第二十六話(桜視点) 全部君が悪い
「桜……しよ」と翔太は私に抱きついてくる。
今は翔太の部屋だ。
これで五日間連続だ。
もういやだ。
何か足りない。
「口でいいか……?」
「ううん、ピル飲んでるし中で大丈夫……」
何も気持ちよくない。
でもしたい。
なんなんの……このモヤモヤは──ッ!!
気持ちよくても何も満たされない。
なんなの……ねぇ。
「ねぇ、翔太?」
「何?」
そんなモヤモヤと共に私の口は勝手に動いた。
「こんなの間違ってるよ……」
そうだよ。
全部何もかも全て間違っている。
「なんでだよ? 桜も気持ちいだろ? 俺は最高だぜ。うらら先輩がこれを望んでるなら俺はもう最高だよ」
そう虚ろな目をしながら言う翔太。
そうだよ。
なんで私がこんな目に遭わなきゃいけない?
そもそも、私は普通に翔太と恋愛がしたかったのに……そうだよ。
「私……決めた……」
だったら、全ての元凶である耕平くんを殺せば全て丸く済むんだよ。
「何がだよ?」
「う、うん。なんでもないよ、翔太も好きなことしたらいいと思うよ。一度きりの人生なんだし」
耕平くんのせいで私たちはみんな不幸になった。
全部全部全部、耕平くんが悪い。
だったら、私が耕平くんを潰す。
きっとそれが私の心に満たされない物なのだろう。
そうすれば、また私は快楽で満たされる。
耕平くんを殺せば全てが終わりなんだ……。
そう考えるとゾクゾクとしていた。
全てが終わることが嬉しいからだ。
○
二日後──。
『今日、放課後耕平くんの家に行くね』
『急にどうしたよ? わかった』
その返事を見て私はニヤリと笑い、包丁をスクールバッグに入れた。
待っててね、耕平くん。
全てを終わらせるから……。
その日の学校は放課後が楽しみすぎて、ニヤニヤが止まらなかった。
下半身が濡れた。
こんな身体にしたのも全部耕平くんが悪いんだよ……あなたがうらら先輩と付き合っていなければ、翔太も私も壊れなかった。
セックスしか考えられない身体にならなかった。
あ〜早く、全てを終わらせたい。
そして、放課後──。
「今日、ずっと表情が怖かったけど大丈夫?」と突如、一人の女子に話しかけられた。
へぇ〜そんな風に見えてるんだ。
「大丈夫だよ。今日で全てが終わるからさ」
そう言うと私はスクールバッグを手に取り、耕平くんの家へ向かった──。
いつもと同じ景色が今日は違って見えた。
人がみんな耕平くんに見えてきた。
景色は全て耕平くんとしていた時に見えてきた。
全て、全て、全てが地獄に見えた。
その風景と共に私は涎を流す。
全部、全部、全部、壊れちゃえ。
全てが嘘であってほしい現実だ。
殺す殺す殺す。
それで全てが終わるんだ──。
『着いたよ』
『わかった』
玄関が開くと共に耕平くんは私に飛ぶように抱きつく。
「よかった、よかった、よかった……」とそのまま、私に抱きつきながら泣く耕平くん。
殺したい。
目の前に殺す人はいるんだ──。
「ほんとによかった……退院後に会えてないし学校で会いたかったけど……周りにうららと桜に起こったことを広めて大事にしたくなかったし……ほんとによかった」
その全ての言葉聞きたくない。
聞いたら、変になりそうだ。
「とりあえず俺の部屋に……」
「そうだね」
なんで、耕平くんを殺そうとすると身体がおかしくなるんだ。
耕平くんの部屋に行くとそれは強くなる。
耕平くんとした日々が頭の中を駆けめぐる。
それと共に「うっ──」と私は嘔吐する。
「え、大丈夫……どうた!! 桜!!」
やめて……私に優しくしないで……。
包丁を……早く殺して楽になりたい。
そして、私は近づいてきた耕平くんを──。
「さく……ら……」
腹部に包丁を刺した──。
口から血を流しながらその場に倒れる耕平くん。
「え……血?」
刺した嬉しさに目からは涙が流れる──。
身体が気持ちいい。
そのまま、苦しそうに腹部を抑えている耕平くんの上にまたがり座る。
「うっ──桜?」
その言葉に私はニヤリと笑い。
「私、今最高に気持ちいい!!」
その後は何度も何度も何度も何度も耕平くんを刺した。
一生この時間が続いてほしいかった──。
『耕平くん。今から会える?』
───────────────────────
【告知】
次回ルートなし最終話。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます