第十一話
今日はどうやら、春川さんは学校に来ていないらしい。
だから、俺は一人、空き教室で掲示用のポスター作りをすることにした。
きっと、体調が悪いか何かなのだろう。
一刻も、春川さんとの距離を縮めないといけないため、これは少し痛い。
俺は画用紙を切り始めた。
ただ一人、俺は孤独にポスター作りを始めた。
といっても、一人という時間は色々と考えられていい。
でも、その反面、今もうららは翔太に──。
すると、勢いよく、ドアが開く──。
そこには……。
「なぁ、耕平」
翔太がいた。
少し体調が悪いのか、青ざめている。
しかし、犯されているという可能性はなくなった。
良かった……。
だから、安心して俺はにこりと笑い。
「どうしたよ? 親友」と言った。
翔太は早足で俺に近づいてきて……。
「なぁ、耕平……少し、話を聞いてくれ!!」
そう言う翔太は少し焦り気味だった。
なんだよ……めんどくせぇ。
ただでさえ、お前とはもうしゃべりたくないんだ。
なるべく早く済ませてくれよ。
「おう、どうしたよ?」
俺は作り笑いでそう言った。
○
場所は変わり、人気の少ない旧校舎の少し不気味な階段へとやってきた。
掲示物をやらなきゃなのに……こんなところまで来るとか……やっぱり、お前は俺にとって邪魔なことばかりしてくるな……。
「それで、どうしたよ?」
「お、おう……」
すると、翔太の目から大粒の涙が流れ出す──。
なんだよ……いきなり泣き出してよ。
そして、翔太はその場で土下座をする。
その姿は少し意外だった。
普段ならこんなことするほどの奴ではなく、プライドが高い奴だからだ。
「ごめんなさい……俺……俺さ、お前の彼女のうらら先輩とした……それも何回も、何回も、何回も──ッ!!」
完全に翔太は泣き崩れていた。
その場で俺の頭は真っ白になった。
なんで、こいつがそのことを自分から言うんだよ。
そう思うと、あの日の光景が頭の中に描写された。
俺の目からは涙が流れ出す。
「それで……一つ言わせてくれ……俺は、俺は、俺は、俺は……うらら先輩に脅されているんだ……それで、うらら先輩は俺を性奴隷として……」
その言葉を聞いた瞬間、俺は拳を握り、思いっきり翔太の腹を蹴った。
「ぐっ──」とその場で腹を抑えて嘔吐する翔太。
そして、翔太は口を手の甲で拭くと俺を見る。
こいつ……ほんとは自分がうららを性奴隷として、使っているのに。
なんだよ、今の発言はよッ。
「耕平?」
俺は翔太に近づいて、翔太の顔面を翔太のゲロに叩きつけた。
「ぐはっ──」
なんで、なんで、なんでこいつは簡単に、そんな嘘をつけるんだよ。
「くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ」
俺は何度も翔太を叩きつける。
「やめ、やめてください……」
「うるせぇ──ッ!! お前が、お前が、お前のせいでぇえええええええ!!」
そして、俺は翔太を叩きつけるのをやめた。
「はぁはぁ……」
翔太の顔面は涙やら鼻水やらゲロそして、少しの鼻血でぐちゃぐちゃになったまま、倒れている。
「こ、耕平……あんなこといきなり言われたら、そりゃー俺のことを嫌うよな……」
違う、そうじゃない……。
「でも、俺はうらら先輩と何回もした……それでも、うらら先輩は実は──」
「うるせぇ!!」
俺はそう怒鳴りつける。
そうじゃないんだよ……俺が一番ムカつくのはお前が、人のせいにしているその姿なんだよ。
「俺はお前とうららがそういう関係だっていうのは、少し前から知ったんだよ。人間て不思議だよな……だって、しばらくすると慣れちまうんだもん……」
気づけば、最近は初めの頃ほどの憎みがなくなっていた。
「そうなのか……ごめん……でも、うらら先輩のはほんとなんだ……だから……」
「なぁ、一つ言っておくけどよ……俺はお前に復讐することしかお前のことを思っていない。だから、もう近づくんじゃね!!」
俺はそう怒鳴りつけると、その場を後にした──。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます