神ガ形ノ意思ニ背イテ 伍話

登場人物名


榊原 義弘さかきばらよしひろ

32歳

大雑把な性格だが、部下を率いる防衛隊の一部隊の隊長。

説明下手でよく橘花たちばなに訂正される

勝田かつたを気に入り、傍に置いて色々指導している。

任務中ではかなり頭が回り、戦場をかけている。

筑波つくばとはかなり長い付き合いらしい




勝田 信二かつたしんじ

24歳

熱い正義感と無鉄砲な若さを持つ新人隊員

士官学校卒の元警官であったが、魔怪まかいの襲撃の際に同僚たちの不甲斐なさに失望し、単身挑むも死にかけそこを榊原さかきばらに助けられる

任務より目先の命を優先することが多く、危険な目に合うことが多い




須加 正樹すがまさき

30歳

榊原さかきばらの下についている隊員の1人。

榊原さかきばらの適当な説明には慣れているようで大体の説明で内容を理解している

部隊の中では狙撃を務める事が多く、高い位置からの索敵が得意である




中井 亮なかいりょう

29歳

渋谷のバーでバーテンダーをしている男性

とある事件により視力がほとんど無いらしい




街田 茂まちだしげる

49歳

榊原さかきばらの師匠

大雑把でガサツな性格だが実力は確かで引退後の現在も英雄譚が受け継がれている

現在は記者をやっているようだが、身の上話をしないためどこに属しているかは不明




代永 丈しろながじょう

36歳

榊原さかきばらよりも少し前から防衛隊に所属している隊員

嫌味を言うような性格で榊原さかきばらたちからは嫌われている

金こそ全てという性格の持ち主

射撃技術や統率能力は高く、そこだけを言えば榊原さかきばらよりも上である




橘花 真由美たちばなまゆみ

27歳

榊原さかきばらの説明を理解し、作戦伝達を務める事の多い女性隊員

榊原さかきばらとは長く同じ隊で行動しており、一番彼の考えや特性を理解している

戦闘では弾幕を張ったり、他隊員の立て直しの時間稼ぎや牽制けんせいを行う




筑波 柊つくばひいらぎ

年齢不詳

マッドサイエンティスト気質な女性

魔怪まかいの研究に人生を捧げており、クローンとなり長年研究を続けている

未だ研究結果を世界に公表することなく、自身のみで使っている

現在はなにか新たな兵器を製造することにご執心の様子

橘花たちばな役が兼任です




東郷 椎菜とうごうしいな

19歳

学園を卒業し、何かの目的を以て部隊に所属した。

自分の実力を疑わず、隊員と特に須加すが勝田かつたとは反りが合わない事が多く、独断で行動することが多い。

かなりの実力者で、榊原さかきばら管轄の部隊で個人戦力は群を抜いて高い。






Nは→後のキャラ演者が読む

※所々交代があるので注意してください。かなり大変です。






VHAぶいえいちえー

突如世界に現れた「魔怪まかい」と呼ばれる怪物を駆除するために設立された軍

Variant Hunt Army通称VHAぶいえいちえーと呼ばれる軍は

自衛隊や警察組織と違い、独立した権力を持つ

一般人や学園卒業者の中で実力保有者が入隊することができる

VHAぶいえいちえー兵を総称して兵員と呼ばれている




魔怪まかいについて

2000年に突如現れた異形の生命体。

理由や目的は不明だが人類を脅かす存在。

現れた当初は世界でも数十体しか確認されなかったが、年々数を増やしていた。

出現方法も繁殖方法などは不明となっている。

魔怪まかいの姿形は現存した生物に類似している為

生物が魔怪まかいに変異した説や妖怪や幽霊といった類である説だったり

一部では神の使い等と吹聴ふいちょうしている宗教までいる。




CARDIEDカディドとは

その素性、人員、目的一切が不明のテロ集団

突如姿を現れては殺戮を行う事から市民から恐れられている






役表


榊原 義弘さかきばらよしひろ♂:

勝田 信二かつたしんじ♂:

須加 正樹すがまさき♂:

橘花 真由美たちばなまゆみ筑波 柊つくばひいらぎ♀:

東郷 椎菜とうごうしいな♀:








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

神ガ形ノ意思ニ背イテ 伍話










N→東郷 椎菜とうごうしいな

榊原さかきばらは痛む腹を抑えつつ山道を足早に歩いていた。

腕輪に埋め込まれたモニターを見つつ勝田かつた達との合流を急ぐため歩みを進める。

意識を失っていた間にどれだけの時間が経ったかわからないが

部下の無事をひたすらに願い続けていた。

川の流れる音と自分の足音と鳥のさえずりだけが聞こえている静かな空間に

突然、腕輪から着信音が鳴り響く。

確かめようとモニターを見ると強制的に通話を繋げられ液晶中央に筑波 柊つくばひいらぎの顔が浮かび上がった。



筑波 柊つくばひいらぎ

「やぁ、いい朝だね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「何の用だ?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「なにって君のバイタルを見たら死にかけてるようだから心配してかけてあげたんじゃないか

優しく寛大な心を持つ私に感謝してほしいね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「黙れ、おしゃべりが好きなら壁とでもしてろ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「特異体が出ているんだってね」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

腕輪の先からは優雅にコーヒーを淹れている音がする。

筑波つくばは憎たらしいほどに寝癖がついており起きたばかりであることが容易に想像できた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なぜ任務だと知っている?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「久しぶりに休憩をとっていたら急遽、連絡が入ってね

そしたら特異体が出現して、君の部隊が出動したと聞いたんだ

それにしてもいきなりこんな大変な任務に当てられるなんて心中お察しするよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「確かにお前に報告が行くことは不自然じゃない

だが、なぜ相手が特異体だとわかった?

今回俺たちにその報告はなかったぞ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「正確に言えばそうかもしれないと聞いただけなんだけど

それよりも本当に特異体が出たんだね?

へ~~~~~!それは是非ともサンプルが欲しいね!

よかったら捕まえてきてよ!

生きたままが無理なら死んでても構わないよ~」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「どうだろうな……

相手はすさまじく強い

それに今俺たちは武器を失った…

奴を倒す手段はない」



筑波 柊つくばひいらぎ

「へーそうなんだ?

そんなのいいから魔怪まかいについての情報をちょうだいよ!

わかってることだけでいいからほら!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……奴はカメレオンのようなクモのような魔怪まかい

4本の足が生えてて……背中に

あぁ違う…足の4本と違う腕の4本が……」



筑波 柊つくばひいらぎ

「あーーーーーごめん

聞く人を間違えたよ

全く言ってることがわからない」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「特異体の説明をしろって方が無理だろうが!

俺もよくわからん」



筑波 柊つくばひいらぎ

「それで、今向かってる先は廃旅館?

どうしてそんなところに?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつたが…孤立してしまったらしい

俺はそれを救援に向かっているところだ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「他の部下はどこに行ったんだい?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「二人は待機させている

もう一人は勝田かつたと一緒にいるはずだ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「あ~~~もう一人の方が例の彼女だね

そうかいそうかい

順調そうなら何よりだ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「この状況を切り抜けるためには魔怪まかいをどうにかしないといけない

だが俺にはその力はない…せめて部下だけでも逃がしたい

何か案はないか?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「ないこともないけど

私は今から朝食の時間なんだ、後で考えておくよ」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

急に通話が切れると腕輪は再びマップを映し出した。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あのクソ女……」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

