神ガ形ノ意志ニ背イテ 弐話
登場人物名
32歳
大雑把な性格だが、部下を率いる防衛隊の一部隊の隊長。
説明下手でよく
任務中ではかなり頭が回り、戦場をかけている。
※ガラの悪い男性兼任
24歳
熱い正義感と無鉄砲な若さを持つ新人隊員
士官学校卒の元警官であったが、
任務より目先の命を優先することが多く、危険な目に合うことが多い
※黒いローブの男兼任
29歳
渋谷のバーでバーテンダーをしている男性
視力がほとんど無いらしく、人の顔や字が確認できない
※長髪のバーテンダー(同一人物です)
※
28歳
武器はククリを使用しており、かなりの腕前。
※
27歳
戦闘では弾幕を張ったり、他隊員の立て直しの時間稼ぎや
年齢不詳
マッドサイエンティスト気質な女性
未だ研究結果を世界に公表することなく、自身のみで使っている
現在はなにか新たな兵器を製造することにご執心の様子
※
19歳
学園を卒業し、何かの目的を以て部隊に所属した。
自分の実力を疑わず、隊員と特に
かなりの実力者で、
Nは→後のキャラ演者が読む
※所々交代があるので注意してください。かなり大変です。
・
突如世界に現れた「
Variant Hunt Army通称
自衛隊や警察組織と違い、独立した権力を持つ
一般人や学園卒業者の中で実力保有者が入隊することができる
・
2000年に突如現れた異形の生命体。
理由や目的は不明だが人類を脅かす存在。
現れた当初は世界でも数十体しか確認されなかったが、年々数を増やしている。
出現方法も繁殖方法などは不明となっている。
生物が
一部では神の使い等と
・
その素性、人員、目的一切が不明のテロ集団
突如姿を現れては殺戮を行う事から市民から恐れられている
役表
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血桜ハ還リ咲ク 別章 弐話
神ガ形ノ意志ニ背イテ
強い者は弱い者を守る
それは力を得た者の責任だ
そんな風に語るヒーロー作品は多い
自らが背負えるものがどれだけのものかわからないが
それでも俺は目の前の灯を守り続ける為に戦う
どれだけの苦しみを味わおうが抱えてみせる
たとえ‥‥この身が朽ちようとも
N→
昨日、B地区に
一般人の数十名が死亡し、そのニュースが日本中に放送され
世間からは防衛隊に非難の声があがっており
ネットなどで書かれた心無い言葉が命を張って戦った隊員たちにも届いてきていた。
そんな世間からの評価に
「あんまりじゃないですか?
私たちは命をかけて最善を尽くしました!
非難だけでなく一カ月間の出勤停止だなんて
上層部もどうかしてます…」
「どういったって仕方ないだろ
世間が俺らに求めているのは犠牲のない完璧な対応だ」
「そんなの…私たちだってそれを望んで戦っています!」
「俺のせいです‥‥俺が先走らなければ…!
あの人たちを救う事だって出来たはずです」
N→
それに気づいた
「
あの状況じゃ私たちでも何も出来なかった」
「それでも俺は目の前にいて…守れなかったんです!!」
「そうかもしれないけど‥‥でも…」
「お前ら熱くなり過ぎた。静かにしろ
他の客に迷惑だ」
「っ!!……すみません」
N→
翌日の朝、任務に関わった隊員は出勤停止命令を受けた。
数時間飲みながら話をした後、
他三人は
その店の客席は自由席と個室の二つがあり、一同は個室へと入る。
個室ごとに防音が完備されており、会話を楽しみながらワインを飲むことのできる雰囲気の良いバーで、店員を呼ぶことで注文ができる制度のようだ。
「
気に病むなとは言わないがあまり引きずりすぎるな
それはお前の引き金を重くするぞ」
「そうよ
「っ……はい」
N→
バーテンダーがノックをしてから部屋へと入ってくる。
長髪のバーテンダー (
「失礼します。こちらをお下げ致します」
「あっ、ありがとうございます」
N→
金色の長髪の店員は頭を下げるとテーブルの端に置かれた皿を手に取った。
「俺らはそれでも市民を守るために戦うしかない
例えどれだけ非難され白い目で見られようが、それが俺らの仕事だ」
N→
無力さや不甲斐なさが織り交ざった後悔の目を
「…今のお前を見てると昔の俺を思い出すよ」
「どういうことですか?」
「……また機会がある時に教えてやる」
「隊長‥‥あの
「今は任務中じゃないんだ、名前で呼んでくれ」
「そうですね。
今回の発見が遅れた
意図的なものという可能性はないですか?」
「前にも話してたな‥‥
その説は根拠も無ければ、到底仮説の域を出るものではない
例えそうだとしてもそれをする目的がなんだというんだ
そもそもあんな化け物を操れるとでもいうのか?」
「どういう事ですか?
その話、詳しく聞かせてください」
「前に
今までの任務で何度かあったの
完全に索敵の目を逃れて現れた
その出現には奇妙な事があって毎回一切の目撃情報がないの
普通だったら誰かしらの目や確認が取れてもおかしくないのに
見逃すことがあるなんて」
「まさか…そんなことが!?」
「根拠のない話しだ
下水道や川を渡って来た可能性だってある
それにあんな化け物を使役できるなんてあってたまるか」
「そうでしょうか‥‥まだ
私達の知らない事があってもなんの不思議もありません」
「だがあいつらは目の前の生物を人だろうが、家畜だろうが皆殺しにする
奴らにとって抵抗する人類は害敵そのもの
そんなのが目前に居て無事なやつが果たして居るだろうか?
猛獣のように調教が可能かの実験は数年前に行われた
結果はお前らの知っている通り失敗に終わった」
「‥‥そうでしょうか
私にはその可能性が頭から離れません
あの時も
もしかして関連が…」
「たとえそうだとしても俺らがすることは変わらない
人類を守り、奴らを狩る。それだけだ」
「‥‥」
「
今日はそろそろ帰るとしよう
俺も酔いが回ってきた。これ以上は身体に悪い」
「はい…わかりました」
N→
三人が店を後にする時に先ほどのバーテンダーが頭を下げる。
長髪のバーテンダー (
「またのご来店お待ちしております」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
N→
それから二週間後
任務中に受けた腕の怪我も治り、腕のギプスを外した
そこでは軍人や銃の使用が認可された
店員にライセンスを見せ、射撃訓練施設へと入場する。
自分の列番号を確認しながら、台に近づくと、その隣には知った顔の人物がマガジンに弾を込めていた。
その人物
「あら?偶然ね」
「
「私がここに居て駄目な理由でもあるの?
