血桜ハ還リ咲ク 別章

ミクロさん/kagura

神ガ形ノ意志ニ背イテ 壱話

登場人物名一覧


榊原 義弘さかきばらよしひろ

32歳

大雑把な性格だが、部下を率いる防衛隊の一部隊の隊長

説明下手でよく橘花たちばなに訂正される

勝田かつたを気に入り、傍に置いて色々指導している

任務中はかなり頭が回り、その力で戦場をかけている




勝田 信二かつたしんじ

24歳

熱い正義感と無鉄砲な若さを持つ新人隊員

士官学校卒の元警官であったが、魔怪まかいの襲撃の際に同僚たちの不甲斐なさに失望し、単身で挑むが死にかけ、そこを榊原さかきばらに助けられる

任務より目先の命を優先することが多く、危険な目に合うことが多い




須加 正樹すがまさき

30歳

榊原さかきばらの下についている隊員の1人。

榊原さかきばらの適当な説明には慣れているようで大体の説明で内容を理解している

部隊の中では狙撃を務める事が多く、高い位置からの索敵が得意である

※ナレ多いです

※若い店員、上司 兼任があります




東郷 椎菜とうごうしいな

19歳

学園を卒業し、何かの目的を以て部隊に所属した不思議な雰囲気を持つ女性兵士

自分の実力を疑わず、隊員と特に須加すが勝田かつたとは反りが合わない事が多く、独断で行動することが多い。

かなりの実力者で、榊原さかきばら管轄の部隊で個人戦力は群を抜いて高い。

※妊婦の女性 兼任があります




橘花 真由美たちばなまゆみ

27歳

榊原さかきばらの説明を理解し、作戦伝達を務める事の多い女性隊員。

榊原さかきばらとは長く同じ隊で行動しており、一番彼の考えや特性を理解している。

戦闘では弾幕を張ったり、他隊員の立て直しの時間稼ぎや牽制を行う。

※ナレ多いです

※アナウンス、子供 兼任があります






Nは→後のキャラ演者が読む

※所々交代があるので注意してください。かなり大変です。






V.H.A.ぶいえいちえー

突如世界に現れた「魔怪まかい」と呼ばれる怪物を駆除するために設立された軍

Variant Hunt Army通称V.H.A.ぶいえいちえーと呼ばれる軍は

自衛隊や警察組織と違い、独立した権力を持つ

一般人や兵士育成学園機構卒業者の中で実力保有者が入隊することができる

V.H.A.ぶいえいちえー兵を総称して兵員と呼ばれている



魔怪まかいについて

2000年に突如現れた異形の生命体。

理由や目的は不明だが人類を脅かす存在。

現れた当初は世界でも数十体しか確認されなかったが、年々数を増やしている。

出現方法も繁殖方法などは不明となっている。

魔怪まかいの姿形は現存した生物に類似している為

生物が魔怪まかいに変異した説や妖怪や幽霊といった類である説だったり

一部では神の使い等と吹聴ふいちょうしている宗教まで現れている。



CARDIEDカディドとは

その素性、人員、目的一切が不明のテロ集団

突如、姿を現しては殺戮を行う事から市民から恐れられている






役表

榊原 義弘さかきばらよしひろ♂:

勝田 信二かつたしんじ♂:

須加 正樹すがまさき♂:

東郷 椎菜とうごうしいな ♀:

橘花 真由美たちばなまゆみ♀:






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血桜ハ還リ咲ク 別章 壱話

神ガ形ノ意志ニ背イテ






勝田 信二かつたしんじ(モノローグ)

強い者は弱い者を守る

それは力を得た者の責任だ

そんな風に語るヒーロー作品は多い

だがあまりにも強大すぎるものが相手だった時はどうしたらいいのか

逃げる勇気とかそういうものが必要だっていうのか?

目の前にある脅威は俺なんて雑草ごとき眼中にはないのだろう

だが…もう後には引けない



勝田 信二かつたしんじ

「俺がここで戦わなきゃ誰が戦うって言うんだ!!

うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたの放った拳から繰り出される渾身の一撃。

だが、それもこの化け物を倒すには至らなかった。

振り払われた一撃で身体全体を吹き飛ばされ、その衝撃で血反吐をまき散らす。



勝田 信二かつたしんじ

「ゴハッ!!!?ぐっ…くそぉぉぉっ!!

こんなところで………死ぬってのかよっつ!!」



N→須加 正樹すがまさき

化け物は豪腕ごうわん勝田かつたの真上へと振りかぶると勢いよく振り下ろす。



勝田 信二かつたしんじ

(こんなところで‥‥俺は、死ぬのか………)



N→須加 正樹すがまさき

走馬灯が駆け巡る余裕もなく、じっとその様子を眺めるしかなかった。

スローモーションになった世界が終わりを告げる。

突如、連続で鳴り響いた銃撃音と激しく吹き付ける爆風、その衝撃を受け意識が正気へと戻ってきた。



勝田 信二かつたしんじ

「なっ…!!?いったい……なにが」



N→須加 正樹すがまさき

化け物から立ち塞がるように目の前にゾロゾロと重装備の兵士たちが駆け寄ってくる。

隊列を作るように並んだ兵士の攻撃を受け、化け物は地に倒れ動かなくなった。

ゆっくりと歩いてきた上官と思わしき兵士は倒れている勝田かつたに手を差し伸べるとフッと微笑んだ。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「だいぶボロボロだな。大丈夫か?」



勝田 信二かつたしんじ(モノローグ)

ここから俺の数奇な運命が巡り始めたのかもしれない

そんな風に考えていた

昔の俺はどんな大人になりたいと言っていたか思い出してみる

確かその時は皆を守れるような強い人になりたい

そんな風に言っていたな

今の俺はあの頃とくらべーーーーーー



橘花 真由美たちばなまゆみ

「おーい。勝田くん起きてるかー?」



N→須加 正樹すがまさき

居眠りをしていた勝田かつたの肩を橘花 真由美たちばなまゆみがゆさゆさと揺らしていた。

飛び起きるように立ち上がった勝田かつたを見て優しく微笑むと隣の席へとゆっくりと座る。



勝田 信二かつたしんじ

「あ…す、すみません!!勤務中に居眠りを!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「暇だからね、気持ちはわかるわ」



須加 正樹すがまさき

「寝ててもいいぞ

勤務ってもやる事といったら指示が来るまで待機だ

な~んもすることねぇんだからよ

今のうちくらいしかゆっくりできねぇぜ」



勝田 信二かつたしんじ

「ですが…!それでも勤務中です

決していい行いでは……」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「でも、隊長を見てみなさい」



N→須加 正樹すがまさき

タバコを吸いながら須加 正樹すがまさきが奥の席をアゴで指す。

部屋の一番奥の隊長である榊原さかきばらの席へと目をやると

雑誌を顔に乗せていびきをかきながら寝ていた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長があんなだから、私たちよりまず先に言われるでしょうし大丈夫よ。」



須加 正樹すがまさき

橘花たちばなの言う通りだな」



勝田 信二かつたしんじ

「そういえば東郷とうごうさんが居ませんね」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「またどこかでサボってるんじゃないの?

