神ガ形ノ意思ニ背イテ 肆話
登場人物名
32歳
大雑把な性格だが、部下を率いる防衛隊の一部隊の隊長。
説明下手でよく
任務中ではかなり頭が回り、戦場をかけている。
24歳
熱い正義感と無鉄砲な若さを持つ新人隊員
士官学校卒の元警官であったが、
任務より目先の命を優先することが多く、危険な目に合うことが多い
30歳
部隊の中では狙撃を務める事が多く、高い位置からの索敵が得意である
29歳
渋谷のバーでバーテンダーをしている男性
とある事件により視力がほとんど無いらしい
49歳
大雑把でガサツな性格だが実力は確かで引退後の現在も英雄譚が受け継がれている
現在は記者をやっているようだが、身の上話をしないためどこに属しているかは不明
36歳
嫌味を言うような性格で
金こそ全てという性格の持ち主
射撃技術や統率能力は高く、そこだけを言えば
※
27歳
戦闘では弾幕を張ったり、他隊員の立て直しの時間稼ぎや
※今回ほとんどナレーションになります
年齢不詳
マッドサイエンティスト気質な女性
未だ研究結果を世界に公表することなく、自身のみで使っている
現在はなにか新たな兵器を製造することにご執心の様子
19歳
学園を卒業し、何かの目的を以て部隊に所属した。
自分の実力を疑わず、隊員と特に
かなりの実力者で、
Nは→後のキャラ演者が読む
※所々交代があるので注意してください。かなり大変です。
・
突如世界に現れた「
Variant Hunt Army通称
自衛隊や警察組織と違い、独立した権力を持つ
一般人や学園卒業者の中で実力保有者が入隊することができる
・
2000年に突如現れた異形の生命体。
理由や目的は不明だが人類を脅かす存在。
現れた当初は世界でも数十体しか確認されなかったが、年々数を増やしていた。
出現方法も繁殖方法などは不明となっている。
生物が
一部では神の使い等と吹聴ふいちょうしている宗教までいる。
・
その素性、人員、目的一切が不明のテロ集団
突如姿を現れては殺戮を行う事から市民から恐れられている
役表
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
神ガ形ノ意思ニ背イテ 肆話
N→
どれだけの時が過ぎようとも変わらず彼女を責め立てる。
その日を境に全てが変わった。
その日を境に全てが終わった。
ただずっとそれを見続けるだけ
そんな悪夢は慣れることなく常に彼女を追い詰めた。
化け物が狼煙をあげて現れる。
そんな中、我先にと逃げ出した男。
憎き男の姿を捉える寸前にいつも目が覚めてしまう。
「はぁっ……はぁっ………はぁっ………!!」
N→
激しい心音と息苦しさが襲ってきたが、少しすると落ち着いてくる。
どうやらテントの中で眠っていたらしい。
外の兵装車から
隣には
「また……夢…ね」
「……大丈夫ですか?」
N→
再び眠りにつく
「…なんでもないわよ、気にしないで」
「悪い夢でも見たんですか?」
「悪い…夢……まぁそんなところよ」
「なにか飲み物でも持ってきますか?」
「余計なお世話はいいからさっさと貴方も寝たらどう?
いつ起こされるかわからないわよ」
「わかりました、それではおやすみなさい」
「……」
N→
昨日の疲れもあり、眠気がすぐに襲ってくる。
寝付くまでそう長くないだろう。
あの写真に写っていた男。
もしかしたらという疑念が頭をよぎる。
そんな考え事をしていたら、眠気が襲ってきた。
「……」
N→
このまま起きていても仕方がないので目を閉じることにした。
それから数時間後
テントの中で寝ている三人と車で寝ていた
「お前ら、起きろ!
そろそろ集合の時間だ」
「…あぁ、もうそんな時間か」
「集合するといってもどこに向かうんですか?」
「近くにある山道を車で走って途中で落ち合う流れだ
互いに右側走行してたらどこかで会うだろ
ここは電波が届かねぇからな
ある程度近づかないとあっちに報せも送れねぇ」
「信号弾を打ち上げるのではだめなんですか?」
「もし
まずは合流して情報交換だ
あっちは何か察知できてるかもしれん」
N→
一同はテントを片付けると車に乗り込む。
銃などの装備を収納し、車移動での軽装備に着替える。
「他の隊は誰が指揮しているんですか?」
「…
「あいつか…また面倒なことになりそうだな」
「面倒…とはどういうことですか?」
「あーーーそいつがムカつくって話だ」
「隊長はその
「どんな人なんですか?」
「厭味ったらしい奴でな
仕事じゃなきゃ何度もぶっ飛ばしてる」
「そ、そうなんですか?」
「お前も多分気に入らないと思うぞ」
N→
その写真は防衛隊の複数人で撮ったであろう写真で
装備に似合わぬ金色の時計を身に着けており、他の隊と人物と比べ装備が綺麗であった。
「小綺麗な装備しやがって
戦場を舐めてるのか、あいつは」
「俺も
指揮能力や射撃能力は間違いないんだが性格が…端的に言うとクソだ」
「そこまでなんですね…?」
「その人はいつから防衛隊にいるの?」
「さぁな?詳しくは知らねぇ
親しくもなんともないからな
ただ俺と3年ぐらいしか差がないはずだ
階級もあっちが上だが、全く尊敬の念がわかん」
「物言いが厳しいので私も苦手です」
「あんなのを慕う奴の気がしれねぇな」
N→
まるで睨まれているような圧力を放っている。
「
「なんでもないわ、気にしないで」
「は、はい。わかりました」
N→
再び
現在、兵装車は山道を走っていた。
山道は崖際に沿うように作られている。
道路の下では川が流れており、水音が窓を開けると聞こえてくる。
近年手入れのされていないエリアのため道が険しくなっていた。
だが舗装されているため草木はないので走行に支障はない。
「前から車の音がするな
あっちも到着したか?」
N→
反対車線から兵装車が走ってきた。
お互いに車を停めると先ほど写真で見た
「さて、到着か…とりあえずお前らも降りろ
座ってて疲れただろ
話し終わるまで待機だ」
N→
見たことのない顔が多く、新人か他の隊からの異動で構成されていることに気がつく。
そして
「きちんと時間通りに来れたようだな
「あぁ、そっちは問題なかったのか?」
「愚問だな、そんなヘマはしない」
「そうか、それならよかったよ」
N→
以前任務を共にしたときにあった傷がなくなっていた。
それだけでなく目立つ汚れが何一つなく綺麗な装飾まで着いている。
「随分と綺麗な装備だな
買い直したのか?」
「新調しただけだ
ボロい服装だと良い仕事もできないだろうからな
お前らもそうした方がいいんじゃないか?」
「余計なお世話だ」
「はっ…!あーそういえば数日前まで謹慎処分を受けていたんだったか
そんな隊だと、さぞボーナスも少ないだろうな」
「そんなことはどうでもいいだろ
それより
「さぁな、こちらは目撃してない
お前らが見逃したんじゃないのか?」
「そんなわけがないだろ
こんなに消息がつかめない事なんてそうあるもんじゃない
俺らは特異体が出たのではないかと予想してる」
「特異体…か
その可能性はあるだろうが、まだ断定するには情報が足りていないな
それよりはお前らの休暇ボケのせいで見逃す方が確率が高いと思うがな」
「俺の隊を疑うってのか?