ひどいわね、女軍人には休日の過ごし方にも制限があるっていうのね」
「いえ、そういうわけでは…」
「からかっただけよ。
貴方、随分と真っすぐなのね
こんな軽い冗談なんて真に受けないでもらえる?」
「す、すみません…」
「さっさと撃ってみたら?
そういえば銃の腕前をこの前初めて見たけど
あの時の銃さばき、そんなに悪くなかったわね」
「ただ、訓練で習った事が身に沁みついているだけです」
N→
普段使用しているマグナムは軽くて長い銃身で拳銃とは質感が違っていた。
6発の弾丸を的に向けて放つがどれも的に命中することなく、明後日の方へと飛んでしまう。
「くそ…当たらない!
なぜだ!?…いつもならあんな距離ぐらい当たるのに!」
「‥‥貴方、あの時はそんなに下手な腕前だったかしら
重心もブレてるし、大して狙ってないような目線
生まれたての小鹿の真似でもしているの?
それとも、あの民間人達の事で心が折れた?」
「そんなことは!!
‥‥いえ、そうかもしれません
まだ…あの人達の顔が頭から離れない
救えなかった命が俺を睨みつけているようで‥‥」
「これ以上戦うのが怖い?」
N→
その手は震えており、何かに怯えているようだった。
「怖くないと言ったら嘘になります‥‥
また、俺のせいで犠牲が出るんじゃないか
もしかしたら俺のミスで
そう考えたら‥‥恐ろしいです」
「なるほどね‥‥
なんとなくわかったわ
とりあえず私に言えることはさっさと忘れなさいって事だけよ」
「
あんな風に人が死んでいいわけがない!」
「悪い意味に捉えないで欲しいのだけれど
私はなにも思わなかったわ
あの時はできる事なんて何もなかったし
救えない命だってある事は百も承知よ
誰彼構わず助けたいって理想を並べるのはいいけど
現実は救いようがないものばかりよ
そんな綺麗事を吐いたところで意味なんてないわ」
「‥‥‥‥っ!」
「弱い人にとって希望や理想は一筋の光明なのかもしれないけど
そんな小さな明かりじゃ闇を祓うなんて出来ない
所詮、ちっぽけな光は大きな闇の前では無力なのよ
あの時、私はそれに気づいたの
両親が死んだあの日‥‥絶望と現実を知ったから」
「…なにがあったんですか?」
「‥‥私にだって目的があるのよ
それだけを考えて生きてきた
どれだけの人が死のうが心に響かない
私にはあの日からそれしか頭にないの
あいつを殺すことだけが―――」
N→
「つい感情的になってしまったわ‥‥ごめんなさいね
私はもう行くから、また本部で会いましょう」
N→
「
「‥‥好きにしたら…と言いたいけど
強いて言うならその手に持つ銃の引き金を引く理由を作っておくことね
それは貴方を守るためにあるんだから大事な時に引けないんじゃアクセサリーにしかならないわ
それとそのへっぴり腰を直すくらいの覚悟と信念くらいは持っておきなさい
見てて滑稽だけれど目の前で死なれちゃ気分が悪いから
それじゃあね」
N→
礼を言うように深く頭を下げて見送ったあと
引き金に指をかけ、
「戦う‥‥理由‥‥!」
N→
しかし指に力が入らず、ゆっくりと銃を下ろして
手の震えを抑えながらしゃがみ込んだ。
「俺は‥‥どうしたら!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
N→
少し時は戻り
新宿の小さな無人マンションへと向かい、入り口の奥にあるエレベーターへと乗る。
一階から四階まであるエレベーターのボタンを一度に4つ同時に押すと本来ないはずの地下へと降り始めた。
扉が開くと目のまえに
奥に進んでいくと目の前にある廊下の突き当りには右と左に進めるT字の廊下になっており、エレベーターから降りて真っすぐの場所に小さな扉がある。
ドアノブに手をかけ開くとそこには壁が広がっていた。
正確には大きな棚が反対向きで置いてあるため塞がっており、中に入る事ができないようだ。
「入れねぇじゃねぇか……チッ
これはどうしたらいいんだ」
「やぁ、
申し訳ないけどちょっと前に片づけた時に入れなくなってしまってね
遠回りになるけど他の道から行こうか」
N→
右の通路から
「あれは片付いているのか?
入口を塞いだら不便だろ」
「あぁ、別に外に出ないなら変わらないだろ?