彼女がずっとここにいる時ってないじゃない」



須加 正樹すがまさき

「最近の若者は不愛想で困るよな」



勝田 信二かつたしんじ

「では自分が探してきます!」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたは急いだ様子で部屋から出ていった。



須加 正樹すがまさき

「おい…勝田かつた!?

って行っちまったよ

どうせ勝手に帰ってくるんだから放っておけばいいのにな」



N→須加 正樹すがまさき

制止する声は勝田かつたには聴こえておらず

部屋を出て長い廊下を小走り気味に進んでいった。




世界に突如現れた化け物

通称 魔怪まかい

その脅威から人類を守るため

また、テロリストの鎮圧のため自衛隊から改名され防衛隊と呼ばれる国家組織の軍が設立された。


勝田かつたはそこに属する新人兵士で

先の榊原さかきばらを隊長とする部隊の部下であり、須加すが橘花たちばな勝田かつたの先輩にあたる。


そして今探しているのは

つい先日、育成機構を卒業し入隊してきた東郷 椎菜とうごうしいなという若い女性兵士である。

勝田かつたや他隊員は未だ彼女とコミュニケーションをとる事が少なく、不思議な雰囲気をかもし出す女性であった。

一般兵士が自由に入れる場所をくまなく探していると前から東郷とうごうがゆっくりと歩いてくる。



勝田 信二かつたしんじ

東郷とうごうさん!どこに居たんですか!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「あら?…どうかしたの?」



勝田 信二かつたしんじ

「あまり勝手に出歩かないでください

一応、待機中はいつでも行動できるように備えておくのが規則です」



東郷 椎菜とうごうしいな

「お堅い人ね。ちょっとくらいリラックスしたらどう?

することがなかったから射撃訓練をしてたのよ」



勝田 信二かつたしんじ

「それならばせめて隊長に一言なにか言ってから行ってください」



東郷 椎菜とうごうしいな

「えぇ。次から気をつけるわ」



勝田 信二かつたしんじ

「では戻りましょう」



N→須加 正樹すがまさき

二人が部屋に戻ろうとしたその時、館内にサイレンの音が鳴り響き

廊下内にアナウンスが入った。



アナウンス (橘花 真由美たちばなまゆみ兼任)

「緊急通報発令。

B地区にて魔怪まかいの出現を確認との通報

出動部隊はAー3えーすりーBー2びーつーFー4えふふぉーの三部隊です

ただちに出動をお願いします」



N→須加 正樹すがまさき

出動部隊のうちFー4えふふぉー勝田かつた東郷とうごうの所属する榊原さかきばら部隊の秘匿識別番号である。

この制度は館内や任務時の情報漏洩ろうえいの防止策として設けられており

隊員一同は隊を呼称するときはこの英数字の番号で呼び合っている。



東郷 椎菜とうごうしいな

「出動ね。じゃあ目的地変更かしら?」



勝田 信二かつたしんじ

「そういうことになりますね

では急いで出動コンテナへと向かいましょうか

おそらく榊原さかきばらさんたちは兵装車で待機しているはずです」



N→須加 正樹すがまさき

二人は急ぎ足で、出動コンテナと呼ばれる兵装車や戦闘機の格納されるコンテナへ向かった。



N→東郷 椎菜とうごうしいな

その頃、Fー4えふふぉーの搭乗する兵装車前には榊原さかきばら須加すが橘花たちばなの三人が待機していた。



須加 正樹すがまさき

「隊長さんよぉ

さっきは爆睡だったみたいだけど目は覚めたのか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「大丈夫だ、それより勝田かつた東郷とうごうは?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「二人共出ていったんです

すぐ来ると思うので待っていましょう」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

少しして勝田かつた東郷とうごうが急いだ様子で走ってくる。



勝田 信二かつたしんじ

「すみません!遅れました」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「来たか。今回の任務はB地区にいる魔怪まかいの討伐だ

民間人の避難はまだ完了していないから人口密集地から引き離すらしい」



勝田 信二かつたしんじ

「わかりました。それで目標の詳細は?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「詳細か…?詳細なんか言ってたな‥‥まぁでけぇらしい」



勝田 信二かつたしんじ

「そうなんですね…!それでどれほどの大きさでしょうか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そうだな……今までの中だと大きい方かもな」



勝田 信二かつたしんじ

「それは、どこの基準で大きい方なんですか!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「無線の音質だとよく聞き取れなかったんだ

仕方ねぇだろ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「私が説明します。

目標は草食獣そうしょくじゅう型の個体です

クラスは未だ不明ですが、現段階の情報から予想する脅威度はB-Classびーくらす

B-Classびーくらすの脅威基準は複数の部隊が合同でないと殲滅せんめつできないレベルの強さです

突進攻撃を主に行い民家を破壊しながら移動しているとの事

進行方向は一貫性がなく、予測不能です」



勝田 信二かつたしんじ

「なるほど…それでは俺たちの隊はどうしたら?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「至って単純だ、横から叩く!」



須加 正樹すがまさき

「おいおい、隊長…適当なこと言うなって

まるで俺らが撃退するって話みたいじゃねぇか」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「間違ってはないだろ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「はぁ~説明は私がやりますから少し静かにしていてください」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「す、すまん」



橘花 真由美たちばなまゆみ

Fー4えふふぉー部隊は目標を発見次第、目標の誘導を行います

民間人の避難が間に合っていない為、ひらけた場所へと誘導したのち

罠を設置するBー2びーつー隊の合流を待ちます

そしてAー3えーすりー隊とFー4えふふぉー隊で目標に本格的な攻撃を仕掛けます」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「まぁ倒せるなら途中で撃破しても構わないそうだが、無理はするなよ