筑波つくばはモニターから席に乗ったまま移動し、朝食の菓子を食べるとコーヒーを飲み一息つく。



筑波 柊つくばひいらぎ

「特異体ねぇ、まぁ普通には勝てないだろうさ

榊原さかきばらくんはどう切り抜けるだろうねぇ…

君の腕にはすでに力はあるけども…どう使うか見させてもらおうかな」



N→須加 正樹すがまさき

そして同時刻

旅館の中で代永しろながに殺された隊員から装備を貰う。

勝田かつた東郷とうごうの持つハンドガンと弾は同じだが

マガジンの形状が違うため、最大まで装填した状態で残りを置く。

勝田かつたは隊員一人一人に手を合わせてから東郷とうごうと共に駐車場へと出た。



東郷 椎菜とうごうしいな

「それで?この後はどうするの?」



勝田 信二かつたしんじ

「さっきの山道に戻りましょう

もしかしたら下に降りれる場所があるかもしれません

須加すがさんや橘花たちばなさんも無事だといいんですが…」



東郷 椎菜とうごうしいな

「さぁ、どうでしょうね

無事だったらいいわね」



勝田 信二かつたしんじ

「無事だと俺は信じてます……榊原さかきばらさんも必ず生きてます」



東郷 椎菜とうごうしいな

「根拠もないのによく信じれるものね」



勝田 信二かつたしんじ

「……とりあえず俺たちは先を急ぎましょう」



N→須加 正樹すがまさき

二人が山道に戻り、歩いていると途中で川沿いに降りれそうな階段を見つける。



勝田 信二かつたしんじ

「ここからなら降りられそうですね」



東郷 椎菜とうごうしいな

「川の流れを辿っていけばもしかしたらどこかに形跡ぐらいは見つかるかもしれないわね」



勝田 信二かつたしんじ

「少し足場が悪そうですが大丈夫ですか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「私は貴方に着いていくから気にせず先に進みなさい」



勝田 信二かつたしんじ

「わかりました

それでは行きましょう」



N→須加 正樹すがまさき

川のふもとまで下ると、川の流れに沿って移動していく。

最初は大きな岩や倒木が多くゆっくりと進んでいたが

中流までいくと石も細かくなってきたためペースをあげて歩くことにした。

一息つこうと休憩を提案をしようとしたその瞬間、辺りに不自然な銃声が5発響く。



勝田 信二かつたしんじ

「銃声!?まさか…誰か戦っているんでしょうか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「相手に向けて撃っているならテンポが一定すぎるわ

誰かに合図でも送っているようね」



勝田 信二かつたしんじ

「まさか…ですが、魔怪まかいが現れたんじゃ……」



東郷 椎菜とうごうしいな

「考えてもわからないわ

とりあえず行ってみましょう」



勝田 信二かつたしんじ

「はい!」



N→須加 正樹すがまさき

二人は急いで音のした方へと向かった。



N→東郷 椎菜とうごうしいな

時刻は数分前に戻り

須加すが橘花たちばな榊原さかきばらと分かれた地点に待機していた。

周囲を警戒するために静かに耳を澄ましていると

草木が揺れる大きな音が聞こえ、二人は木の陰に隠れる。

川沿いに姿を現わしたのは先ほどのカメレオン型の魔怪まかいであり

何かを探すように川をキョロキョロとみていた。



須加 正樹すがまさき

「運悪ぃな…まさかこっちに来ていたなんて……」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「私たちの居場所がバレたんでしょうか?」



須加 正樹すがまさき

「いや、多分違うな…

おそらくだが義弘よしひろを追ってきたんじゃないか…?

落ちてってた場所をあらかた覚えててここまで来たって感じだろうな

ある程度の知性を持っているとなると厄介だぞ…」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「この状況…どうしたら……」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

魔怪まかいは微動だにせず、集中したようでじっと川を見ている。

こちらの小声や少しの物音は聞こえていないようだ。



須加 正樹すがまさき

「ゆっくりとここから離れるぞ…

慎重に…ゆっくりだぞ…」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

二人は後方へと一歩、また一歩と下がる。

バレたら一巻の終わりになってしまうため牛歩のように歩みを進めていた。



須加 正樹すがまさき

「バレてないか…?だいぶ耳は悪いんだな」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「今のところは……問題なさそうです」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

後ろに下がる途中、橘花たちばなは足元に何かがぶつかったことに気がつく。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「え、なに!?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

後ろにぶつかったのはどうやらリスのようで

リスは橘花たちばなから逃げるように走って離れていく。

しかしその逃げた先は川の方で、魔怪まかいの視界の端に入ったリスは瞬時に足を振り下ろされ潰されてしまう。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「リスが…!?」



須加 正樹すがまさき

「まずい…向きを変えやがったぞ!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

リスが現れたことにより魔怪まかいの注意が逸れて辺りを見渡し始める。

そしてその視界に須加すが橘花たちばなを捉えるとゆっくりと二人に向かってきた。



須加 正樹すがまさき

「ふざけんなっ…!とことん付いてねぇな…!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさん…!す、すみません!!」



須加 正樹すがまさき

「お前のせいじゃねぇ…

そんなことよりやべぇぞ!!

くそ!!!仕方ねぇ!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「どうするんですか!?

私たちだけじゃ危険です!」



須加 正樹すがまさき

「まずは助けを呼んでみるしかねぇ…!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

須加すがは空に向けて銃を5発、1秒ごとに感覚を空けて発砲する。



須加 正樹すがまさき

「くそっ!頼む、聞こえててくれ!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがさん!!突進してきます!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

魔怪まかいは身体ごと突進を仕掛けてくる。

大ぶりな足つきであったが巨体の繰り出す威力はすさまじく

近くの細かな木々を吹き飛ばしながら突っ込んできた。

突進にはいち早く気づき動いていた二人だが

飛ばされた枝が勢いよく橘花たちばなの防弾チョッキが防げない腰と右の太ももに突き刺さる。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「痛っつ…ぁあああ!!!」



須加 正樹すがまさき

橘花たちばな!…ちくしょお!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

残った10発の弾を撃ち込むが、全て皮膚に弾かれた。



須加 正樹すがまさき

「くっ!こんな小物じゃどうしようもねぇじゃねぇかッ!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「痛ぃっ………須加すがさん……!

私を置いて…逃げてください!!」



須加 正樹すがまさき

「なに言ってんだッ!!

そんなの義弘よしひろが許さねぇだろ!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

橘花たちばなから離れるように走りだすと魔怪まかい須加すがの方を追いかけるようにゆっくりと歩いてくる。

その瞳の一部が緑色の血で滲んでおり

どうやら少しだけダメージを受けているようだ。

そして須加すがが大きく動くと瞳を追従させるように動かしている。



須加 正樹すがまさき

「やっぱり視界頼りで大きく動くものを優先的に狙ってくるタイプ…

思考能力はある程度あるようだが、そこまで知能は高くない…だがそんなこと言ってる場合じゃねぇ!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

クモのように背から生えた足で須加すがを叩き潰すように振り下ろしてくる。

すんでのところで回避をしながらハンドガンに装填をするも、これでは効果がないことをわかっているため回避に専念していた。



須加 正樹すがまさき

「どうしろって言うんだよ…あと2マガジン

30発ごときで勝てるかよあんなのに…!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

焦りを通りこし冷静になりつつある須加すが

そんな時、ふと街田まちだが特異体を単身で倒したという伝説を思い出す。



須加 正樹すがまさき

「あんな化け物と戦うには化け物じゃねぇと無理だろ…

なんでこんなのに一人で勝てんだよあのオッサン……」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

時刻は現在に戻り、勝田かつた東郷とうごう須加すがが戦っている場所に近づいてきていた。



勝田 信二かつたしんじ

「そろそろ近いはずです…一応武器を構えておきましょう」



東郷 椎菜とうごうしいな

「でも、もし接敵したらどうする気?

さっき撃ったからわかるけど

ハンドガンの弾は通らなかった

ちゃんとした武装があるならまだしも

今のままでは勝ち目ないわよ」



勝田 信二かつたしんじ

「でも…これしか今の俺らにはありません

何とかしないと…」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

近づいていくと大きな木々が晴れて遠目に魔怪まかいの姿が映る。

須加すがが一人で戦っているが回避で精一杯のようだ。



勝田 信二かつたしんじ

須加すがさんが…!援護しましょう!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「待って!このまま行ってどうするつもり?」



勝田 信二かつたしんじ

「どうするって…!須加すがさんを助けないと!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「少し落ち着きなさい……

まずあの巨体に対して私たちだけでダメージを与えられない

なにか対策はあるの?」



勝田 信二かつたしんじ

「じゃあ…どうすれば!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「ここで戦うのは仕方ないとして私たちだけじゃ知識が乏しい

一度合流して作戦を考えましょう…

二人の知識なら何か思いつくかもしれないわ」



勝田 信二かつたしんじ

「わかりました…手榴弾を投げて気をひいてから一度集まりましょう!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつたは手榴弾を構えると大声で須加すがに呼びかけた。



勝田 信二かつたしんじ

須加すがさん!一度合流しましょう!!」



須加 正樹すがまさき

勝田かつたっ!!…あぁ、わかった!!