むしろ防犯性が上がってちょうどいいかもしれないね」
「お前……最後はいつ外にでた?」
「いつだったかね
確か前に出た時は‥‥君が
「って事はもう三年も出てないのか
お前も人間なら日を浴びろ」
「出る理由がないじゃないか
最近は寒いらしいしね
防寒対策でもしなきゃ出れない外なんて不便極まりないね」
N→
扉を開けると中には数台のパソコンが置いてある大きな机と数本の棚があり
部屋中にはまき散らすように書類が無造作に散らばっている。
「そうだ、昨日現れたっていう子のサンプルは持ってきたのか?」
「あぁ、この中だ」
N→
スーツケースを差し出すと
「早く感動の対面をしたいね
中身は言った通りのものかい?」
「
これでいいんだろ」
「あぁ。頼んだ通り持ってきてくれて満足だよ
それよりいつ帰るんだい?私は早くこれを開けたくて仕方ないよ」
「この前の検診の結果を取りに来いって言ったのはお前だろ
貰うもん貰ったらもう後は帰れってのか?」
「しょうがないなぁ、待ってなよ」
N→
スーツケースを自席の近くに置き
机の上にあるファイルに入れていた紙を取り
「そうだね、特に見当たる異常はなし
しっかり健康に気を使ってるのが目に見えてわかるよ
でも、たまには酒もいいが飲みすぎるとすぐ反応が出るからね
気を付けてくれよ?これでも心配してるんだからね
優秀な君が居なくなると困るんだ」
「心にもない言葉がよく出てくるものだ」
「お世辞が上手くなっただろ?それでこれが今回の薬だよ
寝る前にでも飲んでくれたらいい
そうだね…二週間後くらいにまた来てくれよ
私が作業に入ったら検診ができなくなるからね
早めにやっておきたいのさ」
「気が向いた時に来るとする
それと、もしかしたら近いうちに新しい奴を連れてくるかもしれないがいいか?」
「あぁ構わないよ。ほら、薬だ」
N→
驚きながら書類を手に取り読むと
「
「あぁ。前見せたアレがかなり進んだんだよ
とはいえまだまだ未完成で
色々なテストを兼ねないといけない
また詳しい事がわかったら言うからさ
余計に詮索せずにもうちょっと待ってなよ」
「もうここまで‥‥
だが流石だな
何十年も研究をし続けている科学者だ
お前が人類の為に尽くす正義の心を持っているのならよかったんだが…惜しいな」
「どんな人でも欠点があるんだよ
そっちの方がちょっとお茶目で可愛げがあるだろう?」
「お前の
「さぁー?それはどうだろうね」
「その時は俺がお前を殺す
あそこの人形も全部だ」
「それは怖いね
そうならないように気に留めておくよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
N→
そして時は戻り現在、
目的もなく歩いているとはずれの路地内から怒号が聞こえてきた。
ゆっくりと
絡まれていたスーツ姿の男性は先日入った店で働いていた長髪のバーテンダーであった。
ガラの悪い男性 (
「てめぇぶつかっておいて
長髪のバーテンダー (
「申し訳ありません。何しろ人が多かったものですから」
ガラの悪い男性 (
「だからぶつかっていいってか?怪我したらどうすんだゴルァ!!」
長髪のバーテンダー (
「こちらの不注意で大変失礼―――」
ガラの悪い男性 (
「謝って許されると思ってんのかオイッ!
誠意を見せろよなおっさんよォ!!」
長髪のバーテンダー (
「誠意を金銭を払うことで見せろと仰っているのでしょうか?
申し訳ありませんがあまり手持ちがなく…」
ガラの悪い男性 (
「うるせぇやつだな!!とっとと財布出せばいいんだよ!
ぶち殺されてぇか!!?」
N→
ガラの悪い男性がバーテンダーの胸倉をつかんだ瞬間、片手でその手を振り払う。
強く掴んでいたはずが、すっと手を離されてしまったのか驚いた様子でバーテンダーを睨んだ。
「あの動きは…!?」
ガラの悪い男性 (
「てめぇ!!ふざけんじゃねぇぞオイ!
そっちが抵抗するってなら仕方ねぇよなぁ!!」
N→
ガラの悪い男はナイフをポケットから取り出す。
そしてバーテンダーの顔に向けてナイフで切りつけた。
だが握っていたその手をバーテンダーは掴んで受け止めると、腕を捻りながら強く地面に叩きつける。
長髪のバーテンダー (
「刃物は危険ですよ」
ガラの悪い男性 (
「な、は!!?あれ?いつの間に…!?」
N→
バーテンダーの手には先ほどまでガラの悪い男が持っていたナイフが握られていた。
ガラの悪い男性 (
「返しやがれ!!」
N→
バーテンダーに再び殴りかかるが、ひょいと避けられ空振りしてしまう。
そしてその勢いのまま地面に倒れてしまった。
対してバーテンダーの男は焦る様子もなく刃を畳んだ後、足もとに落とす。
「すごい…なんて華麗な身のこなしなんだ!」
ガラの悪い男性 (
「痛ってぇぇな~!!ちくしょおお!!
何見てんだよ!お前らもやれ!!」
N→
周りの仲間が一斉にバーテンダーの男に襲い掛かろうとしていた。
長髪のバーテンダー (
「あまり大ごとにはしたくなかったのですが…仕方がありませんね」
N→
その時、
長髪のバーテンダー (
「貴方は…?」
「お前ら!防衛隊だ!!
これ以上やり合うってならここで逮捕するぞ!!」
N→
ガラの悪い男性 (
「チッ!!お前ぇらいくぞ!!」
N→
倒れていたガラの悪い男性が立ちあがると急ぎ足でその場を去っていき、仲間たちも後に続いていった。
その時、何か違和感を
「あの‥‥失礼かもしれませんが、もしかして‥‥視力が?」
N→
バーテンダーの男の視線の先が虚ろで、
長髪のバーテンダー (
「はい。ほとんど視えていません
それより貴方は確か‥‥この前、初めてお店に来た方ですね」
「なっ……どうしてわかったんですか?!」
長髪のバーテンダー (
「視力を失ってバーテンダーをしていると自然とわかるようになりました
先ほどは助けていただきましてありがとうございます」
「あ、いえ‥‥ご無事でなにより
私も咄嗟の事ですぐに駆け付けることができませんでした…すいません」
長髪のバーテンダー (
「お気になさらず」
「そうだ…さっきの攻撃の往なし方
明らかに素人のものじゃないですが…何か武術を?」
長髪のバーテンダー (
「昔、習う機会がありましたので」
「あ、あの‥‥もしよろしければお名前を聞いてもよろしいですか?」
長髪のバーテンダー (
「私の名前を…?」
「あぁ…突然すみません!