無茶して死んでった奴を何人も見ている

そんな奴らを俺の部下から出したくない」



勝田 信二かつたしんじ

「は、はい!」



N→須加 正樹すがまさき

一同は兵装車へと乗り込んだ。

車内にて装備を整えながら発進する。

そのまま数十分の待機の後、目的地付近へと到着した。






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榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ここからは降りていくぞ」



勝田 信二かつたしんじ

「ここでですか?まだ少し距離がありますが…?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁ、そっちの方がいいだろう」



勝田 信二かつたしんじ

「理由を聞いてもいいですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あ…あれだ

静かに行った方がいいだろ

そういうことだ」



勝田 信二かつたしんじ

「え、どういうことですか?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「ここからでもかなりの黒煙が立ってるのがわかりますよね

不用意に音を立てては、相手に位置を特定させるだけです

だから車から降りたんですよ」



勝田 信二かつたしんじ

「そういうことですか!ありがとうございます」



須加 正樹すがまさき

「隊長は大雑把にしか言わないからな

分かんない事は俺らに聞け」



勝田 信二かつたしんじ

「それよりもこれは‥‥!!」



N→須加 正樹すがまさき

兵装車から降りた一同の視界には衝撃の光景が広がっていた。

壊された民家が黒煙をあげ、辺りには数人の死体が転がっており

もはや元々人だったのかもわからないほど潰され

その衣服の残骸から一般人であることが何とかわかる程

見るに堪えない凄惨な現場だった。


そこには数台のパトカーが放置されており

途中にある検問を突破されていたのが伺える。



勝田 信二かつたしんじ

「こ、これは‥‥!!またなのか………

あいつらだけ先に逃げたのかっ!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「仕方ないさ。こんな化け物を相手にしたら一般人も警官も大差ない」



勝田 信二かつたしんじ

「ですがっ!!それじゃあなんのために警官なんてものがーーー」



東郷 椎菜とうごうしいな(被せて)

「さっきから聴いてればうるさいわね

どうせ無力な一般人が挑んだところで勝てるわけないじゃない

生き残りが0か1なら

まだ一人でも多く生きてる方がいいんじゃない?」



勝田 信二かつたしんじ

「な、なんだと!?もう一回言ってみろ!!」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつた東郷とうごうの襟に両手で掴みかかった。



東郷 椎菜とうごうしいな

「離してくれない?」



勝田 信二かつたしんじ

「馬鹿野郎ッ!!俺らの仕事は民間人を守る事じゃないのかよ!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「二人とも!!ここで争ってどうするの!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた‥‥下がれ。それと東郷とうごうお前も銃を下ろせ」



N→須加 正樹すがまさき

えりに掴みかかった際、腹部に拳銃が突き付けられているのに気がついた。



勝田 信二かつたしんじ

「いつの間に!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「もう一度言うぞ。二人共下がれ」



東郷 椎菜とうごうしいな

「わかったわ」



勝田 信二かつたしんじ

「はい…すみません」



N→須加 正樹すがまさき

突如、大きな咆哮が辺りに響いた。

けたたましい鳴き声に一同は耳を塞ぐ。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「なんの音ですか!!?」



勝田 信二かつたしんじ

「これはッ!!?目標の鳴き声ですか!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「近いな…」



N→須加 正樹すがまさき

榊原さかきばらは隊員内に伝わるハンドサインで四人に指示を出す。

東郷とうごうを除く一同は頷くと行動を開始した。

須加すがは単身別方向へ向かい、橘花たちばな東郷とうごうは待機。

榊原さかきばら勝田かつたは声のした方へと進んだ。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「気を抜くな。いつ対峙してもおかしくない」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

振動のする方向へと二人は物陰に隠れながらゆっくりと向かっていた。

途中、他隊員の姿を発見し、目標を発見したとのサインを確認する。

目標は現在、大通りをゆっくりと歩行しているようで

位置を大まかに伝えられた二人は見晴らしのよい路地で姿を隠していた。

ゆっくりと路地から大通りを覗き込むとその姿を捉える。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「でかいな‥‥」



勝田 信二かつたしんじ

「あれが…!目標ッ!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

二人は魔怪まかいの姿を視界に捉えた。

全長は数十メートル程の大きさで、サイのような見た目をしているが、先端の角が異常なほどに長く、先端に人のものと思われる血を滴らせている。

身体に瓦礫と思われる残骸が数か所突き刺さっており、そこから緑色の血を流していた。

榊原さかきばらは耳につけている小型通信機を起動し須加すがに連絡を取る。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

須加すが。見えているか?」



須加 正樹すがまさき

「あぁ、ばっちりだ。

あいつの行動を見ていたが、おそらく突進を主とした攻撃方法を行う

知性はかなり低いのか突撃しか能がない

証拠に身体がボロボロになってやがるからな

ついでに言うと視界が随分と悪そうだ

旋回するのにいちいち身体ごと動かしてやがるしな」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「定期的に叫んでるようだが、苦しんでいるのか?」



須加 正樹すがまさき

「確証があるわけじゃねぇがそうかもしれないな」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「だそうだ橘花たちばな。合流しよう

こいつの誘導は比較的楽そうだ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「了解しました」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

その時、魔怪まかいが通っている近くのコンビニの店内に何か影のようなものが動いたのを勝田かつたは視界に捉えた。



勝田 信二かつたしんじ

「あれは?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

双眼鏡で内部を見ると、奥の方で身を潜めていたのが民間人である事が確認できた。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!あそこのコンビニに民間人が!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「本当か?」



勝田 信二かつたしんじ

「早くここから離れさせなければ!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「待て!迂闊に近づくな

まずは奴を誘導してからだ」



勝田 信二かつたしんじ

「ですがッ!!このままあの人達に気がついたら真っ先に殺されてしまいます!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そんな事はわかっている!!

だが、ここで俺らが無駄死にするわけにはいかないんだ!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

勝田かつたはその言葉を聞いた瞬間

激しい怒りを覚えた。

かつて警官だった頃、民間人を避難させるために防衛線を張っていた時の事

急襲してきた魔怪まかいを前に真っ先に逃げだした同僚や上司を榊原さかきばらに重ねた。



勝田 信二かつたしんじ

「あんたもかよ‥‥」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「今この場で手をだしたらーーー」



勝田 信二かつたしんじ

「見損ないましたよ!!俺1人でも助けてみせます」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ッ!!待て!!勝田かつたっつ!!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

勝田かつたは制止する声を無視し、大通りへと飛び出していく。

そのまま物陰に隠れ、隙を見ながらゆっくりとコンビニへと近づくように進行していった。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

須加すが橘花たちばな

勝田かつたが一人で行きやがった!

