前日本酒もいけるようになったのか!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺はワイン派ですけど日本酒も飲めますよ」



街田 茂まちだしげる

「で、その坊主がどうしたって?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「もし…俺に何かあったらあいつを鍛えてやってくれませんか?」



街田 茂まちだしげる

「そういう話か……すまねぇが断る

師匠はテメェだろ

自分で教えたらいいじゃねぇかよ!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「………」



街田 茂まちだしげる

「俺はもうお前と正樹まさきを教えたんだ

老兵はもう引退だ引退」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺はもう……長くありません」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

街田まちだはその言葉を聞くと真剣な顔になりおちょこに酒を注ぐ。



街田 茂まちだしげる

「どんだけあんだ?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「もって半年だそうです

しかもこれは俺がこれ以上身体を酷使しないとしての期間だそうです」



街田 茂まちだしげる

「半年か……短ぇなぁ……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「だから……俺は全部を教えきれない

街田まちださんの力を貸してもらいたいんです」



街田 茂まちだしげる

「面倒くせぇなぁ~」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

街田まちださんにしか頼めません

お願いします」



街田 茂まちだしげる

「…………」



N→飛田 佐代子とびたさよこ

街田まちだはおちょこに注いだ日本酒をぐいっと飲み干す。



街田 茂まちだしげる

「考えといてやるよ」



N→勝田 信二かつたしんじ(???兼任)

隊長の恩師となる人物の悲劇

その出来事は国の闇を表すような残酷な現実であった

戦う意味、誰を守るのか、なぜ命を懸けるのか

それは果たして本当に正しい事なのだろうか

その答えはわからない

だがそれでも尚、藻掻き抗い続ける

例え利用されようとも、捨て駒にされようとも

市民のために戦い続ける

身を裂かれようとも

全てを失おうとも

救済を求めてただひたすらに











神ガ形ノ意志ニ背イテ 陸話   完

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あとがき



ようやく6話が投稿できました

せっかくなので作者のその時の感想を書きたいと思います

実は今作、街田 茂まちだしげるの過去を描いた話ですがいくつか参考にした部分がございまして

それが体育館で部下たちが吊るされているシーン

ここはジャッキー・チェン主演の香港国際警察のあるシーンを元にしています。

子供の頃に見て衝撃を覚えたシーンなのでかなり印象が強く

ちょうど今回の話に盛り込みたいなと思って描かせていただきました。


そしてその部下たちが吊るされる逆さ十字

これがなぜ十字架ではないかというと

十字架は本来は罪を犯したものが吊るされるものですが

逆さ十字はその逆で、今回街田まちだ達に何の罪もなく

ただ標的にされただけであり

他の意味である邪悪の象徴

これは政府の陰謀がもとに起きた事件ある事の暗示として使わせてもらってます。

まさか街田まちだにこんな過去があったとは皆様思わないでしょう。


そして今回出てきたマリオネットダンスパーティー

なぜこの技がその後CARDIEDカディド鹿苑寺ろくおんじが使用していたのか

これについてもいずれ描こうかなと思いますが、今はまだ内緒です。


そういえば2024年5月時点でもう一本出していまして

断チ切レヌ運命二抗イシ者タチ 他話

も公開しています。


こちらはV.H.A.ぶいえいちえーの実力者たちのお話となっており、また少しテイストが違う話となっております。

是非そちらも読んでいただけたらな~と思っております。

さてそれでは長くなりましたがお愉しみいただけましたでしょうか?


次は7話となります

次回登場する主要なキャラは

勝田 信二かつたしんじ

中井 亮なかいりょうとなります。

是非お楽しみに~



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



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この台本はアドリブを入れる事を前提として書いています

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