なら言わせてもらうが、そんな装備に気を遣うほどだ
そっちこそ注意散漫になってたんじゃないのか?」
「お前らと一緒にするな」
N→
二人が会話をするのを聞いていた
「毎回あんな感じなのよ
以前は取っ組み合いにも発展したことがあったのよ」
「どおりで…
「
「…そうですね」
N→
話をしていると、どこからか草をかき分けるような音が聞こえた。
「なにか音が…?」
「え、どうしたの?」
「上の方から音が…」
N→
勝田が指さした方向は崖の上であり、山道を見下ろすように木が生えている。
風とは違う不自然な草木の揺れがしていた。
「…気のせいですかね?」
N→
突然それは現れた。
甲高い鳴き声が頭上から響く。
山道の上から姿を現した
着地と合わせて腕を振り下ろし、兵装車を強い一撃で吹き飛ばす。
横転した兵装車は車内にある火薬が引火してしまったのか二台とも爆発してしまう。
爆風を受けて、車に一番近かった
「なっ…!!どうなってるんだ!!?
まさか車を狙うなんて…」
「こいつが…目標か」
「くそ…そんな知能があるわけじゃないな
でかい的を先に狙いやがったってことか…最悪だ」
N→
その足はとても太く、先端が道路のコンクリートに突き刺さっており凄まじい威力であることを物語っていた。
突然の
「なんでいきなり!?」
「そんなのわからないわ!!」
「こんなことになるなんて!!」
N→
サブマシンガンを車の中に入れていたため、現在装備してある武器はこれしかなかったのだ。
15発の銃弾を撃ち込むが効いている様子はない。
「くそ!!こんな銃じゃダメなのか!?」
N→
狙いを定めたのか、口から大きな舌を出すと横から鞭のように薙いだ。
「しまっ…!!?」
「
N→
しかし回避が間に合わなかった
「ぐわあああ!!」
「なっ!?
N→
空中に浮かび上がった
「隊長!!?そ、そんな!!」
「マジかよ!!……おいおいおいおい!
この高さ…流石にやべぇぞ!?」
N→
川の流れは激しく、完全に見失ってしまった。
「嘘だろ…こんな事が…!?」
「くそ…いきなり車をやるなんて卑怯だってぇの!
こんな武器でどうしろっていうんだよ」
「助けを呼ばないと…!」
「助けを呼ぶって誰にだ!?
ここからじゃ電話すらできねぇんだぞ!」
N→
「各員一時撤退する!着いてこい!」
「こういう時はどうするのよ…!
隊長になってって言われたんでしょ!指示しなさいよ」
「お、俺がですか!?」
「他に誰がいるのよ…時間は稼ぐわ!」
『
N→
その連射が目を掠めたのか少しだけよろけたが、傷は浅いようだ。
「全然効かない…今ここで戦っても勝てないわね」
「俺が……指示を?」
N→
隊長になってくれと頼まれたあの日の言葉。
そんな覚悟はまだできていない。
しかし、
「俺たちも撤退します!!
手持ちの煙幕を張りましょう!」
「わ、わかった!」
「りょ…了解!!」
N→
閃光が走ったあと、煙が立ち込め
「今です!逃げましょう!!」
N→
しかしなぜか
「
N→
煙幕の中に消えてしまい、見えなくなってしまった。
「お、おい!
「
「待てよ!俺らはどうしろって…」
N→
「くそぉ!!
「わ、わかりました!!」
N→
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから少し経ち、
「どこに行ったの?」
N→
山道は長い直進になっていた。
遠くには隊の姿が見えない。
歩いていると途中で曲がり道を見つける。
そこは山頂に向かって続いているようだ。
「どこに続いているの?」
N→
曲り道を進んでいると舗装された道から外れていく。
足元がコンクリートから土になっていったため
前に通った者の足跡がはっきりと残っていた。
そこには数人の真新しい足跡がある。
「こっちに進んでいる…」
N→
少しずつ進んでいくと山頂に何か建物が姿を見せ始める。
旅館のような作りの古い建物だ。
「この辺りに建物はない…
とすれば、あそこに向かいそうね」
N→
少し歩いていると木々が分かれていき徐々に旅館が姿を現わした。
古風な造りの廃旅館のようで、窓は割れ雑草が辺りを覆っている。
1970年築と読み取れる部分から年季を感じ取れた。
どうやらこの道はそこの駐車場に向かっているようだ。
数人の足跡もそこに向かって続いている。
「やはりね…絶対に逃がさない…」
N→
いつ接敵しても良いよう銃を抜き、少しずつ進んでいく。
駐車場には姿は見えない。
どうやら建物の中に入っていったようだ。
「
N→
突如、後ろから声がする。
振り返るとそこには
「着いてきてたのね‥‥何の用?」
「何って…どうしていきなり離れていったんですか!?