自分は
この前行った時あのお店の雰囲気が気に入りまして
また今度伺おうと思っていたので
是非お名前を知りたくて…その……」
長髪のバーテンダー (
「私は
「ありがとうございます!すみません!突然名前を聞いてしまって」
「構いませんよ
どうやら悪い人ではないみたいですし問題ありません」
「そ、そうですか?」
「何となくですがそう感じましたので
それでは私はバーに戻らねばなりませんのでこの辺りで…
改めて、ありがとうございました」
「あ…はい。お気をつけて」
「失礼します」
N→
画面を見ると着信先は
「
「お前、今どこにいる?」
「今ですか?えっと新宿に居ます」
「新宿‥‥そうか
ちょうどいいかもしれないな
「遠回りですか?それはどうして?」
「尾行に気をつけろよ。それじゃあまた後でな」
「
N→
言い切る前にブツっと通話が切れてしまう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
N→
誰かが住んでいる様子はなく、窓にヒビが入っていたり、ゴミや不法投棄の自転車がそのまま置き去りにされている。
「ここ…か?」
N→
中を覗き込むと奥のエレベーターの前に
こちらに気がつくと中に入るよう手で招いた。
扉をゆっくり開けて
「こんなところに呼び出してどうしたんですか?」
「
N→
「な、これは…どこに向かっているんですか?」
「ここは‥‥とあるマッドサイエンティストの個人研究所だ
今から見るものは刺激的なものが多い
身構えておけ」
「ど、どういうことですか?」
「
「その名前って確か、クローン技術の研究者で
今もなお市民の生活に欠かせない複製肉や、複製魚などの普及を進めた科学者で
小学生の頃の教科書にも載ってるような偉人ですよね」
「あぁ、そいつの私設研究所だ」
「そうなんですか!?すごいですね!
でも、俺らがここに来た理由ってなにかあるんですか?」
「まぁいくつか用があるんだが、詳しいことは行きゃわかる」
N→
扉が開くと目のまえに薬液の混じったような異臭が漂う廊下が広がっていた。
「これは、ここまで本格的な地下施設が…あるなんて」
N→
二人が降りるとエレベーターは自動で扉が閉まり地上へと上がっていった。
廊下の突き当りのT字廊下の先へと向かっていると横からヒョイと女性が顔を出す。
「マッドサイエンティストなんて酷いじゃないか
私は正義と平和を愛する科学者だというのにね」
「またそんなつまらんギャグを言ったら次こそお前の足を折るからな」
「酷いな。ただのジョークじゃないか
そもそも正義や平和なんて微塵も興味がないからね
自分でも言ってて反吐が出るかと思ったよ」
「この方がその…?」
「私は
ここの研究所の所長だよ
まぁ、今は私しか居ないんだけどね
それより、いい男じゃないか?
前に拾った死体と違ってこっちは熱血そうかつ馬鹿っぽそうでまた収集心をくすぐるよ」
「この人が
確か…年齢は既に70を超えてるはず…
…どう見てもそのような歳には見えないのですが?」
「おやおや、私について知りたいのかい?
そうだね。後で
・・・・あー名前はなんと言ったっけ?」
「
「ふーん、
これからも色々と協力よろしく頼むよ」
「協力…?」
「そんな事より早く案内しろ
ここは入り組んでるから道を覚えてないんだ」
「あぁ、あの時から部屋を少し片付けてね
こっちの扉から入れるようにしたんだ」
N→
目の前の扉を開けると中に
中は大きな机と数台のパソコン、数本の大きな棚があり
棚には乱雑に書類が詰め込まれており、適当さ加減が伺える。
「頑張って片づけただろ?ほんと最近助手を雇おうか考えていてね
「俺の部下を勝手にスカウトするな
とりあえず俺はまたあそこで寝てればいいのか?」
「あぁ、大体一時間くらい寝ててくれたら終わるからさ
ゆっくり休みたまえよ」
N→
部屋に残された
なにかのスーツのようなものの採寸データが測られているようだが
書いてある文字の内容が理解できず、そっと元の位置に戻す。
他にも数枚見てみるが、内容が理解できず
棚の中で特に分厚い写真集のようなものが気になり、手に取ってみる。
適当に真ん中辺りを開くとそこには衝撃の写真が並んでいた。
「なっ!!?これは…!
「気になるのかい?」
N→
「この写真は……ここはなんの施設なんですか!?」
「着いてきなよ
色々見ていくといい
楽しい楽しい研究所見学になるよ」
N→
階段を下り頑丈そうな扉の前に二人は立った。
「ここが研究材料のサンプル置き場だ
コレクションルームとも呼んでいるよ」
N→
「こ、これはッ!!?」
N→
中は沢山のガラスケースに多種多様な
「まさか‥‥
「そうだ。奇麗だろう?
頑張って
「
「あぁ。任務で倒した
今までは自分で行っていたんだが持ってきてくれると助かるよ
まぁ彼はバレたら軍法会議ものだろうね」
「なぜ‥‥そんなことを
「さぁ…?知らないけどさ
彼は隊長として人類を守るために戦っているはずだよね
確かにそれは間違いじゃないんだが、正確には違う
彼は
その為なら私みたいな力ですら使おうとする
私にとっては研究材料が安定して手に入るし
いい利害関係ってやつだよ」
「
「復讐じゃないかな?失った仲間たちへの贖罪も含めてね」
「復讐と…贖罪?」
「そういえばさっき年増扱いしてたね?
結構傷ついたよ、ショックで泣きそうになったぐらいだ」
「す、すみません!そんなつもりでは」
「悪かったね冗談だよ、ほんとはノリツッコミぐらいしてほしいんだけどね
君ジョーク通じないタイプだろ?」
N→
同じように電子パネルに触れてロックを解除すると
自動で扉が開いていった。
扉の奥は先ほどとは違い何か透明なポッドのようなものに人間が入っており
その全てが目の前に居る
「これは…!?まさかこれ全部
「あぁ、私のクローンたちだ
私の身体に限界が来たらこっちが私の研究を受け継いでくれる
どうだい?私は美人だろ?
遺伝子操作して体形を細く、尚且つ体力もそこそこあるように作ってあるんだ
だから身体年齢は君よりも全然若いんだよ
この身体でも3歳とかじゃなかったかな」
「そ、そうなんです…ね
あ、あの…
「知りたい?
まだ待つから教えてあげてもいいよ
ついでにさっき言った過去の事件も教えてあげようか
その二つには関連があるからね」
「はい……お願いします」
「ただ私が教えたってのは内緒で頼むよ
まーた怒られるのは勘弁だからね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
N→
これは
当日まで情報は伏せられ、依頼を受けたメンバーが護送車での移動時に車内で初の対面を果たす。
本来、あまり合同で任務を行う事のない
「珍しいケースだな」
「
「普段と違って隊列行動を行わず、数人の組ごとに分かれての活動が主になる
最初は戸惑うだろうが、慣れたら楽だぞ」
「それは隊長が適当だから楽と感じるんですよ…」
「俺はいつでも真剣なんだが」
N→
初めてで慣れない
「
「仕方ないと思うよ。こういう特別任務は初めてなんだろ?」
N→
その男は服から市販のチョコレートを取り出し、
「これでも食べて一回深呼吸したらいいよ
少しでも気が楽になればいいんだが…難しいよな」
N→
その男は
「貴方はその女性の隊長か?
