第44話 「「生まれて来なければ良かった」」
「いつも仏頂面でトイレに通いするるおばあちゃんなんて好かれるわけないじゃないの!嫌われるに決まってるじゃないの!!」
妹が言った。
おばあちゃんは、とても悲しそうな顔で俯いた。
おばあちゃんは容姿にコンプレックスがある。
おばあちゃんの母親は、おばあちゃんがお腹にいる時に馬車から落ちて、そのままひかれた。
おばあちゃんが生まれた時顔が歪んでいたと周囲は悲鳴を上げ、母親は一生懸命に馬神社で祈った。
「顔ひん曲がり」と叫びながら、おばあちゃんを姉が追いかけまわしたという。
「口曲がり」だと尋常小学校の6年間言われ続けた。
だから、おばあちゃんは誰にも負けたくないと一生懸命勉強した。
尋常小学校のおばあちゃんの通信簿には『優』ばかりが並んでいる。
絶対音痴なのに、努力のみで音楽で『良』をもらえたおばあちゃんはすごいと思う。
顔の歪みは女学校に上がる頃に治った。
でも容姿のせいでずっと縁談もなかった。
「小学生の頃はいじめてすみませんでした」
ある同級生は、卒業して会った時に言ったそうだ。
でも追いかけ回した姉は謝罪しない。
謝る必要がないと思っているんだろうな。
おばあちゃんは言う。
「生まれて来なければ良かった」
「じゃあ、私はどうするの?」
物心つく頃には姉から『なゆブス』と呼ばれ、それに抵抗して喧嘩をして額に4針も縫うほどの怪我を負った私は?
小学校で日常的に殴ったり蹴ったする同級生とバスの中で再会した。
私が見ているのには気づいたが、視線すら合わせずそのまま降りた。
せめて口先だけでも謝罪の言葉を口にしたならば、まだ良かったのにと私は思う。
「兄弟と思われたくないから近づかないで」
姉や妹にそう言われ続けてきた私は?
今も『なぶ』と呼ばれ続ける私は?
二人で言う。
「「生まれて来なければ良かった」」
だが ストーリーテラー ならば そこで終わってはいけないのだ。
そのどん底から生まれる 物語がきっとあるに違いない。
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前回のエッセイの全面改稿しました。
よろしければもう一度読み直してくださいぬ。
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