「それが何?貴方には関係ないわ」
「そんなわけないじゃないですか!
急に同じ隊の仲間がいなくなったら追いかけます!!」
「あぁそう。そう言いそうだものね
私は無事だから放っておいて」
「
N→
「
もしかして…前に言ってた誰かを殺すって言ってたのに関係があるんですか?」
N→
普段のひょうひょうとした顔付きではなく険しい表情になる。
「案外、察しがいいのね
でも余計な詮索はしないで貰える?」
「…そうは行きません」
「そうよね、貴方…とても頑固だものね
いいわ、少しだけ教えてあげる」
N→
「私の父親はね、ニュースにもよく出るような有名な政治家だったのよ
そして私の母親はそんな父親に献身的に尽くし、次第に娘が生まれたの
とても幸せだったわ
愛情をもって育てられていた」
「
まさか
「父は次第に仕事が忙しくなっていった
政府内の闇を暴く方針を掲げたの
無能な政治家や賄賂の出資だったりね
そして、それが世間に賞賛された
そのせいで帰ってこれない日が増えていった
でも時間のある日は私と遊んでくれた
そんな父が好きだった
私が7歳になる誕生日のこと
嵐が来ていて、強い雨が降る日だったわ
今日は家に帰ってこれないって聞いてね
私は泣いてたの
だけど父は帰ってきた
仕事に区切りをつけて急いで帰ってきたわ」
「すごくいいお父さんだったんですね」
「プレゼントを買って帰ってきたの
とても嬉しかった
私はとても喜んだわ
でも、そんな幸せな時間は続かなかった
ノックがしたの
こんな雨の中来るなんて最初は不思議に思うでしょ
でも父は仕事疲れで考えが及ばなかったんでしょうね
扉を開けてしまったの」
「…なにがあったんですか?」
「突然の事だった
父が扉を開けたと同時に倒れたの
そして中に6人もの男が入ってきた
そう、父は一瞬で殺されたのよ」
「え…殺された!?
何者だったんですか!?」
「さぁ…ね
そいつらは父を殺すと私たちを狙ってきた
母は私を逃がそうとしてくれたけど、後ろからも2人が入ってきていて逃げることもできなかった
私と母はそのまま押さえつけられたわ
抵抗もできないまま私たちは暴力を振るわれ、罵声を浴びせられ、辱められた」
「そ、そんな……こと」
「抵抗したけど、それに怒った男は私を殴りつけてきた
私はもう泣くことも叫ぶこともできなかった
そんな私を助けようと母が男に掴みかかった
焦った男はナイフを母に突き刺したの
それから母は動かなくなった」
「なんて…残酷なことを…!!」
「そんな時、急に
流石にただの犯罪者集団には勝てる相手じゃなかった
一人だけ逃げ出した奴がいた
リーダー格だったんでしょうね
腕に高そうな金色の時計をしていた奴だけはいち早く逃げていたけど
そいつ以外は全員殺された
そいつらが粉々にされた肉片や血だまり
そして最後の力を振り絞って私に被さってくれた母親の残骸に塗れたおかげで
私は殺されることなく生き残った
皮肉なものよね…
そして……その頃からすべての幸せを失った」
「………そんな」
「それから楽しいと思う感情すべてが私の中からなくなった
どんな不味いものでも味を感じない
どんな人が死んでも心が痛まない
何をしても楽しくない、何があっても嬉しくない
全てあの頃に失ったの…」
「そんな過去が…あったんですね……
じゃあ
「そうよ…これが私の戦う理由
本当は人命なんてどうでもいい
貴方たちの命だって、
私の中にあるのは復讐だけ…」
「理由はわかりました…
でもそれが今回離れた理由となんの関係があるんですか?」
「貴方は気づかなかったわけ…?
あの
N→
そこで
「まさか…
で、でも
なにかの見間違えじゃーーー」
「見間違えたりしないわよ!!」
N→
怒声を上げる
かつてない雰囲気を醸し出す姿に
「何度だって夢で見てきた!
あの男の姿形……それに声だって……!
毎日のように聞いてきた……
毎日のように思い出してきた!
毎日のように苦しめられてきた!!
それを間違えるなんて…ありえないわ!」
「そ、そう…だとして……
なぜ
「そんなこと知らないわ…でも必ずあいつは私が殺す
たとえどんな理由があったとしても…許すわけにはいかない」
「で…ですが……!」
「もういい…貴方とこれ以上話しても無意味なのはわかったわ
そろそろ邪魔だから消えて貰える?」
「待ってください!」
「邪魔をする気なら…容赦しないわよ
たとえ貴方であっても殺すわ」
「
貴女を人殺しにさせるわけにはいきません!」
「出来るならやってみなさいよ…」
N→
そして同時刻、
川の流れは
二人は川を下りながら
「おぉーーい!!隊長!!
生きてたら返事をくれーーー!」
「隊長ーーーーっ!!お願いです!!
…返事をしてください!!」
N→
呼びかけもむなしく応答はない。
川岸を逆登りながら
生きている保証はない。
しかし諦めずに呼びかけを続けた。
「
「そんなわけねぇ…!
あいつはこんなんでくたばったりしねぇ」
「やはり…助けを呼んだ方が…」
「どうしようもねぇな
助けを呼ぶにしても電波が通るところまで数時間はかかる
それまで襲われない保証はない
兵装車が壊された時点で装備も退路も尽きてる
もう…かなり不味い状態だ
ちくしょう…こんなことになるなんて…」
N→
落ち着かないようでライターを付ける手も震えていた。
「
「あいつらを信じて俺たちは隊長を探すことに専念するぞ
必ず生きてる…俺は信じてる
あれだけあの人のしごきを耐えてきたんだ…
こんな程度…屁でもねぇはずだ!