あの馬鹿野郎っ!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「どうしますか?私たちも動きますか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「いや…他の隊と合流しよう

誘導はAー3えーすりーと合同で行う」



東郷 椎菜とうごうしいな

「彼はどうするの?まさかこのまま見捨てる?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そんなわけがあるか……誰一人として俺の隊員は殺させやしない

あいつも俺の部下だ。お前らを守るのが隊長としての務めだ

必ず救ってみせる」



東郷 椎菜とうごうしいな

「私が行ってあげましょうか?

この中で一番隠密行動が得意なの私よね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「そうだな。単独で合流…できるか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「任せて」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「頼んだぞ」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

東郷とうごうとの通信が切れると榊原さかきばらは深いため息をついた。



須加 正樹すがまさき

「だけどよ。言い方が悪かったんじゃねぇか?

ありゃ確かに見捨てるって聞こえるぞ

確実に救える為に策を練るってしっかり言ってやればよかったと俺は思うけどな」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「私も同感です。民間人を守りたいって気持ちは全員同じです

それを勝田かつたくんにもわかってもらわないと」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「…あれが俺の言い方だ。

あとで説教だな‥‥‥‥無事でいろよ勝田かつた






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N→須加 正樹すがまさき

その頃、勝田かつたはコンビニの手前まで接近していた。

魔怪まかいの進行はゆっくりで、コンビニから数十メートルほどの距離から動かず

立ち止まり、付近を確認するように首を動かしている。



勝田 信二かつたしんじ

「気がついている?

というよりは周りの防衛隊の動向に反応しているのか?」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつた魔怪まかいの視線がそれた隙に

扉を開けた時の入店音で魔怪まかいに気づかれるのを危惧きぐしコンビニの割れた窓から侵入した。

中に入ると声を抑えながら、店内に呼びかけをする。



勝田 信二かつたしんじ

「防衛隊です!生存者はいますか!?」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたが声をかけるとヒソヒソと声が聞こえ、数人の民間人が出てきた。どうやら小学生ぐらいの子供が二人と老人が二人、若い店員と思わしき男性が一人、逃げ遅れていたようだ。



勝田 信二かつたしんじ

「大丈夫ですか!?」



若い店員 (須加 正樹すがまさき兼任)

「今のところは‥‥でも、奥にいる方が怪我をしてしまって」



勝田 信二かつたしんじ

「わかりました‥‥」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたは奥に横たわる女性を発見した。

足を怪我しているその女性はどうやら妊婦のようで、ここから動けずにいるようだ。



子供 (橘花 真由美たちばなまゆみ兼任)

「あの!このお姉さんが怪我しちゃって…僕たちなにもできなかったの!」



N→須加 正樹すがまさき

子供は涙を浮かべながら勝田かつたへと頭を下げた。

その子供と同じ目線に腰を落とし、頭に手をポンっと乗せる。



勝田 信二かつたしんじ

「よく頑張ったな。この人をここまで守ってくれてありがとう

あとはお兄さんに任せてくれ」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたは女性へと近づいた。



勝田 信二かつたしんじ

「今からあの化け物を引き付けてここから離れます

そしたら他隊員が助けにくるのでじっとしていてください」



妊婦の女性 (東郷 椎菜とうごうしいな兼任)

「あの‥‥主人があの化け物を誘導するって言ってここから出ていったんです!

隠れて…いるかもしれません、結婚する際に作ったペンダントをつけてます…

主人を助けて‥‥ください!」



勝田 信二かつたしんじ

「わかりました!最善を尽くします」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたはコンビニから再び外へ出た。

そして魔怪まかいの近くにある車の陰に隠れて様子を伺う。

魔怪まかいは依然として位置を変えずに定期的に咆哮をあげていた。



勝田 信二かつたしんじ

「一体…何をしているんだ?

なぜ動かない?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「なんでなのかしらね?」



勝田 信二かつたしんじ

「うわっつ!!?いつの間に!?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「さっきのかっこよかったわ

頼れる防衛隊って感じだったわね

あの子、貴方に憧れちゃうわね」



勝田 信二かつたしんじ

「そこから見ていたんですか?…それよりも

あいつをどうにか誘導するにはどうしたらいいでしょうか?

知恵を貸していただきたいでです」



東郷 椎菜とうごうしいな

「そうねぇ。どうしたらいいかしらね

隊長たちの力を借りてみたら?」



勝田 信二かつたしんじ

「ですが‥‥」



東郷 椎菜とうごうしいな

「‥‥貴方よりも彼らの方が知恵も実力も全てが優れているわ

素直に頼りなさい。子供の駄々じゃないのよ

あの人達を救いたいのなら単独で戦わない方がいいわ」



勝田 信二かつたしんじ

「わかっているんです‥‥

榊原さかきばらさん達は見捨てようなんて思ってない事くらい…

でも、まだ納得ができません」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたは躊躇いながらも小型通信機を起動した。



勝田 信二かつたしんじ

勝田かつたです。今どうなっていますか?」



須加 正樹すがまさき

「まずいことになった…もう一体魔怪まかいが現れやがった!

今隊長と橘花たちばなの二人で戦ってる!

こっちに合流できるか?」



勝田 信二かつたしんじ

「こちらで生存者数名を確認しました!

しかし近くにはまだ目標がいます

どうしたら…」



須加 正樹すがまさき

Aー3えーすりー隊が目標への攻撃を開始するそうだ

Bー2びーつー隊の罠設置が目標の進行を予測できずに難航している

少しだけでも攻撃をして、生存者の場所から引き離せ

こっちからはそこはでかい建物で隠れていて援護ができない

そっちは頼んだぞ」



勝田 信二かつたしんじ

「了解!東郷とうごうさん、力を貸してください」



東郷 椎菜とうごうしいな

「私も隊員よ。当然でしょ」



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N→東郷 椎菜とうごうしいな

時は戻り数分前、魔怪まかいが足を止めた為

榊原さかきばらは待機していた。

少しして橘花たちばながそこに合流する。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「なぜ足を止めた?