橘花たちばなのいるところに向かえ!」



勝田 信二かつたしんじ

「わかりました!!

まず…安全ピンを抜いて……おらぁあっつ!!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

ピンを抜き手榴弾を顔に向けて高く投擲した。

魔怪まかいの頭に乗った後、数秒でグレネードが爆発する。

それにより魔怪まかいは頭を地面に叩きつけられたようで痛みに悶える様子をみせた。

その隙に勝田かつた東郷とうごう須加すが橘花たちばなの近くに駆け込んだ。



橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたくん!!

よかった…いなくなった時はどうなるかと思った……」



須加 正樹すがまさき

東郷とうごうも無事だったか…だが喜んでる暇はねぇな

こいつをどうするか…」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

魔怪まかいは未だに衝撃によるダメージで動きを止めていた。



勝田 信二かつたしんじ

「走って逃げることはできないでしょうか?」



須加 正樹すがまさき

「あの巨体が走ったら人間なんてすぐ追いつかれるぞ…

それに森の中じゃ俺らが圧倒的に不利だ…バラバラになれば真っ先に狙われた誰かが死ぬことになるだろ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「仕方がないでしょ

この場で全滅より、一斉に走り出したら1人…あるいは2人は逃げれるかもしれないわ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「なら…私が囮に……!」



勝田 信二かつたしんじ

「そんなの…!絶対にダメです!!

皆で生きて帰らないと…!!」



須加 正樹すがまさき

「お前………ははっ

どんどん義弘よしひろに似てきやがったな」



勝田 信二かつたしんじ

「俺が時間を稼ぎます

俺もなんとか逃げ延びてみせるので皆さんは先に逃げてください」



橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたくん!それは絶対にダメよ!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「啖呵を切るのもいいけど逃げれる自信はあるの?」



勝田 信二かつたしんじ

「正直言うとありません…ですがもうそれぐらいしか……」



須加 正樹すがまさき

「いや…一つだけ策がある」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「策って……一体どうするつもりですか?」



須加 正樹すがまさき

「あいつは視覚を頼りに行動している

もしあいつの目を二つ潰せたら追ってくることはできなくなるだろう」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「で、でも!どうやって目を潰すんですか?

私たちのハンドガンでも攻撃があまり効いてないようですし…」



須加 正樹すがまさき

「いや、さっき東郷とうごうが撃っていた弾が眼球には突き刺さっていた。

流石に目はそこまで硬くねぇんだろ

どうにか光彩を潰せりゃ可能性はあるってことだ…」



勝田 信二かつたしんじ

「なるほど……そうすれば逃げれるかもしれません!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「でもこっちがしっかり狙うためには正面からじゃダメよね

あの爬虫類タイプは目の幅が広いから側面から撃たないといけない

とはいってもあいつの動きに合わせている間に攻撃を受けない保証もないわ

どうするつもり?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「みんなで一斉に撃つのはどうでしょうか…?」



須加 正樹すがまさき

「いや、それだと確実性がない

あいつがそれに勘づいて瞼を閉じたら一貫の終わりだ

確実に潰すためにはなるべく接近して至近距離で撃たないとならねぇだろうな」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「だとしても…それは私たちが万全だったとしてもできるとは思えません」



東郷 椎菜とうごうしいな

「私も正直、身体はボロボロで歩くのがやっとなの

いつもなら出来なくはないだろうけど今は無理ね」



勝田 信二かつたしんじ

「なら………俺が気を引けば…!!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

拳を握り締める勝田かつた

瞳を閉じて意を決する。



須加 正樹すがまさき

「まぁ待て…」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

立ち上がろうとした勝田かつたの肩を抑え、須加すがが制止した。



須加 正樹すがまさき

「俺に任せろ」



勝田 信二かつたしんじ

「そんな…でも!

須加すがさんには家族がいます…

俺には身寄りがいません…なので俺が行くべきです」



須加 正樹すがまさき

「馬鹿かお前…そんなボロボロの体で何ができんだ

俺がこの中で一番軽傷だ」



勝田 信二かつたしんじ

「でも…死ぬなら俺の方がーーー」



須加 正樹すがまさき

「それ以上先を言うんじゃねぇぞ

命の価値はどんな奴でも等価だ

大事とか要らないかとかじゃねぇ…俺が一番動けるって話だ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「でも…須加すがさん…どうやって接近するんですか?」



勝田 信二かつたしんじ

「そうですよ!!

あのデカい足を避けて正確に狙うなんて一人じゃ危険です!」



須加 正樹すがまさき

「そういや橘花たちばな街田まちだのおっさんと会ったって言ってたよな?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「え?あぁ…はい

以前隊長と一緒に会いました」



須加 正樹すがまさき

義弘よしひろの師匠なんだが、俺の師匠でもあってな

義弘よしひろは俺の弟弟子ってことになるんだよ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「それって…」



須加 正樹すがまさき

「あの人から教わった力…使うなら今だろ!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつたの持っていたバヨネットを奪うと

ハンドガンとバヨネットを片手で持ちながら、魔怪まかいの前に飛び出した。

練習するように武器を構えると東郷とうごうが真剣な面持ちでそれを見る。



東郷 椎菜とうごうしいな

「ねぇ…あの人って近接戦に慣れてるの?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「え?そんな話は聞いたことないけど…

だっていつも狙撃と援護射撃をやっているのよ

…前に聞いた時は苦手だとも言ってたわ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「あれが…?苦手?…なんの冗談?」



勝田 信二かつたしんじ

「どうしたんですか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「なんであの人はこの隊だと部下なの?

そんな器じゃないと思うんだけど…」



勝田 信二かつたしんじ

「それは…どういう……?」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

魔怪まかいは次第に目をゆっくりと開いていき中心に須加すがを捉える。

須加すがはボソっと独り言をつぶやく。



須加 正樹すがまさき

「苦手……ってか、あのオッサン見てたら誰だって自信なくすぜ」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

魔怪まかいはギロリと須加すがを睨むと足を高速で振り下ろした。



勝田 信二かつたしんじ

「危ないっ!!」



須加 正樹すがまさき

「うぉぉっ!!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

須加すがは飛び上がり、魔怪まかいの大きな足にバヨネットを突き刺すとそれを踏み台にさらに飛び上がった。



勝田 信二かつたしんじ

「すごいっ!!あんな方法があるなんて!!」



須加 正樹すがまさき

「おらあああっつ!!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

頭の上に乗る。

視野の範囲外に突然消えた為、魔怪まかいは目だけをぐるぐると動かし辺りを探す。

視線の向きを確認してから空中に飛び上がり、瞳に向かって連続で発砲する。



須加 正樹すがまさき

「はぁああああ!!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

その弾丸は右の瞳を貫くと、化け物は甲高い鳴き声を上げる。

地面に着地するとリロードを瞬時に終わらせた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「すごいっ…片目にちゃんと当たってる!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「ほら、言ったでしょ

あの人、私と変わらない腕前よ」



勝田 信二かつたしんじ

「まさか…須加すがさんがここまで強いなんて!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

爆音に一同は耳を塞ぐも、須加すがは耳を塞ぐより前に自分のバヨネットをチョッキから引き抜くと反対側の足へと突撃する。



須加 正樹すがまさき

「そらっ!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

先ほどと同じ方法で飛び上がった。

しかし魔怪まかいもタダでやられることはなく

空中に浮かんだ須加すがを噛み殺そうと首を伸ばした。



須加 正樹すがまさき

「何っ!?ぐわああぁぁぁぁああぁ!!」



勝田 信二かつたしんじ

須加すがさんッ!!!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

須加すがは空中で翻るが、右足に噛みついた。

ボキッと骨が砕ける音が響く。

勢いを消され、ぶらりと宙吊りになってしまう。

しかし須加すがは力を込めて上体を起こし、銃を構えると目に向けて発砲する。



須加 正樹すがまさき

「がああっ!!くたばれえぇえ!!!」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

魔怪まかいはその射撃を受けて瞼を閉じながら再び甲高い叫び声をあげる。

バランス感覚を失っているのかふらふらとした足取りで何度か足をもつれさせていた。

その際に顎の力が緩んだのか須加すがは地面に落下する。



須加 正樹すがまさき

「うぐっ!!……痛ってぇえ!!ちくしょっ…!