そうだろ…
N→
一方、
その腕を懐に飛び込まれた際の裏拳で弾かれ、腹に拳を受けた。
「ゴハッ!!」
「はぁっ!!」
N→
怯んだ隙に足を蹴りで薙ぎ払う。
その一撃で態勢を崩した
「ぐああぁあっ!!あっ……ああぁ……」
N→
地面に叩きつけられた衝撃を受けて肺を圧迫された。
咳き込む
「待って…ください…!」
N→
「…立ち上がる精神はすごいと思うけど
無謀でしかないわよ」
「それでも…止めないと……いけないんです!」
N→
立ち上がった
「ぐはぁあっつ!!」
N→
回避する余裕もなく再び地面に倒れ伏した。
「ほら、これも避けれないじゃない」
「ぁっ…が……あぁ…」
「もう寝てなさい、はっきり言って邪魔よ」
N→
しかし再び背後から立ち上がる音がした。
「貴方もしつこいわね
どうやっても貴方じゃ私には勝てないわよ
100回やっても100回私が勝つ」
「うぐっ……そう……ですね……
俺と…
こんな…差が……あったんですね」
「だから…邪魔しないでって言ってるのよ
流石に見知った顔を痛めつけるってのは気が引けるわ」
「復讐して…どうするんですか……」
「…は?」
「それで…両親が喜ぶと思ってるんですか…!?」
「……何が言いたいの?」
「もし…
両親のためになるっていうんですか!!?」
「……」
「そんなことをしても…両親は帰ってこないです!
それに…
「さっきからゴチャゴチャとうるさいわね!
えぇそうよ!間違いなく喜ばないでしょうね!
でもだから何っ!?
私はこれだけを望んで生きてきたのよ!
それを貴方に否定される言われはないわ!!
貴方ごときゴミに何を言われてもちっとも響かないわ!」
N→
その瞬間、なぜか
「はっはははは!」
「なに?おちょくってるわけ…?」
「いえ…そういうわけじゃなくて、すみません!
突然笑ってしまって…
俺がゴミですか……ハッキリ言いますね…
「それがどうしたのよ」
「いや、その…
「は?」
「初めて会ったときからずっと
機械のような人だなって勝手に思ってたんですけど
そんな人間らしい感情を持ってたのが…嬉しくて
笑ってしまいました」
「貴方って…気持ち悪いわね」
「さっき
俺の話をしてもいいですか?」
「……聞くのはいいけど答えるかはわからないわ」
「ありがとうございます
俺は…学生だった頃は遊び惚けてました
バカ騒ぎして…ヤンチャしたりするのが楽しくて
夜遊びも毎日のようにしてたんです
「なに…?私が老けてるとでもいいたいの?」
「あぁ…そうじゃなくて
その、大人びてるといつも思ってました」
「あぁ、そう」
「そんなある日、悪い遊びをしていた時にヤクザに絡まれて
俺と友人はボコボコにされてしまいました…
そんなとき警察の人が助けてくれたんです
俺の目には小さいころに見たヒーローのようにかっこよく映りました」
「へぇ」
「それで俺は警察に憧れたんです
警察になるために必死に勉強して、必死にトレーニングもしたんです
努力のかいあって晴れて警察官になれました
その配属初日に、
俺の先輩たちはみんな民間人を置いて逃げていってしまいました
必死に頑張ったのに
なんだ…警察なんてヒーローじゃなかったんだって幻滅しました
そんな俺を助けてくれたのは…防衛隊の
「そうなのね、それでそれがなに?」
「そんなヒーローになりたくて俺は
俺のヒーローは
だから俺は…
「そうなのね、でもそのヒーローが今や生死不明になってるわよ
そっちを助けにいったらどうなの?」
「俺は…
必ず無事だと…だから俺は俺のやるべきことをやります」
「それで…私の復讐の邪魔をするっていうの?」
「邪魔をする…というのは少し違います」
「何が違うの?」
「俺も手伝います
ただし、殺すという方法以外でなら…俺も力を貸します」
「は?どうするっていうの?」
「わかりません…ですが必ず事実を明らかにしてみせます」
N→
呆れた顔になると、構えを解いた。
「貴方と話していると疲れるわ
それで、どうすーーーー」
N→
突如、銃声が鳴り響く。
その弾道の先、
「…くっ!?隠れて!!」
「なにっ!!?」
N→
二人は駐車場にあった廃車の陰に隠れた。
どうやらこの建物の中から撃たれたようだ。
その顔の近くを弾が掠めた。
「いったい誰が…!?」
N→
「いきなり撃たれたってのにいい対応だ
あんな隊の新人だっていうから簡単に殺せるかと思ったが…そうもいかないみたいだな」
「お前が‥‥
「さっき車を降りた時からずっとお前…
俺を殺してやるとばかりに睨んできやがったな
一体なんだっていうんだ?
お前に覚えがないんだが?」
「そうなのね…どうせ覚えてないでしょうね
あんな前の事なんだから…」
「何の話だ?」
「
「よく覚えてるよ
勝手に
報酬を一挙取りできて美味い依頼だったよ」
「仲間を…!?なぜそんなことができるんですか!?」
「お前はほんと暑苦しいな
阿保の隊長によく似てやがんよ
簡単な話だ、仲間が死ねば報酬の分け前が増える
ただそれだけだ
特別ボーナスってもんだ」
「そんな理由で……金目当てで殺したっていうんですか!?」
「その通りだ
この世は金が全てだ
なにからなにまで金で解決できる
だが、俺のような身分じゃ一攫千金なんて夢のまた夢だ
そんな俺が現実的に稼ぐ手段は一つ
どんな汚れ仕事でも受けることだ
たとえそれが人道に反することでも金さえ稼げりゃ万事よし」
「そういう人種が一番嫌いなのよね…」
「そうかいそうかい
気が合うな、俺もお前らのようなのが大嫌いだ」
N→
こっそりと
その刃を鏡のように反射させて位置を確認した。
「三階から撃ってたのね…まずは建物に入らないと…」
「撃ち返すにしても…弾がもうないんです…
あとは全部兵装車に入ってたので…」
「私もさっきので空っぽよ
なんとか抜けていかないと…
次にあいつの射撃が切れたら走りだすわ」
「わかりました…」
N→
数発の射撃があった後、隙が生まれる。
その瞬間に二人は飛び出そうとした。
だが、足を踏み込む寸前
目の前に手榴弾が落ちるのが視界に入る。
「なっ!!?」
「嘘っ…!!」
N→
小規模の爆発が起きる。
手榴弾の爆発はちょうど二人が飛び出すタイミングだったため
咄嗟に直撃を避けることができた。
「なにをやってるの…!?起きなさい!」
「があぁ……ぁっ……」
「っ…!置いていくわ
悪く思わないでね」
N→
爆発の衝撃を受けて
「
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
N→
視点は移り
川沿いを歩いていた
「今のって…もしかして
「この音の感じ…手榴弾だな
だがそれにしては…」
「もしかしたら
「待て
今行っても俺たちにできることはーーー
………っつ!!!