風格っていうのかな
そういうのを凄く感じるからわかるよ」
「そういうお前も部下への気遣いが慣れてるな
そっちで頭でも張ってるのか?」
「お、わかるんだ
正解、俺は
こんなだけどこっちでは班長をやってる
今日かぎりの合同だけどよろしく」
「こちらこそだな、俺は
「
「そっちは防衛隊だろ?今回は二人で来てるの?」
「いや他の車にあと三人乗っている」
「そうなんだ…
聞いてもいいのかわからないけど、防衛隊ってどうなの?
隊長ってのは大変?」
「いや、俺はそうでもないな
他は知らんが、俺は小難しいのは苦手だから適当にやってるぞ」
「あまり適当にやらないで欲しいんですが…?」
「ははは!なんか大体わかってきたよ
「本当そうなんです!いつも大変なんですよ」
「もう大丈夫そうだね。よかった」
「あ、はい。ありがとうございます」
N→
「そっちも部下から慕われてそうだな」
「いや、そうでもないよ
こっちにも緊張しいな部下が居るから
気遣いを覚えさせられただけだよ」
「隊長も気遣いをできるようになってください」
「ぜ、善処はする……つもりだ。すまん」
「そっちの部下はどんな人たち?」
「そうだな…説明するのは難しいが、頼もしい奴らだ」
「信頼関係あってこその部隊だ
いい隊長じゃないか」
「別に…そこは否定しませんが……」
「それに…また一人部下が増えるかもしれないんだが
そいつがまた面白そうなやつでな
来るのを楽しみにしているんだ」
「へぇ。その言い方は気になるね
どんな人か聞いてもー」
N→
その瞬間、護送車が停車した。どうやら目的地に着いたようだ。
一同の携帯端末に一件のメッセ―ジが送られてくる
メッセージを開くと今回の任務内容が記載されており、車内で内容確認が行われた。
「今回の依頼が…えっと壁外の無人街にあるとされる
テロ組織
殺害許可が出てる…?
もし対象の反撃の際やむなくの殺害は許可だそうです
幹部やリーダー格と思われる人物を発見した場合
可能な限り捕縛をお願いするとの事です
この
「近頃ニュースでやってるテロ組織の正式名称だろうな
一般の報道では名前までは公開されてないから知らなくても無理はない」
N→
半年前から急速に活動を始めたテロリスト集団
目的や正体の一切が不明なその組織は
「あいつらが現れるってのか…
見た事はないが、そこまで大勢の組織とは聞かないな」
「どうだろな。まだ姿を見せてないだけって可能性もある
油断はできない」
N→
護送車から降りると周りには他に三台の護送車が次々と並んでいく。
他の人員も車から続々と降りてくると仲間たち毎に集合していた。
現場は八階層ほどの高さのビルが隣接しており、その中の一つがアジトになっているとメッセージには記載されていた。
「こんな何もなさそうな場所なのか…
人も全然立ち入らなさそうだし
アジトにするにはもってこいだな」
「今回の依頼主はよくここを突き止めたな…
見た限りはただの廃ビル群にしか見えないぞ」
「そうですね…依頼主は
ニュースでその名前を見た事があります
テロリストの弾圧を大々的に掲げて、
まさかその当人が依頼をするなんて…」
「危ない事をするな…いつ命を狙われてもおかしくない立ち位置だが
それを自ら率先して行うとはな
お偉いさんの中でも根性があるようだ」
「そっちの手筈はどうなってるんだ?」
「私たちは今回屋上から潜入して、上の階層から制圧し
一階層の突撃班と途中合流。それ以降は現場の判断に委ねるそうです」
「なるほどな。ここから行くわけか
それにしても大雑把な指示だな」
「相手の人数や潜伏階層も不明なままですので仕方がないかと思います」
「その間に接敵したときは各々で倒せって事だな」
「それじゃ俺たちの突入ルートは一階からだ
くれぐれも気を付けてくれよ」
「そっちもな」
「この任務が終わったら俺らの班員も呼んで飯でもどうだ?」
「賛成だ。上手い飯と酒を出す店を知ってるぞ」
「そりゃいいね~毎日飲むぐらいには酒類は大好きでね
任務後の楽しみが増えた」
N→
残った
「ここにアンカーを設置し、あっちに飛び移る
お前ら準備はいいか?」
N→
班員一同が頷くと、
槍のように突き出たランチャーを構え
今立っているビルの屋上の
そこから射出されたアンカーが
そしてそのアンカーが刺さったまま目標のビルへ向けてトリガーを弾く。
するとアンカーが飛び出し、ランチャーから離れたアンカーが
目標のビルの
左右のアンカーが二つの
「ここをつたっていくぞ」
N→
アンカーの綱に持ち手をかけて、滑るように一気に屋上へと飛び移った。
一同はゆっくりと着地に成功すると、入り口に向けて侵入を開始する。
「…用心しておけ
こっちの接近に気づいているかもしれないからな」
「了解しました…!」
N→
一同がゆっくりと階段を下っていく。
物音がせず、下の八階層には人の気配はしなかった。
「居ない…か」
N→
八階層を確認し終えると、再び階段を下っていった。
七階層に辿り着き、長い廊下をゆっくりと歩いていく。
「隊長…本当にここに居るのでしょうか?
まるで気配がありません…」
「待て…前を見ろ」
N→
正面にある両側扉は何故か片方が半開きになっており、中から光が漏れていた。
「ここの電気は止まっていない…のか
怪しいな…お前らは少し離れてろ」
N→
銃を構え、ゆっくりと中を覗く。
物音はしないが、その光の正体を確認しようと扉に手をかける。
建付けが悪く、不快な音を立てながら扉が開き、中を見ると
そこに一台のモニターが不自然に置いてあり、なぜか電源が付いていた。
「これは…!?」
N→
モニターは未だ砂嵐を表示していたが、急に画面が切り替わり
画面にXの文字が浮かび上がる。
そしてノイズ混じりの笑い声が聞こえ始めた。
黒いローブの男 (
「ハハハハ。よくここがわかったな?
