第36話 青春18きっぷとケチケチケチ人生
「お前は何がしたいんだっ!!」
「ケチなことがしたいんだ!」
「じゃあ旅行に行くな!家でじっとしていろっ!!」
京都の歯医者に怒られた事がある。
なんだか話しやすい歯医者なので風邪薬まで処方してもらいにいき、ついでに世間話をしていた時である。
九州旅行の話を途中まで喜んで聞いていたが、だんだん不機嫌になり最後に切れてしまった。
歯医者の話には一理あるが、青春18きっぷの旅はそういうものだ。
青春18きっぷとは一日普通列車乗り放題5枚綴り1万2千円の切符である。
もちろん新幹線や特急列車は普通運賃と特別料金を払って乗らなければいけない。
良いところ→好きなところで降りて好きなところに泊まる。
乗り換え時間とにらめっこして熱海駅の駅前足湯に入りに行ったり、三河のスーパーに入って地元食材に驚いてみたり。
ケチはお得感に弱い。
1日でどれだけの距離を乗れるのか?
その昔聞いた話では、早朝に東京を発ち真夜中に下関に着いた猛者がいると言う。
簡単に聞こえるだろうが、東海道本線は名古屋から北上し岐阜の大垣へと遠回りするので京都まで非常に時間がかかるのだ。
私はせいぜい神戸の三宮で終わる。
その時は早朝に京都を発ち真夜中に博多に着いた。
乗車券1万円分は十分元が取れている。
しかし高速バス4000円と比べるとどうだろう?
18時間も各駅停車に乗り続け、乗り換え時間がないと食事は駅の立ち食いそばなのだから。
悪いところ→①電車がない。更に食べる物がない。
数時間に一本の電車を延々待ち続けたことが何回もある。
車社会の弊害なのか電車に乗る人がいないので、食べるものが駅周辺に何一つない。
人吉駅だったと思うが、食べるところを一生懸命探してコンビニしかなくて、時間が有り余っているから土産物を見繕って、さつま揚げをクール宅急便にして送る手配をして包丁と鎌まで買ってしまった。
「クール開けたらひんやりした包丁と鎌が入ってるの〜(笑)」
ここが歯医者が怒ったポイントである。
悪いところ→➁終電が早い。
新潟県越後湯沢にいたときのこと。
夕方にふと見たら終電が終わってる。
どうしよう?どうしたらいいんだ?!
そうだ新幹線乗ろう!3560円でビューン!
鹿児島県開聞岳の土産物屋さんにいたときのこと。
「終電は大丈夫ですか?」
「えっ?!まだ5時前ですよね?」
「えっ?!5時が終電ですよ?!」
「ぴぇー!間に合わない!!」
「駅まで送りますよ」
「すすすみませんっ(汗)」
世の中には親切な人がいるものである。
必ず帰りの電車、特に終電を確認するのが電車旅の必須である。
悪いところ→③貧乏くさい。
小室駅構内で嬉々として高原野菜を買い、軽井沢に着いたらしなの鉄道は第三セクターで既に JR ではなかった。
中学校の時の地図帳はやはり役に立っていなかった←バカ。
「軽井沢から普通列車ありませんよ」
「えっ?!ないんですか?」
「いつの時代の話をしているんですか?ありません」
「そうだ新幹線に乗ればいいんだ」
「乗れたらいいですね」
冷たく駅員に言われが、たかが3390円である。
ビューンと楽ちん!!
だが熊谷で花見を堪能した後に東京に戻ろうと改札を通る時に、ものすごい目つきで駅員に睨まれた。
あれっ?もしかして新幹線をタダ乗りすると思って探されていた?
今考えていて気がついた。
知っていますか知っていますよだけで終わる話だったのに、探す手間暇がもったいないような。
思い出→旅先で仲間に会えた。
東海道本線に乗っている時のこと。
「あれっ?
青春18きっぷで旅をしているんですか?」
「はいそうです」
「僕もそうなんですよ」
「あなた達もなんですか?」
「私達も昔は青春18きっぷで旅をしていてね。こんなに年寄りになっても懐かしくて夫婦で乗ってしまうのよ」
「「素敵です!!」」
「青春18きっぷで利用する人がワンボックスに四人集まったのね」
「すごい偶然ですね」
今ではもう乗ろうと思わないが、とても懐かしい思い出である。
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