めちゃくちゃ痛ぇじゃねぇかよ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「これは…成功したの!?」



須加 正樹すがまさき

「やった…か!?」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

しかし魔怪まかいはゆっくりと目を開く。

銃弾は外れていたようで、瞳から逸れた位置に数発当たっているだけであった。



須加 正樹すがまさき

「やべぇな……しくじった…」



N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

銃を向けて引き金を引くが、カチッと音がするだけで弾は出ない。

どうやらすでに全て撃ち尽くしていたようだ。

魔怪まかいが睨むように須加すがを見下ろす。



須加 正樹すがまさき

「ふざけんなよ……こんなところで死ねねぇってのに…

次の休みに遊園地に連れてくって約束しちまったんだぞ…

カッコつけれねぇだろが!!」



勝田 信二かつたしんじ

須加すがさん!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「状況はかなりマズイわね…」



須加 正樹すがまさき

「万事休すか!!

ひろみ……よしえ……

すまねぇ

俺……帰れねぇかも」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

時は少し戻り

マップを見ながら進んでいくと旅館にたどり着く榊原さかきばら

勝田かつた達とは通った道が違ったため、入れ違いになっており

その場に二人の姿はなかった。

残っていた血痕を頼りに建物内の3階へと登ると

そこには代永しろながの隊員であろう数名が死亡している。

全員後頭部に鈍器による一撃を受けていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これは……どうなってる?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

近くには代永しろながのものであろうアサルトライフルが落ちており

そのストックには血がついており、隊員の受けた傷と似通っていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「まさか…あいつが殺したのか?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

武器を拾い上げマガジンを抜く。

中にはまだ20発ほど弾が入っており、壊れている様子はなくまだ使えるようだ。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これなら奴に効くだろう…」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

立ち上がりその場を後にしようとすると筑波つくばが再び通信をかけてきた。

咄嗟に拒否を押したが、再度かかってくると勝手に通信がオンになる。



筑波 柊つくばひいらぎ

「着信拒否とはひどいね

君のためにかけてあげたっていうのに」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「日頃の行いが悪いからだろ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「それで、旅館に部下はいたのかい?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「いや…いなかった」



筑波 柊つくばひいらぎ

「まぁ、だと思ったよ

せっかくだから機能紹介も兼ねて教えてあげよう

これ見てよ」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

腕輪を見るとマップが突然灰色の一色に染まり、先ほど自分が歩いてきた方面にオレンジ色の丸い波形が出ていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なんだこれは?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「さては君、機械に疎いね?

これは音声波形をマップに表示したものでさ

今表示されてるのは30秒前の記録だよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あ……あぁ?どう見るんだこれ?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「へ?そのままの通りだろ?

5回音が鳴ってるのさ

鳴る感覚はだいたい1秒あたり?心当たりは?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

須加すががなにかあった時に鳴らすって言ってたな…まさか!?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「そっちの方面を見てみると川の音じゃないデカい音もあるね

これが魔怪まかいとみて間違いないんじゃない?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「今すぐ向かわないと…!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

榊原さかきばらは全力で走りだした。

走りながらも通話は続いており、筑波つくばは話しかけてくる。



筑波 柊つくばひいらぎ

「どうしてそんなに部下のために命をかけれるんだい?

君ほどの階級だったらすぐに部下は補充してくれるだろ?

別に今の部下じゃなくても変わりはいるんだよ?

どっちかと言えば君の方が特別だよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「はぁ…はぁ……ふざけるな!

命は…平等なんだ…!

特に俺の部下は、全員護ると誓った…!

必ず救って見せる!!」



筑波 柊つくばひいらぎ

「もはや強迫観念だねそれ

…でも命が重いってのは私も同感だよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「何言ってやがるんだ?気持ちが悪い

イカレてた頭がさらにイカレたか?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「ひどいなぁ~私だって傷つくことはあるんだよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ざまぁみやがれ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「……私にも大事だった人がいたんだ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「何の話だ?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「争いってのは人を強くも、弱くもする

気に入らない奴を潰すことだって、逆に潰されることだってある

争いは常に進化と共にあり続けた

それが生物の共通認識であり、とても興味深く

とてもシンプルかつ奥深い

そう思うんだよね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「話に着いていけない…何が言いたいんだ?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「いや、ただのヒトリゴトさ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なら口を閉じてろ…!気が散る!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

通信を切断してすぐに爆発音が響く。

どうやら川沿いの先でグレネードが使用されたようだ。

その方向は先ほど自分が川から引きあげられた方と同じだった。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「くそ!無事でいてくれみんな!!」



N→須加 正樹すがまさき

視点は移り

魔怪まかいは地面に倒れる須加すがを見失っているようで辺りをキョロキョロとみていた。

橘花たちばな勝田かつたが木から少し出るとハンドガンを目に向けて全弾、発砲する。

しかし先ほどの須加すがの攻撃で警戒していたのか魔怪まかいは目を閉じて顔を動かすことで弾を避けていた。



勝田 信二かつたしんじ

「くそ…弾切れ……」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「私も…もうないわ…」



N→須加 正樹すがまさき

魔怪まかいは身体をしならせて、背から生えた足を鞭のように動かし一帯を吹き飛ばす。

その一撃を受けて須加すが橘花たちばなは勢いよく吹き飛ばされ衝撃で気を失う。

勝田かつたも川の方まで飛ばされると、必死に川から這い出る。



勝田 信二かつたしんじ

「ごほっ…ゲホッ…!!がは…くそ……強すぎる」



N→須加 正樹すがまさき

ゆっくりと足に力を入れるも、すでに限界であった身体には力が入らない。

魔怪まかいは動きの激しい勝田かつたの方を見続けている。



勝田 信二かつたしんじ

「動けよ…!なんで、動かないんだ!

まだ…俺は……強くなったんじゃないのかよ…!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「なにやってるのよ!」



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさんっ!なにを!?」



N→須加 正樹すがまさき

東郷とうごう勝田かつたの前に立ち塞がる。



東郷 椎菜とうごうしいな

死銃乱射デス・ガトリング



N→須加 正樹すがまさき

連射により射撃でけん制すると、魔怪まかいは数歩下がった。



東郷 椎菜とうごうしいな

「あなた…!私の家族を殺した奴らを追い詰めるの手伝うんでしょ!

こんなところで死にかけてて出来るっていうの!?」



勝田 信二かつたしんじ

「ぐ………東郷とうごうさんだけでも逃げて…ください!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「ここから私一人で逃げろって?

ほんとうに馬鹿なのね…

それができたら苦労はないわよ」



N→須加 正樹すがまさき

魔怪まかい勝田かつたへ向けて足を振りおろす。

東郷とうごう勝田かつたを突き飛ばし、自らも回避する。

その衝撃で石つぶてが飛び散り、東郷とうごうの腹へとぶち当たる。



東郷 椎菜とうごうしいな

「ぐうっ!!!」



勝田 信二かつたしんじ

「うっ!!………東郷とうごうさん!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「うっ………ゲホっゲホ……!!」



N→須加 正樹すがまさき

身体が動かない。

既に先の代永しろながとの戦闘で限界だった勝田かつた東郷とうごうは再び立ち上がる気力もない。

橘花たちばな須加すがは気を失ったまま動かない。

絶望的な状況に過去の一件が勝田かつたの頭をよぎった。



勝田 信二かつたしんじ

「ここで…!俺が……戦わなきゃ…誰があいつを倒すっていうんだ!!」



N→須加 正樹すがまさき

どこにそんな力が残っていたのか

勝田かつたは再び立ち上がる。

気合だけで立ち続ける勝田かつた魔怪まかいは噛みつこうと口を大きく開く。



勝田 信二かつたしんじ

「どうして…俺は…こんなにも弱いんだ」



N→須加 正樹すがまさき

絶望に塗れたその声は誰にも通らないほど小さい声であった。

大きな歯が勝田かつたを砕こうとギラリと光る。

世界がスローモーションになった。

こんな経験を勝田かつたは何度も経験していた。



勝田 信二かつたしんじ

(俺は、ずっと変わってないんだろうか

あの頃から……何も……)