流石というのか?勤勉なもんだ
まるで働きアリのようで滑稽だな」
「…
黒いローブの男 (
「どこに居るか知りたいのか?ハハハハ
教えてやろうか?ほらよ」
N→
画面が切り替わると監視カメラのような映像に切り替わる。
そこは先ほど通ってきた廊下が映っており、深くフードを被り顔を隠している黒いローブを着た男が歩いてくる様子が見えていた。
「お前ら!後ろだ!!!」
N→
「た、隊長っ!!!」
N→
羽交い絞めにされるように刀を首元に向けられながら動けなくなっていた。
その足元にはホルスターが落とされ、サブマシンガンが床に転がる。
黒いローブの男 (
「ここだよ。馬鹿な隊長さんよ?」
「なっ!!お前…!そいつを離せ!」
黒いローブの男 (
「やーなこった
どうしてオレが敵のいう事を聞かないといけないんだ?」
「お前に選択権はない…!」
N→
しかしこのまま発砲すれば
「隊長っ!!撃ってください!」
黒いローブの男 (
「この状態じゃ君を巻きこんじゃうから撃てないってさ?」
「私の事は気にせず!!撃ってください!」
「くっ!
黒いローブの男 (
「お~?撃てんの?ほら、やってみな?」
N→
黒いローブの男は刃先をどんどんと首元に近づけていき
首に触れた箇所が切れて、ゆっくりと血が滴っていた。
「最後の警告だ…!部下を離せ!!」
黒いローブの男 (
「だ~か~ら!撃てるなら撃ってみろって!」
N→
黒いローブの男 (
「ハハハ。そりゃ撃てねぇよな?
可愛い部下だもんな?」
N→
黒いローブの男は
黒いローブの男 (
「後悔するぜ?オレをここで殺せなかったことをよ!!」
N→
黒いローブの男は
すると黒いローブの男と
下の階層へと逃げた黒いローブの男は気を失った様子の
「
N→
部下3人を連れて急いで階段に向かい、下っていく。
足音がどんどんと下の階層へと降りていくのがわかり、一同も急ぎながら階段を下っていった。
「下は他の班がいる!あいつは袋の
N→
そして二階層まで降りてきた時、
本来下の階層から上へと登ってくるはずの他班が見当たらないのだ。
「他の班はどこだ…?」
N→
その時、二階で銃声が鳴るのが聞こえ班員は二階層へと入っていく。
廊下を走りながら奥の部屋の扉の前にいる
少し離れた位置の黒いローブの男に向けて構えていた。
黒いローブの男 (
「やるね。ホルスターを外す際にポケットに忍ばせてたんだ?
流石は防衛隊、抜け目がないね」
「
「隊長!!あいつは…かなり強いです!!」
「あぁ…!わかってる」
N→
対して黒いローブの男は余裕そうに刀を構えていた。
黒いローブの男 (
「結構な数が居るみたいだな。ここをアジトだって突き止めてきたみたいだが
残念だったな、もう廃棄するつもりだったんだ。
この場所はお前らの墓場になるから最後まで有効に活用できるな」
N→
黒いローブの男はすさまじい速度で
しかし、その射撃に合わせ、廊下の横にある固い木製の扉を開き、盾のようにして銃弾を弾く。
「なっ!!?はやい!!」
黒いローブの男 (
「バーカ!当たんねぇよ!!」
N→
黒いローブの男は
咄嗟に刀身に銃をぶつけて受け止めるが
一気に銃ごと弾き飛ばされてしまい大きく体勢を崩す。
「ぐっ!!」
黒いローブの男 (
「ほ~ら!顔上げなっ!!」
「ぐああっ!!」
N→
体勢を崩した
その衝撃を受けて、
「うぐっ!!」
黒いローブの男 (
「ほ~ら!立ち上がれよ!部下たちがやられちゃうぞ!!」
N→
部下三人が一斉に銃を連射するが、体勢を大きく反らして回避した黒いローブの男に一気に二人が斬り落とされた。
しかしもう一人の部下の首を掴むと引っ張り、その銃弾の盾にした。
「そ、そんなっ!!」
N→
黒いローブの男は
再びすさまじい速度で離れた位置の
ハンドガンを放つが、装填された弾が尽きてしまい発射できなくなってしまった。
黒いローブの男 (
「弾切れか?」
N→
目の前で飛び上がりながら放たれた蹴りをまともに受けてしまい、
「お、お前!!俺の部下を!!
許さん…!!お前だけはぁぁぁっ!!!」
「た、隊長…!!逃げて…!!」
N→
フラフラとした足取りで黒いローブの男へと近づいていく。
その様子を憐れむ様に眺めていた。
黒いローブの男 (
「そんな状態で勝てると思ってんのか?
まぁ万全だとしてもオレには勝てないけどな!」
N→
残酷にも振られた一撃は
鮮血を飛び散らせて、地に膝をついた
黒いローブの男 (
「いくら雑魚が足掻いてもオレらには勝てない
運命は変わらないんだ、わかるか?
お前ら人類の未来は破滅だ?逃れることはできねぇんだよ」
「………」
黒いローブの男 (
「遺言なら聞いてやるぜ?まぁ誰に伝えるわけでもないけどな?」
「……油断…大敵だ!!」
黒いローブの男 (
「は?」
N→
その一撃は確実に相手の顔に当たる。
しかし、その拳を受けても相手は怯む様子がなかった。
黒いローブの男 (
「ハハ。いい作戦だったが…力が足りねぇな!」
「くそっ!!力が入らん!!」
黒いローブの男 (
「残念だったな!!」
N→
黒いローブの男の膝蹴りをみぞおちに受け、
そして無残に振られた三度の斬撃を受けた。
血を吹き出しながら、力なく地に倒れる。
「そ、そんなぁ…!!…隊長ッ!!!」
黒いローブの男 (
「…あーあ。まさかオレが一撃貰うなんてな
お前の雄姿を称えて殺さないでおいてやるよ
精々頑張りな
どうせここで生き延びたところで終わりは近い
絶望の未来、破滅の……
N→
黒いローブの男の高笑いが意識が途切れるまで、頭に響き続けていた。
「これは…どういう状況だ!?」
「……さっきの…
気を付けてください!
