第38話  終活ともったいないお化け

私はため込む人間である。


とにかく捨てられない。


小学生の夏休みの宿題で使った刺繍糸や、

その昔神戸から叔母が持ってきた刺繍糸を延々ずっと持っていた。


叔母さんはフランス刺繍の先生だったが、自分が使えない刺繍糸とちょっと試してこれだめや向かないわと途中で投げ出したりレース糸をたくさん持ってきたのだ。


いつか使える、何かに使える、綺麗だしもったいない。


最近一念発起して、その刺繍糸でマフラーを、レース糸でストールを編んだ。


なんとなくたくさん綺麗なレース糸を叔母は買ったらしいが、グラデーションを作るのにものすごい苦労した。


1度形にしたと自分でも納得したから、使ってみて頃合いを見て捨ててしまおう。


引っ越し前はダンボール3箱の毛糸があったが、欲しい人にかなり譲り、編んでプレゼントもしていたので後はもう少しだ。


人それぞれ価値観は違う。


私はがもったいないからと取ってあるものは兄弟から見れば何の価値もないゴミである。


今頼めば何万もする日本刺繍の端切れなど、姉から見たらゴミ。


私が集めた天然石やチェコビーズやスワロフスキーは、弟から見たらゴミ。


妹が捨てようとした毛糸40個ほど譲ってもらった。


せっかく減った毛糸がまたダンボール3箱に増えてしまった..


ということでクリスマスプレゼントにするために今はちょっと編み物地獄です。


サンタクロースの『赤』


ヒイラギの『緑』


雪の『白』


鈴の『黄色』


夜空の『深い青』『黑』


これだけの色があればたくさんの色がクリスマスの範囲に入る。


岡村孝子さんのクリスマスピクニックコンサートに行くことを楽しみにしている友達がいる。


その時用のマフラーが欲しいそうだ。


作って送ってメールした。


そして自分が送ったメールを後で読み返してぎょっとした。


何だコレはっ?!


『愛を持っていなくて綺麗にならなくてすみません』


思い切り変な人になった。


『アイロンを持っていなくて綺麗にならなくてすみません』


メールも小説入力も喋るだけで済ませるので、滑舌やイントネーションが悪いとものすごくヘンテコリンである。


Facebook に書いたコメントを読み返していて、あまりのへんてこりんさにショックを受けて全く違うこちらに書いてしまった。


『こちら』が『ゴジラ』になっているw


文章を書くためにパソコンを買ったのだが、全然心がこもっていない!なんだこの駄文は!と踏んづけて割って、さらにポットに敷いていたらサビサビになってしまった。


それは私にとってはゴミなのでもったいないとは言わない。


私はアナログ人間なので広告の裏にでも走り書きをして、そこから音声入力するのが一番である。



億万長者の引っ越しを手伝ったことがある。


洋服も下着も靴下さえも、余分なものは何一つ持っていなかった。


それほどにシンプルに生きるからこそ残るものがあるのだろう。


『起きて一畳 寝て半畳』


それが私のモットーだったが、溜め込み癖のせいで一畳ではとても足りやしない。


人はもっとシンプルに生きられるはずである。



そう思いながらたくさんある反物をどうしたら良いか分からない。


DIYでダンボールに正絹を貼って奉納画の額縁にした。


クリスマスプレゼントにせめてベストを1枚編み上げる予定で、その後はベストを2枚ネックウォーマーを2枚セーターを2枚帽子を2つ春までに編めればいいな。



終活ともったいないお化けでした(笑)


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