N→須加 正樹すがまさき

その時、銃声が鳴り響く。

魔怪まかいが連射した銃を受けてダメージを喰らっているようで苦しみ悶えている。

勝田かつたは何が起きたかわからず茫然としていると

何度も止まった世界から響いていた声が聞こえてきた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた!!逃げろ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「はっ……はいっ!!」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつた東郷とうごうを担ぎ上げて、魔怪まかいから離れて榊原さかきばらの元へと駆けつける。

榊原さかきばらは弾が切れたアサルトライフルを投げ捨てると勝田かつたの肩に手を置いた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「二人とも無事か?」



勝田 信二かつたしんじ

「俺は…まだ何とか大丈夫です」



東郷 椎菜とうごうしいな

「こっちはもう結構ギリギリの状況よ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

須加すが橘花たちばなはどこにいる?」



勝田 信二かつたしんじ

「あそこです…!」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたが指さした方で須加すが橘花たちばなが倒れていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あいつらは無事か?」



勝田 信二かつたしんじ

魔怪まかいの攻撃で気絶したみたいで…

榊原さかきばらさん…俺たちはどうしたら?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

東郷とうごうを頼むぞ…

後は俺に任せろ!」



勝田 信二かつたしんじ

「え、どうするつもりですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「お前らは…俺が必ず護ってみせる

そう言っただろ?」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらはゆっくりと歩いていく。

腕輪をちらりと見て何かを打ち込むように触り始めた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた……俺の目には過去に失った部下たちがずっと写っているんだ

もう二度とあんな思いはしたくない

あれからずっと…救えなかったことをずっと責め続けられているような気がしていた

お前らを護った時は救われたような気がした…

だから俺はお前らを失いたくなかった」



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「カッコわりぃだろ?見損なっていい

だが、俺は決してお前らを犠牲にしたりしない

俺の命ある限り…お前らを護り続ける…

それが俺の弱さであり、強さだ!

だからこそ、俺は俺自身を曲げたりしない!

勝田かつた…お前が悩んでくれてたのは知っている

俺の気持ちに答えてくれようとしてたんだろ?

だが、答えを急ぐ必要はない…

どんな決断をしても俺はお前を責めるつもりはない

だが忘れるな………勝田かつた



N→須加 正樹すがまさき

魔怪まかい榊原さかきばらに目標を絞る。

対する榊原さかきばらは腕輪を片手で包み込む。

決意を込めて、勝田かつたに言い放つ。

師としての

隊長としての

人としての

彼なりの最大の言葉を送った。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「いつだって…自分らしくあれ」

     ≪装着≫



N→東郷 椎菜とうごうしいな

いつかの筑波つくば研究所にて

榊原さかきばらは定期検診を終えると

モニターやパソコンが置いてある何かの部屋に待機していた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あいつ…遅ぇな」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

ふと机を眺めていると、何かの資料であろう紙を見つける。

なんの気兼ねもなく手に取り、内容を読み始めた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なんだこりゃ…なんかの身体みたいなのが書かれてる…が

後はあんだこれ…?NE…X…U…S?

何て読むんだこりゃ」



筑波 柊つくばひいらぎ

NE-XUSえぬいーえっくすゆーえす…通称はネクサスと名付けた新たな発明品だよ」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

突然モニターの電源が付くと筑波つくばの姿が映し出される。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なっ!!びっくりするじゃねぇか!

…急に出てくんじゃねぇよ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「人の机を物色する趣味の悪い男に言われたくないよ

それよりそれが何か気になるかい?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「興味ない」



筑波 柊つくばひいらぎ

「まだ教える気はなかったんだけど、せっかくだから教えてあげるよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「人の話をーーーーー」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

モニターの表示が切り替わる。

そこに映し出されたのはスーツのような形をした服であった。

だが不自然なのはその表面が常に動いており、何かの生物のようになっていたのだ。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なんだこれは…!?なぜ動いているんだこれは!!?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「当ててみてよ

これは何で出来てると思う?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

榊原さかきばらはじっとその服を見つめる。

そしてすぐに気がつく。

その表面が以前戦った魔怪まかいの特異体にそっくりだったことに。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これは…!!!

まさか魔怪まかいで作ったというのか!?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「正解~~~~!

何かって言うとね

今作っている最中の魔怪まかいの変異外殻を使用して

形作ったものを人間が着れるように変えてみたんだよ

これを人が装備したらどうなると思う?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「どうなるんだ?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

その答えを聞くや否やすぐにモニターが切り替わり

そこには先ほどの装備を纏った筑波つくばが映し出される。

何も設備がない真っ白な部屋に立っていた。

そして少しするとその壁が大きなシャッターのように上がっていき

その中からは3メートルほどの角の折れた牛型の魔怪まかいが姿を現わした。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これは…お前がテストしたのか?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「正確には私の体組織から複製したクローンに最低限の戦闘技術を覚えさせただけの人形ってとこかな」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

魔怪まかい筑波つくばに襲い掛かる。

飛び掛かるように突っ込んできた魔怪まかいに対して筑波つくばは動く様子がない。

その突撃は筑波つくばを吹き飛ばすと思われた。

だが筑波つくばが寸でのところで繰り出した拳を受けて魔怪まかいは勢いよく壁に叩きつけられる。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なんだ今の力!!?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「そう、これを使用した人間の力は飛躍的に向上する

人間は本来の力を抑えてるって聞いたことある?

それを人工的に引き出し、尚且つこの魔怪まかいの外殻を利用することで

人体が出すことの出来る力にブーストをかけることができる

こうすれば戦闘力は格段に上がると思わない?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「こんなものが……!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

吹き飛ばした後の魔怪まかいに近づいていき、連続で拳を繰り出すと

魔怪まかいは断末魔をあげながら血しぶきをあげる。

次第に動きが鈍くなっていき、最後の強い一撃を受けて完全に沈黙した。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これは…すごい発明じゃないか!!」



筑波 柊つくばひいらぎ

「いずれはこれを量産までもっていきたいんだ

そうすれば魔怪まかいのサンプルを集めるのにも役立つだろうしね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「この力があれば…魔怪まかいに勝てる…!

それだけじゃない…たとえ強いテロリストだろうと確実にッ…!!

おい筑波つくば!これを量産させーーーー」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

その瞬間、モニターに映し出された筑波つくばが勢いよく吐血した。

次第に身体が震えるように痙攣し始め、悲鳴をあげながら正面から倒れる。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「お、おい!!どうなってる!?

大丈夫か!!?おい!返事をしろ!」



筑波 柊つくばひいらぎ

「うるさいなぁ

それは私じゃないって言ってるだろ?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そうだった…だが、このクローンとやらになにが起きたんだ?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「副作用だよ

この装備は人体を無理に使わせるだけじゃなく

装備して動くたびにこの魔怪まかいの外殻が人体に悪影響を及ぼすんだ

その原因が究明できてないのと、サンプルの数があって

まだまだ完成には至らないんだ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「副作用を…なくすことができるのか?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「そうだなぁ…

いつかは出来るかもしれないけど

今は難しいと言っておこうかな

特異体をベースに作っているからサンプルは極端に少ない

データが豊富にあれば人間と上手く適合するものや

その外殻の組織も解明できるかもしれないね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そうか…特異体か

だがそんなものがどれだけいるかもわからんぞ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「あ、でも一つだけ少しだけ早く完成させる方法があるよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なんだ、それは?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「君がこれの試験型を使って実践で使用してくれたまえよ

実践データってとっても有用でね

ゴミが出ないぐらい参考になるんだ

とはいってもまだ完成してないこれを使うことになったら

君の身体はどんどんと貪られていって命の危険もある

だけど君の命を使えば7~9パーセントは完成に近づくだろうさ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺の命で…数パーセントだと?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

榊原さかきばらはその答えに悩む。

自分の命と引き換えに研究が進むことで得られるメリットは大きい。

先ほどの兵器が完成すれば強力な魔怪まかいへの対抗策ができるだろう。

これが量産され、リスクがなくなれば兵力が大幅に上昇する。

防衛隊内で支給されれば犠牲者の数も減ることになるだろう。

そう頭ではわかってはいるが決断できずにいた。

それが何かというと筑波つくばへの胡散臭さがぬぐえない事が理由の一つとしてあったのだ。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「一つ聞かせてくれ…

何のためにこんなものを作った?