静かにしろ!!なにか流れてくる音がする」
「何かって………?」
N→
二人が耳を澄ませていると何かが流れてくる音がした。
上流を見ているとそこから人が流れてきているのに気がつく。
「おい、まさかあれって」
「隊長!!」
N→
流れてきていたのは
意識がないのか力なく流されている。
「死んでんじゃねぇぞ
N→
足がギリギリ着くほどの深さだったので、苦戦することなくゆっくりと陸地へと近づく。
途中で
「息してねぇじゃねぇか…!ちくしょう!!
「はい!私がやります!!」
N→
「隊長…!!お願いですから!!息をしてください!!」
「ちくしょう!!部下を守る前にお前が死んでどうすんだよ!!
あのおっさんのしごきも耐え続けてきたろうが!!」
「…そうですよ!!
今もしかしたら
隊長ッ!!!!」
「……ゴハッ!!……ゴホ…ゴホッ……!!」
N→
「隊長…!よかったぁ……心配したんですからね!!」
「
「よく…生きてたもんだぞ……
あの崖から落ちて生きてるなんて…よっぽど死神はお前が嫌いらしいな」
「崖………あぁ…そうか
「あぁ…何から何まで運がいいなお前
最後の一本だ、吸うか?」
N→
それを受け取り、拳銃の撃鉄の火花で火をつける。
「ふぅ……はぁー………
あの後……どうなった?」
「あの後、
ただ途中で
「あの二人が?…どこに行ったかわかるか!?」
「さっきまで銃声がしてたんだが…今はしねぇな」
N→
三人は息をつきながら装備を見直す。
「俺の装備はほとんど流されてるな…
あるのはナイフだけか…」
「俺はハンドガンが一丁、マガジンは3つしかない
武器がないんじゃ打つ手がないな…」
「私もバヨネットとハンドガンが一丁です
マガジンは兵装車の中に置いてきてしまいました」
「まずいな…こんなものじゃ勝ち目がない
……待て、そういや
「私たちと逆の道を進んでいったのは見てましたがその後はどこに行ったかまでは…」
「そんなに離れてはないと思うが
なんにせよ居場所の検討なしに見つかるとは思えないな
たださっきの銃声と
「待て、
「
もしかしたら合流しているかもしれませんが…」
「なんだと…?それは…まずいな」
「まずい?どういうことだ?」
「実は…一つ調べていたことがあってな
というかほとんどは人に任せてたんだがな
「
「あぁ、実はあいつの父親は有名な政治家でな
対テロの政策を行うようなすごい人だったらしい
だが、ある日
両親ともども殺されてしまったんだ
「そんな…」
「だが、調べていくうちに不審な情報が浮かび上がってきたんだ
その現場の死体の数…明らかに多かったんだ
護衛として4人の見張りが外にいたのと
使用人が3名、そして両親と
だが見つかった死体の数は18人だった」
「え…?それって、他にも被害者がいたということですか?」
「いや、違う
被害者宅は政治家のものだ
外といっても敷地はかなり広い
関係者以外が普通に入る事はできないんだ
その建物内以外の被害はかなり少なかった
かなり早い段階で防衛隊の到着もあったんだ」
「なんだか気持ちが悪い一件だな
その増えていた8人ってのはなんだったんだ?」
「…全員、指名手配をされている犯罪者たちと思われる」
「犯罪者…!?どうしてそんな人たちが?」
「名の知れた政治家なんだろ?
恨まれてるなんて事は特段おかしくはない…が
それにしても違和感を覚えるな」
「ここからは俺の予想も入るが
おそらくその襲撃をしたのはテロリスト…
いや、
だが実行犯は違い、指名手配犯たちに依頼をした…といったところだろうか
以前も似たような事件があった」
「
「そうなってくると気持ちが悪いぐらい嫌な事件だな」
「え、どういうことですか?」
「もし
だが、実際にはデマ情報が公開された
端的に言うと、政府が一枚絡んでんだろ」
「政府が……それって隠蔽したってことですか!?
そんなの…大事件じゃないですか!?」
「クソみたいな話だろ
だが、今までも何度かあったんだ
それに関わった者は2種類を迫られる
闇を知りつつ
闇に怯えて終いには命を狩られるか…
唯一と言っていい例外があるとすれば
…世の中ってのは想像以上に汚れてやがるんだ」
「あの人だけはおかしいだけだ
闇を恐れて逃げ出したやつはどうなったか分かるか?」
「…どうなったんですか?」
「一人残らず消された
それ以上は言わなくてもわかんだろ?」
「そ、そんな…」
「言っただろ、知らない方がいいってな」
「それはそうと話を戻してくれ
なぜ
「普段あれだけ無表情の
昨日の晩…写真を見せた時に人を憎んでいるときの目をした
あの目は演技で出来るものじゃない
相当な決意がこもっている目だ
あの写真にいて、この場にいるのは俺と
その正体は間違いない………殺意だ
理由はわからないが、
「だとして、遭遇したらどうなる?」
「…殺し合うことになるかもしれない」
「そ、そんな…!