このまま進行ルートを変えられてもだめだな…

誘導できるか試し……」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長、待ってください!なにか音がしませんか?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

二人が耳を澄ますと近い所から風を切るような高い音がしていた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「この音は…?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「建物の中からか?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

榊原さかきばらはマークスマンライフルを

橘花たちばなはサブマシンガンを構えながら

近くの建物の中を一つずつ覗いていった。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「なに、このにおい?とても嫌なにおいがする…」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「何か腐ったようなにおいだな…」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

次に覗こうとしたカフェと思わしき建物から物音と先ほどの風の音が聞こえていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ここか?」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「この中から聞こえた気がしましたが‥‥一体なにが?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

ゆっくりと覗き込むと奥に何か物陰が動いているのが見える。

ソレはこちらを振り返るように動き

口元に貪るように男性を咥えたソレは羽音を再び響かせた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「なんでっ!!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

退けっ!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

ソレは突進するように二人へと急速に迫ってきた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「グハッ!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「ガァッ!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

体当たりを受けた二人は店の外へと吹き飛ばされる。

日の下に晒され、その姿が日光で露わになった。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「なんで‥‥魔怪まかいが!?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

その異形な姿は4メートル程の大きさのはえのような見た目の魔怪まかいであった。

先から聞こえていた風の音はこの魔怪まかいの羽音だったのだ。

口に咥えていた男性の死体を吐き捨てると二人へと向き直る。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「っ!!?武器を出せ!!

…俺のはどこいった?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

榊原さかきばらの持っていたマークスマンライフルは吹き飛ばされた拍子に少し離れた位置へと飛ばされていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「しまった!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長!!下がって!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

橘花たちばながサブマシンガンを連射する。

40発の弾丸を受け、はえ魔怪まかいは空中で藻掻もがいていた

しかしすぐに体勢を戻すと二人に向き合る。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「絶体絶命か!!?」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

榊原さかきばらは腰に下げていた本来銃に取り付ける小型の剣 バヨネットを構えた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「今のうちに装填しろ!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「で、でも隊長はどうするんですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「時間を稼ぐッ!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

榊原さかきばらは突撃を開始した。

その間に橘花たちばなはマガジンを装填し始める。

バヨネットを持ちながら突撃する榊原さかきばらに向けてはえ魔怪まかいはまるでゴミを跳ねのけるかのように手を鞭状むちじょうに放った。

咄嗟に体勢を低くし、回避した榊原さかきばらだったが

間髪入れずに振り下ろされたもう一つの手の一撃を受け、地面へと叩きつけられてしまった。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「グアッッッツ!!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

榊原さかきばらは背中を強く叩きつけられた衝撃で口から血を吐き出した。

もう一度放たれた橘花たちばなのマシンガンでの連射を受けると再び体勢を崩し後方へと下がっていく。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「クソォッ!!このままだと」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

突如、はえ魔怪まかいの頭部に重い銃弾が当たった。

三発の着弾音が響くと、二人に通信が入る。



須加 正樹すがまさき

「避けろォォッ!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

橘花たちばなは咄嗟にしゃがみながら後ろへ下がる。

榊原さかきばら魔怪まかいの足を蹴り飛び下がると腕を正面にクロスさせ衝撃に備えた。

突如、はえ魔怪まかいは三度の小規模な爆発を起こし

それを受け、はえ魔怪まかいは地面へと倒れた。



須加 正樹すがまさき

「今だ隊長ッツ!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「助かった!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長、これを!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

急いで立ち上がった榊原さかきばらにマークスマンライフルを橘花たちばなは投げ渡した。

銃口をはえ魔怪まかいへと向け

そして、引き金に指を重ねる。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「終わりだ化け物!!」



N→東郷 椎菜とうごうしいな

大きな銃声が鳴り響く。

射撃を受けた魔怪まかいが苦しむように金切り声のような高い音をあげる。

それは生き物が死に際に放つ断末魔のようであった。

はえ魔怪まかいは手足をジタバタと動かしていたが

しばらくすると動きが鈍くなり、そしてゆっくりと止まった。

二人は先ほどの男性の死体を確認し始める。

絶望した表情を浮かべ死亡した男性の首元には写真が入るペンダントをつけているのに気がついた。

ペンダントを開くと、中には男性と妻と思わしき二人の仲睦まじい様子が写っている。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ほんとうに危なかった…

なぜここに居たんだ?目撃情報はなかった…

サイ魔怪まかいの出現と遅れて出現したのか

いずれにせよ運がよかったな

大丈夫か?橘花たちばな



橘花 真由美たちばなまゆみ

「はい…まだ身体が痛みますが、このまま続行しましょう

次は本来の目標へと向かわないとですから」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁ…そうだ勝田かつたは?」



須加 正樹すがまさき

「さっきアイツらから連絡があったが、今は生存者との距離を離すために囮になっている!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「先に他の隊と合流してからの方がいいと思いますが…どうしますか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「このまま向かう!

無事でいろ勝田かつた東郷とうごう!」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

その頃、勝田かつた東郷とうごう魔怪まかいの目前の物陰へと隠れていた。



勝田 信二かつたしんじ

「いきますよ!!」



東郷 椎菜とうごうしいな

「えぇいつでも」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

二人は銃を取り出し、飛び出した。

東郷とうごうは二丁の特殊な形状をした拳銃を

勝田かつたはマグナムを構える。



勝田 信二かつたしんじ

「今です!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

サイ魔怪まかいの視線が二人に向いた瞬間、頭部に向けて一斉に射撃を開始した。



東郷 椎菜とうごうしいな

「あまり聞いてなさそうね…

思ったより正面は固くできてる

あれだけ突撃しているもの

普通の弾じゃダメージすら与えられなさそうね」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

サイ魔怪まかいは二人を正面に捉えると脚を後方へと払い、突撃の態勢を整えた。



勝田 信二かつたしんじ

「来ます!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

サイ魔怪まかいは驚異的な速度で突撃してくる。

二人はお互いに反対方向へと回避したが、その突進の衝撃と角で薙ぎ払った一撃で辺りの車や、建物の瓦礫を飛ばしていた。

運悪く飛んできた電柱を勝田かつたは正面から受けてしまう。



勝田 信二かつたしんじ

「ぐっうぐぁああぁああぁぁああ!!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

激痛に悶えながらも自身の利き腕が折れている事を勝田かつたは察していた。



勝田 信二かつたしんじ

(こんなところで‥‥俺は、死ぬのか………)



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

ゆっくりと迫る魔怪まかいをぼんやりと眺めながら

過去の出来事を走馬灯のように思い返していた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

あれはかつて勝田かつたが警官として交番へと配属された半年前の事

魔怪まかいの出現警報が発令され、民間人は避難を開始しており

勝田かつたや警官はパトカーを走らせながら避難誘導を行っていた。



勝田 信二かつたしんじ

「もう全員の避難が完了しているのでしょうか?」



上司 (須加 正樹すがまさき兼任)

「まぁこんだけのサイレンと携帯に連絡が届いてんだ

流石に逃げてるだろーよ」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

パトカー数台を並べて置き、民間人が走りながら逃げてくるのを誘導していたが

警官数名は民間人への説明や対応に追われていた。

そんな時、目前からゆっくりと化け物が姿を現す。

熊のような見た目をした魔怪まかいは人間より遥かに大きな図体をしており

車にすら追いつく速度で迫ってきていた。



上司 (須加 正樹すがまさき兼任)

「そんなぁあ!!なんでここにィぃぃ!!?