お前が世界の為だとか人類の為だとか

そういう感情はお前にはないはずだ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「ん~~~~~~~

簡潔に言えば興味本位だよ

作ってみたかったものを作ってみた

それはどんな人間にも共通して持つであろう好奇心ってやつさ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「だと思ったよ…」



筑波 柊つくばひいらぎ

「それでいいじゃないか

私を君たちを利用して実験をする

君たちは私の力を使い人々を守ればいい

利害の一致というやつさ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「…………」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

目を閉じて考える。

榊原さかきばらの守れなかったもの

今度こそ、それを守る力が手に入るかもしれない。

榊原さかきばらの中で答えは既に出ていたのだ。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「わかった、俺が手を貸そう」



筑波 柊つくばひいらぎ

「決断が早い男は好きだよ

それじゃあ早速、君の体に適合するように調整を施すよ」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

それからまた時間が過ぎ

勝田かつた筑波つくばを顔合わせをさせた日。

勝田かつたが帰った後、研究の進行状況が書かれた資料を見た榊原さかきばら筑波つくばを問い詰めた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「まさかあれは完成していたのか!?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「まだ75%ってところかな

ある程度副作用は緩和したからいきなり死ぬなんてことはないけど

確実に人体にダメージを蓄積させ続ける

しかも治りづらいことに表面上の傷じゃなくて

内組織から削り続けてる

魔怪まかいの生命組織って人類のような哺乳類の持つものと違って

複雑なんだよね

例えば、何もないところから外殻を生成していくとか

それを利用して作ったこの兵器だけど

そのルーツについて明確じゃないから極めて危険だ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「だが…緩和されたということは何度かは使えるということだな?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「そういうことだね

だから君に一度渡しておこうと思って

それを使って特異体を倒せば、より完成度が上がる

もし遭遇しなかったとして君が死亡した場合でも

その実践データで確実に完成に近づける」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

筑波つくばは席から立ち上がるとアタッシュケースを持ってくる。

それを榊原さかきばらの目の前で開けると中から出てきたのは太い腕輪であった。

手に取ってみるが、どう見てもスーツには見えない。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これはなんだ?あのスーツを使うんじゃないのか?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「ん?これがそのスーツだよ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「どう見たってこれがスーツなわけないだろ!」



筑波 柊つくばひいらぎ

「まぁ、落ち着いて聞いてよ

あのスーツはさっきも言ったように何もないところから生成される

それを利用してその腕輪の中から外殻を形成するんだ

その為のコントロール装置として腕輪がいいかなって思ったんだ

オシャレだしね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これがあのスーツに変形するっていうのか?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「正確に言えば形成なんだけどなぁ

魔怪まかいの外殻とその生体組織を結びつかせることで形状を変異させて装備を形作る

君たちに力を与える装備

NE-XUSネクサスだ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これが……NE-XUSネクサスか」



筑波 柊つくばひいらぎ

「起動方法は簡単だ

君がその腕輪を付けていると1つ目のロックである静脈が認識される

それを手のひらで握ることで2つ目のロック、指紋が認識され

君がコードを言えば、声帯認証がされる」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「何を言えばいいんだ?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「そうなんだよ

認証できればなんでもいいんだけど

内容が思いつかなくてさ~

変身!とかチェンジ!とかあるいはネクサスって言わせてもいいかな~って思ってるんだけど何がいいかな?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「コードか……」



N→須加 正樹すがまさき

時は現在に戻り

魔怪まかい榊原さかきばらに目標を絞る。

対する榊原さかきばらは腕輪を片手で包み込んだ。

そしてコードを決意を込めて叫ぶ。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「いつだって…自分らしくあれ」

     ≪装着≫



N→須加 正樹すがまさき

コードを叫んだ瞬間、腕輪から英語の羅列が鳴り響いた。

腕輪から根が巻き付く榊原さかきばらの身体中に黒い何かが伸びていく。

そしてその形はスーツのような形状へと変形していき

縛り上げるようにギチギチと音を立てつつ鈍く光り出す。

痛みに耐えながら気合を込めて放つ咆哮と共に、その形が完成した。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「うぉおおおおおお!!!!」



勝田 信二かつたしんじ

「…な!?な、なんなんですかそれっ!!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「説明は後だ…下がってろ」



N→須加 正樹すがまさき

痛みが引いていき、榊原さかきばらは身体が軽くなるのを感じた。

先ほどまでの疲労や怪我が嘘のようにない。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あのクソ女……ここまでのものを作ってるなんてな」



東郷 椎菜とうごうしいな

「それで…あいつに勝てるっていうの?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「初めて使うからわからん………だが必ず倒してみせる!」



N→須加 正樹すがまさき

魔怪まかいが警戒しているのか距離を取った。

それから威嚇するように榊原さかきばらへと口を大きく開く。

対して榊原さかきばらはゆっくりと歩いて近づきながら拳を強く握る。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ビビってるのか?かかってこいよ…化け物」



N→須加 正樹すがまさき

魔怪まかいは背から生える前足を同時に振り下ろす。

装甲車でさえ砕くその一撃を受けて榊原さかきばらが無事なわけがない。

普通ならばーーーー



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「効かねぇな」



勝田 信二かつたしんじ

「な!!無事…なのか!?すごい…」



東郷 椎菜とうごうしいな

「あの隊長が…こんなに強くなるものなの…?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「はあああぁっつ!!」



N→須加 正樹すがまさき

両足を拳で殴りつける。

するととてつもない打撃音と共に魔怪まかいの足が勢いよく後方へと吹き飛ばされた。

その強烈な一撃を受けて驚いたのか魔怪まかい榊原さかきばらに噛みつこうと鋭い歯を見せる。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「いくぞ!!!!」



N→須加 正樹すがまさき

魔怪まかいの噛みつきと同時に飛びつく榊原さかきばら

急速に魔怪まかいの顎の下まで移動するとアッパーを繰り出す。

その一撃で魔怪まかいは頭を大きく揺らされる。

そして飛び上がった榊原さかきばらは右腕の前腕につけられているアーマーのような部位にあるボタンを押した。

すると右腕の先からサーベルのような刃が飛び出す。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「片目を貰うぞ!!!」



N→須加 正樹すがまさき

そのままの勢いで目を切りつける。

緑色の血しぶきと共に魔怪まかいが悲鳴を上げ始めた。

榊原さかきばらは大きな声に耳を塞ぐ。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ぬぅ!!うるせぇな!!」



勝田 信二かつたしんじ

「すごい!もう片目を潰した!

これなら…勝てますよ!」



N→須加 正樹すがまさき

魔怪まかいは突如、背から出た足を延ばして身体ごと浮かす。

するとその身体の色が抜けていき、徐々に視えなくなっていった。



勝田 信二かつたしんじ

「なに!!?ど、どこに!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「これが…前の部隊がこいつを見失った理由ね…

いきなり透明化なんてされたら仕方ないわね」



勝田 信二かつたしんじ

「そ、そうか!こいつは特異体だった…!

でもこれじゃあどこに本体があるのかわかりませんよ……!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「いや、俺にはわかる…!理由はわからんが姿が見える!

おおおおおおおおっ!!」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらは大きく空中に飛び上がった。

そして空中で翻り、蹴りの姿勢をとる。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

『エアロ・ストライク!!!』



N→須加 正樹すがまさき

空中で何かを勢いよく蹴り落とす。

その蹴りを受けて地面に大きなものが叩きつけらる音が響く。

中心から不可視がどんどんと解けていく魔怪まかいが姿を現わした。

強い衝撃を受けたためすぐに立ち上がれずに身体をジタバタと動かし続けている。

榊原さかきばらは近くにあった倒木を掴み、持ち上げると走って魔怪まかいへと突撃していく。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「トドメだッ!!!」



N→須加 正樹すがまさき

魔怪まかいの懐に木を突き刺す。

その一撃を受けて魔怪まかいは断末魔のような叫び声をあげると一気に血を吹き出した。

そして次第にその叫びも弱くなっていき、動かなくなった。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「勝った……!!」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらは腕輪をもう一度掴む。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

≪解除≫



N→須加 正樹すがまさき

その一言でスーツがボロボロと崩れていき、中に着ていた装備が見えていく。

榊原さかきばらはふっと身体が抜けたようにしゃがみ込む。

勝田かつたが足を引きずりながら近づくが榊原さかきばらは手を借りずに立ち上がった。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん…凄すぎる!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「はぁ……はぁ……勝ったぞ…!見てたか!勝田かつた!」



勝田 信二かつたしんじ

「は、はい!!

