第四話(翔太視点)
「どうした、翔太? 顔色悪いな……」
「ん……そ、そうか……」
なんなんだ……この感覚は……。
自分が人形みたいだ。
「大丈夫かよ? それで、春川さんのサポートを……」
「そ、そうだな。よろしく頼む……」
そうだ、早く桜としないとうらら先輩に俺の全てが奪われる……。
耕平に相談したい……でも出来なかった。
それは、『うらら』という印象を耕平に悪いように捉えさせてしまうからだ。
耕平が傷つく姿を見たくない……。
そして、なによりも「嘘だ」と言われ友達関係を潰させるのが怖い。
もともと、俺が悪いことだった知っている……助けてくれ……耕平。
「よし!! じゃぁさ、まずは俺を春川さんに紹介してよ」
「お、おう……」
やけに積極的だなぁ……今までの耕平ならそんなに俺のことを助けてくれないのに……。
「何でそんなに優しいんだよ? なんか、俺に隠してないか?」
もしかしたら、俺を助けてくれようとしているのか?
そんな希望を心の隅で感じた。
すると、耕平はこちらを見て笑って「そんなの、お前が親友だからだよ!!」
その姿は少し寂しそうだった。
そっか……やっぱり、俺の親友だ……助けてくれ。
耕平……………。
「何泣いてんだよ……?」
「いや……」
どうやら、俺は自然と自覚無しで涙を流していた。
俺はその涙を拭きとり……。
「何でもねぇよ……ほら、行くぞ!」と笑顔で言った。
絶対に耕平にバレてはいけない。
耕平が傷つく姿を見たくない。
だから、自分で何とかしなければ……。
○
ということで、放課後に俺と耕平は桜の元へ向かった。
桜の姿を見た瞬間、昨日の出来事が頭をよぎった。
それは、頑張って記憶を消そうとした出来事だ。
ごめんよ……桜……お前の前でエッチして……。
罪悪感に埋め尽くされて心がくしゃくしゃにされそうだった。
でも、俺は頑張ると決めたんだ。
「よぉ、桜……」
「どうした〜? 元気なさそうだけど……まさか!! 私の風邪うつった!?」
顔に出しちゃダメだ……。
がんばれ、俺……。
「いや、昨日寝不足でよ……そんなことよりさ、桜に俺の親友を紹介したくて……」
「え……誰々?」
「こいつだ……」と俺は耕平を指さした。
「春川さん、俺、耕平と言います。まぁ、こいつとは親友かな?」
「翔太の親友は私の親友だよ!! よろしくね」と笑顔で言う桜にニコッとする耕平……。
「おい、お前……桜のこと……」
「なはずねーよ。俺にも彼女いるし……」
その言葉に俺はほっとした。
良かった……お前まで俺を……いや、親友なんだ。
そんなことなるはずがない。
「だよな、ごめんよ。疑いかけたわ」
「まぁ、いいよ。それよりさ、春川さんって好きなものある?」
「え〜私? う〜ん……そうだなぁ……翔太かな……」
その言葉を聞いた瞬間、俺の思考は完全に止まった。
真っ白になった。
何もかも……全てが……。
あれ……なんにも思わない。
嬉しくも、なんとも……なんだろ……。
「お前、いい彼女だな!!」
「そ、そうだな……」
「えへへへ……」と耕平に褒められて照れている桜。
あれ……何にも感じない。
おかしい。
どうしてだ?
そっか……………俺………桜を裏切ってるからだ。
こんなにも俺のことが好きな俺の彼女を……裏切ってるからだ。
くそ………。
俺は涙が流れるのを我慢して、桜に「じゃぁ……」と告げて走ってトイレに向かった。
くそ、くそ、くそ………。
なんでなんだよ……なんで、なんで、なんで……。
「どうして、俺ばっかりこんな目に……」
俺は廊下を走っているとその場で足を止めた。
なんで……。
「なんで、うらら先輩が…………」
うらら先輩はニコッとしながら俺に近づいて耳元で……俺の腹部を触りながら……。
「それはね、今日は耕平くんと帰る約束してるからさ、早く済ませようと思って歩いてたら……そしたら、たまたまね。今日はこの後耕平くんと帰るし制服にシワとか汚れつけたら……君の彼女に動画送るから……」
「なんで……」
「ん〜?」
「なんで、桜の連絡先を……」
「決まってるじゃん。そんなの、昨日勝手にやらせてもらったんだよ。いい? もし、あなたが無駄な足掻きをしようとしてるなら、忠告しておくけど。あなたは、私のおもちゃであって私以外の誰の物でもない。自分の物でもね。何かあったら、すぐにあなたにその分の罪が返ってくると思っていた方がいいわよ。だから、『はい』か『いいえ』で答えてね。あなたは、あの子より私としたい?」
「…………はい……」
「なら、もう、私以外の女のことなんて考えない方が自分のためだよ」
「はい………」
ごめん、桜……俺にはこの悪魔がいる限り、お前とはできない。
助けて、耕平…………。
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