あいつの強さは……普通じゃないです!!」
「そうか、こいつにやられたのか…
君は下がってて、ここは俺がやる」
黒いローブの男 (
「増援か?…揃いも揃って死にに来るとはな!
協力的で助かるよほんと!!」
「お前が……部下たちを殺したのか?」
黒いローブの男 (
「あ?部下…?そりゃどいつの事だろうなぁ~?
下に居た雑魚のことか?
邪魔だったから殺したが…それがなんだ?」
「…部下たちをよくも…タダでは済まさない!」
黒いローブの男 (
「部下だったんだなぁそりゃお気の毒になぁ~?
泣いて許してくれと頼んだら気が済むか?」
「お前のような悪党がそんなみみっちい事をするのか?」
黒いローブの男 (
「正解だ!
許しなんか乞うつもりはねぇよ
てめぇらみんなまとめて皆殺しコースだからな!!」
「元より許すつもりはない…!ここで叩き潰す!!」
N→
刀を構え返した黒いローブの男に向けて攻撃を繰り出した。
「はぁっ!」
黒いローブの男 (
「へぇ!案外骨のあるやつが居たんだな?
楽しめそうだ!!」
「くそ…!なぜ当たらない!」
N→
連続で繰り出す斬撃を回避しながら黒いローブの男は笑っていた。
「ただ者じゃないな…
普通の鍛錬ではここまで強くなれない
お前…いったい何者なんだ!?」
黒いローブの男 (
「知りたいか?特別に教えてやるよ」
N→
フードを外し、その素顔が明らかになる。
その顔を見て
ニヤリと笑うその男は刀を構え直す。
「お前はッ!?……月のーーーー!!」
黒いローブの男 (
『
「なにっ!!?」
N→
放たれた数発の強力な斬撃をもろに顔に受けてしまう。
両目を斬られてしまい、手で押さえながら
「がああああああっつ!!!!」
黒いローブの男 (
「ハハハ
馬鹿な奴だな、こんな事で気を取られやがってよ」
「ああぁぁぁ!目がぁぁぁ!!」
黒いローブの男 (
「俺に挑もうなんて馬鹿だったんだよ
止めを刺しておくか‥‥あ?」
N→
黒いローブの男が辺りを確認し始める。
黒いローブの男 (
「なんの音だ?」
N→
その瞬間、突如建物の床にヒビが入る。
そして建物全体が揺れると一気に崩壊し始めた。
黒いローブの男はスッと着地に成功し
煙の中、目を凝らすと目の前にいつの間にか巨大なミミズのような見た目の
黒いローブの男 (
「はぁ?なんでこんなところに居んだ!?
ちっ!ここは退くしかねぇか
幸いにも囮は沢山あるしな」
N→
黒いローブの男は建物の外へと走り去っていった。
目を覚ました
「隊長!!大丈夫ですか!!
「ぐっ‥‥くそ…!俺は‥‥部下を‥‥」
「隊長っ!!大丈夫ですか!!?」
「………ち、ちく…しょ……う…」
「隊長っ!!隊長ーーーッ!!!」
N→
しかし最悪な事に
「た、隊長!このままじゃ、私達は!!」
N→
その時、
「そんなっ…!!みんなぁああ!!」
「っ!!おま…え…ら
俺の‥‥せい…で……す…すまな……い」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
N→
途切れ途切れの意識の中、声が聞こえていた。
エンジン音のようなけたたましい音を最後に意識がさらに落ちていく。
暗く沈んでいく意識の中、電子音が聞こえた。
秒間的に高い音が鳴り続けており
突然、視界に眩しい光が広がっていく。
「ここは…?」
「やぁ
私は見たことがなくてね
感想をくれると助かるんだが」
「貴女は…確か、
N→
面識はあるがあまり詳しくは知らない人物であった。
「あぁそうさ。他の誰だと思うんだ?」
「なぜ…ここに?」
「君は瀕死の状態で病院に運ばれてたのさ
私に貸しのある医療班の人から人間のサンプルを渡すと聞いてね
ゴミでも貰えるものは貰っておこうかと受け取ってみたら
なんと見覚えのある男だなって
それで治療してみたら
偶然って怖いものだね」
「俺は…助かったのか」
「そういうことになるね
完治…というわけではないが下手な病院より治療は上手いからね
成功はしているんだよ」
「俺の……部下は?」
「そういえば一緒に運ばれたのも何人か居たね
記憶が欠落しているだろうから掻い摘んで話してあげよう
君が倒れた後、
それを倒す為に防衛隊が出動し、
同時に君達の救出が行えたんだ
ただ生存者は君ともう一人
「…!!
く、くそっ!あいつら…
………何っ!?ぐっ!!があぁぁあ!!
この痛みは………な、なんだ!!?」
N→
藻掻く
「な、なにを…!?」
「鎮痛剤だ。痛みは引いたろ?」
「がっ‥‥‥‥な、なんだこの痛みは?」
「かなり深い傷跡だったんだ
右肺や心臓の大部分に斬撃による
過剰流血に多数の血管の断線
数カ所の骨折に各所の部位欠損
正直、治療しても治せるかは賭けだったんだ
私だから成功したけど、死んでておかしくなかったほどだよ
今は傷口は塞がっているが、いつ広がってもおかしくない
次に開いた時は…今の数百倍の痛覚が襲い掛かり確実に君は死ぬ」
「もう…俺は戦えないのか」
「それはどうだろうね?
私の研究所に定期的に来てくれたらその後遺症を多少薄める事はできる
そうしたら戦えはするかもよ」
「…それは本当か?」
「だがそれも手間がかかるからね、タダではできない
ここは取引と行こうか?