もし2人が戦ったらどうなるんですか?」
「普通に戦えば
だが、殺し合いは実力だけでは勝敗は決まらない
今あいつらがいる場所の予想を教えてくれ…」
「おそらくは先ほどの山道を逆に進んだ先…としか」
「いや、待て
あの爆発音はあれよりも高い位置からの爆発だった
山頂にかけて進んでいたんだろう」
「わかった…
お前らはここで待機していろ
俺はこのまま行ってくる」
「待ってください!
一人で行くつもりですか!?
そんな身体で無理ですよ!」
「
どうせ何言っても聞かないんだろ
行ってこい
俺らはここで待機してる」
「そ、そんな!!?
見殺しにするつもりですか!?」
「そんなわけないだろ…
必ず部下を殺させやしない
それに…俺の命にはお前らとはまた違う重さがある
部下を守るために真っ先に俺は生きなきゃいけない!」
「ッ…………わかりました
お気をつけて…」
「俺たちは俺たちで動くぞ
何かあった時は銃声を5発、秒間で鳴らす」
「あぁ、頼んだぞ」
N→
残された
N→
視点移り
銃が使えないのですぐに交戦してもいいように常に細心の注意を払って進む。
「三階…から撃ってきていた
それから移動した音は聞こえていない…
まだ同じ階層にいるはず…」
N→
長い廊下が広がっており、客室であろう部屋がいくつか並んでいた。
しかしどこも扉がなく、どこから敵が出てくるかわからない。
その時、奥から声がした。
「さっきからなんなんだお前は?
どうしてそこまで俺を狙ってくる?」
N→
廊下の奥から声が聞こえてきていた。
どうやら奥は大広間のようで、広い空間があるようだ。
「……聞きたいなら姿を現しなさい」
「いいだろう、そのまま真っすぐ向かってこい」
N→
ひらけた大広間の奥には
そしてその近くには兵士たちが頭から血を流して倒れている。
「あぁ、こいつらか?
急な
パニックってのは恐ろしいものだな」
「えぇ、恐ろしいわね
全員が後頭部を一撃でやられるなんてどういう偶然かしらね
「…ところで質問があるんだが
お前は一体なんなんだ?
どこからあの事件を知った?
11年も経ったんだ
時効だ、時効」
「そうね…もう11年も経っているのね」
N→
その表情には怒りと殺意が宿っていた。
「でもやっとこの時が来た…!
貴方を殺す時が…」
「おいおい…ここでいきなりドンパチ始める気か?
わかった…そんだけ俺を殺したい気持ちは十分伝わったよ
だが、先に聞かせてくれ
お前は一体なんの恨みで俺を殺したい?
悪いがお前の顔に心当たりがないんだ」
「そうよね…教えてあげないといけないわよね
私の名前は
貴方が殺した家族の娘よ…!」
「あぁ……あの時のガキか
よく生きてたもんだな」
N→
そして合点がいったのか飄々としていた態度から一変、真面目な表情になった。
「そういうことか…
親の仇撃ちってところか
それでわざわざ俺を追ってきたってのか?
こんな山奥で部隊とはぐれても仕方のない状況…
確かに殺すにはうってつけか
よく考えたもんだ」
「貴方に辿り着くまでに時間がかかったわ
最初は手探りだったから裏の仕事に手を出したり
学園にも入って少しでも情報を得ようとしたわ
そしたら偶然にも防衛隊にその人物がいることを突き止めた…
でもそれ以上に情報がなかったからずっと困ってたわ
そんな時に偶然隊長の写真を見せてもらったら…
貴方が写ってた…」
「俺の顔を覚えてたのか?」
「いえ……ずっと思い出せなかった
でも一つだけ手がかりがあったの
その腕時計…防衛隊の兵士にしてはとても高価そうよね
普段街中を歩いてみても同じものを見かけることのないブランド品…
それも年代物で今は売られてない
そんな物を付けている人なんてそう多くない…
ましてや軍人でつけてる人なんて…ね」
「ちっ…気に入ってたから着けてたが
そこから足取りを追われることもあるんだな
次からは気を付けないとな」
「あら…?随分とお気楽なのね…
貴方に次があると思ってるの?
答えはノー……ここで必ず殺す」
N→
しかしカチッと音がしただけで銃弾は出ない。
頭に血が上っていたのでその事を忘れていたのだ。
「残念だな…さっきの騒ぎで弾切れってところか
やっぱりあの
お粗末なもんだな」
「でも…殺す手段ならまだあるわよ」
N→
ナイフを取り出す。
対して
当たればただでは済まないだろう。
「負傷しているお前と銃を持つ俺…
俺がどうして隠れずこんな広いところで陣取っているかわかるか?
勘違いしているようだからハッキリ教えてやる
この場を制しているのは俺だ…クソアマ!」
「そうね…正面から撃ちあえば貴方が勝つでしょうね
でも…私も11年間ただ調べてただけじゃないわ」
N→
殺意を込めて、足を踏み込んだ。
「死ね!!!」
N→
スコープを除き、頭に向けて銃を乱射する。
しかし広間にあるテーブルを引き上げ、盾のようにすると
「なにっ!?」
N→
高速で装填し、瞬時に銃を向ける。
しかしその瞬間、椅子が目の前に飛んできた。
「うがっ!!」
N→
勢いよく投げられた椅子に銃を弾き飛ばされる。
「貴様ッ……なに!!?」
N→
気が付くと
「ま、まて!!」
N→
ピタッとナイフが首元のすんでのところで止まる。
「命乞い?仕方ないから聞いてあげるわ
でも殺すことは変わらないわよ」
「わかったわかった…俺が悪かった
ちゃんと謝罪をさせてくれ…」
「聞いてあげるとは言ったけど許すとは言ってないわ
それで…?そんな寒い命乞いしかないの?
なら死になさい」
「冷静に考えてもみろ!
俺だけを殺して復讐達成か?
そもそも俺はただ依頼を受けてそれを執行しただけだ!
他の奴らはみんな死んじまったが依頼主はまだまだ健在だ
依頼主がお前の最大の復讐相手じゃないのか!?」
「……痛いところをつくわね」
「そうだろ?