たすけぇてえぇええ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「先輩ッ!俺たちで時間を稼ぎましょう!

拳銃の使用はーーーー」



上司 (須加 正樹すがまさき兼任)

「はぁっ!!!?ふ、ふざけんじゃねぇ!

死にてぇのか!?馬鹿がっ!!

囮なんて勝手にやってやがれぇ!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

上司は勝田かつたや民間人を手で押し除け

避難中の民間人が居るのを物ともせずパトカーで走り去っていった。



勝田 信二かつたしんじ

「そ、そんなっ!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

魔怪まかいは逃げ遅れている人間を捕まえては放り投げ地面に叩きつけ虐殺していた。

数人の新人警官は拳銃を発砲しようと構えたが

一瞬で、大きな手に捕まれると握り潰され、ゴミを投げ捨てるように死体は放り投げられてしまう。



勝田 信二かつたしんじ

「くそぉぉお!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたは乗り捨てられたパトカーへと乗り込むとエンジンをかける。



勝田 信二かつたしんじ

「警官は民間人を守るのが仕事じゃないのか!!

くそったれ!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

パトカーに乗ったまま熊の魔怪まかいへと向けてアクセルを踏み込む。



勝田 信二かつたしんじ

「少しでも時間を稼ぐんだ!!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

そのまま止まることなく、全速で突進していったが

くま魔怪まかいは突如辺りの瓦礫を手に取るとパトカーへと向けて投擲とうてきしてきた。



勝田 信二かつたしんじ

「なっ!!!!?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

パトカーは瓦礫を受け、斜めに逸れて転倒する。

ドアが開き勝田かつたは外へと投げ出され、その直後パトカーは爆発した。



勝田 信二かつたしんじ

「ぐぅっがぁっつ!!ち、ちくしょうっ!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたは怪我だらけの身体を気合を入れて起こし、拳銃を取り出す。



勝田 信二かつたしんじ

「このっ!!化けものッがぁッ!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

六発の銃弾を放つ。その全ては確実に命中していた。

しかし、くま魔怪まかいには効いていないようで

そのまま勝田かつたへ向けて進行してきていた。



勝田 信二かつたしんじ

「俺がここで戦わなきゃ誰が戦うって言うんだ!!

うおおぉぉおぉぉぉおおぉぉぉぉっ!!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたの放った渾身の拳の一撃

だが、これもこの化け物を倒すには至らなかった。

薙ぎ払われた腕に直撃し吹き飛ばされ、身体が宙に浮かんだ。

重力の赴くままに地面へと叩き付けられると血反吐を吐く。



勝田 信二かつたしんじ

「ゴハッ!!!?ごほっ……ごほっ……

ぐっ…くそぉっ!!

こんなところで………死ぬってのかよっつ!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

くま魔怪まかいは目の前に立つとその豪腕ごうわん勝田かつたの真上へと振りかぶると勢いよく振り下ろした。



勝田 信二かつたしんじ

「あ‥‥あぁ‥‥‥‥

こんなところで‥‥俺は、死ぬのか………」



勝田 信二かつたしんじ

(そうだ。あの時もそんな風に考えていた

世界は残酷だ。誰も助けになんて来ない

みんな自分の事だけしか考えていない

なんて…クソみたいな世の中なんだ…)



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

走馬灯が駆け巡る余裕もなく、じっとその様子を眺めるしかなかった。

突如連続で鳴り響いた銃撃音とけたたましい爆発音、そしてその衝撃を受け目を覚ました。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた、大丈夫か!?」



N→須加 正樹すがまさき

突如勝田かつたは背後から押し出されるように走り出す。

後ろを振り返ると榊原さかきばらが焦った様子で肩を押していた。



勝田 信二かつたしんじ

榊原さかきばらさん!!?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「こいつは……強めのB-Classびーくらす

よく耐えた!!」



勝田 信二かつたしんじ

「…はいっ!!死に損ないました‥‥」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「ふざけんな。俺の隊から死者を出す気はない!!」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長!Aー3えーすりー隊合流!そしてBー2びーつー隊の罠設置完了しました!

6時に25メートル下がってください!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつた!まだ走れるか?」



勝田 信二かつたしんじ

「は、はい!」



N→須加 正樹すがまさき

二人は急いで後ろへと下がっていく。

走りながら振りかえるとこちらに向けて

サイ魔怪まかいは突撃の態勢を取っていた。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「振り返るな!走れ!!」



N→須加 正樹すがまさき

サイ魔怪まかいは恐ろしく早い速度で迫ってきていた。

二人との距離がじりじりと詰まっていく。



勝田 信二かつたしんじ

「隊長!俺が徹甲てっこう弾で足止めします

先に行ってください!!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「さっきも言ったろ!!

俺の隊から死者は出さない!!

お前も俺の隊の一員だ!!守ってみせる!!

死んでいい命なんてないんだ!!」



勝田 信二かつたしんじ

「くっ‥‥!!でもこのままだとっ!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あと少しだ!!迷わず走れぇえ!」



N→須加 正樹すがまさき

二人のほぼ真後ろまで魔怪まかいは迫って来ていた。

あと数秒で二人は轢き殺されてしまう。

その瞬間 無線が入る



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長!目標地点到達です!!伏せてっ!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「わかった!!」



勝田 信二かつたしんじ

「な、なにを!?」



N→須加 正樹すがまさき

突如、魔怪まかいの突進に合わせてタイミングよく地面が爆発を起こした。

その爆発に合わせ道路が崩落し、落とし穴のようになり魔怪まかいはそれに足を取られる。

同時に槍のように先端の尖ったアンカーが近くの建物から数本飛び出し魔怪まかいの身体を貫く。

そしてその身体へと電撃がバリバリと音を立てながら一気に流れる。

数秒の間もがいていたがすぐに動きが止まった。

完全に絶命したようだ。



勝田 信二かつたしんじ

「な…これは何が‥‥起こって?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「間に合った‥‥か」



N→須加 正樹すがまさき

爆発の衝撃を受けて倒れている二人へと橘花たちばなが駆け寄る。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長!勝田かつたくん!大丈夫ですか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「あぁ…大丈夫だ」



橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたくん、東郷とうごうさんは今どこに?」



勝田 信二かつたしんじ

「そういえば‥‥姿が見えません!

