第十七話 彼女を壊すために

「それで、どうやって翔太に復讐すればいいんだろう……」


 そう言いながら、オレンジジュースの入ったグラスをストローで回す春川さん。


 今俺たちは、ファミレスに来ている。

 復讐をどうやってやるかを考えるためにだ。


 そんなの簡単だ。


 俺はニヤリと笑い。


「簡単だよ……翔太は今、うららに依存している」

「うん……」

「だったら、うららを壊そうよ」


 俺の発言に顔色を変える春川さん。


「え……一応、うらら先輩は耕平くんの……」


 その反応をするのは当然だ。

 でも。


「そうだよ。彼女……でもさ? 今更、彼女とかどうでもよくなっちゃったわ」


 うららとヤっていても何も感じなかった。

 でも、春川さんとしてみてわかった。

 それはなんでかを。

 そう、それは……同じ気持ちではなかったからだ。


「それって──」

「うん、もう、うららはいらない。だって、春川さんがいるんだもん」


 そう言うと俺は春川さんのグラスを奪い、春川さんの使ったストローでオレンジジュースを飲んだ。


「そもそも、うららがなんで俺の時に気持ちがってなかったかわかったもん」

「え?」

「それは、翔太の方が気持ち良かったからだよ」


 こんなのいつでも気づけたことだ。


「だからさ、うららを壊せば、翔太も自然と壊れるから」


 すると、春川さんは顔を真っ赤に染めて。


「わ、私は耕平くんの方が愛を感じた」


 その姿は照れていた。


 こんな感じのことうららと昔もあったっけな。


 俺は笑顔で。


「俺もだよ。うららと付き合ってる今のうちに、早くうららを壊そう」


 俺の憧れていた、可愛くて頭が良くて身体もいい、大好きな彼女を壊すなんて、普通の人は言わないだろう。

 でも、俺も含めてこいつらはみんな狂ってるんだよ。


「別に壊さなくてもいい。翔太からうららを寝取るんだよ」


 今はもう、うららは翔太の物といってもいい。

 俺なんてもう、うららにとってはモブだ。


「俺はうららとして子供を作る」


 突如、その発言に恐怖を抱いた顔をする春川さん。


「え………」

「そうすればさ、うららも翔太も同時に壊せるだろ?」


 寝取って子供を作れば簡単にもうあいつらは壊れるほど、あいつらの身体はお互いに依存している。


「そんなことしたら、耕平くん……」

「ああ、ただじゃ済まないかもしれない……」


 その瞬間、俺の目からは涙が流れ出す。


「それでも、俺は早くあいつらを壊したいんだよ……もう、あいつらの人生をめちゃくちゃにしたいんだよ」


 今の俺になら決断出来る。

 うららを壊すことを。

 うららの人生をめちゃくちゃにすることも。

 だって、俺には春川さんがいるのだから。


「わ、私も……」

「ん?」

「私も耕平くんの力になれるように手伝うよ。私も二人を潰したい壊したい」


 その言葉に俺はニヤリと笑い。


「ならさ、今から男子トイレでしよ……」

「え……」

「今、春川さん、俺の力になれるように頑張るって言っただろ? ならさ、今、二人を壊すと考えているだけで、狂ってんのかめちゃくちゃしたくなってんだよ……」


 壊すことへの興奮が性欲へと変わっていた。


「なら、他のところ……ほら、男子トイレって、他にも人が来るでしょ。人気がないところで」

「無理だよ」

「え?」

「この気持ちはそんなところじゃ発散できない。スリルがないと発散できないんだよ」

「なら、発散できるまで付き合うからさ」

 

 俺は春川さんの口に手を近づけて、舌を手で掴む。


 怯え、泣き目になっている春川さん。


 その顔を見るとさらにゾクゾクとした。


 普段の俺ならこんなことをしない。

 でも、二人を壊す興奮で気持ちがおかしくなっていた。


「ならさ、もういいよ。俺、一人で復讐するから」


 俺はさらに強く舌を引っ張った。


「うっ──」と痛そうな顔をする春川さん。


 その顔に俺は興奮した。

 うららも壊せばこんな顔するのかな……。


「どうするよ?」


 すると、春川さんは涙を流しながら。


「ヤります……」

「ん?」

「男子トイレでしたいです」


 その言葉に俺はニヤリとした。


 俺は笑顔で。


「これでこそ、俺と同じ被害者だよ」


 その後、春川さんの下のソファーは興奮していたのか少し濡れていた。


 そして、俺と春川さんは男子トイレでした。


「もっと、もっと、もっと、私を壊して」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る