あの…今の装備は一体なんだったんですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なんだったか…

NE-XUSネクサスって名前だが……

あー…悪いがあいつが何を言ってるのかほとんど理解できてなくてな

俺もよくわからないんだ」



東郷 椎菜とうごうしいな

NE-XUSネクサス…?そんなもの聞いたことないわ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

魔怪まかいの身体は固いからそれを使って……あ?

なんだったか?

それを詰め込んで…それがこの腕輪になった

つまり、そうする事で軽くなるとかなんとか」



東郷 椎菜とうごうしいな

「あぁ…そうだったわ

もう説明しないでいいわよ

意味がわからなかったから」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そうか?…そうだな

とりあえず詳しい話はあとだ…

須加すが橘花たちばなを連れて一度山道に向かうぞ…」



東郷 椎菜とうごうしいな

「向かってどうするの?

電波も繋がらないここじゃ助けも呼べないわよね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「こんなところに居てもやれることはない

まずは山道に出てから考えよう」



勝田 信二かつたしんじ

「わ、わかりましーーーー」



N→須加 正樹すがまさき

その途中で銃声が遠くから聞こえる。

空を見上げると少し離れた位置に硝煙が上がっているのが見えた。



勝田 信二かつたしんじ

「あの煙は一体!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「硝煙弾が上がったような煙みたいだけど

私たち以外の隊はもう居ないはずだけれど」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「まさか…救援が来たのか?」



勝田 信二かつたしんじ

「まず、俺たちがここにいることを知らせましょう!」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたがハンドガンで空へと発砲する。

その音を聞いたのかすぐに複数人の足音が聞こえ始める。

草木を分けて現れたのは完全武装をした防衛隊員であった。



勝田 信二かつたしんじ

「あれは…他の隊員か…?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なぜだ……どうしてここがわかった?」



名もない防衛隊員 (須加 正樹すがまさき兼任)

「救援信号を受けて来たH-6隊とG-3隊だ

生存者は全員か?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あ、あぁ…俺たちはF-4隊

隊長の榊原 義弘さかきばらよしひろだ」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

防衛隊員は確認を終えると須加すが橘花たちばな東郷とうごうを背負い運んでいった。

榊原さかきばら勝田かつたは歩いて着いていき、山道へと出る。

そこには残り3部隊はいるであろう隊員らや

複数の魔怪まかいの死体処理班の車

そして救護用の救急車が3台到着していた。

榊原さかきばら勝田かつたは茫然としながら立ち尽くしていると

救急車の後方から出たタンカに腰かけたナースがこちらに来るように手を振っている。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「こっちを呼んでないか?」



勝田 信二かつたしんじ

「そ、そうですね」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

近づくとすぐにその正体がわかった。

榊原さかきばらは憎たらしいその顔を見ると聞こえるように大きく舌打ちをする。



筑波 柊つくばひいらぎ

「やぁ二人とも、まだ生きてるようで何よりだよ」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

担架に座っていたのはナース服を着て飴を舐めている筑波つくばであった。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なぜお前がここにいる?」



勝田 信二かつたしんじ

「え!?筑波つくば…博士!?

医者だったんですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そんなわけないだろ

こいつに人を救う仕事ができるわけねぇ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「言っておくけど医師免許は普通に持ってるからね

それも独学で1週間で取ったほど超優秀さ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「お前が救援を呼んだのか?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「その腕輪で位置がわかったからね

呼んであげたんだよ、感謝してね」



勝田 信二かつたしんじ

「あ、ありがとうございます!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「馬鹿野郎、こんなやつに礼なんてするんじゃねぇ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「ひどいなぁ」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「というか位置がわかってたならなぜすぐに助けを呼ばなかった?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「これは結果だけど

数だけいたところで死体が増えてただけなんじゃない?

特異体を倒すのに必要なのは圧倒的な個か

打ち負かすほどの戦略しかない

頭数だけいても勝てるものじゃないのはわかってるだろ?

もし居たとしてもどうせ君がNE-XUSネクサスを使うことになってただろうさ」



勝田 信二かつたしんじ

「もしかしてNE-XUSネクサスって筑波つくばさんが作ったんですか?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「そうだよ、興味ある?

人体実験には人員が欲しくて君もよかったらーーー」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺の部下まで引き抜こうとするなクソ女!

頭カチ割るぞ!」



筑波 柊つくばひいらぎ

「お~こわいこわい

ちょっとしたお茶目じゃないか

糖分足りてないんじゃないの?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

そうこうしていると榊原さかきばらに他隊員が話しかけると須加すが橘花たちばなの乗った救急車に入るように言われたので着いていった。

残された勝田かつた筑波つくばに話しかける。



勝田 信二かつたしんじ

「あの…筑波つくばさん」



筑波 柊つくばひいらぎ

勝田かつたくん、なにか聞きたいことがあるのかい?

恋人の有無かい?それともスリーサイズかい?」



勝田 信二かつたしんじ

「そ、そういうのではなく!!その…救援を呼んでいただきありがとうございます」



筑波 柊つくばひいらぎ

「あぁそれね

別に感謝を言われる筋合いないよ

私はただもし負けた際にNE-XUSネクサスを回収しないといけないから元々待機させてただけだ

どうやら私を買いかぶってるようだけど

君が思うほど善人じゃないよ私は」



勝田 信二かつたしんじ

「たとえそうでも、俺たちは助かりました」



筑波 柊つくばひいらぎ

「真っすぐだねぇ……」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

そう話していると勝田かつたの体に激痛が走った。

身体の至る所から耐えがたい痛みに襲われ、悶えるように膝をつく。



勝田 信二かつたしんじ

「うがっ!!?ぐぅぅぅ!!!

な、なんだ…!!急に…痛みが!!?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「強いアドレナリンが出てて気づいてないかもしれないけど

今回の任務で君が一番の重傷者だよ」



勝田 信二かつたしんじ

「…ぅ……がぁ……」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

勝田かつたはその場に倒れ、そして意識を失った。

次に気が付いたとき勝田かつたは目を開けると白い天井が目に入る。

病院のベッドで眠っていたようだ。



勝田 信二かつたしんじ

「ここは…?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「目が覚めたか?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

上体を起こして辺りを見渡すとそこは軍管轄の病員の一室のようで

4つのベッドに榊原さかきばら須加すが橘花たちばなが寝ていた。

榊原さかきばら須加すがは携帯を触っており

橘花たちばなは何かの雑誌を読んでいた。



須加 正樹すがまさき

「お!起きたか?

勝田かつた、大丈夫だったか?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「よかった~勝田かつたくんなかなか起きなくて心配したのよ」



勝田 信二かつたしんじ

「そう……だったんですか」



須加 正樹すがまさき

「あれ?橘花たちばなが起きたのいつだっけ?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「昨日の夕方頃だったと思います」



須加 正樹すがまさき

「そっかそっか、勝田かつた

お前は丸3日も寝てたんだぞ?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「でも私たちも2日は起きなかったんですよ」



勝田 信二かつたしんじ

「そんなに…眠ってたんですね

あの…今どういう状況ですか?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「全員こんな感じだから安静休暇になったのよ

前の任務についての説明も一旦後でって指示が出てるわ」



勝田 信二かつたしんじ

「あ、そういえば東郷とうごうさんは?」



須加 正樹すがまさき

「俺らが寝てる間に退院してるらしいぞ

あの怪我の癖に入院じゃなくて自宅療養で大丈夫なくらい無事だってさ

だが見舞いにも来ねぇんだぞ?