もしかしたら!!」



N→須加 正樹すがまさき

通信が入る音が一同の小型通信機から鳴った。



東郷 椎菜とうごうしいな

「こちら東郷とうごうよ。

突進を回避したときに衝撃で気を失ってたわ

間に合わなくてごめんなさいね

それでそっちはどう?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「無事ならばいい…すぐに合流できるか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「えぇ。すぐに向かうわ」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

通信が切れてからしばらくの無言の後、勝田かつたが口を開いた。



勝田 信二かつたしんじ

「すごい‥‥あんな化け物を倒すなんて」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「これが防衛隊の力だ‥‥お前の所属する軍の力だ

すごいだろ?」



須加 正樹すがまさき

「目標は沈黙。素体は流用できそうだ

これから解析に入るだろう‥‥

あと、兵装車と救急車が来るまで待機だってよ

隊長、お疲れだな

今日は思いっきりいっぱいやるか?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「最近、禁酒‥‥してたんだがな

健康診断にも引っかかっちまう‥‥

だが、こんな日は飲まなきゃやってられねぇな

勝田かつた。お前も来い」



勝田 信二かつたしんじ

「はい。ご一緒させていただきます

その前に‥‥榊原さかきばらさん

勝手な行動をしてすいませんでした」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺らは奴らを倒すためにここに居る

そんな俺らが全滅したらそれこそ終わりだ

この命には民間人とはまた違う重さがある

俺らは民間人を守るためにまず真っ先に生きなければならない

お前にだってわかってるはずだ…

無謀なことをしてみろ

そのたった一つの行動で犠牲者が出たらそれこそ後悔するぞ」



勝田 信二かつたしんじ

「はい…俺が…間違ってたんですね」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「だが、お前のそういうところはお前の優しさであり強さでもある…

それは人として大事なことであり

俺が捨てなければならなかったものだ

今回はお前のおかげでこの罠に引き入れる事ができた

よくやった」



勝田 信二かつたしんじ

「ッ!!」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたはグッと歯をくいしばり一礼で返す。

彼の中で悔しさや感謝の気持ちが溢れていた。

そんな勝田かつたを見て二人は微笑んだ。



須加 正樹すがまさき

「ふーっ…無事でよかったぜ

まさか二体も魔怪が居るなんてな

発見が遅れるのはかなり致命的だ‥‥

他にもいないか確認しておかないとな」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

須加すがはマンションの屋上からスナイパーライフルのスコープを覗いて、辺りを確認していた。

ゆっくりと付近を確認していると少し離れたところに黒いローブを着た人間を視界の端で一瞬だけ捉える。



須加 正樹すがまさき

「…ん?民間人か?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

その黒いローブを追うように東郷とうごうが走ってきたのに気がついた。



須加 正樹すがまさき

東郷とうごう。誰か今そこに居たか?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「え、えぇ‥‥多分逃げ遅れた民間人よ

気にしなくてよさそう」



須加 正樹すがまさき

「そうか…わかった

悪いんだが生存者の確認に行ってもらえないか?

そこから近いんだろ?」



東郷 椎菜とうごうしいな

「‥‥言いづらいんだけど聞いてもらえる?」



須加 正樹すがまさき

「どうした?」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

時は少し戻り十分前

サイ魔怪まかいの突撃を回避した東郷とうごうは路地へと姿を隠していた。

飛んできた鋭利な瓦礫を腕に受け、切れた箇所からは血が流れており

傷口を包帯で止血し、そっと魔怪まかいの様子を伺う。



東郷 椎菜とうごうしいな

「これは…あっちは任せるしかないわね

こっちは…どうしようかしら」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

その瞬間、叫び声が辺りに聴こえてきた。

東郷とうごうはゆっくりと声のした方へ近づくとどこからか羽音のような音がすることに気がつく。



東郷 椎菜とうごうしいな

「この音は…?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

二丁拳銃を構えながら裏路地を進んでいくと、店の中でうごめはえ魔怪まかいを発見した。



東郷 椎菜とうごうしいな

「まさか…?他にもいた!?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

はえ魔怪まかい東郷とうごうを発見するとゆっくりと店から不快な羽音をたてて浮かびながら姿を現わす。

口元から子供の半身を吐き捨て、東郷とうごうの様子を伺っていた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「ここで倒さないと、か‥‥めんどうね」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

周りは5~6メートル程の細い路地で魔怪まかいは大きく横に移動できないようであった。

東郷とうごうに向け、はえ魔怪まかいは突進を行う。



東郷 椎菜とうごうしいな

「単調な動きね」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

東郷とうごうは狭い路地の壁を蹴りあがり、上空へと飛び上がり回避した。

空中で浮かびながら脇にあるホルスターから二丁拳銃を取り出す。

そして東郷とうごうはそのまま引き金を高速で引き、乱射した。



東郷 椎菜とうごうしいな

「横に上手く動けないのね

なら、これは避けられなさそう」

死銃乱射デス・ガトリング



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

東郷とうごうの特殊な拳銃。

片仮名カタカナのコのような形をした銃は二つの銃口、二つの引き金があり

上部を人指し指で、下部を薬指で高速で押すと

銃口から弾が機関銃のように乱射された。

撃ちながらも袖から高速で取り出したマガジンを再装填し

乱射を途切れる事なく続ける。

はえ魔怪まかいはゆっくりと地面に倒れると動きを止めた。

着地した東郷とうごうは再度マガジンを装填し、数発の弾丸を撃ち込む。



東郷 椎菜とうごうしいな

「‥‥こいつが隊長と戦ってたやつと同一個体?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

はえ魔怪まかいが進行してきた方向を見るとその途中に先ほどのコンビニがある事に気がついた。



東郷 椎菜とうごうしいな

「…あそこを通って?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

コンビニの前に着いた東郷とうごうの視界には凄惨な光景が広がっていた。

中に入ろうとした時、背後から物音がしたのに気がつく。



東郷 椎菜とうごうしいな

「…誰!?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

振り返ると視界に黒いローブを着た男を捉えた。

すぐに後を追いかけたが、路地を曲がると見失ってしまう。



東郷 椎菜とうごうしいな

「今のは何者…?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

そこに須加すがからの通信が入った。



東郷 椎菜とうごうしいな

「そんなわけ‥‥ないわよね」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

東郷とうごう須加すがとの通信を開始した。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



N→須加 正樹すがまさき

そして現在、勝田かつた橘花たちばなと二人でコンビニへと民間人救出のため向かっていた。



橘花 真由美たちばなまゆみ

「隊長はあぁ言うけど、勝田かつたくんを気に入ってて

心配してるのよ。言い方は粗雑そざつだけど本当にすごい人よ

許してあげて?」



勝田 信二かつたしんじ

「わかっています」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「あの人は皆を守ろうと必死に戦ってる

私はそんな隊長だからこそ、信じて着いていけるのよ」



勝田 信二かつたしんじ

「‥‥信じて‥‥‥‥ですか」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「あれが生存者のいるっていう‥‥え?なに、この臭い!!?」