俺を殺しちまったら依頼主は特定できんのか?
いや無理だろうな!
依頼内容は全て口頭だった
証拠なんてどこにも残ってやしない」
「だから…?それが貴方が死ぬことと何の関係があるの?」
「ここを戻ったとしてもお前らが話しちまえば俺はどうせ捕まる
いや、それだけじゃすまないな
俺が捕まったと知られたら即刻死刑にさせられて口封じさせられちまう」
「いいザマね、ご愁傷様」
N→
少しずつナイフが押し込まれていく。
首元から血が滴り落ちていった。
「そろそろ話しは終わりでいい?」
「最後まで聞け…!
俺の胸元にある手帳…そこに依頼主の名刺が入ってる
それをやるから命だけは見逃せ…!頼むよ」
「………内容次第ね」
N→
「お前…復讐するために力をつけてきたってのか……」
「そうよ」
N→
そして手帳を
「だが、お前…人なんて殺したことないだろ?」
「……それがなに?」
「もっと実践を学んでおくんだったな!!」
N→
突如、
強い衝撃を受け視界がぼやける。
「ぐっ!」
「馬鹿が!!」
N→
油断した一瞬の隙をつかれたのだ。
頭突きに怯んでいると身体を突き飛ばされた。
そして銃撃音がする。
腰のホルスターから拳銃を取り出した
「うぐっ!!?ああぁ!!」
「獲物を目の前に泳がすなんて…愚か極まりないなぁ!!」
N→
足を撃たれた痛みで悶えながら床に転がる
その手に握られていたナイフを
「がぁ………油断した……くそ…!!
N→
再度、引き金を引く。
発砲された銃弾は
「ぎゃあっ!!ぁぁぁっ!!」
「ははっ…危なかった
正直死んだかと思ったよ
でも運がよかった
お前が甘ちゃんの優等生でほんとに助かったよ」
「ああぁぁ!!く…そ……
お前だけは…必ず……殺す!!」
「やれるもんならやってみろって…ほら!」
N→
挑発するように人差し指をクイクイとしているのを見せつける。
立ち上がろうとするも足と腕、肩を撃たれていた
悔しさのあまり地面に額を何度もぶつけた。
「クソ…クソッ!!クソクソクソクソッ!!
……クソ野郎ッ!!」
「そういやあの時のお前の母親も似たような感じだったな
お前を助けようと必死に藻掻いて惨めだったよな」
「お前のようなクズが…お母さんとお父さんを……!!
どうして…よ!!殺してやるッ!!」
「どうしてって…依頼金が高かったから引き受けただけだ
それ以上なんの理由がある?
お前とその親の命になんざ全く興味がねぇが
大金詰まれちゃ仕方ないよな
特別ボーナスまで出たら尚更だ」
「なんで…よ……どうして動かないの!?
…こんなの、あの時と比べて痛くないはずなのに……!!」
「そろそろ痛みも厳しくなってきただろ?
今日の俺は機嫌がすごぶるいい
今すぐ殺してやる」
N→
しゃがむと
額に銃口を押し当てるとケタケタと笑う。
その不意を突き、
噛みつかれた拍子に拳銃を足元に落とす。
「ぐっ!痛ぇな!!
なにしやがるこのクソアマッ!!!
…クク
気が変わった…てめぇもあの時の母親のようにして愉しんでから殺してやることにした」
「クソ!!……お前は…絶対ゆるさない!!」
「弱い犬ほどよく吠えるって言うがホントだな
ことわざってのはよく出来てるな」
N→
休む暇なく抵抗するも力の入らない
力の入らない原因
それはわかっていた。
忘れていた幼き頃の1つの感情
トラウマと呼ぶその恐怖心は身体の動きを鈍らせる。
気が付けば
「ハハハハハ!!!悔しいか??
本当になんとも不憫なやつだな
まぁ、生まれた場所を間違えたな」
「父は…なにも悪くない!!母だって…そう!
悪いのはお前達のような…クソ野郎よ!」
「クソ野郎…とはひどい言われ方だな
俺はただ欲望に忠実な人間らしい生き方をしているだけだ
どっかの誰かと違って部下を守るだの犠牲がどうこうだの青臭い夢物語を語らぬ現実主義者だ」
N→
血を握り締めた手からは血が滲み出ており、唇からも出血していた。
(くそ…こんなクソ野郎に…
なんで…私の人生は……これまでは全部無意味だったなんて…)
N→
後悔の念が押し寄せる。
(そうだ。人間は汚い生き物なんだ
世界は残酷…そんなことわかってた
自分勝手で無責任で…気持ちが悪い奴らばかり
こんな世の中に生まれたのが間違いだった…)
N→
その時ーーーーー
「…
「な…なぜ?」
「…あ?お前…生きてたのか?」
N→
先ほどから話している最中にずっと歩いてきていたようで接近に気がつかなかった。
しかしその様子はボロボロで今にも倒れそうな姿をしている。
「そんな様子で俺に勝てると思ってるのか?」
「これはッ!?…どうして…こんなことを!?」
N→
「貴方はなぜ…自分の部下にすら手をかけれるんですか!!」
「ははっ!お前知らないだろ?
自分の隊から殉職者が出たらな
特別補償と心療休暇が貰えるんだ
ボーナスとオフを一挙どり
こんな褒美が他にあるか?」
「部下を殺しておいて…なぜそんなことが!!」
「とことん優等生だな…
俺らみたいな軍人は命を張るだけ張って何の見返りも来ねぇ
だがそんな俺らにも美味い話が一個だけある
それが犯罪の片棒を担いでいくことだ
そうすればお前らじゃ一生真面目にしてても稼げねぇ額が稼げるんだ!
いい話だろ?」
「俺は…まったく共感できません!」
「お前に話すだけ無駄だったな
で、どうするつもりだ?
俺を殺すつもりか?」
「いえ、そんなことはしません…
貴方に…しかるべき処罰を受けさせます」
「真面目ちゃんはこれだからいけねぇな
正義を気取って俺の前にいるつもりなのか?