善意で君の治療をし続けるのは得がないんだ
なんなら時間も薬も捨てるようなもの
私からすれば損あって利は無しなんだよね
だから頼み事を受けてくれたら交換条件として治療してあげるよ」
「頼み事とはなんだ?」
「定期的に
甲殻でも皮膚でも臓器でもなんでもいい
最前線にいる君ならできなくはないはずだよ」
「そんなもの…何に使うつもりだ?」
「何って研究のサンプルが欲しいだけだよ
毎度倒した死体を焼却処分してるみたいだが、とても勿体ない
とはいえ、生きてるのを捕獲してもいいんだけど
流石に生きてるのが目の前に居たら危ないからさ
死体の一部で良いから持ってきてよ」
「……」
「まぁゆっくり悩んでくれて構わないよ
タイムリミットが迫っていることだけは忘れないでいてくれればーー」
「……俺はあいつらを倒さないといけない
ここで倒れるわけにはいかないんだ」
「そうかい、それはロマンある心意気だね
死にかけでミイラみたいな姿じゃなきゃ惚れちゃうんじゃないかってぐらいかっこよかったんだけどさ
それで?だからなんだっていうんだい?」
「取引に応じる」
「へー、ふーん、そっか
それじゃあ取引成功だ
詳しい話は後々言うから今は休みなよ」
「あぁ…」
N→
そして
静寂に包まれた部屋に電子音だけが響き続けている。
(俺は‥‥必ず奴らにツケを支払わせてやる
部下を殺したお前らを…
必ず‥‥殲滅する!!)
N→
復讐を、そして仲間を必ず守りぬくと。
その誓いは彼を奮い立たせ、引き金を弾かせる。
それが彼の身勝手な理由なのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「そんな感じで私と彼は協力関係になり
こうやって定期的に検診をして傷口を見てるんだよ」
「そんな事が…
「そんな覚悟と贖罪が彼の行動理念なんだろうね」
「…
全く知らなかった」
「まぁ検診を受けているのは他にも理由があるんだけどね」
「他に…ですか?それはいったい?」
「あぁ。彼は私の研究の手伝いをしてくれてね
今度私の作ったとある兵そ―――」
「人の事を勝手にペラペラ話すな
今度はその顔面をぶん殴るぞ」
N→
奥から
「そ、そんなに怒らないでよ?
女性に手をあげるなんてクズ男だよ??
そ、そ…そうだ!コーヒーでも飲むかな?淹れてきてあげるね」
「早くしろ
俺の理性はそんなに長く持たんぞ」
「待っててよ!急いでお湯を沸かしてくるからさ!
まったく…品性の欠片もない男だね君は!!」
N→
残された
「あいつのいう事は全て本当だ
もしかしたら心のどこかでお前と失った部下を重ねているのかもしれない
俺を逃がすために命を散らせたあいつらを‥‥俺は―――」
「で、でも…間違ってないと思います
例えそれでも
それは誰も非難できませんし、させません」
「だがな…
俺はお前だけは特別に思っているんだ」
「どういう―――」
「俺は…お前を次期の隊長に据えようと思っている」
「な…!!なにを言ってるんですか!!
俺じゃなくても…
お二人の方が俺よりも優秀です!!」
「たしかにあいつらは優秀だ…だが隊長の器ではない
隊長として必要な事は自らで選択をし部下を導く事だ
だからこそお前にここを紹介したかったんだ」
「そ、それは…」
N→
その目は今までに見た事のないほどに強い瞳をしていた。
その瞳は
「
「お前は……俺が最も信頼する部下だ
そして
「そんなことを言われても‥‥
今は‥‥まだ答えが出せません‥‥‥‥」
「そうか…すまないな
突然こんなことを言って」
N→
そのままゆっくりと歩いて部屋を後にした。
先の言葉が彼の頭を照り付けていた。
その瞳は未だに戸惑いの色で染まっている。
N→
そして
コーヒーを手に取った
「それにしても君の部隊は曲者揃いだね
前に聞いた…
その子も面白そうじゃないか」
「
「彼女の在学していた
知っているかい?」
「あぁ、知っている。それがどうした?」
「あそこは一つ前の生徒会長が無差別に生徒を殺傷したって事件は知っているかい?」
「あぁ。あの日は大ニュースだったからな
その犯人の移送中に
連日で報道が取り上げるもんだから嫌でも覚えてるよ」
「そう。その事件の翌日に彼女は学園を辞めて防衛隊に配属希望を出したそうだ。
そして
11年前にテロ加担疑惑にかけられた一家があってさ
警察が確保に踏み込んだ際に
が惨殺された
その事件で当時7歳だった一人娘が奇跡的に生存していたらしい
そこの一家の苗字は確か‥‥
「まさか‥‥いや
11年前は7歳‥‥か」
「そう。なんの関連性があるかは知らないけど
偶然にしちゃピースが噛み合わないか?
まるで
「‥‥そうかもしれないが、俺にはどうすることもできない
俺の使命は人類を守り、奴らを狩る
それだけだ…」
「でも、隊の中で目的が違う人間が居たらいずれ綻びが出るかもしれないよ
まぁ、私には関係のない事だしいいんだけどさ
それは遅かれ早かれ分かる時が来そうだね
…歯車が‥‥そろそろ動き始める頃合だしね」
運命の歯車はいつだって予想も付かない回転をする
俺の知らない所で世界は動いている
想像を絶する何かが始まろうとしている
だが俺がやるべきことは一つ
目の前にある命を守る事だけだ
どれだけのものが待ち構えていようが進み続ける
この身が朽ち果てるその日まで戦い続ける
ただひたすらに
神ガ形ノ意志ニ背イテ 弐話 完
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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・アドリブ演技に関して
この台本はアドリブを入れる事を前提として書いています
なので演者様方の判断で挟んで頂いて構いません
是非素晴らしい演技にアクセントをつけてください
しかし作風に合わないものはご遠慮ください
・性別変更や比率に関して
作者はあまり好ましくは思っていませんがある程度ならば可とします
そのある程度の境界線は他の演者様たちとの話し合いに委ねます
・特殊なものについて
台本を演じる際に読み込まないで演じる行為や
言語を変える、明らかに台本無視と取れる
特殊な行為をするものは認めていません
流石に読み込んで普通に演技してください
多分そうじゃないとこの台本は演じれないです
二次創作等、商権利用問題のある場合、質問や不明点ございましたら
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https://twitter.com/kaguratizakura
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