N→須加 正樹すがまさき

コンビニの付近には強烈な臭いが漂っていた。

胸騒ぎを抑えながら店内を覗いた二人の視界には衝撃の光景が広がっていた。

先ほどまで閉まっていた扉は強力な突撃によって破壊され

店内にはまるでペンキを乱雑に塗りたくったように

血とバラバラな肉片が商品の残骸と混ざるように散らばっている。

店員と思わしき男の身体はありもしない方角へとぐにゃりと曲げられ

白髪の髪型で察する事しかできないほど潰れた生首が転がっていた。

そして地面にはまるでなめしたように平らに潰された妊婦の女性だったものが倒れてる。

その近くには瓦礫や棚に潰されるように子供二人の半身が見えていた。



勝田 信二かつたしんじ

「そ、そんな‥‥どうして」



橘花 真由美たちばなまゆみ

「‥‥ひど…い‥‥‥」



N→須加 正樹すがまさき

勝田かつたは恐る恐る店内に入り、一人一人の生存を確認する。

当然だが息をしているものはいない。



橘花 真由美たちばなまゆみ

勝田かつたくん‥‥‥‥」



勝田 信二かつたしんじ

「どうして‥‥どうしてなんだぁああああ!!

ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」



N→須加 正樹すがまさき

拳を思い切り地面へと叩きつけ、嘆き叫んだ。

世界の残酷さを己の無力さを

そして、絶望に満ちた嗚咽おえつ




N→榊原 義弘さかきばらよしひろ

2015年、世界中に突如現れた人類の天敵 通称魔怪まかい

その侵略により日本の人口は3分の2近く殺戮さつりくされ

人類は長らく絶滅の危機にひんしていた

からくも避難した人類は東京を中心として関東中枢一帯に高く強固な隔離壁かくりへきを設け

魔怪まかいの侵略から守るシェルターを建設する

2030年、国は自衛隊を解散し

新たに魔怪まかい駆逐くちく隔離壁かくりへきの防衛を主として活動する防衛隊を設立

民間人から出た強者を雇うV.H.A.ぶいえいちえーに対し

国からの指示で動く軍として彼ら兵士は戦う

例え身を引き裂かれようとも戦い続ける

いつか人類が救われると根拠もなく信じて……ただひたすらに
















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



勝田 信二かつたしんじ

(こんなところで‥‥俺は、死ぬのか………)



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

走馬灯など駆け巡る余裕もなく、じっとその様子を眺めるしかなかった。

突如、連続で鳴り響いた銃撃音とけたたましい爆発音、そしてその衝撃を受け意識が正気へと戻る。



勝田 信二かつたしんじ

「なっ!!?いったい…なにが!?」



N→橘花 真由美たちばなまゆみ

目の前に立ち塞がるようにゾロゾロと重装備の兵士たちが走ってきた。

勝田かつたの隣に立った上官と思わしき兵士は手を差し伸べる。

その手を掴み、立ち上がった勝田かつたに向けてその兵士は鼻で笑う。



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「だいぶボロボロだな。大丈夫か?」



勝田 信二かつたしんじ

「貴方たちは…?」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「俺らは防衛隊だ。助けにきた」



勝田 信二かつたしんじ

「あの化け物を‥‥倒した」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「一人で立ち向かうなんて根性あるじゃねぇか

そんな警官が今時いるんだな

覚えておくよ

さぁ、避難しろ」



勝田 信二かつたしんじ

「あの‥‥俺を

俺を防衛隊に入れてください!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「……一時の正義感で命を張るんじゃねぇよ

こうやって戦い続けていたら当然死人が出る

お前がその一人になる可能性だってあるんだ」



勝田 信二かつたしんじ

「それでも‥‥!入りたいんです

俺は市民を守るために警官になりました!

しかし、化け物を前にしたら…

俺の今までの訓練なんて…無駄でした

もう……誰も死なせたくないんです!!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

「フッ‥‥覚悟があるのはわかった

じゃあ、まずは転職からだな

俺は榊原 義弘さかきばらよしひろだ」



勝田 信二かつたしんじ

「はい!!

俺は勝田 信二かつたしんじです!」



榊原 義弘さかきばらよしひろ

勝田かつたか、よろしくな」



勝田 信二かつたしんじ(モノローグ)

ここから俺の数奇な運命が巡り始めたのかもしれない

そんな風に考えていた

昔の俺はどんな大人になりたいと言っていたか思い出してみる。

確かその時は皆を守れるような強い人になりたい

そんな風に言っていたな

今の俺はあの頃と比べて強くなったのだろうか?

まだ何も分からない

だがその答えがいつかわかるまで俺は進み続ける

ただひたすらに






神ガ形ノ意志ニ背イテ 壱話   完


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利用規約

ミクロさん台本を動画、配信で使用するのは全てご自由にどうぞ



・アドリブ演技に関して

この台本はアドリブを入れる事を前提として書いています

なので演者様方の判断で挟んで頂いて構いません

是非素晴らしい演技にアクセントをつけてください

しかし作風に合わないものはご遠慮ください


・性別変更や比率に関して

作者はあまり好ましくは思っていませんがある程度ならば可とします

そのある程度の境界線は他の演者様たちとの話し合いに委ねます


・特殊なものについて

台本を演じる際に読み込まないで演じる行為や

言語を変える、明らかに台本無視と取れる

特殊な行為をするものは認めていません

流石に読み込んで普通に演技してください

多分そうじゃないとこの台本は演じれないです


二次創作等、商権利用問題のある場合、質問や不明点ございましたら

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https://twitter.com/kaguratizakura

のDMにてご連絡ください

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