お前は…新人だろうが
こっちの嬢ちゃんが万全なら話は違うが
お前と俺じゃ差があんだぜ」
「それでもやります…!」
N→
二人は取っ組み合い、互いに拳を繰り出しあう。
しかし、傷を負っていた
「ぐわぁぁあっ!!」
「おらぁ!!…お前ごときで…ッ!
どうやってぇ…ッ!!おらぁっ!!
俺を止めるんだ!?ぁあ!??
女の前だからって粋がるなよ!青臭いガキがよ!!」
N→
複数回繰り出される拳を無抵抗に食らい続ける。
ゆっくりと片膝をついた
「ガハっつ……!!
……
「勝てるわけ…ないじゃない……
貴方は……弱いのよ……」
「それでも…仲間を見捨てるわけにはいきません」
「仲間……こんな時まで何を」
「感動的だな…!だがそんな空想もおしまいだ!
二人ともここで死ぬ
そしたらあの…あぁ…なんだったか…そうだ
二人は勇敢にも戦ったが、精神錯乱の末に特攻して命を落としたってな!!」
「そんなこと…!させません!!」
「あの世にいる
俺はこれからも幸せに生き続けるだろうってな!!」
「
「はぁ?あの高さだぞ?
たとえ川に落ちても水面に叩きつけられて全身骨折だ
どう考えても生きてやしねぇよ!!」
「お前に……何がわかる!!」
N→
「お前…なんでその傷でまだ立ち上がれんだよ…」
「
「知らねぇよ…!そんなこと興味もねぇ!」
「
だから俺は…信じています!」
「だから、なんなんだ?
お前たちがここで死ぬのは明白だろうが!」
N→
彼の言葉を思い出していたのだ。
「躊躇してしまえば…命取り……」
「死ね…!」
N→
引き金を引くと銃弾が発射される。
しかしその弾は
外れたのではない。
「なっ!?」
「はぁぁああっ!!!」
N→
しかしその銃は拳で吹き飛ばされてしまう。
「しまっーーーー」
「うらぁあああぁあっ!!!」
N→
そして同時に射撃音がした。
吹き飛ばされた
「な…な、な…なんだって…!?
いつの間に…!?うっっぐぅ……貴様あああ!」
N→
そしてその銃口からは硝煙があがっている。
「これが、
ありがとうございます…
「なんだそりゃ…くそ…いてえええぇ」
N→
防弾チョッキで貫通は防いだが、零距離で撃たれた威力は凄まじく激痛が走った。
「ちくしょ…うが…!貴様ら……必ず殺してやるからな!」
N→
煙幕により視界を眩まされた隙を見て
「ゴホッ!ゴホ……逃げた……か?
そうだ!
N→
「まさか…!?
息をしてないのか…!?」
N→
その言葉を聞くと
「そんなわけないでしょ……少し疲れただけよ…」
「
「あんなやつ…殺す価値もないわ……
もう興味もないわ」
「え、で、でも…その仇だって…」
「どっかの誰かさんがうるさいから復讐に集中も出来やしない
ほんとに迷惑なのよ」
「そ、その…すみません……」
「はぁ……謝られても困るんだけど
私がそう決めたのよ、それだけの話」
N→
足を負傷しているため、肩を貸しながら歩いて建物の外へと向かう。
「一つ聞いてもいい?
どうして私を追いかけたの?」
「どうしてって…仲間だからって言ったじゃないですか」
「私みたいな命令無視するような人
普通は放っておけばいいものよ」
「そう…なんですかね?」
「そんなものよ」
「もし俺の立場が
見捨てたりしないと思ったので
俺もそうしただけです」
「ほんとに隊長に憧れてるのね…」
「そうだ…
どうしましょうか…」
「さぁ…私も新米だからわからないわ」
「無事に帰ったら…お酒でも飲みませんか?
実は最近行きつけになったバーがあって…」
「珍しいお誘いね」
「実は…これも
でもいい店なので…」
「お断りよ」
「そ…そうですか……すみません」
「調子に乗らないでくれる?
デートに誘ってるのだとしたら、お生憎様
私は休日も世話の焼ける小鹿の面倒を見てて大変なの」
「小鹿…?
「さぁどうでしょうね…
それより
足が遅いから急いで貰える?
流石にゆっくり歩きすぎよ」
「は、はい!すみません!」
N→
少し時は戻り、山道を歩いていた
「上の方か…まさか、
N→
武装がないため、周囲を警戒しながら早歩きで進んでいく。
「
お前の無鉄砲で…実直で…それでいて強固な意志は…俺や
だからこそ俺はお前を10年来のツレのように信じれるんだ…」
N→
その中心には小型の液晶画面がついており、そこに地図が浮かび上がった。
本来ここは電波が届かない山の奥地。
しかし腕輪は正確に山付近の建物の情報を映し出した。
「
さっき言ってた音の方角と同じ…
そこにいるのか?
必ず…無事でいろよ……
N→
仲間を救える力
ちっぽけかもしれないが手に入った
俺の今までは無駄じゃなかったんだ
この力で今度こそ守ってみせる
覚悟はとっくに出来ている
どれだけ迷っても
どれだけ苦しもうとも
諦めず、突き進む
ただひたすらに
神ガ形ノ意志ニ背イテ 肆話 完
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・アドリブ演技に関して
この台本はアドリブを入れる事を前提として書いています
なので演者様方の判断で挟んで頂いて構いません
是非素晴らしい演技にアクセントをつけてください
しかし作風に合わないものはご遠慮ください
・性別変更や比率に関して
作者はあまり好ましくは思っていませんがある程度ならば可とします
そのある程度の境界線は他の演者様たちとの話し合いに委ねます
・特殊なものについて
台本を演じる際に読み込まないで演じる行為や
言語を変える、明らかに台本無視と取れる
特殊な行為をするものは認めていません
流石に読み込んで普通に演技してください
多分そうじゃないとこの台本は演じれないです
二次創作等、商権利用問題のある場合、質問や不明点ございましたら
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