薄情なやつだよなあいつ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「でも彼女らしいですね」



勝田 信二かつたしんじ

「そうですね」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

一同は笑い出す。

そうしているとノックの音と共に1人の子供が部屋に入ってきて須加すがの近くまで走ってくる。

どうやら須加すがの娘らしく父親を笑顔で呼びかけた。



須加 正樹すがまさき

「おお!よしえ!それにひろみも…心配させちまったなぁ

わるぃわるぃ!元気になったら遊園地行こうな?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

橘花たちばなの母親であろう人物がたくさんの果物を手下げて入ってくる。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「お母さん!…こんなに買ってこなくても…

でもありがとう!そっか、お父さんは来れなかったんだ…

あ、でもーーーーーー」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

家族団らんで話しているのを見て榊原さかきばらはベッドから立ち上がる。

勝田かつたの近くまで寄ると小声で話しかけた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた、俺たちは一旦出るか」



勝田 信二かつたしんじ

「あ、はい!わかりました」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

榊原さかきばら勝田かつたは病室から出て屋上へと向かう。

勝田かつたは松葉杖でゆっくり歩き、榊原さかきばらは包帯が身体中に巻かれているが勝田かつたよりも軽傷であった。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「せっかくだから家族の時間にしてやろう」



勝田 信二かつたしんじ

「そうですね…」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「流石にタバコはダメだよなぁ」



勝田 信二かつたしんじ

「…やめておいた方がいいと思います」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

屋上の風に当たりつつ、榊原さかきばら勝田かつたの目を見ずに話す。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた、あいつらを守ってくれてありがとな」



勝田 信二かつたしんじ

「あぁ、いえ…俺は何もできませんでした」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「だが死人は出なかった

橘花たちばなも言ってたぞ、立派だったってな」



勝田 信二かつたしんじ

「そうなんですね…なら素直に受け取ります」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「おう」



勝田 信二かつたしんじ

「あの…以前話してた隊長になれって話ですけど……」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あ~それか、忘れてくれ」



勝田 信二かつたしんじ

「その…俺はこれからも榊原さかきばらさんに着いていきたいです」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なんだよ急に?こっぱずかしいな」



勝田 信二かつたしんじ

「俺は榊原さかきばらさんにすごい憧れてるんです

なので、その‥まだ榊原さかきばらさんのようになれるとは全然思えません」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……」



勝田 信二かつたしんじ

「もし、俺が一人前になったら

またこの話をしてください

その時にまた考えたいんです」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

その言葉を聞き、榊原さかきばらは振り返る。

勝田かつたの目を真っすぐに見つめてふっと笑う。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……そうか、そうだな

急ぎすぎたな…悪かった!」



勝田 信二かつたしんじ

「いえ…!俺もすぐに答えを出せず、すいません!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ほらよ」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

榊原さかきばらはゆっくりと手を差し出す。

勝田かつたは首を傾げるが、その握手に応じようとする。

その瞬間、榊原さかきばらは力を入れてその手を強く握り締めた。



勝田 信二かつたしんじ

「いっ!!!痛たたたたたっ!!

榊原さかきばらさん!!なにを!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「はははは!!悪ぃ悪ぃ

ちょっとした悪戯心が出ちまっただけだ」



勝田 信二かつたしんじ

「本気で痛かったですよ…

入院中の身でよくそんな力が出ますね…」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺は鍛えてるからな!

お前がまだまだヒヨッコだったって事だ

これからもビシバシとしごいていくからな!

覚悟しろよ、勝田かつた!」



勝田 信二かつたしんじ

「はい!」



N→須加 正樹すがまさき

そう言いながら笑いあう二人の声を屋上の扉から除く東郷とうごうは鼻で笑った。



東郷 椎菜とうごうしいな

「師弟か……見てて暑苦しいわね」



N→須加 正樹すがまさき

携帯を取り出し、着信をかける。



東郷 椎菜とうごうしいな

「そういうわけで何とか私は生き残れたわ

それで、代永しろながについての情報はあるの?

…………そういう事…ね

……だから最初の部隊が消息を絶ったわけね…納得だわ

二宮にのみや、今回は情報提供してくれたこと感謝しておくわ

それじゃあさようなら…」



N→須加 正樹すがまさき

着信を切ると東郷とうごうは再び勝田かつたの方を見た。



東郷 椎菜とうごうしいな

勝田かつたさん、私を止めてみせるって言ってたけど

口先だけじゃないかどうか、楽しみにさせてもらうわね」



N→須加 正樹すがまさき

東郷とうごうは携帯に登録された名前

筑波 柊つくばひいらぎの文字を眺めながら先の事を思い出していた。


先の事件が終結した際に時は戻り

東郷とうごうは担架に腰かけて待機していた。

そこにナース服を着た女性が歩いてくる。



筑波 柊つくばひいらぎ

「君が東郷とうごうって子だね

ちょっと話いいかい?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「いいけれど、貴女は?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「私は筑波 柊つくばひいらぎ

名前ぐらいは聞いたことあるんじゃないかな?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「そんな有名な科学者さんが私に一体なんの用?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「君の復讐相手、それについての手がかりを知ってる」



N→須加 正樹すがまさき

その言葉を聞いた瞬間

東郷とうごうの目が変わった。



筑波 柊つくばひいらぎ

「良い目だ。殺意っていうのかな

目は口程に物を言うというがその通りだね」



東郷 椎菜とうごうしいな

「私に何を求めてるの?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「フフッ話が早いね

条件は簡単さ

君は榊原さかきばらくんが使ってたアレ見てたよね」



東郷 椎菜とうごうしいな

「えぇ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「アレに使用者の実験データが必要でね

とはいってもアレに適合するようなのってそうそう見つからなくてさ

そこでだ

君が協力してくれるならその見返りとして情報提供しようじゃないか」



東郷 椎菜とうごうしいな

「……なぜ貴女がそんなことを知っているの?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「私は顔が広いんだ

それじゃ納得できないかな?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「そう……ね。貴女が嘘をついていないという保証はない

けれど現状手がかりがなかった

協力するわ」



筑波 柊つくばひいらぎ

「即決してくれて助かるよ」



N→須加 正樹すがまさき

筑波つくば東郷とうごうにすっと手を差し出す。



東郷 椎菜とうごうしいな

「なに?」



筑波 柊つくばひいらぎ

「交渉成立だろ、素直に取ってくれたまえよ」



N→須加 正樹すがまさき

東郷とうごうはその手を取る。



筑波 柊つくばひいらぎ

「それじゃ…色々とよろしくね

東郷 椎菜とうごうしいなくん」



N→須加 正樹すがまさき

階段を下りながら微笑む東郷とうごうの顔。

その瞳には未だ晴れることのない闇が立ち込めていた。



N→勝田 信二かつたしんじ

先の事件は数日の時間を空けて終息することとなる。


代永 丈しろながじょうは危険指定犯罪者として指名手配された。

犠牲となった代永しろながの隊員が証拠となったのだ。

だが魔怪まかい対処に当たった最初の部隊の消息は未だわからないままであった。


今回の任務を受け

橘花 真由美たちばなまゆみ東郷 椎菜とうごうしいな勝田 信二かつたしんじの3名は特異体撃破の功績により1階級特進。

須加 正樹すがまさきは階級に変動がなかったが全治数ヶ月の怪我を負った為、特別休暇と手当が与えられた。

榊原 義弘さかきばらよしひろはその指揮を執りつつ、魔怪まかい撃破の功績が称えられ異例の2階級特進を果たした。



こうして事件は解決したが、彼らの戦いは終わらない

彼らは命を張り前線で戦い続ける

例えどれだけの兵士が犠牲になろうとも……

兵士たちは命を賭ける

救済を求めてただひたすらに






神ガ形ノ意志ニ背イテ 伍話   完

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

利用規約

ミクロさん台本を動画、配信で使用するのは全てご自由にどうぞ



・アドリブ演技に関して

この台本はアドリブを入れる事を前提として書いています

なので演者様方の判断で挟んで頂いて構いません

是非素晴らしい演技にアクセントをつけてください

しかし作風に合わないものはご遠慮ください


・性別変更や比率に関して

作者はあまり好ましくは思っていませんがある程度ならば可とします

そのある程度の境界線は他の演者様たちとの話し合いに委ねます


・特殊なものについて

台本を演じる際に読み込まないで演じる行為や

言語を変える、明らかに台本無視と取れる

特殊な行為をするものは認めていません

流石に読み込んで普通に演技してください

多分そうじゃないとこの台本は演じれないです


二次創作等、商権利用問題のある場合、質問や不明点ございましたら

作者のTwitter

https://twitter.com/kaguratizakura

のDMにてご連絡ください

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る