第十二話

 俺は下を向き、廊下をとぼとぼと歩いていた。

 

 なんでだろ……せっかく、復讐相手を殴れたのに……全然嬉しくない。

 むしろ、殴ったことへの後悔がある。


 そんな気持ち悪い気持ちに葛藤されながら、俺は歩く。


 すると、「耕平くん」


 その声はうららの声だった。


 俺は、え? と顔を上げる。


「今日、掲示係は?」


 今日あったことは絶対に話さない。

 そして、うららには心配をかけたくない。


 だから、俺は作り笑いをして。


「今日はもう終わったよ」


 そう嘘をついた。


 翔太をあそこまで痛ぶったのになんも気持ちよくない……。

 はぁはぁはぁ…………。


 胸が痛い。

 なんで……なんで、なんでなんだよ……なんで、こんなに気持ち悪いんだよ……。


 気持ちよくなりたい、気持ちよく、気持ちよくなりたい。


 突如、そんな欲求が出てきた。


「ねぇ、うらら……」

「何? 耕平くん」

「今から、うちこれる?」


 すると、うららは笑顔で。


「うん!!」と言った。



 俺は俺の家でうららととにかくした。


 しても、しても全然気持ちよくならなかった。

 何度も、何度も、何度もしまくった。

 うららが俺でしか気持ちよくならないように俺のものだけになるように、そして、俺自身が気持ちよくなるために何度もした。


 自分がおかしいことなって、とっくに気付いている。

 俺はもう壊れてるんだよ……。



「今日はいっぱいしたね……はぁはぁ……もう、最高」


 お互いの身体の汗でシーツはビショビショだ。

 そんな濡れたベッドに俺とうららは横になっている。

 

「俺も最高……」


 結論からいくと、全く気持ちよくなかった。

 前までは気持ちよかったのに……何でだろ……。


 ただただ、モヤモヤが増えていくだけだった。


「もう一回だけしよ……」

「うん!」



 次の日。


 翔太はいつも通り学校に来ていた。

 いつも通りの対応、それはまるで何もなかったように。

 それでも、俺と翔太は喋ることはなかった──。


 放課後になり、俺は掲示係の仕事をしに、空き教室に行くと……。

 

「嘘だろ……」


 すでにポスターが出来ていた。


 そして、そこに春川さんがいた。

 どうも、隈が酷いように見える。


「ねぇ、これって、耕平くんがやってくれたの?」


 どうやら、春川さんではないらしい……なら、あいつなのか……。

 ふざけんじゃねーぞ……こんなので許されるはずがないに決まってるだろ?


「ああ、俺がやったよ……」

「そうなんだ……」


 やはり、変だ。

 こんなの春川さんじゃない……何か違う。


「春川さん? 体調でも悪──」


 すると、春川さんは怒鳴るように。


「黙れ!!」


 普段の春川さんからは見れない姿だった。


「え………春……川さん?」


 春川さんは両指をくっつけて。


「ねぇ、耕平くん……私って翔太の彼女じゃん? だからさ、あまり、私に話しかけないでもらえるかな? 私、他の男子にはなしかけられたくないんだけど……」


 春川さん……?


「私さ、翔太がいれば他の男子なんてどうでもいいからさ、ねぇ、掲示係、これから一人でやってもらえる?」


 どうなってんだよ……春川さん?

 

「どうして……なんで、春川さん、何があったんだよ!?」


 どうしちまったんだよ。

 二日前とはまるで別人だ。


「そうだ。今日は翔太にしてもらお!!」


 え………それって………。


 春川さんは無言で帰っていった──。



 翔太どこかな……早くしたいなぁ……。

 いっぱいしたい。

 た〜くさんして、た〜くさん子ども欲しいなぁ〜。

 あ、翔太のこと考えてたら、濡れてきちゃった❤️。


 私は翔太のスマホをGPSで探した。


 ん……ここ?


 私が来たのは公園のトイレだった。


 ここにいるのかな……。


 そして、男子トイレに入った時だった──。


 誰かの喘ぎ声が聞こえる……。


「ねぇ、後輩くん!! 昨日、たくさん、耕平くんとしたのに私、一回もイかなかったの。完全に私、翔太専用になっちゃった」


 その声はうらら先輩だった。


 え……翔太って………。


 私は涙を流しながら、そこで両膝をつける。


 絶望だ。


「今日、どうしたの?」

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」

「完全に壊れてるね。でも、身体だけは壊れないでね」


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